THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡   作:蒼空の魔導書

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オリ主達の参上演出にこだわり過ぎた……また文字数一万五千字超えてしまったではないか。(汗)

いい加減に読むのが疲れると思いますので二話に分割して投稿します。 今話でオリ主が率いる【シルバーガスト小隊】の仲間達が戦場に乱入。

次話でオリ主が動いてなのはと共に地上に降りて合流といった形ですね。



戦乙女達を救い上げる刹那の粉雪

「な……んだとっ!? 俺の《ダーインスレイヴ》が、()()()……!」

 

東の空に投げ飛ばした管理局のエース・オブ・エースを跡形も残さず仕留めんと自身が振るった極大魔力刃が丸ごと氷漬けになってしまった光景を目の当たりにしてファングは狂喜の絶頂(エクスタシー)を治め、その表情を信じられない程の衝撃を受けたような驚愕に変えていた。 彼の右腕から伸ばした闇の剣は空の蒼を先の先まで赤黒に塗り潰す程の圧倒的質量、()()E()X()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()この事態ははやて達機動六課は当然の事、彼等第二二六強襲中隊からして視ても尋常ではないようだ。

 

「今何所からか湧いて出て来やがったあの白髪のガキがコレをやったっつうのか? 有り得ねぇ、ダーインスレイヴは俺の()()()()での全力の魔法なんだぜ」

 

「うっひゃー、これはさすがに驚いたなぁ、ファングの()()()()()()()()()()()()()()()よ。 アハハハッ、凄いや!」

 

「ふふふ、ああそうだな。 予想した通りの上質な客が御到着したようだ」

 

「なのはちゃん、助かったんか? ……良かった。 良かったんやけど、何なんやあのキレイな子。 女の子? ……それにしてはなのはちゃんをお姫様抱っこしとる姿と雰囲気が様になっとる……男の子か? ……いや、それよりも彼(?)は何処の誰? いったい何者やねん?」

 

最悪の事態を好転させるかもしれない謎の援軍が現れた事で地に泣き崩れていたはやてですらも正気に返り、機動六課隊舎跡地に居る意識のある全員が氷の塔が伸びる東の空で密かに再会の嬉し涙を流すなのはを横抱きに抱えて悠然と()()()()()来客者の少年に視線を集めた。

 

一見華奢な身体つきに裏社会の組織の執行者を思わせるような前開きのロングコートを身に纏う謎の少年。 戦巫女を連想させるような勇ましい童顔、鮮やかなアイスブルーの双眸が射貫く者を凍らせるように側の空間を通過する氷の塔の根元で呆気に取られているファングを鋭い視線で見据えている。 その視線に宿る氷の刃のような威圧感は間違いなく戦場に立つ戦士のそれだ。 ファングとヴォルカーンが口端を吊り上げる。

 

「かはっ! こいつぁ面白ぇ、やっとまとに戦えそうな奴が出て来たみてぇだな、オイッ!」

 

「ふっ、せっかく【派手な花火】で誘い出したんだ、盛大に歓迎してやるとしようではないか」

 

強敵に餓えていたファングが歓喜を上げて右腕の表面を覆う氷の層を自由な左拳で叩き割って動きの制限を解放。 それを見計らうかのようにヴォルカーンが部下達に向けて指示を出す。

 

「貴様ら、戦場の観測はここまでだ。 待たせたな。 各狙撃兵隊と空襲兵隊は東の空に現れた敵援軍の小僧の迎撃を開始しろ。 それ以外の隊は敵の攻撃に備え、隊列を組んで身構えておけ! 油断はするなよ、()()はおそらく六課の小娘達とは一線を画す本物の戦士だろう。 各自気を引き締めて掛かれっ!!」

 

「「「「「「「了解しました(ヤヴォール)少佐殿(ヘア・マヨーア)!!」」」」」」」

 

「おおー、みんな気合い入っているねぇ。 アハハッ、これはボクも負けてられないや!」

 

隊長の命に従い第二二六強襲中隊の兵達が集まって空襲を想定した適切な陣形を組み、空戦魔導師達が飛行魔法を発動して東の空のなのはと氷眼の少年に向けて飛び出して行く。 ヴォルカーンの隣で愉快そうに笑むカッツェが彼等の戦場に懸ける熱量に負けじとチェーンソーライフルを再駆動させ、その超高速回転をもって朱い光流を纏う異次元の摩擦を持った凶刃が向けられたのは彼の側に瀕死の重傷で倒れ伏し意識を遠退かせたまま野晒しにしてある金色の執務官。

 

「っ!! 止めるんや! これ以上私の大切n「黙れ、耳障りだ無能が」──っ!? きゃぁぁあああああっ!!!

 

カッツェが死に掛けのフェイトに殺意を向けているのに気付いたはやては必死に懇願するかのように制止を訴える声を張り上げて抵抗しようとするものの、それは敵隊長の罵りと同時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()によって無情にも無力化されてしまう。 咄嗟に防御結界を展開して若干だが攻撃の軌道を逸らせたので直撃だけは免れたが、被爆によって襲い掛かる灼熱の爆風には防御結界が耐え切れず、彼女の身体は甲高い悲鳴と共に吹き飛ばされて焼け野原の上に転がった。

 

「な……()()()()()()()()()()……何……や……この魔法……っ!!?」

 

「アハハハッ♪ 金髪のお姉ちゃん、まだ殺しきっていないのにさっきは放置しちゃってごめんねー! お詫びにミンチになるくらいに細かく切り刻んであげるよぉぉおおおおっ!!!

 

「アカン、もう──止めてぇぇえええええええええーーーーーーーっ!!!」

 

背に羽織った白いマントを自身の鮮血で赤く染め上げて倒れ伏す金色の執務官の前に立ち、意識を遠退かせたまま死んだかのように動かない彼女の命を斬滅せんとカッツェが地獄から噴き出すような朱い光流を纏った凶刃を高々と振り上げる。 千切れるかもしれぬ程に目一杯に手を伸ばして上げたはやての悲鳴も先に起ころうとする悲劇の悲愴さに拍車を掛けてしまうだけで、無邪気な殺意は止まってくれない。

 

「アハハハハハッ!死んじゃえぇぇえええっ!!」

 

そして無情にも振り下ろされる朱い凶刃。 優しき《金色の閃光》フェイト・T・ハラオウンの命運もこれまでか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうはさせるかよっ!!」

 

刹那、ガギィ”ィ”ィ”ンッ!と奏でられた金属摩擦の狂詩曲(ラプソディー)が金色の閃光の輝きを間一髪で救いだした。 勇ましい少女の声と共に上から割って突き入って来た突撃特化の槍型デバイスによって振り下ろされたカッツェの凶刃はフェイトの身体を引き裂く事なく阻まれ、刃を削り取る摩擦の火花がカッツェと()()()()()()()()との間で激しく飛び散っている。 まるでぶつけ合う二人の視線を表すかのように。

 

「およ?」

 

「お楽しみのところ悪ぃが、ちょ~っと横槍を入れさせてもらったぜ!」

 

「アハハッ、なーんだまたお客さん? 今回の戦場は賑やかで楽しいよ!」

 

槍型デバイスの長い柄を手にその不敵な紅い視線を至近距離でカッツェの狂喜にぶつけているのは前開きにして着熟したジャケットに黒いアームガードとレギンスという所謂ボディコン調なバリアジャケットを身み纏った姉御気質を感じさせる二十歳前後くらいの女性であった。 羽を休める鳳凰を思わせるような奇抜な紅髪に覆われた頭部には二本の角を模ったヘッドギアを装着しており──

 

「そりゃどーも。 けどアタシ()が来たからにはコイツは殺らせねぇ──よっ!!」

 

「のぉっ!?」

 

彼女が振るい上げる無双の槍は辻風を巻き上げて朱い摩擦を纏う凶刃を弾き上げる。 なのはのディバインバスターをも切り裂いた摩擦を押し退ける一迅は尋常ではなく、強烈な突風に手を引かれるかのようにカッツェ自身も弾き上げられた得物の反動を受けて仰け反った。

 

そこへ更なる援軍が強襲する。

 

「チャンスだ、後輩ちゃん!

 

「これで決める!やぁぁああああーーーッ!!!」

 

様々なギミックを搭載したトンファー型デバイスを戦槌のように大きく振り上げ、カッツェの後ろ右斜め上から裂帛の気合いと共に流星の如く襲来してきたのは、誰もが真面目ながらも快活な第一印象を抱くであろう気が強そうな可憐な美少女だ。 白百合の花弁と同じ色の髪を赤いヘアピンでセットしたショートポニーテールを突風に棚引かせ、落下の勢いをつけて仰け反り体勢のカッツェの頭上に振り上げたトンファーを思い切り叩き付ける──

 

「おおっと、あぶない!」

 

が、その戦槌のような強烈な一撃がカッツェの頭を捉える事なく地面に追突して大爆発が起こったかのようにその地面が爆砕され、六課の跡地にまたしても巨大なクレーターを形成しただけの結果に終わる。 何故ならカッツェはあの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()退()()()不意打ちを回避したからだ。

 

「くうぅぅ、おっしいな、もう少し勢いが乗っかってさえいればぁ!」

 

左手に持ったクレーターの中心に押し付けている状態のトンファーを地面から上げ、その場にゆらりと立ち上がりながら白百合の少女は心底悔しそうに悪態を吐いている。 確かにカッツェが今の一撃を回避できたのは紙一重の差だったようであり、白百合の少女が立ち上がってキッ! と睨みつけた先で余裕の笑みを崩す気配のないカッツェの額からはほんの少しの冷や汗が流れ出ているのが見えた。

 

「アハハハッ、やるねぇ、体勢を崩した時に仕掛ける不意打ちのタイミングはほぼ完璧だったし、相手を一発で仕留めきる攻撃力も十分にある。 実際に今のはボクも少しヒヤっとしたよ。 ただボクの機転と体捌きの方が上だったみたいだけど♪」

 

「ムッ! なんか生意気ね。 年上のお姉さんには敬語使いなさい、そういうのは小さい内に直さないとロクな大人にならないわよ」

 

「いーもん! ボクは表面よりも実力(なかみ)で勝負する大人になるからさ♪ それよりもさぁ、不意打ちのタイミングはよかったと思うけれど、味方や重傷の救出対象が近くに居る状況で今の火力を叩き付けたのはちょっと迂闊だったんじゃないのー?」

 

「はい?」

 

「だって鳥みたいなお姉ちゃんも死にかけてた金髪のお姉ちゃんも君の不意打ちの衝撃波でみ~んな吹き飛ばされちゃったみたいだしさ」

 

「ああ~、その事なら心配は無用よ。 ()()()()だし」

 

「え?」

 

指摘に対してそれこそが狙い通りだと満面の作り笑いで返す白百合の少女。 そのざっくばらんな返答を聞いてカッツェは一瞬呆けて白百合の少女が立つクレーターの外れの片隅に視線を移すと、大きめの石炭と化している隊舎の残骸の陰で先程横槍を入れた紅髪の少女が未だに意識が戻らないフェイトを腕に抱えて彼女を呼び覚まそうと必死に呼び掛けているのが視界に入った。

 

「おい、死ぬな! 眼を開けてくれ! 生きるのを諦めるなっ!!」

 

「う……ん……?」

 

生きてくれという誠実な想いが届いたのかフェイトは意識を取り戻し、寝起きのように瞼を半開きに開けて眼前で知らない顔が心配そうに自分の顔を覗き込んでいる事に気付いたようだ。 その知らない顔である紅髪の少女が心から安堵した笑みを浮かべる。

 

「あぁ、よかった。 まだ生きているみたいだな」

 

「……君……誰?」

 

「……」

 

意識を取り戻したばかりでまだ朧げな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()紅髪の少女。 助けたのに不審そうに誰だと言われたのが若干ショックだったのだろうか? 今はよくわからないがとにかくフェイトの命がまだ現世に繋ぎ止められていた事を喜ぶべきだろう。 だが彼女が瀕死の重傷を負っていて今も危険な状態である事には変わりはない。 一刻も早く応急手当をする事が先決だ。

 

「ほら、これを飲めよ。 ウチの隊の魔双剣士秘伝の活力剤だ」

 

「ん……!?」

 

「つまりああいう事♪」

 

「ふーん、成程ね。 ボクの体勢を崩した時にはもうあのお姉ちゃんは金髪のお姉ちゃんを避難させるように動いていたんだ。 アハハッ、これは参ったなぁ、一本取られちゃったよ♪」

 

朧げに疑心の眼を向けてくるフェイトの口内に無理矢理謎の丸薬を放り込み、何処からか取り出したペットボトル(10ℓ)の口部を彼女の口に銜えさせて中の水で丸薬を流し込んでいる紅髪の少女を得意気に立てた親指で指してフフン♪ とドヤ顔を向けてくる白百合の少女に対し、カッツェは納得の笑みを浮かべて素直に彼女達を称賛していたが、楽し気に笑いながら小さな後頭部を片手で掻く彼のその仕草からはまだまだ余裕である事実が窺える。 現に今の攻防で彼には僅かなダメージすらも与えられていないのだからそれも当然だろう。 まだまだ彼の純粋な狂喜を崩すには足りないようだ。

 

……その一方で──

 

「かはっ、上等だ! あのガキ、邪魔してくれた礼はキッチリと──!?」

 

エース・オブ・エースにとどめを刺しに放った必殺の魔法を簡単に無力化してくれた氷眼の少年を標的の獲物に定め、次々と東の空へと飛翔して行く第二二六強襲中隊の空襲隊兵達を全員追い越して誰よりも速く獲物に自身の牙を突き立ててやるとファングは飛行魔法を発動しようとするが、その瞬間に何者かが放った一発の魔弾がファングの側頭部に直撃する。

 

「通りすがりのイケメン参上ってな」

 

「おーおー、クリーンヒット、さっすがー! そんなスパイアクション映画の主人公みたいなデタラメな撃ち方でよく当てられるよなぁ」

 

「ハッ、当然だろ。 オレ主人公だし」

 

魔弾を放った犯人はその頭上30m付近に張り巡らせている光の鎖の上に悠然と立ち、誰が見ても不快になるであろう不遜な笑みを浮かべていた。 敵に魔弾が直撃した事で連鎖的に起きた爆発の影響で下方に立ち込めた爆煙を実に爽快そうに見下ろして、手に持つ銃型デバイスの砲口を口許に上げてそこから立ち昇る硝煙をフーッと吹き得意気に恰好を付ける様は如何にも気取った御調子者だ。 頭髪は金色に染めていて、前開きにして着熟している赤い上着のバリアジャケットは右側の袖だけがバッサリと切り取られており、そこに通されている剥き出しの右腕には刺青が彫ってある。 その青年の風情は反社会の思想そのものを体現しているかのように破天荒。

 

「でもさぁ。 君、今の魔力弾、()()()()()()()()()()()()()でしょ? 大丈夫なの、()()()()だけど仮にも僕等って管理局所属の部隊だよね?」

 

「アホか。 あの半裸の超ド級変態野郎はこんなもんで殺せるタマじゃねーよ。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 最終的に結果が上々なら、何をどうしようが問題無ぇだろ」

 

「ん~、そんなものかなぁ……」

 

その型破りな銃技に側の空間を飛行魔法で浮遊して彼と共に空に並ぶ空戦魔導師の小柄の少年もまた、魔弾の着弾地点付近を覆い隠した爆煙を額に右手を当てて眺めてはしゃぐ子供のように感心を露わにしていた。 その両手に握られているデバイスはエメラルドに光るルーン文字が刻まれた二振りの剣。 それとお揃いの色をした頭髪にはなんとも可愛らしい癖毛が二ヶ所にピョンと撥ねていて、それが持主のはしゃぎ具合を表しているかようにピョコピョコと謎の動きを見せる様はまるで小犬の耳の様で、その童顔と相俟うと彼が男子であるという現実を疑いたくなるくらいに愛らしい。 しかし、少年が纏う雰囲気はその愛らしさに反して非情に研ぎ澄まされており、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 敵意を持って彼の間合いに入れば刹那の一瞬の内にその双剣によって細切れにされてしまう事だろう。

 

「「「おのれぇ、またしても新手かぁぁああああーーーっ!」」」

 

「「「やっろー、とっとと墜ちろぉぉぉおおーーーっ!!」」」

 

「「「「ザッケンナコラーーーーッ!!!」」」」

 

辺りに爆煙が充満するとそれに紛れて機転を利かせた敵兵達が調子扱いたガキ共に思い知らせてやると高見で見下ろす二人を包囲挟撃するように奇襲を掛けて来た。 数は十……いずれも空戦魔導師で銃剣やアサルトライフル、軍刀などを武装してフェイトの最高飛行速度にも匹敵する亜音速が出ているにも係わらず非情に研鑽された統制をもって少年二人に襲い掛かって行っている様子から察するに、彼等はおそらく()()()()()()()()()()()()()()()()S()()()()()()()()()()()()()事が窺える。 東の空に飛び立とうとする途中の不測の事態に機転を利かせて迎撃ターゲットを変更し即座に連携を組みつつ対応するという兵隊としての練度の高さも素晴らしいが──

 

「──……ニヤァ♪」

 

彼等が二人の制空圏を侵した刹那、小柄の少年の口端が吊り上がると同時に彼の双剣がエメラルドに閃く──

 

「「「「「「──おおぉぉ……は?」」」」」」

 

「「「「スッゾコr──グワーーーッ!?」」」」

 

そのあまりの剣速の疾さで柄より先に存在する筈の剣身が消失したかのような錯覚が起こり、二閃のエメラルドが空に走った瞬間時間が停止したかのような錯覚を覚え、一拍の間を置いて全方位から迫って来ていた敵兵達全員が四肢を切断されて地に墜ちて行った。 瞬殺だ。

 

「《アイゼナッハ流》二閃十殺! なーんてね♪ えへっ!」

 

「テメーの魔双剣術も大概デタラメじゃねーか! それに非殺傷云々とかテメー人の事言えた義理かよオイ?」

 

手足を失った敵兵達は落ちた下方で身動きできずに幻肢痛に喘ぎ地をのたうち回っている。 阿鼻叫喚の酷い有り様だ。 破天荒少年が揶揄うようにケラケラと笑いながら指したその様子を眺めてあの惨状を作りだした張本人は何故だか恍惚とした表情を浮かべた。

 

「えへへ~、今日も僕の《クサナギ》は絶好調だねぇ。 あんなにキレイに手足をちょんぱできてるなんて相変わらずの良い切れ味ぃ。 えへへ~、良い気分~、もっと斬りたいなぁ~♥」

 

双剣型デバイス《クサナギ》を持った両手で自分の両頬を挟み込み、クネクネと奇妙な仕草をして敵を斬った事への悦びを表す小柄の少年。 双剣で斬った敵が苦しむ姿を目の当たりにして悦ぶとはこの少年魔性の異常者だ。 愛らしい童顔のおかげで可愛らしくも見えるがそれが余計に悍ましく感じさせている。 これにはこの破天荒少年もさすがに表情を呆れ半分で引き攣らせていた。

 

「うわぁ、こいつホント変態だわ。 はは、マジ面白れぇ奴。 斬るのってそんなに楽しいのかよ?」

 

「うん、楽しいよ♪ 斬った痕から血がドバーって噴き出るとキレイだしー♪」

 

「何だよソレ。 お前マジ管理局員向いてねーな!」

 

「んん~、君も人の事言えないと思うけれど?」

 

「ハッ、そりゃあ違いねぇ。 ところでよ、オレって魚座じゃん?」

 

「ん? どうしたのいきなり?」

 

「今月の星占いにあったんだけどよ、どーも魚座は山羊座と相性が良いらしいんだわ。 お前何座だ?」

 

()()()()! なんちゃって♪」

 

「オイオイ、何ブリザード級のギャクかましてくれちゃってんの!? ただでさe──「オイ、ガキ共」──あん?」

 

空中で二人がくだらない雑談をしている内に何時の間にやら辺りを覆い尽くしていた爆煙は収まって消失していたようだ。 唐突に不機嫌な声に呼び掛けられた為に雑談を止め、振り向いて見下ろしてみると其処には無傷のファング・イスカンブルグが空でふざけて合っている二人を若干の苛立ちの形相で睨みつけながら拳をバキボキと鳴らしている姿があった。

 

「テメェ等何さっきから人をシカトしてどうでもいい事をペラ回してやがる? いきなり出てきて気持ちよくラリってんじゃねぇぞ小僧共が」

 

優しく語りかけるような声音だが憤る朱い眼光は見逃してくれそうもない。 二人は完全に殺意の牙にロックオンされてしまったようだ。

 

「おー! 本当に生きてた。 余計な心配しちゃったね」

 

「だから言っただろ? この白髪野郎は超ド級の変態野郎だろうし、皮までカルシウムでできているんだろーよ」

 

「え、そうなの? この人小魚とか好きなのかな」

 

だがその怪物が向けて来る威圧を浴びても尚、二人が調子を崩す様子はこれっぽっちも窺えない。 恐怖を感じる為の神経が壊れているのではないだろうか? その舐め腐ったような口調はファングの怒りのボルテージを静かに上昇させる。

 

「はは、どうやらテメェ等、余程死にてぇらしいな?」

 

「うるせえ、黙れ」

 

同時に発砲音が鳴り響く。 破天荒少年がファングからの尋常じゃない殺気を向けられても全く躊躇もせずに銃型デバイスの砲口を奴に向けて反抗の魔弾を放ったのだ。 今度は人体の急所である胸を狙って撃ったようだが、それはターゲットの腕に払われて南の海の中へとダイブし巨大な水柱を建造した。

 

「こっちが話している最中だろうが、口挿むなよ白髪野郎」

 

「まったく非常識だよねー、もっとカルシウム摂取した方がいいんじゃない?」

 

「……キヒッ!」

 

──上等だ、身の程知らずのクソガキ共が。 誰に舐めた口叩きやがったのか今からその身に直接教え込んでやらァ。

 

とファングが二人の惨殺を心の中で確定して殺意の牙を口から覗かせると──

 

「舐めるな──戯けがっ!!

 

突如として彼等が睨み合う場所の近場で壮烈な爆音が轟くと同時に巨大な炎柱が爆発するように立ち昇った。

 

そこに炎柱の周囲を旋回し離れ、地に降り立つ()()()()()在り。 圧倒的熱量を内包する炎に焼かれ、全身に火傷を負いつつも白銀の電光を纏いて白銀の美しい騎士剣型デバイスをその手に構え、劫炎荒れ狂わす敵将に毅然と向き合う気高き騎士は“白雷の貴公子”を連想するようなプラチナブロンドの髪がよく似合う美青年。

 

「くっ、()()()()()()か……!」

 

火傷によるひり付いた痛みに秀麗な顔を歪ませるその“白雷の騎士”の透き通るような碧眼に映る包帯で素顔が隠された敵将は次元王軍ラグナガンド第ニニ六強襲中隊隊長ヴォルカーン・フォン・グラナート。

 

「青二才が、そう容易にこの私を()()()()()と思ったか?」

 

宙にうねる圧倒的熱量を内包した炎渦を天に巻き上げ、地獄の鬼すらも威圧する笑みで口に銜えたビーフジャーキーを噛み砕く様はまさに炎の魔人。

 

「“あの白髪の小僧がイスカンブルグの魔力刃を氷らせてエースの小娘を救う”という派手なパフォーマンスを上空という全体に目が行き届くような場で披露する事で我らの意識をそっちに向けさせ、その隙に貴様等別動隊が我らに存在を覚られぬように気配を消しつつ迅速に我らの死角を襲撃……まあ悪くはないが、その低度の策では私の目を欺くにはまるで足りんよ」

 

まるで教え子の不足を指摘する教官のような口振りは余裕の表れだ。 管理局側から視ればカッツェとファングも最強の切り札(ジョーカー)級の戦力だろうが、彼等の隊長はまた更に別次元の格を有しているという事を嫌と言う程痛感させられる。

 

それ故に彼の死角を狙った白雷の騎士の騙し打ちは全く功を成さなかった……と言いたいところだが、当のヴォルカーンは蚊に刺されたかのように軽く自身の右上腕部分を左手で摩り出す。 その掌には少量ではあるが血が付着していた。

 

「だがその速さだけは評価してやろう。 まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とはな、誇っていいぞ。 まだまだ未熟さが目立つが思った通りエースの小娘共よりは余程見所はあるようだ。 面白い」

 

「まるで意に介していないように称賛されても嬉しくありませんよ。 寧ろその余裕が腹立たしく思います、侮られているようで」

 

「それはすまなかったな。 どうも管理局に所属する者を称賛する事など今までに一度たりともなかった為かこういうのには不慣れでな、なにせ今日まで管理局に所属する魔導師や騎士など取るに足らない雑魚しか居ないだろうという認識を抱いていたのだ。 完全に侮っていたわけではないが現実的に彼我の戦力差があるのだから仕方がなかろう、許せよ」

 

まるで悪気が窺えない慇懃無礼な態度で詫びるヴォルカーン。 その冷淡で不遜な物言いに対し、飛び出て来た文句は彼と対峙している白雷の騎士の声ではなく──

 

『ちょっとちょっと! 先程から黙って聞いていれば随分と上から目線で言ってくれるじゃないですか! 貴方、ひょっとしてその包帯の下に隠している素顔は鉄面皮で出来ているんじゃないですか!?』

 

どこか()()()()()()()若い女性の声であった。 その出所は今も尚白雷の騎士がヴォルカーンに切っ先を向けている白銀の騎士剣型デバイス──

 

「《ベアトリス》、頼むから急に大声を上げないでくれ、心臓に悪い」

 

『何を泣き言をほざいているんですか? 不甲斐無いマイスターですね! 君がそんな調子だからあんな“燃やし尽くせぇぇえええっ!!”が似合いそうな鋼鉄鬼軍曹に馬鹿にされるんですよ!』

 

言った通り、急に大声を上げて慇懃無礼な態度を崩さない敵に物申した自身が持つ()()()()()A()I()に指摘を入れる白雷の騎士であったが、逆にそれが“彼女”の癪に障ったようであり、自分が構えているデバイスに厳しくガミガミ指摘を返されるというシュールなやり取りが繰り広げられている……どうやらこの騎士剣型デバイスの《ベアトリス》はなのはのレイジングハートやフェイトのバルディッシュと同じ、AI人格が魔法の補助を手助けしてくれる【インテリジェントデバイス】のようだ。

 

「……」

 

『何ですかその畏まっただんまりな態度は? 乙女ですか? それとも小犬ですか? ライオンを前にしたチワワですかそうですか! 男の癖に情けないですねぇ、シャキっとして下さい! そんなに不安がらなくても大丈夫ですよ。 君は騎士の矜持に従って毅然と私を振るえばそれでいいんです! 何故なら君にはこの【ベルカの赤い雨】の二つ名を持つこの私が──』

 

持ち主の意見を跳ね除けて緊張した空気を台無しにする猛烈なマシンガントークを繰り出し続ける自分の剣に無言の戸惑いを向ける白雷の騎士。 平静を装ってはいるものの、対峙している敵にすらも憐れみの目をされたので勘弁してくれと視線を宙に泳がせてしまっている……そんな何とも言えないやり取りを遠見感覚で聴いていた破天荒少年と小柄の少年はファングと一触即発の視線をぶつけ合いながらも愉快そうにニヤついていた。

 

「ぷぷっ、モルドの奴アホだろ? 自分のデバイスに説教くらうとかさ、マジありえねーし」

 

「キャハハハ、相変わらず面白いコンビだよねー、モルドとベアトリスはさ♪」

 

「テメェらマジでいい加減にしやがれ。 そんなに死に急ぎたいのなら望み通りに二人纏めて速攻でブッ殺してやるよォッ!!」

 

そして高見の空から見下ろしながらの愉悦は下から見上げる者の眼には凄まじく愚弄しているようにしか映らない。 従ってファングは我慢の限界を超えて空から見下してふざけきっている二人の少年をこの牙で仕留め殺して黙らせてやると叫びつつ、人間離れした跳躍で上空へと跳んだ。 放物線を描く軌道で上から二人に飛び掛かる鷹の如く降撃するつもりなのだろう。 二人はその空を仰ぎ見やる。

 

「ははっ、半裸の野郎が上からイケメンと合法ショタにダイブして来るとか一部の腐ったオネーチャン達が湧いてきそうなシチュエーションっぽくてちょっときめぇと思わね?」

 

「う~ん、僕そういうのよくわかんないや☆ それより知ってる?」

 

「あん?」

 

ファングが殺意を纏い上空からこっちに向かって落下して来ているにも拘らず、小柄の少年はニコニコと楽しそうに東の空に視線を滑らせた。 その視線の先には地上より武装して向かって来る敵空襲兵隊に対応すべく動き始めだした自分達の隊長とその腕に抱えられている精神沸騰状態なエース・オブ・エースが居る。

 

「君さっき星占いの話していたよね、山羊座と魚座の相性はバツグンだとか何とか」

 

「ああ、そういやそんな事言ったな。 それがどうした?」

 

「【ヒュッ君】って山羊座だったよね~、誕生日は12月25日だって本人が言ってたし♪」

 

「マジで!? 何でお前だけアイツからアイツの誕生日教えられてんだよ?」

 

「え? お前だけって、ヒュッ君がロストウィングに入った時に自己紹介で言っていたじゃん。 君が聞き流して忘れてるだけなんじゃないの~?」

 

「あー、そう言われてみればそうだった気がしないでもねーなぁ……で?」

 

殺戮の赤黒の流星となって落ちて来るファングがもうすぐ真上に迫って来ているというのに雑談を止めないこの二人の肝っ玉の固さには呆れてものも言えない……破天荒少年が雑談の続きを促すと小柄の少年は落下して来る赤黒の流星を見上げつつ双剣を八相に構えて満面の笑みを浮かべ、こう言い残して流星を墜としに翔け出して行く。

 

「あのエース・オブ・エースのお姉さんがさ、もし魚座だったらロマンチックだと思わない?」

 

「……アホらし」

 

くだらなそうに鼻で笑う破天荒少年だったが、その眼は楽しい玩具を見つけた悪餓鬼のように笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ん~、なかなか頼もしい仲間達……かもしれない。(どうなんだよ!)

実は彼等の中に他作品キャラが一人混ざっていたりもするけれど(Diesキャラはいない、限りなく似せたオリキャラやインテリジェントデバイスのAI人格だったりはある)、まだ名は明かしません、他のシルバーガスト小隊員も同様です(デバイスAIのベア子は例外)。 明かす時はなのは達機動六課がロストウィングに引き取られるあたりかなぁ。

あ、他作品に登場する武術剣術を使用するキャラもいますが、【他作品要素・ネタあり】のタグのままで大丈夫ですかな? 【他作品の技あり】も入れるべきかも。

まえがきで言った通り次話はもう執筆済みなので、明日バイトを終えて自宅に帰ったらそちらも投稿するつもりです。

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