THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡   作:蒼空の魔導書

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『英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡』に続けて、本日連続更新です!

偶然にも最新話は両作共、主にスバルが中心になる内容になりましたが向こうの作品の彼女と比較して印象の差が……どうしてこうなった?




FW(フォアード)チームの実力

スバルが撃ち放った怒りの魔砲(ディバインバスター)対戦相手(フォックス)を丸飲みして後方約100m程に敷かれた外野線の手前まで地面を抉り進み、そこで大爆発を起こした。

 

「のおおおっ!? やべぇ、爆風がこっちn──『ガァンッ!』ショウメーーイ! うぼぁ……(チーン)」

 

「ヴァヴァ、ヴァイスッ!!?」

 

「おおーーっ! へへ、何だよ? 突っ込むだけしか出来ない能無しかと思わせておいて、意外にイイ爆発火力の砲撃魔法を撃てるじゃないかよ、あの青髪ショートのヘソ出し格闘少女」

 

バトルフィールド東側外野線の周囲一帯を白い爆煙でまるっと覆い尽くす規模の魔力炸裂爆発によって近場に立っていた夜間照明灯がバラバラになって吹き飛ばされる程の衝撃風が吹き荒れてくる。 ディバインバスターの炸裂爆風に猛烈と嬲りつけられてまるで“ひょっとこ”のように変てこに歪まされたヴァイスの顔面へ外野控えベンチまで飛ばされてきた分解された照明の一部が見事命中して、これまた変てこな断末魔を叫んで照明を顔面にめり込ませたまま頭上に可愛いヒヨコを回してベンチの後ろにバタンと卒倒してしまったヴァイスを横目に見てシグナムが流石にも普段のクール然とした顔付きを崩させて顔面蒼白の絶叫を曝している。 それとは反対にロストウィング陣営側の爆弾魔パンク美少女のD.Dは爆風の猛烈な逆風を受けて自身の獅子の鬣のような髪を更に逆立てて激しく靡かせて、まるで回転する扇風機の前に顔を近付けて涼むかのように気持ちよさそうにしながら、スバルのディバインバスターの威力の高さを絶賛しつつ彼女の能力の評価を見改めている様子。

 

砲撃炸裂の余波を受けた外野控えベンチの両陣営の反応(リアクション)を見ても一目瞭然のように、スバルが撃ち放ったディバインバスターの威力は相当のものだ。 本家本元(高町なのは)のものと比較すれば射程距離が短く、使用者の魔力と魔法構成練度の量の違いから攻撃力も数段ランクが劣っていはするものの、それでも並の防御力ではとても防ぐ事は叶わない会心の一撃だということは誰の目にも判る。

 

魔砲(ディバインバスター)を打ち出した右拳(リボルバーナックル)を、砲撃着弾地点を濛々と覆い尽くした爆煙の方へと突き出した体勢で、砲撃反動による数秒の硬直状態となっているスバルの背中より後方に控えたままでいた他のFW(フォアード)の三人もスバルが放った“一撃必倒”の魔砲の威力に呆然と目を見張った。

 

「凄い、凄いよスバルさん……!」

 

「うん。 精度や燃費はともかくとして、前よりまた一段と魔法発動速度と破壊力を上げたようだね。 気を遣って言っても、スバルのあの魔砲(ディバインバスター)をまともにくらったら、幾らロストウィングの主力部隊員(ネームド)が強かろうが()()()()一溜まりもないだろうね」

 

「それで、あのフォックスという対戦相手の人はどうなったのでしょうか、ミクティーヌさん?」

 

「ちょっと待ってね。 今煙が晴れるようだよ……」

 

爆煙が熱帯の空に舞い昇って晴れてゆき、覆い隠されていたバトルフィールド東側端の様子が顕わになっていく……やがて煙が完全に取り払われると──

 

「は……はぁぁぁああああーーーっ!!?

 

「おいおいおいマジかよ? フォックスの野郎、見事にブッ倒されてやがる……!」

 

意外! その光景はなんとスバルの魔砲(ディバインバスター)に飲み込まれたフォックスが外野線の前の地面にうつ伏せにして倒されていたのであった。 さっきまで余裕綽々とスバルの猛攻をあしらっていたフォックスが楽勝かと思われた相手が破れかぶれにブッ放してきた砲撃魔法を受けて普通に昏倒(ノックダウン)されるという、あまりにも予想外の結果が顕れて模擬戦場は騒然となった。

 

ハ……ハハハハ! やった。 ディバインバスター(なのはさんの魔法)でブッ倒してやったーーーッ!!

 

砲撃がモロに直撃した事を示すように身に纏ったバリアジャケットのフード付きローブを真っ黒焦げにし黒い煙を頭部から立ち昇らせてピクリとも動く様子もなく倒れ伏して沈黙しているフォックスを目の前にして、砲撃使用反動の硬直を解いたスバルは驚き半分に苦笑を漏らした直後に歓喜をあげて跳び上がると同時にガッツポーズ。

 

「アハハハハ! いやまったく。 コイツあれだけあたしの事を散々馬鹿にしておいて、砲撃一発くらってアッサリとこんなザマになるだなんて、本当にザマアないとはまさにこの事だよ~! 所詮はロストウィングなんて、口だけ達者の不良や犯罪者予備軍が集まった最低部隊n──」

 

それで本当に倒せたのかどうか眼前の地面に伏したフォックスの意識の有無を確認せずに勝利したと思い込み、気分爽快に浮かれて舞い上がるスバル……その刹那、倒されたフォックスの身体が()()()()

 

「──んだ……よ…………ふぇっ?

 

「スバル! 油断しないで。 試合の決着はまだ──」

 

倒したと思った対戦相手が突然に消滅し、浮かれた気分を冷めさせて惚けたスバルへ外野のなのはから叱咤するような注意喚起が飛んでくる。 しかし遅い。 スバルが構え直す間も待たずに北北東(一時の方角)の宙空から紅紫の魔法光弾(スティンガー)が熱気の層を貫いて真っ直ぐ飛来してきた。

 

──あ、ダメだ……今からじゃあ防御しようとしても、とても間に合わない……。

 

狙撃に気付いて振り向いた時にはもう魔力光弾は文字通りの目前にまで迫ってきていたのだった。 唐突な万事休すを前にして脳の処理速度が急激に上昇し知覚加速(オーバーレブ)が引き起こされる。 今スバルの視界に映されているのは遅延動作(スローモーション)でゆっくりと何重もの幻影を引いて自分の眉間へと突き刺さろうとして来ている紅紫の閃光鏃。 見える景色の動きは全て鈍いが制御不能となった脳の指示速度が異常に速くなり過ぎて身体が全く付いていけず動く事は不可能で。 彼女がもうやられると思った、その間際──

 

「──《コカトリス》。 “妨害粒子波(ジャマー)”光速展開──ッ!!」

 

そう背中の後方よりスバルが訓練校生の時からずっと聞いてきた揶揄い上手な女子の親友の声が張り上げられると、その一瞬に彼女の目元数センチ前に接近していた魔力光弾が急に軌道を大きく曲げて左眼の横をギリギリすり抜けて行き、傍の地面へと突き刺さって粒子分解するように消滅した。

 

「……ミク?」

 

間一髪で危機を脱したスバルはコンマの一秒で無防備状態の自分の頭に直撃しそうなところまで迫り来ていた魔力光弾が唐突に弾道(コース)を逸らして自分から外れて行った事に呆気に取られて二秒間ぐらい固まったが、直ぐにその不可解な事象がこの試合開始から後方に控えていた親友(ミクティーヌ)妨害魔法(ジャマー)によるものだと気付く。

 

冷や水を浴びせられたように我に返って親友の声がした背中の方へ首をぎこちなく振り向く。 するとスバルの目に入ったのは、今彼女が身に纏っているモノと同じく所属分隊(スターズ)の隊長である高町なのはのバリアジャケットを思わせる白基調青配色の色合い(カラーリング)をしたケープブラウスのトップスとキュロットスカートという華やか風のバリアジャケットを身に纏ったミクティーヌが、彼女専用に支給された新デバイスのライフル型ストレージデバイスを両手に、普段の軽々しさとは打って変わり毅然として構えている様であった。 それはまるで南国鳥を思わせる色彩艶やかな装飾と騎馬鎧のように洗練とした形体(フォルム)と猛禽類の嘴を連想させる鋭利で長い銃身を持った狙撃魔騎銃であり、複数弾薬庫交換装填(マガジン)式の魔力瞬間増幅薬莢装填機構(カートリッジシステム)を採用しているのが確認できる事から魔力弾を全自動(フルオート)で連射が可能なのだろうと想定できる。 《コカトリス》というのは恐らくこの魔騎銃の名前なのだろう。 管理世界はおろか、なのはやはやての生まれ故郷である第97管理外世界の伝承にも書き記されている程に有名な幻想生物である【見た者を石化させる魔眼を持つ四ツ足の魔怪鳥】の名前がそれと同じで、よく見てみるとミクティーヌの魔騎銃(コカトリス)には銃身(くちばし)の付け根の左右に、遠目では赤い眼と見紛える楕円形の排気孔を確認できる。 そして、相当に魔力強化した視力を凝らして観察しなければ視認が出来ない程に微小な妨害粒子波(ジャマー)がその赤い眼から放出されて周辺一帯に広げているのを視るに、どうやらそれでスバルの急所(アタマ)に命中寸前だった()()()()()()()()()()()()()()()()()のだろう。

 

「ふぅん? 気を遣って言って、光弾射撃魔法(スティンガースナイプ)(デコイ)のようだね。 幻影分身魔法(フェイク・シルエット)でこっちに倒せたと思わせておいて、本体は複合光学迷彩魔法(オプティックハイド)を使って、隠れているのは光弾が飛んできた……真逆か! エリオ、七時(ヒツジ)の方向!」

 

「了解! いくよ、ストラーダ!」

 

承知(ヤヴォール)突撃推進機構噴射(ラケーテ・フォイヤー)!!』

 

今度はミクティーヌが敵の隠れている位置を特定して指示を出した方へと、白基調の騎士甲冑(バリアジャケット)を纏ったエリオが槍型デバイスの《ストラーダ》のブースターを噴射して猛烈な勢いの加速を付けてカッ飛んで来る。 ストラーダはエリオが以前から愛用しているアームドデバイスでありスバルのマッハキャリバーやミクティーヌのコカトリスのような新しく支給された新型のものではないが、代わりに機動六課が誇るデバイス技師であるシャーリーの手によってそれ等の新型に勝るとも劣らない性能へと強化改造されていて、ブースターによる推進噴射の出力と馬力も先日の機動六課の部隊稼働初日訓練の時よりも数倍上昇している。

 

「ハアアアアアア!!」

 

裂帛の叫びを放つと同時に(ストラーダ)を両手で思いっきり前方へと突き出し、全身を腹這いにして矢の如く七時の宙空を射抜く赤毛の少年騎士。 すると何も物が無い筈の空間に突き穿ったストラーダの穂がガキィィイン! という金属同士が衝突したような甲高い音が鳴り響き、弾けて飛び散った火花が複合光学迷彩魔法(オプティックハイド)を使って空に擬態し隠れ潜んでいた対戦相手(フォックス)の姿を炙り出した。 予想外を受けて半分驚いたような様子で彼が咄嗟と展開した前方防御結界魔法(プロテクション)がストラーダの穂先を正面から受け止めて、圧し競り合いになった恰好になって現れた。

 

ワァオ☆ これはチョビっとオッタマゲた。 僕が姿隠蔽の魔法を使って隠れて(ドロン)しているってのがよく分かったっピね? 赤毛のチビっ子君の槍のロケット突撃(チャージ)もケッコービリリとしてるよ。 やるね~♪」

 

「余裕かまして……でも、これで終わりじゃないですよ。 キャロ!」

 

「錬鉄召喚──《アルケミックチェーン》!」

 

「およ?」

 

「捕まえた! 今だよフリード、《ブラストフレア》!!」

 

「キュオオオオーー!」

 

エリオの槍を止める防御結界を維持させて機動力(あし)を固められたフォックスを包囲するようにして小規模のピンク色の()()()()()が複数出現し、そこから召喚された複数の鋼鉄の鎖が彼の身体に巻き付いて捕縛。 両腕ごと身動きを封じられた彼へ透かさずキャロの召喚使役幼竜であるフリードの口から吹き出した火炎砲(ブラストフレア)が浴びせられ、為す術なく命中して幼竜の使役主(キャロ)が事前に付与していた着弾時爆裂術式が発動して爆発が巻き起こった。 エリオはキャロが錬鉄召喚したアルケミックチェーンがフォックスを捕縛した時点で彼の傍から後退し、尚且つ火炎砲命中時の爆発も小規模だった為に巻き添えから無事に逃れている。

 

「よし! やったk──」

 

『いや、気を遣って言って、避けられたね。 その爆発の後ろだよ』

 

火炎砲(ブラストフレア)が相手に命中したと思って左右一対のグローブ型ブーストデバイス《ケリュケイオン》を装着している両手を前に可愛らしく握り小さくガッツポーズをして喜びそうになるキャロだったが、砲撃が命中した手応えが無い事に直ぐ気付いたミクティーヌから念話が飛ばされてくると同時に彼女が指し伝えてきた位置に()()()()()()()()()、一閃が消えると共に五体満足のフォックスが己の身を拘束していたアルケミックチェーンからすっかり解き放たれた自由の身を現した。

 

「あれは《ソニックムーブ》!? まさか、あの一瞬でキャロのアルケミックチェーンを破壊(ブレイク)してから咄嗟に即時発動術式の高速移動魔法でフリードの火炎砲(ブラストフレア)を回避したというの!」

 

外野から高速機動魔法戦のスペシャリストであるフェイトが長年に渡り高速機動に順応させて既に人間離れの域に到している動体視力でフォックスがやった事を観て愕然と驚愕の声をあげる。 それを実行するとしたらSランクの高速機動特化型魔導師である自分にも成功率が相当低くなると思う難度の拘束脱出神速回避行動であった為、それを中距離射撃を戦闘主軸にしていると思われるチャラ男系魔導師がやってのけた事が正直に信じられなかったからだ。 ……だが、驚くのはそれだけではない。

 

「みんな! 油断しないで。 もう既にフォックス君は反撃の一手を仕掛けているよ!!

 

「「「「っ!!」」」」

 

「なっ、なんやってぇぇーー!!?」

 

部隊長(はやてちゃん)が驚くのですか!?」

 

高速機動特化型魔導師としての自信(プライド)が傷付いて項垂れたフェイトの横でなのははフォックスが()()()()()()()()()()()()()事に感付いて、翻弄状態のFW陣を飛ばした檄で背筋を叩く。 しかし、フォックスの攻撃は完全に肉眼には見えず、なのはとは約半年分程度しか魔導師歴が違わないベテランであるはやてが思わず仰天の声を発して、その膝の上に幼女サイズになって二重座りしていたリインが堪らず耳を塞いで通常の妖精サイズに戻り変身ツッコミをしてしまう。

 

「遅いぜ窓際族ども☆ あ、そーれ。 クイッとな!

 

そしてその直後を見計らったように爆発の後ろに身を隠したフォックスが錫杖(マグヌス)の柄をバトンのように翻し、その動作に合わせてバトルフィールド中の地面の中から桁外れに大量の数の紅紫色の魔力球(スフィア)がボコボコとゴルフボールサイズの穴を空けて地上に現出した。 その総数は軽く1000を超えている。 忽ちFWチーム四人全員の顔から一瞬で血の気が引いて真っ青に染められた。

 

「「「嘘おおおおおおおおおおおおっっ!!!?」」」

 

「ままま、待って、待ってって!! 少しは気を遣って手加減を──」

 

「そうは問屋が卸しまへん♪ ……てな訳で、四人全員魔力球全部ボッシュートさせて頂きます!」

 

慈悲は無い。 屈託の無い素敵で残酷な笑顔を浮かべたフォックスが天高く掲げた錫杖(マグヌス)を振り下ろすと同時に、広大なバトルフィールド全体、その空の上まで埋め尽くされた桁外れの物量の魔力球(スフィア)が一斉に全部、絶望一色に染まったFWチーム四人全員へと殺到する。

 

「「「「うわあああああああああああっっ!!!」」」」

 

豪雨の如く降り注いで来る紅紫の弾幕滝を前にして為す術も無く絶望の阿鼻叫喚をあげる事しか出来ないFWチーム。 百戦錬磨の英雄である隊長達とは違い、まだまだ戦士としては未熟者の烏合の衆にしか過ぎない四人にはこの膨大な物量の魔力球(スフィア)をどうにか出来る手立てなど無い。 ミクティーヌの手にある新型デバイス(コカトリス)妨害粒子波(ジャマー)を展開したとしても自身を含め疎らに離れた位置に居る味方四人を1000発の魔力球から守りきるには明らかに出力不足だ。

 

──クソッ! もうダメか……こんなふざけたピアスヤローに一撃も与えられずアッサリ負けるだなんて……ッッ!!

 

自分の一番大切な憧れ(ゆめ)を馬鹿にされた相手に為す術なくやられてしまう悔しさを心に喚くスバル。 そして無情にも紅紫の弾幕滝が四人の頭上に落ちて、全員飲み込まれる──

 

『ブウウウウウウウウウウウウウッ!!』

 

「「「「のああああっ、臭っっっさーーーーーい!!?」」」」

 

「ク……ギュル……ル……ッ!!」

 

その直前に1000発もあった大量の魔力球(スフィア)は全部泡のように弾けて消滅すると同時にその場で放屁の如き悪臭を大音量を鳴らして炸裂させた。 スバル達はそれを零距離360°からくらわされ、屁音によって耳の鼓膜を、途轍もない腐臭によって嗅覚を破壊されて更なる悲鳴をあげながら熱帯昼下に晒されたミミズの如く地面を激しくのたうち回った。 人の何千倍以上もの嗅覚を持つ竜種であるフリードに至っては激臭のあまり鼻が痙攣を起こして陸に打ち上げられた魚のように大変な呼吸困難に陥ってしまっている。

 

「ゲロゲロゲーロ! やーい、引っ掛かったー♪ 1000発もの魔力球を遠隔誘導操作なんて、そんなガンマでも出来ないようなチキトンな事、僕に出来る訳無いん(ネイビー)だよ、おマヌケベイビー共がぁ~! これは次元世界で一番(バナワン)に超絶臭い屁を出すと記録されている現生魔法生物【シュールストレミンスカンク】の放屁(カグワカシイカオリ)弾だっチョベリバ~☆」

 

模擬戦場全体に充満した屁煙の真っ只中で文字通りの死に物狂いに鼻を手で押さえて地べたをジタバタゴロゴロと猛烈に転げ回っているおマヌケベイビー共(スバル達)を空中から見下ろして痛快だと言わんばかりに彼女達へ指をさしながら大爆笑するフォックス。 【シュールストレミンスカンク】が放出する放屁の臭さは危険度S級の巨大魔獣ですら速攻失神すると言われているレベルで激烈なのだ……ならば生身の人間ならその臭いを嗅いだ瞬間にほぼ100%の確率でショック死するだろう事は容易に想像できるし、ありとあらゆる実害から魔導師の身を守ってくれるバリアジャケットを展開していても地獄の掃き溜めの如き臭さに襲われるだろうという事は現在進行形でその放屁の中を顔面濃青にしてDVDの10倍速再生の如き超速挙動で藻掻き苦しんでいるスバル達の様子を見れば一目瞭然である。 これは酷い、まさに地獄だ。 ある意味本気で魔力弾1000発をくらわされた方がマシだったかもしれない……やがてバトルフィールドから屁煙が晴れると、FWの四人と使役竜の一匹が地獄の臭さに壮絶と苦しみ悶えて虫の息で地面を這いずった酷い有様を現した。

 

「うぇぇ……くさい……死ぬ程臭いです……」

 

「ぜぇ、ぜぇ……バリアジャケット展開してなかったら……はぁ、はぁ……即死だったね……気を遣って言って……」

 

「キュ……ピ……」

 

「フリード!? 大変、フリードが息をしていない。 直ぐに回復の魔法を──」

 

「ゲホッ! ゲホッ! ……畜生ッ! あのクソッタレのチャンチャラピアスヤローが! どこまでもふざけやがって、もう絶対に許さない──!!」

 

相手のおふざけの所為で次元世界一臭いオナラを嗅がされて体力を無駄に消費させられ、スバルの憤りは淑女にあるまじきレベルの汚い言葉遣いを吐き散らす程に天井を突き破っていた。 上で手足を叩いて爆笑が冷め止まないでいるチャンチャラピアスヤロー(フォックス)を憎々しい眼で睨みつけると彼女は屍累々の有様でいる味方をまた置き去りにして、射出されたミサイルの如き爆速で猛然と飛び出す。

 

「マッハキャリバー!」

 

『《ウィングロード》空中展開』

 

車輪靴(マッハキャリバー)の中心に嵌め込まれた水色の(コア)が淡く点滅すると駆ける車輪の足下から後に引き敷かれるようにして核と同じ色に輝く空中車道(ウィングロード)が展開される。 飛翔魔法を使って宙空に浮遊している憎き敵へ向けてスバルが空をまっしぐらに駆け上がって、曲がり(カット)は一切作らず翼の道はグーンと一直線に伸ばされていく。

 

この特殊移動魔法はスバルの今は亡き母である《クイント・ナカジマ》が作り出した固有スキル(オリジナル)であるらしく、現在はスバルと彼女の姉《ギンガ・ナカジマ》にスキルが継承されている。 スバルが右手に装着しているリボルバーナックルもまた母クイントから受け継いだ形見なのだ。

 

「くらええええっ!!」

 

「おっとっと」

 

余裕ぶっこいてムカつく程に芸術的な空中四回転スピンを決めているフォックスのもとへとウィングロードに乗って爆走してきたスバルはその勢いのまま回転式六弾倉(ナックルスピナー)を超高速回転させた右拳(リボルバーナックル)衝撃波を纏った右ストレート(リボルバーキャノン)をフォックスのニヤけたピアス面を狙い打つが、直撃寸前に相手が首を逸らしただけで爆速の勢いを乗せた拳は簡単に外されてしまう。 そのまま横にすれ違う両者。 時が遅くなったような感覚の中で互いの視線が重なった刹那、フォックスが明らかな相手への挑発を孕ませたほくそ笑みを浮かべる。

 

──キミの信じる憧れの力ってのはその程度なの? 超手加減(舐めプ)してやってる僕に一発すら当てられないそんなスロウリィなチョコヘナのパンチしか打てないとかさぁ、さすがにショボ杉ww。 噂に聞くあの高町なのは(エース・オブ・エース)の戦術教導も、ち~っとも大した事は無かったッピね~☆

 

「~~~~っ!!」

 

そのように至近距離で視界全体に映された憎たらしいピアス面に貼り付けられた嘲笑の言葉を感じ取った瞬間にスバルは相手への怒りで元々頭に昇っていた血を極限以上に煮え滾らせた。 己への実力不足を見下してくるのはまだいい、しかしまたしても憧れの人(なのはさん)へ対する許されざる侮辱を……もうダメ、我慢の限界だ──!

 

「このクソヤローがああああああああああーーッッ!!!」

 

スバルは溢れ出る憤怒に耐えきれずに我を忘れ、激情に任せてフォックスを猛追。 だがしかし、冷静さを完全に失くした彼女はもはや力任せで出鱈目なパンチやキックしか打てず、もうそんじょ其処らの半グレ(チンピラ)が喧嘩に使う素人の暴力にすら劣ってしまっている。 型が崩れた不格好な大振りの連続ブローが上半身の引き逸らし(スウェイ)で躱されて、五度目に腕を振り抜いた直後にクルッと回してきた錫杖(マグヌス)の柄によって脇腹に強打を受ける。 堪らず胃の中の体液を吐き出して痛烈なダメージをくらった脇腹を左腕で押さえつけて悶絶を二秒間した直後に足下のウィングロードを蹴って大きく跳び上がり、自分の頭よりも高く振り上げた右脚の踵を相手の頭上から薪を割る斧の如く力いっぱい叩き落とす。 しかし相手が身体を後方に半歩下げて跳躍踵落としを空振りにされると、更には高低が合わさったタイミングで錫杖の突きが胸(両乳房の中心と首の間ら辺)に刺されて、肺の中の空気を吐き出させられながら10m程突き飛ばされる。 直線上に後ろへと飛ばされたのが幸いして下に墜ちず空中に真っ直ぐ引き敷いてきていたウィングロードの上に受け身を取る事ができ、硬直もなく即座に相手へと再び突進をかます。

 

「これならどうだ! リボルバーシュートオオオオ!!」

 

今度は右手(リボルバーナックル)回転式六弾倉(ナックルスピナー)瞬間魔力増強薬莢(カートリッジ)を一発装填して超速回転(リロード)させ、突進の勢いに乗せて突き放ったその拳に纏った衝撃波を弾丸にして撃ち出してみる。 分厚い岩盤をも撃ち砕く程の破壊力を持ったスバルの数少ない射撃魔法はウィングロードの上に沿って直進し、その道の先でフォックスが張った広範囲防御結界魔法(ワイドプロテクション)と正面衝突。 三秒間の拮抗の後にスバルの衝撃波弾丸(リボルバーシュート)がフォックスの防御結界を噛み砕いて風穴をブチ空けるが、貫通して来る前にフォックスは亜音速移動魔法(ソニックムーブ)で退避した為弾丸は元気に照り輝く太陽の光の中へと消えて行った。

 

「クソッ、外したか……!」

 

「おーほっほっほ! おたんこ茄子めが。 さっきの砲撃(ディバインバスター)も合わせて魔法の破壊力にだけは驚き桃の木山椒(サンショ)の木だったけど、全体的に攻撃動作が御丹珍(おたんちん)なんだよねー。 キミみたいなウスノロ単細胞一人なんて僕にかかればお茶の子さいさいさ☆」

 

「──だったら、四人と一匹を同時に相手したらどうかな?」

 

心底悔しそうに歯嚙みをして憎たらしく睨みつけてくるスバルを文字通り上から見下ろして嘲笑しているフォックスへと地上から第三者の声が響いてきた。

 

「ヴァリアブルシュート!」

 

「サンダーレイジ!」

 

「シューティング・レイ!」

 

「キュオオオオ!」

 

その直後に地上から四色(緑・黄・桃・赤)もの攻撃魔法が盛大に撃ち上げられて来た。 それ等はスバルの横を通過すると一つの線状に重なり合って渦を巻き四色多重の螺旋波動となり、リズミカルに両腕を上下に振ってモンキーダンスを踊りながら調子こいて油断しているフォックスへと殺到する。

 

「およよー?」

 

ビリビリと空気を揺るがす猛烈な波濤と渦巻くような上昇衝撃風を身に浴びて物凄い勢力を伴う量の魔法攻撃が下方より迫って来ている事に気付いたフォックスが不意を突かれたように間の抜けた声を漏らした。 その直後に無防備状態の彼の足下から四色の螺旋波動が命中してドッカアアアン! という定番の爆発音を鳴らした。

 

「スバル、いい加減に一人で勝手に突っ込むんじゃないよ!」

 

螺旋波動が直撃したフォックスの安否を隠して白濃い爆煙が濛々と上がる中、鼻のダメージから回復して螺旋波動を協力して放ったミクティーヌ達残りのFW陣三人と一匹が地上からスバルの敷いたウィングロードの上を駆け上がって来て、スバルの背中に溜まった文句を投げつけてくる。

 

「さっきから一人で無茶苦茶に戦わないで下さい! 僕達も味方に居るんですからね!」

 

「四人で一緒に連携を取って戦いましょう! 勿論フリードも忘れずに入れて!」

 

「キュルルー!」

 

親友で訓練校時代から付き合ってきた相方(パートナー)であるミクティーヌだけでなくエリオもキャロもフリードも、この試合開始してから対戦相手に煽られるがまま一人で身勝手に突っ走って味方(じぶんたち)へ見向きもしてくれないスバルへ怒り、同時に共に協力して戦おうという心遣いを向けてきている。

 

「気を遣って言って、今の君は君らしくないぞ? 尊敬する上司とチームメイトの夢の事を馬鹿にされて、相手にアタマにきてるのはボクらだって同じなんだからさ。 少し頭を冷やして、冷静になりなよ」

 

「……」

 

ミクティーヌから窘められて冷静になったのか、スバルは味方に背中を向けたまま肩を下ろして無言になる。 前に垂れ下げた前髪の影に眼元が隠れているので彼女が今どんな表情をしているのかは判らないが、とりあえず味方の心配する声はちゃんと届いている様子だ……そして爆煙が晴れてきてフォックスの姿が露わになった。

 

「ぷっふぅ~。 あっぶねぇ油揚げ麺だったぜ☆」

 

残念ながらミクティーヌ達の不意打ち合体魔法攻撃は、奴には身に纏っているバリアジャケットのローブの襟や裾を少し焦がしただけで、全然ダメージを受けている様子はない。 奴は攻撃が直撃する寸前に自身の紅紫色の魔力を防御膜にして自分の全身に纏う事でダメージを防いだのだ。 全身防御(フィールド)系結界魔法《フォース・フィールド》だ。

 

「……さすがにマジか? 気を遣って言って、フォスフィル(フォース・フィールドの略称)とかプロテス(プロテクションの略称)と同じで訓練校生が初歩で習うような簡単な防御魔法だよ? そんなのでボクら三人と一匹の合体魔法攻撃を完璧に防御しちゃうなんてなぁ……」

 

ロストウィング(ここ)に来る前にFW陣みんなで練習していたとっておきの合体魔法が初心者向けの結界魔法で無傷で防がれた事を受け、いつも図太くマイペースを崩さないでいたミクティーヌもこれにはさすがに目を丸めざるを得ずに驚嘆を表した。 するとフォックスが相手の悔しがる声を聴いて益々ご機嫌になって嗤う。

 

「もけけけ! 防いじゃってごめんちゃーい☆ でも今言った通り、今の攻撃はちょ~っと危なかったっちょよ? あとコメ数センチ秒魔法の展開をミスってたらバイビーしてたからねぇ。 あははっ。 いよっ大統領! 翠くせ毛ちゃんとおチビちゃん二人にレッドアイズホワイトドラゴンちゃんもなかなかやるジャン♪ そこの激おこぷんぷん丸してて言うだけバンチョーになってるヘッポコ青髪ベイビーちゃんとは違ってさぁ」

 

「そんな汗ひとつ掻いてない顔して褒められても全然嬉しくない……」

 

「それに“レッドアイズホワイトドラゴン”って、もしかしてフリードの事言っているんですか?」

 

「グキュー!」

 

相手の茶目っ気に人差し指を立てた右手を耳元に翳して「いや~今のは惜しかったね~」という風にわざとらしさを全面に出した謙遜アピールをしてくる様がこれまた凄まじい腹立たしさを掻き立ててきて、たとえどのような他人にも優しく出来るよう保護者(フェイト)によってそのように躾をされてきた子供達(エリオとキャロ)も流石に不快感を感じずにはいられない顔を浮かばしている。 ついでに隊長達の故郷の世界で大人気のカードゲームにでも出てきそうなモンスターっぽい呼称を付けられてフリードが白い貌を真っ赤にして吼えて激しく憤慨を主張してきているが、如何せん幼体であるが為にその怒り様も可愛いだけである。

 

「……マッハキャリバー。 ウィングロードをこのバトルフィールドの空中全体に張り巡らせるように追加展開して」

 

『OK相棒(バディ)

 

そして仲間達へのお世辞にも比較されて、“言うだけのヘッポコ”だと憎き相手からどさくさに言われたスバルだが、彼女は意外にも先程のような激情を表わさずに冷淡な声音で相棒のデバイス(マッハキャリバー)に指示し、陸戦魔導師であるFWの仲間達が空中戦を可能にする為の足場(ウィングロード)をバトルフィールド全体の宙空に広げて追加展開させた。 先程の仲間達から叱られたのが効いたのか、相変わらず目の前の対戦相手へ向ける憎悪の瞳に灯された昏い焔は消えてはいないようだが、今度は激情に支配されて一人で暴走しそうな様子はない。

 

「スバル……」

 

「……いくよミク。 エリオとキャロにフリードも。 遅れないでよ」

 

「「は……はいっ!」」

 

「キュルルー!」

 

スバルが心配そうな視線を向けてくる親友と年下の同僚二人と使役竜へ共に戦う意思を促すように淡々と言って、FWチーム(四人と一匹)はようやく全員で横に並び立つ事ができた。 その様子を見てフォックスは何時間前から停留所で待ち続けてやっと回って来た路上バスを迎えるかのように、大変待ち草臥れた感じに背筋を伸ばしながら両腕をいっぱい上に伸ばして「んっん~~」と喉を鳴らしたり体側運動をしたりして身体をよくほぐしながらFWチームへと正面から向き合った。 スバルが拳を握るとミクティーヌ達も全員得物(デバイス)を一斉に構え、フォックスも今度は(彼なりに)真面目になって錫杖(マグヌス)の長い柄を棒術のように高速で振り回す演舞パフォーマンスを見せつける事でスバル達の戦意に応じる。

 

「最初に宣言した通り、四人でタコ殴りにしてやる!」

 

「ヘーイ、カモンカモン♪ ベイビーちゃん達が何人束で掛かってきたって、み~んな一捻りでイチコロよ!」

 

そして空に戦場を移して、第2ラウンドが開始される……。

 

 

 

 




スイマセン、フォックスの能力を出すとか言っておいて、全然出せませんでした。 次回どうにかして奴に能力を使わせるつもりなので、もうしばらくお待ちください。(土下座)

今年はこれで最後の更新になりそうですね。 12月中も書き溜めておくつもりですが、書き上げられなければまた来年に御会いしましょう。


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