THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡 作:蒼空の魔導書
SSSランク超の規格外な魔力を解放したファングとそれに匹敵する脅威を感じさせる朱い闘気を放つカッツェ。
Sランクオーバーを誇るエース達に底知れない恐怖心と危機感を覚えさせる二つの脅威が顕れた事により、この場は死地と化したのであった。
「アハハッ、行くよぉ、お姉さん達ぃ! そのキレイな顔とえっちぃ身体をグッチャグチャにしてあげるよぉぉおおっ!!」
押し潰されるような重圧が伸し掛かる中で、最初に動いたのはカッツェであった。 異次元の回転数で駆動する刃が周囲の空間を禍々しく歪める摩擦力を発するチェーンソーアサルトライフルを振り上げ無邪気な笑みと狂気的な喜悦を表に露わしてスターズとライトニングの両隊長に地が爆ぜるような踏み出しで向かって行く。
「やらせないっ!」
大気を貫く紅の矢となり音を置き去りにする勢いで地を駆け、狙った獲物を自らの爪牙で引き裂かんとする小さき狂獣、それを迎え撃ったのは近接戦を主体とするフェイトであった。 閃光の如くなのはの前に躍り出て彼女の壁となり、金色に光る魔力の長剣──バルディッシュのフルドライブ形態《ライオットブレード》を持ちて正面から来る紅の狂獣に斬り掛かりに行く。
「はああっ!」
巨大な質量を誇っていた《ザンバーフォーム》を圧縮させた高濃度の魔力によって切断力を向上させた金色の魔力刃が下方水平に薙ぎ払われ、音破衝を撒き散らしながら地を駆けて飛来する狂気の紅の矢の鏃を両断せんとするが……金色の魔力刃が小さな身体を斬り裂く寸前、その身体は
「っ!?」
結果、魔力刃は輪郭がブレる小さな身体を
「アハッ♪」
フェイトが金色の魔力刃を振り出した時、
幾つもの自身の残影を後から追従させ、跳び込むようにフェイトの頭上を跳び越え、彼女の首を後部から切り落とさんと宙より上下反転体勢でチェーンソーアサルトライフルを薙ぐ寸前のカッツェ……それを視ればフェイトの剣が命中しなかった理由を推測するのは簡単だ。 カッツェは幻影魔法も特殊な歩法も使用してはいなく、
──くっ、やっぱり速い!
「バルディッシュ!」
『イエッサー! ソニックムーブ!!』
ここで彼女が選択したのは高速移動による緊急回避であった。 《ディフェンサー》で受けようがなのはのディバインバスターを意図も容易く両断したこの凶刃の前にはチリ紙の如く簡単に彼女ごと引き裂かれてしまう事だろう。 故に躱すしかない……しかし──
「──ニィッ♪」
「っ!!?」
音速移動で凶刃から逃れた直後、一瞬にして振るわれたチェーンソーアサルトライフルの軌道が修正され、滑るように音速移動中のフェイトにその銃口の標準が合わせられた。
「がっ! ……う……そ……」
ダダンッ! という発砲音と銃口で弾けた二重の発光と同時に彼女の右太腿と左脇腹が弾丸に貫かれ、朱い鮮血が宙を舞った。 左脇腹から滲み出る血を左手で押さえ、激痛からくる苦悶と瞬時に自分の移動速度に銃口を合わせてきたカッツェの異常な動体視力と反射神経に驚愕を覚え、ソニックムーブが停止して信じられなさそうに顔を歪めた。
一瞬でフェイトの動きを封じたカッツェはその勢いのまま更に追撃。 狙いは──
「アクセルシューt──えっ!?」
「アッハハハハハハーーーッ!!」
「きゃぁぁあああーーーっ!!」
動きを止められたフェイトを援護しようと空で誘導魔力弾を二十発形成して撃ち放とうとする直前であったなのはである。 半月の軌跡を腕で描き、終点で彼女を捉えた銃口が火を噴き、
「なの……は……!?」
なのはを覆ってしまった厚い煙を目の当たりにしてフェイトは眼を震えさせ、表情を強張らせていた。 私の大切な親友はどうなった? 無事なのか、それともやられてしまったのか? ゴクリと唾を呑む……そして、約七秒の静寂の後──
「──レイジングハート──」
『ストライクフレーム!』
「A・C・Sドライバー!!」
『
孔を穿つように無傷のなのはが分厚い煙を突き破り、桜光の両翼を広げた光の
「なのはぁっ!」
「アハハハッ! この弾魔法で防げるモノじゃない筈なんだけど、上手く逸らされちゃったかな? アハハ、おもしろいよ、お姉ちゃん!!」
「はぁぁぁあああっ!!」
「アハハハハッ! それーーーーっ!!」
無邪気な哄笑と共に地を蹴ったカッツェのチェーンソーアサルトライフルの超速回転駆動刃となのはの《エクシードモードA・C・S》が空中で真っ向から衝突し、天を揺るがすような大爆発が周囲を覆い尽くす。
その爆音を皮切りに、化物的魔力量を秘める怪物と対峙する騎士達も死地に赴くべく動きだした。
『ヴィータ、ザフィーラ、リイン。 私が最初に出る、後に続いてくれ』
念話を使い、共に並ぶ騎士達に言を伝えたシグナムが自らの剣を手に、腕を鳴らしてにじり寄って来ているファングの前へと足を踏み出した。 心得たと頷いたヴィータ達を背に将は未知の難敵と約20mの距離を挟んで向かい合う。
「キヒ、何だ? 一人で俺の前に立つとは、中々勇ましい女じゃねぇか」
「ああ、ベルカの騎士は一対一が信条なのでな。 不満か?」
「いや、俺もタイマンは大好きだぜ。 特に強ぇ奴との真剣勝負は最高だなぁ」
ファングは対面に立つシグナムの全身を舐め回すように視ながらニヤついて言う。 一見それは彼女の扇情的で減り張りのある女体に欲情しているようにも見えるが、実際は筋肉の付き方や立ち振る舞い、チカラの入れ方などを観察して実力を量っている。 この男、根っからの
「で? テメェは強ぇんだろうな? そんな歴戦の騎士面してて弱かったら笑いモンだぜ!」
「ふっ、それは貴様自身の身をもって確かめてみるがいい」
シグナムは不敵に笑み、騎士らしく堂々と剣を構える。 歴戦の猛者であるが故になまじ相手の実力が測れる分、内心はこの化物級の相手が恐ろしくて仕方がない。 だが臆する訳にはいかない。 敵の言う戦の作法に則り、声を張り上げて彼女は名乗りを上げた!
「機動六課ライトニング分隊副隊長。 そして最後の夜天の主、八神はやてが守護騎士、ヴォルケンリッターの《烈火の将》、シグナムだ! この我が魂の魔剣《レヴァンティン》と共に私が相手になろう! 掛かって来るがいいっ!!」
「へっ、上等だ女。 俺を退屈させてくれるなよ……でないと──」
彼女の威勢に触発されたファングが尻を立てて上半身を地面スレスレに伏せる奇妙な体勢で突撃態勢を取り──
「──そのデカいパイオツ、揉み潰しちまうぜぇぇぇえええっ!!!」
……やっぱ欲情しているじゃないか。 そんなツッコミを入れたくなる下品な挑発の内容はさておき、ファングは目の前の女騎士のおっぱy……コホンッ! 首元を噛み千切るべく牙を剥いて突攻を仕掛けに出る。 それはフェイトすらも脱帽する程の速度が出ているが、驚くべくはそこではない。
──な……なんだ。 この奴の
獣が走るような、蛇が這うような。 そんな全身が地面に擦ってしまいそうなくらいの超前傾姿勢をもってジグザグに駆けて来る。 あまりにも奇怪な走り方にシグナムは一瞬怯みを見せてしまうが、歴戦の騎士の気概でコンマの内に緩んだ気を入れ直した。 だがどうする。
──見ふざけた体勢だが、
急所を曝して突っ込んで来るド阿呆のようにも見えるが、実力者にとってヒットポイントを一部に絞られるというのはやり難くて仕方がないものだ。 こっちはその一点しか狙うことができず、故に相手はこっちの攻撃の予測を狭く絞り込んで適切な対応を取る事が楽になるのだから。
──それに、やはり速すぎる! もう考えている暇はない!!
「レヴァンティン! カートリッジ、リロード!!」
『
「行くぞ! 《
カートリッジで瞬間的に魔力を高め、烈火の柴炎をレヴァンティンの刀身に纏わせて足下を薙ぎ払う。 地は抉れ爆ぜ、視界180°半径10mの地面が爆砕して小規模の壕と化し、その範囲に存在したモノは全て粉微塵となる事だろう……しかし、剣は地に届かなかった。
「何ぃっ!!?」
「ハァ? 何だこの温い火はよぉ。 まるで消えカス寸前の蝋燭じゃねぇか」
「莫迦な……!!」
その柴炎の刃は彼女の身体に沿って這い上がるように跳び掛かっているファングの片手によって唇同士が触れ合いそうな至近距離で掴み止められていたのだから、彼女の眼に驚愕の色が浮かぶのも当然と言えるであろう。
「カッ! つまんねぇ。 パイオツ揉む価値も無ぇから死ねよテメェ」
「っ!!」
逆にファングの眼には失望の色が浮かんでいた。 強大な魔力で超強化して赤黒く発光させた右腕を振り上げ、その手に嵌められたメリケンサック型デバイスの太い棘が殺意を帯びて光る。
「オラァァアアアーーーーッ!!!」
「ぐがぁぁあ”あ”あ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”あ”あ”あ”ーーーーーっ」
纏わり付く空気をブチ抜くゴウゥッ! という暴音と共に振り下ろされた太い拳が無抵抗なシグナムの左側頭部に突き刺さり、彼女の頭をそのまま地面に叩き付け、地割れが発生したかのような轟音が天に轟くと同時に地が大きく揺れた。
「シ、シグナムーーーーーーーーーッ!!?」
「くっ、なんという……っ!!」
「あわわっ、地震ですぅぅっ! 机の下に隠れるのですよぉぉ!!」
シグナムの後に続こうとしていたヴィータ達がその惨状を目の当たりにして叫び、激震する大地と飛び散って来る土礫に激しい動揺を露わにしている。 大量の粉塵と砂煙が巻き上がり、地雷が起動したかのような地の爆進が連鎖的に発生して扇状に広がって行くように地面が広範囲に渡って爆発するように崩壊していく光景は大地の怒りの様だ。
やがて揺れは止み、広がって行った地の爆進が途絶えると、巻き上がって辺りを覆っている砂煙が徐々に晴れて行く……爆心地点に造られていたのは巨大隕石が落ちたかのような大規模のクレーター、その中心には不愉快を露わにして口内の痰を吐き捨てているファングが立っていて、その足下付近には横倒しに倒れてピクリとも動かない烈火の将のやられ姿があった。
「そんな……莫迦な……将が……」
「シグナムさんっ!! ……きっと嘘ですよ、こんなのっ!!!」
下品な挑発を発してファングが突攻をかけてから僅か四秒弱、ヴォルケンリッターの将は何もできずに叩き潰されて、あっという間に敗北を喫したのであった……。
「へっ!
「て……てんめぇぇええええええーーーーーーーっ!!!」
「「ヴィータ(ちゃん)!?」」
ファングがシグナムを心底侮辱する悪態を吐いて興味を無くした玩具のように足下の彼女を蹴り飛ばしたのを目の当たりにし、元々沸点が低い鉄槌の騎士の怒りが臨界点を突破した。 【鉄の伯爵】の名を冠する戦槌型アームドデバイス《グラーフアイゼン》を怒りのままに振り上げて無謀にも単騎でクレーターの中心に立つファングへとスッ飛んで行く。 泣き喚く程の憤怒で我を忘れた無鉄砲で単調な突撃、格上相手にはあまりにも無謀な攻め方だ。 自分達の将を心身共に傷物にしたあのクソヤローを粉々になるまで叩き潰してやるという頭でいっぱいなのだろう。
「よくもシグナムを! テメェぶっ潰すっ!! くらぇぇええええええええーーーーーーっ!!!」
最大魔力強化と小さな全身を余す事なく使った横回転による全力全開の《テートリヒ・シュラーク》! 怒りの鉄槌を棒立ちのファングの側頭部に叩き込む!!
「なっ!?」
「ん? 今、なんかやったか、ガキ?」
結果、ヴィータが繰り出した渾身の一撃は狙ったところにクリティカルヒットしたのだが、なんとファングは棒立ちで頭に鉄槌をモロに受けたにも拘らず、体勢すら全く崩さずにケロっとしているではないか。 鉄槌が叩き付けられた頭は割れるどころか凹んですらいない全くの無傷。 寧ろ
「はぁぁ……おいガキ」
「っ!!」
くだらねぇと言うかのように溜息を吐いたファングは頭に押し付けられたグラーフアイゼンの鉄槌を左手で掴んだ。 ミシミシと人間では有り得ない驚異的な握力を加え、鉄槌に刻まれた亀裂を徐々に広げていく。
「俺さあ、十五年も待ったんだよ。 戦争が、闘争が、心を滾らせられる殺し合いがやっとできるって楽しみにしていたんだよ! 今まで暇してたんだ、長い事待つのって辛ぇよなぁ? もうシケた摸擬戦やザコ共の殲滅戦じゃ満足できねぇ!! ……だからさぁ、俺にここまで譲歩させて萎えるオチつけやがったらテメェら──」
亀裂の広がりは小さな手が握られた柄にまで及び、ファングはなんでもない事のように言った。
「──この世界、次元の海の座標から消しちまうぞ?」
「や……やめろぉっ!!」
グラーフアイゼンはもう崩壊寸前まで亀裂が広がってしまっていて、あと少しファングが握力を強めたらそれだけでデバイスの修復機能が意味を成さなくなるぐらい粉々に砕け散ってしまいそうであり、ヴィータは泣いて懇願するかのように叫んだその直後──
「させるものか! 《鋼の軛》っ!!」
「あぁん?」
「おまけですぅ! 捉えよ、《
ファングの足下にベルカ式の魔法陣が幾つも浮かび上がり、無数の魔力の鎖が飛び出して彼の身体を突き刺し拘束。 訝しんだファングが思わずグラーフアイゼンを手から解放した瞬間、全身に纏わり付いた大気中の水分が凍結して身体を拘束したまま氷の中に閉じ込める事に成功する。
「これは、ザフィーラとリインの魔法……」
「下がれ、ヴィータ! ぬぉぉオオオオッ!!」
そして狼が吼えるかのような雄叫びと共にヴィータの背後から駆けて来たのは先程から何所にも見掛けすらしなかった筋骨隆々たる体格を持つ謎の白髪の男性であった。 頭部に狼のような耳があり、上尻の辺りには同じく狼の尾が生えていて、それが疾走の向かい風でユラユラと棚引いている……そう、彼は人型形態に変身した──
「ザフィーラッ!?」
「砕けろぉぉぉおおおおおーーーーっ!!!」
咆哮を轟かせ、凍り付いたファングの前に力強く踏み込み、剛腕を振るってファングの頭蓋に渾身の鉄拳を叩き込み、粉々に粉砕する。 氷の破片が飛び散る瞬間、ザフィーラは
「……痒ぃ」
「──何っ!!?」
ザフィーラの渾身の鉄拳はファングの身体を砕けなかった。 リインの氷結魔法で生じさせた表面の氷こそは粉砕したものの、奴の身体の方は砕ける事なく殴り付けられた反動で地を転がっただけであり、絶命どころか僅かのダメージすらも無く立ち上がる。 身に付けていたサングラスと軍服の上着が粉砕された氷と共に消滅した為に良く鍛えられた上半身の筋肉が曝され、露わになった魔性の朱い瞳の三白眼で白けたようにザフィーラを睨みつけてきた。
「痒ぃ、痒ぃんだよ。 折角
「なん……だと……!!」
期待して損をしたと興醒めと蔑視の言葉を浴びせられて盾の守護獣は心外の憤りを露わにしながらも同時に瞳孔を丸くして動揺し、その魔性の朱い視線に射貫かれて全身に戦慄を走らせる。
だというのにこの者は身体を凍り漬かされた状態でそれを受けても尚、無傷でケロッと立ち上がって来たのだ。 これは最早尋常ではない、
「あ”あ”~、もういい! テメェも期待外れのザコだ──なァッ!!」
「なあっ!!?」
拳で掌を叩いた瞬間に向かい合う敵の足下に出現した異質な魔法陣を目の当たりしてザフィーラは自分の眼を疑い、その異質さと術式の構築に使用されている魔力の強大さに慄いて全身を硬直させてしまう。
──
その魔法陣の内に描かれている紋様はザフィーラの……否、
「あ……ああ……っ!!」
「目障りだ犬っコロ。 弱ぇ奴はとっとと──」
ファングの右掌の上に途轍もない量の魔力が収束し、形成されていく赤黒い光を放つ球形。 それは直径10mはある大きさまで膨張し、掌の方を軸に周囲の空気と砂・小石を巻き上げる勢いで高速回転をしている。 その圧倒的な質量は雷光を纏い、勢いよく右肩の上に振り被られる右掌に合わせて鳴動し──
「──くたばっちまいなァァッ!! 《ヴァロン・シュトライク》-----ッ!!!」
死刑宣告と共に投げ放たれた。 まるで球技の球を遠投するかのように勢いを付けて撃ち出されたそれは風圧で地を抉り、大気を掻き乱して竜巻を追従させながら未だに硬直から解かれない盾の守護獣に向かって一直線に空気を貫いて行く。
「ぬ……ぬぉぉぉおおおおおおーーーーっ!!!」
身体中を駆け巡る恐怖を夜天に仕える守護獣の矜持と意地で捻じ伏せ、喉を枯渇させる程の声量で咆哮を上げると共に全身全霊を懸けた障壁を展開。 なのはの防御結界魔法の強度を上回る機動六課最硬の防御力をもって迫り来る圧倒的な暴力の塊を阻み、塞き止めて霧散させようと試みるが──
「おおおおお──あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ーーーーっ!!!」
天にも轟く咆哮は一瞬にして断末魔の叫喚に変わる……僅かに拮抗させる事すらもできなかった。 赤黒い暴力の塊はその圧倒的な質量をもって障壁ごと盾の守護獣を飲み込み、そのまま地を抉り進んでから大爆発した。
「ザ、ザフィーラァァアアアアアーーーッ!!?」
その幼い身体など吹き飛ばしてしまいそうな猛烈な爆風に堪えながら鉄槌の騎士は絶叫する。 直径50mにも及び飲み込んだ森羅万象の全てを焼き尽くすドーム状の爆炎、大地を抉り空を激震させる集束魔法級の衝撃……人間個人が持つ魔力だけで引き出せるような規模と威力ではない。 夜天の主たるはやてならば長文の詠唱を要する広域殲滅魔法の行使で可能かもしれないが、今ファングがやったのは
「──」
「……はっ、身体だけは頑丈な犬っコロだぜ! 俺の《ヴァロン・シュトライク》をモロにくらったってぇのに御体を残らせるとはなァ!」
広範囲の地を蹂躙していた爆炎が止み、煙が晴れて表れた大きく抉れた地面の道の先に繋がる深いクレーターの中心。 そこに横倒れになって気を失っている重傷の青い狼は紛れもなくザフィーラの獣形態であった……。
「そ、そんな。 シャマルさんとシグナムさんに続いてザフィーラまで……嫌ァァアアアアアアアーーーーッ!!!」
祝福の風の子が次々に倒れていくヴォルケンリッター達を目の当たりにして現実が信じられずに泣き叫ぶ。 これで戦闘続行可能な騎士は鉄槌の騎士のみだ。 近辺では六課の分隊長二人がもう一人の脅威と死闘を繰り広げているが、そちらもかなり劣勢で相手に
「ザフィーラ……くっ! リインッ、来い、“ユニゾン”だ!!」
「は、はいですっ!!」
状況を打開すべくヴィータは
「「ユニゾン・インッ!!」」
寄った二人が重なるや、その言葉と同時に祝福の風の子が紅き鉄槌の騎士の中へと融けていく。 ゴシックロリータ調の紅いバリアジャケットは白く染まり、赤い髪は橙色へと変化。 多くの同志を殺害し、大切な主を悲しませ、遥か昔より苦楽を共に数多の戦場を翔け抜けてきた
「あの白髪野郎、絶対許さねぇ! よくもシグナムを! ザフィーラをっ!!」
『ヴィータちゃん……』
「……まだ行けるな、アイゼン?」
『もちろん!』
「よしっ! あの粋好かない白髪野郎をブッ潰すぞ、リインッ!!」
『はいです! 全力でサポートします!!』
「アイゼン! 《ラケーテンフォルム》!! だぁぁああああーーーっ!!!」
ハンマーヘッドをブースターとスパイクに変化させたグラーフアイゼンを振り上げ、今度こそ楽しませてくれるんだろうな? と表情をニヤつかせているファングに向かって気合いと共に飛び出して行く。 ブースターを吹かし、猛烈な推進力を伴い堂々と突撃だ!
「へっ! 来いよガキ共。 俺を退屈させんなよなァァーーーーーッ!!」
「うぉぉおおおおっ!! ブッ潰すっっ!!!」
激震する焼け野原、震撼に震える空、破壊の紫竜の爪牙の前に抵抗虚しく追い込まれていく機動六課の戦乙女達……果たして彼女達の運命は? そして彼女達の救援に向かう“翼を失った厄介者の戦士達”は間に合うのだろうか?
シグナム、ザフィーラ……ヤムチャしやがって。
不安かもしれないので言っておきますが二人はまだ生きています。 というかぶっちゃけ二人が魔導書のプログラム体じゃなければこれで死んでいました。(汗) 夜天の魔導書の再生機能に感謝ですね。 でも受けたダメージが大きすぎて瀕死状態の為、この戦闘では二人はこれで戦闘不能です。
そして次回こそはロストウィング達をなのは達と合流させたいところですね。 ああ~、どうやっても戦闘の文字数が長くなるぅぅ~!?(笑)