THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡   作:蒼空の魔導書

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誓いを砕く無慈悲の爆炎

始まりのその日……古代遺物管理部機動六課は墜とされた。

 

「きゃぁぁぁああああああーーーーーっ!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()が空を引き裂き海を割る……圧倒的規模で齎された断裂。 それはまるで世界そのものが縦に両断されたかのような、衝撃的で圧倒的で非現実的な現象であった。

 

「く……何が──っ!!!?」

 

隣に立っているシャーリーを咄嗟に抱え、経った今直ぐ横を通り過ぎた魔力刃による暴風のような衝撃波に吹き飛ばされたなのはは宙を錐揉みしながらレイジングハートを起動(セットアップ)して飛行魔法を発動。 白いバリアジャケットを纏った身体を華麗に正常に戻して空中に制止し何が起きたのかと周囲を見回して確認すると、彼女の眼に飛び込んで来たのは縦一直線に両断された世界だった。

 

「あ……あぁっ!!」

 

本当に世界(ミッドチルダ)が真っ二つになった訳では無いが、それはまさに終末(カタストロフィ)が訪れたかのような惨状で、目を疑うあまりに絶句の声を漏らしてしまう程、凄烈で悲惨な光景であった……シミュレーターで海の上に出していた仮想荒廃都市の彼方から隊舎の先までに掛けて水面地表が大きく割れてしまっており、海は神話のモーゼですら脱帽するであろうの規模で左右の果てまで海水が押し遣られていて、その水底が見渡せる限り全面に浮上している。 眼下の仮想荒廃都市には底なしの断崖絶壁を思わせるような広大な地割れが水平線の向こうから中央に走って来ており、その線上にあった森羅万象の全てが例外無く消滅してしまっていた、まるでスポンジケーキを二つに切り分けたかのように……そして何よりも酷い有り様なのが──

 

「隊舎が……崩壊……!」

 

その地割れが走る先で中央から無惨にも両断され、ショートケーキをフォークで崩したかのように半分が崩落してしまっていて無惨な姿を曝す自分達の隊舎だった建物だろう。 なのはは口を両掌で押さえて悲痛の声を漏らす。 辛うじて崩落を免れたもう半分ですら、もはや原型が判らない程半壊していて倒壊するのも時間の問題だという事が解る。

 

更には地獄から湧き出て来たような炎が廃墟と化した隊舎全体を包み込んでいてそれが蒼かった空を灼熱色に塗りつぶし、炎の中からは灼熱地獄で焙られる屍人(グール)のような甲高い悲鳴が聴こえて来る。 それは紛れもなく隊舎内で仕事に励んでいたのであろう機動六課のスタッフ達の悲鳴だ。 彼等が何の前触れも無く隊舎が崩壊するという不条理な出来事が発生した事により戸惑い、炎上する炎に包囲されて恐怖に晒されているのは間違いない。

 

「なのはぁっ!」

 

「高町、無事か!?」

 

「なのはさん、よかったぁ……」

 

「ヴィータちゃん、シグナムさん、FWのみんなも!」

 

早く救出に向かわないとと焦燥の汗を浮かべるなのはの許に近くの高台で訓練を見物していたヴィータとシグナムがバリアジャケットを纏って飛来して来る。 その両脇には仮想荒廃都市の上で訓練に精を出していた筈のFW達が全員揃って抱えられており、どうやらなのはが周囲の状況を確認している間に突然の出来事と衝撃に身を震わせて怯え動けなくなっていたFW達を副隊長二人が救出したのだろう。 都市の中央から運よく離れた場所に居た為に四人全員が無事であったのは僥倖だったと言える。

 

合流した彼女達は魔力刃が振り下ろされた衝撃を受けた時に気絶していたシャーリーを近場の建物に避難させた後、はやてやフェイト等六課の仲間達の安否を確かめるべく半壊し無慈悲な炎に包まれている隊舎に急行し、燃え上がる炎を掻き分けて崩れかけのエントランスに足を踏み入れた。

 

「ぁ……」

 

「酷い……」

 

中はまさに煉獄だった。 改装した壁面天井は見るも無残に亀裂が走り無数の孔が至る所に開通していて、そのうちの右半分はほぼ崩壊してしまっていて朱く染まった空が無情にも嘲笑い見下す様が崩落した天井の吹き抜けからよく見える。 燃え広がる業火の紅が視界の周囲を埋め尽くし充満する熱を帯びた黒い煙が眼と吭を焼き、色取り取りの配色に彩られていた内装が今は黒一色に染まっている。 崩れ落ちた壁面天井の瓦礫が炎に焼かれて石炭に変わり果て、至る所に散乱している様は見る者に悲痛な思いを抱かせるであろう。 建物の地盤を組んでいた鉄骨が中央の床に描かれた六課のエンブレムに突き刺さり孔を穿っている光景は目の当たりにした者達を哀毀骨立(あいきこつりつ)とさせる。

 

「っ!!」

 

その鉄骨に突き刺さりエンブレムに縫い付けられている肉の塊を目にしてなのは達は戦慄の驚愕を露わにして眼を見開いていた。 人間だ……六課の職員だったであろう人間が物言わぬ亡骸と成り果て、胸に鉄骨を貫通させて、その孔から生暖かい赤の液体が流れ出ている。

 

「うっ、うぉぇっ!」

 

「キャロ、気をしっかr──うぷっ!」

 

「エリオも無理はしなくていい、幼いお前達にはまだ早い」

 

見るも無残な姿を曝す人の死骸を目の当たりにして幼いキャロは耐え切れずに胃の中の汚物を吐き出してしまい、咄嗟に彼女の肩を支えて正気を呼び掛けようとしたエリオもまた幼いが故に吐瀉しかける。 そんな二人の後ろに立っていたシグナムが気を利かせて二人の視界に死骸が映らないように前に出てそう言い落ち着ける。

 

騎士として甘い優しさかもしれないが確かにそれは十歳の子供が見ていいものではない。 燃え上がる業火で皮膚が焼け爛れ、心臓を貫かれて絶命したであろうその者の眼球は絶望の白一色に剥かれていて今にもゾンビとなって襲い掛かって来そうな錯覚を起こさせる程気味が悪い死に姿なのだから。

 

──どうして……どうしてこんな……事に……。

 

六課の人員から死者が出た事実にショックを受けるなのは達……そこへ──

 

「うおっ!? ここにも火が……ってアレ? あそこに居る人等って……」

 

「なのは! エリオ! キャロッ!」

 

「よかった……ヴィータにシグナム達もみんな無事のようやな!」

 

「おー、新人共も雁首揃えて、全員怪我も無いようでなによりだぜ!」

 

「フェイトちゃん!」

 

「はやて!」

 

「ヴァイス陸曹も!」

 

奥の通路から炎を掻き分けて現れた三人……それははやてとフェイトと六課のヘリパイロットである青年《ヴァイス・グランセニック》であった。

 

「三人共、無事だったんだね! でもどうして此処に?」

 

「うん、さっきまで地上部隊の上層部に部隊設立の説明をしに行くのにヴァイスにヘリを出してもらって中央管理局に向かおうとしていたんだけど、飛び立とうとした時に突然SSSランクオーバーのとんでもない魔力反応が海の向こう側から検知されたから驚いてヘリから飛び出したんだ」

 

「それで海の向こう側を見てみればデッカイ魔力の塔が空高く伸びてこっちに倒れて来たんスよ! フェイト隊長と八神部隊長が全力で結界を張ってくれたおかげで死にはしませんでしたが、ヤバ過ぎる衝撃で三人共中庭まで吹っ飛ばされてしまって……気が付いたら六課がこの惨状になってたんス」

 

「隊舎の中に取り残されたみんなを救出せなアカンと思った私らは迅速に行動に移ったんや。 その途中でシャマルにザフィーラ、リインとも合流できて今は手分けして生き残っている人達の救出に当たっとるさかい。 辛いかもせぇへんけどみんなも手伝ってーな。 一人でも多くの命を助ける為に」

 

駆け寄って合流し、フェイト達がリレー式になのはに問われた事の成り行きと現在状況を説明。 今こうしている間にもこの炎上中で崩壊寸前の隊舎の中で助けを求めている六課の人員達を救助する為には一刻の猶予も無く、はやてはなのは達にも救助に動いてもらうよう願い出る。

 

「もちろんだよはやてちゃん! 行こう、絶対にみんなを助けるんだ!!」

 

当然それを断る理由などなく、なのはの返事一つでこの場に居る全員が行動を開始した。

 

フェイト、シグナム、エリオ、キャロ等《ライトニング分隊》は上の階に。

 

スバル、ミクティーヌ、ヴァイスは一階を。

 

なのは、ヴィータ、はやての三人は火災の広がりが激しい隊舎外周をそれぞれ見回り、救助対象を発見次第適切な対処をする事となった。

 

「こっちです! 慌てず速やかに避難してください!!」

 

全方位を覆う防御結界魔法を展開して崩れ落ちて来る天井の破片と燃え広がる炎の熱と煙から救助対象を護りつつ彼等を避難経路に誘導していくなのは。 火災地点から抜け出して安全な外に逃がすと次の救助対象を捜索しにそそくさと炎の中へとトンボ返りして行き、丁度他の救助対象の避難誘導を終えたはやて達と合流する。

 

「こっちは順調だよ、そっちはどう?」

 

「たった今三人程外に避難させたところや。 せやけど一人が右脚を瓦礫に潰されたらしくて今はシャマルが看とる。だからそっちは心配あらへんけど……」

 

「……何かあったの?」

 

お互い救助活動の現在の状況を報告し合うが、はやてはなんだか辛そうに俯いていた。 気兼ねたなのはが自分が離れている間に何かあったのかと訊ねると、口が重いはやてに代わってヴィータがそれを説明しだす。

 

「実は完全にブッ壊れてやがった第二倉庫に通りかかった時、その倉庫の瓦礫に潰されて死んでた奴を十人程見つけちまったんだ……」

 

「ぁ……」

 

迂闊な失言をしてしまったと口を押さえるなのは。 はやての内情を察してやれなかった自分を恥じる。

 

──誰一人も犠牲を出さないって誓ってたんだもんね。 それが部隊発足初日で何人も……。

 

ギリッと奥歯を軋らせて悔しさを露わにする。 恐らくはこの一件で死んだ六課の人員はここまで彼女達が救助活動の際に発見できた少数の死骸だけではない。 隊舎を破壊した極大の魔力刃、それが振り下ろされた時に不幸にもその軌道上に居た人間達は皆超高濃度の魔力の奔流に飲み込まれて跡形も無く蒸発してしまったと視て間違いないだろう。 部隊員達の命と責任を背負っているはやての心に入った傷の深さは計り知れない。

 

「何でや……何でこないな事になってもうたんや?」

 

「はやて……」

 

「あの魔力刃はロストロギアによるものやあらへん、間違いなく《集束魔法》か何かを使った人為的な魔法攻撃やった……誰や? 誰がやりおった、許さへんっ!!

 

腹の底から沸き上がる怒りに打ち震え、はやては顔を上げ、自分達の居場所を破壊し部隊に懸ける誓いに泥をブッ掛けた犯人を絶対に許さないと叫び激しく憤慨する。 隊舎を破壊した犯人が居ると聴いた時、なのははハッ! とこの惨事が起こる直前に自分に接触を図ってきていた謎の美女──トリスメギストスの存在が思い当たった。

 

──そういえばあの女の人、魔力刃が隊舎に落ちて来た時には何時の間にかいなくなっていた……あの人はいったい何者だったの? ……【(オオ)イナル黎明】? 【恐怖劇(グランギニョル)を開演する】? いったいどういう意味なの? ……もしかしてあの人が……。

 

「うぅ……八神……部隊……長……」

 

「「「っ!?」」」

 

緊迫した空気の中で突如として木霊した男らしき人の呻き声……なのは達三人はその声を耳に拾って我に返り、声が聴こえて来た方を向くと其処には眼鏡を掛けた生真面目そうな青年が瓦礫の下敷きになって額から血を流し意識を朦朧とさせているのが見えた。 彼は──

 

「グリフィス君!!」

 

機動六課副指令及び部隊長補佐官の《グリフィス・ロウラン》准陸尉はその聡明な顔付きを流血で赤く染め、背中から下半身に至るまで崩れ落ちた天井の大欠片一つが丸ごと覆い被さられるという非常に危険な状態で目測20m先に倒れ伏している。 意識を失いかけているのは貧血症状……恐らく流血しているのは外から目に映る額の負傷だけではなく、瓦礫に押し潰されている身体の彼方此方(あちこち)が……このまま放置しておけば彼はいずれ出血多量でチカラ尽きてしまうのは目に見えている。

 

「酷い怪我……」

 

「あのままだとヤバイ、とっとと救出すんぞ!」

 

「当然や! グリフィス君、其処でジッとしとるんやで! 今すぐに助けてy──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人が死に掛けのグリフィスを救出しに駆け寄ろうとしたその刹那だった。 突然明後日の方角から鳴り響いた『シュパァァンッ!』という何かの発射音……唐突なそれに気を取られたなのは達は三人共その方角に目を向け、駆け出しかけていた脚を止める……()()()()()()()のだ。

 

「……え?」

 

振り向いた瞬間【それ】は彼女達の頭上を通り越す。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 安定翼を折り畳んだ棒を尻に付けた直径15cm程の成型炸薬弾頭。 目で追える速度で飛来したそれは、着弾と同時に戦車の装甲すらをも溶かす高熱量を炸裂させる管理局が使用所持を禁じた質量兵器————対戦車擲弾(パンツァーファウスト)

 

「「「っ!? きゃああああああーーーーっ!!!」」」

 

視線を戻した先で炸裂する閃光と爆音。 そして摂氏数千度にも及ぶ爆炎……なのは達は眼を瞬間的閃光で焼かれ、耐え切れず腕で視界を覆って甲高い悲鳴を上げた。

 

「う……あ……ああっ!!?」

 

そして乙女の柔肌を炙る熱を浴び、血と臓物の焼ける臭いが鼻に入るのを感じ取って彼女達は視界を覆う腕をゆっくりと下げ、飛び込んで来た光景は眼前一帯を焼き尽くす無慈悲な獄炎と……宙に放物線を描いてはやての目の前にドサリと落ちる、()()()()()()()()()()()()()()()()であった……。

 

「グリ……フィス……君……」

 

「そ……そんな……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと悟ってしまった瞬間、彼女達三人共途方もない喪失感に苛まれ、なのはとヴィータは膝から崩れ落ちて呆然と天を仰いだ。

 

理不尽で残酷な現実に底知れぬ深海の淵に沈んで行くような悲しみの痕が彼女達の心に深々と刻まれていく。 大切な人達は絶対に誰も傷付けさせない。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というその誓いは、部隊始動から経ったの数刻で実に呆気なく壊されてしまったのだった。

 

「嘘や……こんなん……絶対に……嘘やぁああぁぁあああぁああああああああっ!!!

 

無惨に変わり果てた自分の副官の断片を見下ろしてただ一人現実を理解できずに立ち尽くし硬直していたはやてが悲しみに耐えきれず顔を歪めて狂い泣き叫び、血と炎で赤く染まった空に響き渡る。 グリフィス・ロウラン准陸尉は死んだ……その残酷な現実を前に戦乙女達はただただ悲しみに涙を流すしかできなかった……彼の命を奪った“滅びの柴竜の戦奴達”がそんな自分達を高見から睥睨していたとしても──

 

「──喧しい……耳障りだ!

 

「「「っ!!?」」」

 

仲間の死の悲劇に打ち拉がれ心を抉るような痛ましい空気が流れる中、突如として発せられた厳かな男の怒声が空気を引き裂き紅蓮の炎に包まれる半壊した隊舎中に轟く。 間も無くはやての総合魔力量をも凌駕する膨大な魔力が付近でうねりを上げ、同時に戦略破壊級の圧倒的爆熱が天地を揺るがす轟音と共に炸裂した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、機動六課の隊舎があるミッドチルダ中央区南駐屯地A73区画より凡そ10km離れた距離にある港街の湾岸エリア──

 

「──()()がミッドに?」

 

石造りの海岸線付近で宙に投影された空間モニター……その前に立っている艶のある長い黒髪が印象的な人物が、そこに映る筋骨隆々とした大柄な男性が齎した情報を聞き訝し気にそう聞き返している。

 

『ああ、今さっきな。 早速ミッドの管理局の施設を強襲してんぞ。 今お前等が居る場所からざっと十キロぐらい西に行ったところだな』

 

「中央区の海岸付近か……そういえば確かあの場所は今日……」

 

『ついさっき特別捜査官の八神二佐をトップとする一年限りの試験稼働部隊が発足した。 なんでも名の有る【海】のエースと将来有望株と期待されている若手を集めて【地上】に起ち上げられた精鋭部隊らしい』

 

「あの夜天の……」

 

『そうだ。 ()()()()()()()()()()()()()()でもねぇのに部隊保有制限大丈夫か? って言いたくなるくらいの戦力が集められているぜ……過去に“あのゴミ処理部隊”に居た時のお前が長期任務で()()()()()()()()()()()()()()()も居るみたいだしな』

 

「っ!?」

 

左の眼尻が一瞬ピクッと吊り上がる。 それが内心の驚愕を意味する事を瞬時に看破した大柄な男はその通信相手を揶揄うかのように口許をニヤけさせる。

 

『へっ、気になったみたいだなぁ?』

 

「……」

 

それに対する反応は無言の半目。 “下らない事言ってないで早く本題に入れ”という白けた訴えである。

 

『……コホンッ! まあ、どちらにしろ()()が現れたとなるとウチが動くしかねぇ。 海のエースが束になってようが《奴等》の前線部隊の一つを丸ごと相手にするには分が悪いからな……行けるか?』

 

“なんだつまらねぇ”と大柄の男がニヤけ顔を真剣なものに変えるとそう問いてくる。 返答は口に出して答えるまでもない。 コクリと一回頷くと大柄の男はそう来なきゃなという獰猛な笑みを浮かべた。

 

『へっ、まあ嫌と言っても却下だけどな。 やる気が有ってなによりだ……よし、なら行って来い! 任務内容は“襲撃を受けた部隊の救援と襲撃者共の鎮圧・確保、()()()()()退()”だ!《零式凍結機関》の解除も許可してやる。 全力全開でやってこい! 健闘を祈るぜ』

 

了解、部隊長(イエス・ボス)

 

淡々としながら意志の篭った口調で任務内容を了承し、空間モニターを閉じて通信を切ると黒コートの裾を翻して海岸線から踵を返す。 歩く先でその者を迎えたのは“圧倒的異彩を放つ五人の若き男女”──

 

「みんな、悪いが休日は終わりだ。 急を要する任務が入った、至急武装を整えて現地に向かうぞ!」

 

「こりゃまた急じゃねぇか? ()()()()、遂にミッドにまで進行して来たみてーだな、おもしれぇ」

 

「へへっ、丁度新しい戦技を試したかったところだったんだ。 歯応えのある相手だったらいいんだけどな♪」

 

「ちょ、ちょっと、これから任務に行くんだからもっと緊張感を持ちなさいよ!」

 

「確かにそうだね。 だけど肩にチカラを入れすぎるのも効率を下げてしまうから減り張りは大事に」

 

「はははっ、まあ心配は要らないさ! アタシ達《シルバーガスト》小隊が全員揃えば怖いものなし! 例え()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! そうだろ?」

 

「……ふふっ」

 

和気藹々とふざけているように見えてやる気十分な声を聴き、彼等の中央をすり抜け様に僅かな微笑を漏らして彼等の気概に応えてみせる。 せっかくの休日を台無しにしてしまう事への遺憾は無用だったようだ。 振り向く彼等を背に任務開始を告げる号令を発する。

 

「これより、敵襲を受けた古代遺物管理部機動六課の救援に向かう」

 

その眼に果てしない意志を宿して──

 

「特務遊撃支援部隊《ロストウィング》、シルバーガスト小隊──状況開始っ!!」

 

「「「「「了解(おう)っ!!!」」」」」

 

任務開始を表明すると同時に地を蹴り、襲撃の現場に向けて雷鳴の如く疾走。 古風溢れる石造りの建物を踏み台に宙へと舞うと、胸に左手を押し当てて秘めたチカラを解放する。

 

「《零式凍結機関》解放──」

 

瞬間、この蒼い空に()()が顕現した……“翼を失った厄介者の戦士達”と“(そら)を翔ける叙情的な戦乙女達”の運命の邂逅の時は──近い。

 

 

 

 

 




グリフィス……安らかにヴァルハラへと溶けて眠れ……アーメン。

さて、遂に原作キャラの犠牲を出してしまいました。

戦いとは無慈悲で残酷なものです。 圧倒的に敵より戦力が上かご都合主義でもない限り味方側だけ犠牲を出さずに襲い来る敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく常勝展開など有り得ませんね。 嫌いではありませんけど……。

強大な敵と戦った結果何かを失い、傷ついて悲しみを踏み越えて、不屈の心で立ち上がり前に進む、再び立ち向かうを繰り返して強くなっていく……これが今作のスタンスになります。

さて、次回はいよいよ今作初バトル! まずは襲撃者達となのは達が戦り合います。 お楽しみに!!

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