艦隊これくしょん、比叡の短編です。

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【朗報】メシマズ嫁がかわいすぎて生きるのが楽しい

1 横須賀のシューマッハ

しかも少しずつだけど上達していってる模様

段々美味しくなっていくご飯に嫁の健気な努力を感じて生きるの楽しすぎワロタwwwwwwwwww

 

2 以下、名無しに代わりまして鎮守府の提督がお送りします

なるべく苦しんでくたばってくれよなー頼むよー(嫉妬)

 

3 以下、名無しに代わりまして鎮守府の提督がお送りします

そうだよ(便乗)

嫁のかわいい画像クレメンス

 

4 通りすがりの紅茶好き

姉を差し置いて提督と結婚してはいけない(戒め)

やっぱり提督にはわた金剛さんが付いていないとダメみたいデース><

 

5 眼帯が似合う恐い軽巡

金カス語尾でバレてるぞ定期

もうそろそろ納得して大人しく妹を見守ってやれよ……

 

6 通りすがりの紅茶好き

>>5 てめえ演習終わったら表出ろや

 

7 榛名

お、お姉様!?

どうか落ち着いてください!言葉遣いが怖いです!

 

8 食堂のお姉さん

>>7 榛名さん、お気持ちは分かりますが名前欄に馬鹿正直に名前を書いてはいけませんよ

 

 

 

 

 

 

 

 いやあ、嫁自慢にスレを建てると怨恨の声を沢山浴びる事が出来て実に気分が良い。

ネットという広大な海の中でも、この掲示板は謂わば魔境だ。

最近こそそうでもないらしいが、昔は誰からも迫害され、顔も名前も知れないネットの向こうの人間にしか相手をしてもらえないはみ出し者の集まりであった掃き溜めは、今でもその名残が色濃く残されている。

魑魅魍魎の跋扈するこの場所で幸福自慢をする僕に集まる多くの怨嗟の声。

平日にも関わらずやけにレスポンスの早いそれを一件一件ゆっくりと確かめていると、何人かうちの鎮守府の艦娘みたいなのも居るみたいだが、まさかそんな訳ないだろう。

そんなわけ……ない筈。

ないと願いたい。

違ってくださいお願いします。

そんな調子でスクロールを進めているとトントントンっと小気味よく立て続けに三回、執務室のドアがノックされた。

焦らず掲示板の開かれているウィンドウを消去し、その下にずっと開きっぱなしになっている表計算ソフトをこれ見よがしに表に出して、カモフラージュで近くに何枚か置いておいた書類を手に取って愛しい来訪者に声を挙げる。

 

「もう結婚してるんだしノックは要らないのに」

 

「親しき仲にも礼節は必要だと、榛名から厳しく言われているのでっ。失礼します!」

 

 形式的なものだと告げて部屋へ入る、金剛型二番艦。

肩を大きく露出した煽情的な巫女服に金のヘアバンド。

格子状の模様が入った緑のミニ丈の袴に、快活な印象を与える外ハネの強いショートの髪型。

彼女こそが最愛の嫁。

理屈よりも感性で動く、喜怒哀楽を隠すのが苦手な素直犬娘だ。

 

「入っておいで、比叡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 所でいつの世も書類仕事という雑務は本当につまらないもので、また時間も掛かる。

こんな紙切れ一つで陸海空の自衛隊が右往左往しかねない、国の命運の掛かった最重要国家機密。

それ故、艦娘に任せられる書類と任せられない書類に分けられる。

単純にその施設の責任者が意思を持って捺印せねばならない類の物を艦娘に見せても困惑してしまう。

大本営的には悪い艦娘に悪用されても困るから、という理由もあるらしいが、当人たる提督達の集まる会合ではもっぱら笑い話の種として使われる。

当事者である僕等提督が一番、艦娘に悪人は居ない事を理解しているから。

 

 閑話休題。

ともかく、そんな理由でどこの鎮守府でも艦娘はあくまでも執務の補佐をするのが一般的だ。

うちの鎮守府では付き合い始めてから比叡にだけ任せている。

結婚するまでは全部一人でやっていたが。

大淀には随分と厳しい目をされた。

 

 艦娘は危険な戦地に赴く。僕等提督はそれを安全圏から指揮したり内地でこうした雑務を行う。

どんな小規模な出撃でもそれが軍事行動に当たる限り書類仕事は付きまとう。

これはくだらないこだわりだが、僕はなるべく艦娘に書類仕事を意識させないようにしているつもりだ。

彼女等が出撃やら遠征から帰ってきてこの部屋に入る時は書類は出来る限り隠し、「仕事をサボっている提督」を演じている。

艦娘は海上で敵を撃滅するのが仕事。

命を賭して僕等の平和を守ってくれている艦娘達にこんなくだらない仕事は絶対にさせられないし、気も遣って欲しくないのだ。

 

「比叡……比叡……?」

 

「……ハッ!す、すいません指令、なんだか指令のお仕事中のお顔を見ていると心がキューっと……」

 

 とはいえ流石に彼女ができたらそうもいかないので、比叡にだけは付き合い始めの時に全部バラした。

めっちゃ怒られた後に、「じゃあ、指令と2人だけの秘密ですね♪」と手伝いを名乗り出てくれた。

天使かよ。

普段比叡に任せているのは簡単な書類のカテゴライズ分けくらい。

これでもあるのとないのじゃ作業効率が段違いだったりする。

それ自体はそう時間を掛けず終わる作業なので他にも比叡にはお茶を淹れてくれたり肩を揉んでくれたり散歩に連れ出してくれたりする。

これだけ聞くと僕まるで老人だな。

 

 「おいで、比叡」

 

比叡がまた、いつもの顔をしているのを確認して両手を広げる。

比叡がボーっと僕の顔をボンヤリ見つめてて、話し掛けてもすぐ反応が返ってこない時は、その合図。

少しの逡巡の後、比叡はゆっくり歩いてきて僕との距離を詰め、また慎重に体重を預けてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 いつだったか、僕と比叡が付き合い始めの頃に比叡が執務で小さな失敗をしてしまった事があった。

なまじ執務を教えてしまうと責任の所在、なんて考えなくてもいいような事が見えてくるもので、比叡はこの世の終わりみたいな顔を浮かべた後で、散々泣き腫らして赤くなった眼で僕に謝っていた。

 

指令は悪くないのに、私のせいで。ごめんなさい。ごめんなさい。

 

 どう考えても、悪かったのは僕だ。

比叡を完全に信用してしまって、自分で一切確認する事なく宛先を間違えてしまった。

まあ別に些事といっていい事で、取引先にも何を咎められる事もなかったけど。

 

 壊れてしまったように謝罪を繰り返す比叡を非難する事なんて僕にはとても出来なくて、咄嗟に両手を広げて抱き締めた。

まだ付き合い始めだった僕と比叡はなんだか変に恥ずかしくて、付き合う前よりかえって距離があったりなんかして、だから拒否される事も覚悟していた。

だってそうだろう、自分との過失を攻める立場の人間に抱擁されてもどんな顔していいか分からない。

幸い比叡の姉妹達も全員、この鎮守府に在籍している。

姉妹に勝る他人なんているわけはなくて、こんな僕が抱き締めるよりも金剛や榛名が比叡を抱き締めてあげた方が絶対に安心出来る。

 

「よしよし……大丈夫だよ比叡。君はなんにも悪くないんだ、ごめんね」

 

 でも、それでもこうしたかったんだ。

一応想いが通じ合って晴れて彼氏になれたわけだし、辛そうな彼女を放っておけなくてハグしたというだけの話。

それで嫌がられても、今後嫌われてしまっても、比叡に捨てられても文句なんか言えっこなくて、音に聞くラブをプラスするゲームの満点カレシには程遠いなと腕の力を弱めて離れようとすると、思わぬ力が掛かった。

比叡が繋ぎ止めるかのように僕の背中に腕を回して、体重を預けてきたのだ。

 

「し、指令ぃ……うぅ、えぐっ……」

 

そのまま比叡は、僕の腕の中でしばらく声を上げて泣いていた。

僕は彼女のサラサラな髪をそっと壊れ物に触るよう優しく撫でてあげる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、結婚した今でも比叡は定期的にハグを求めるようになった。

最初こそ距離の近さと嫌でも女性を感じさせる身体の柔らかさ、いつでも香る花のような陽だまりの匂いに戸惑ったが、断ろうとすると向けられる雨に濡れている仔犬みたいな瞳には適う筈もなく。

僕が安易にハグした事で始まったわけだし、と責任感さえ持って緊張感を伴ったその抱擁は、なんせ毎日の事になるとすっかり慣れてしまった。

習慣とは恐ろしいもので、いつもは比叡に強請られてするばかりか、いつしか僕の方から両腕を広げて比叡においでと求める事が当たり前に。

その前に比叡の方から合図があるんだけど。

 

比叡の匂いは、この世の何よりも僕に安心をもたらしてくれる。

幸せの象徴みたいなそれは、優しく甘く、ゆっくり僕を溶かしていく。

今だって、ろくに仕事も終わってないのに、また比叡にやる気を溶かされてる。

枝毛一つない外ハネ気味な短髪を、流れに沿ってゆっくり、優しく撫でていく。

上質な絹でも再現出来ない手触りは、また僕を駄目にする。

 

「ひえぇえ~」

 

その声は喜んでくれているのだろうか。そう思う事にしよう。

 

「比叡。僕はね、君の髪を撫でている時に」

 

「……♪」

 

「ああ、いつ死んでも良いなって思いながら撫でるんだ」

 

「……!?……勝手に死なれでもしたら、指令を追い掛けに三途の川だって渡る覚悟ですが!」

 

「勿論冗談。でも半分本気だったりするんだ。君が金剛の事とか関係なしに僕の事を好きだと言ってくれて、君の薬指に指輪をはめて、僕も君も泣きながら笑い合って……あの日から、ずっと」

 

 

 比叡は一瞬驚いたように眼を見開いて、またすぐ目を細めて気持ち良さそうにされるがまま。

そんな顔されると、抱き合って頭を撫でるこれの止め時が分からなくなって、また大淀に見つかって、2人して怒られるんだ。

でも、それでいいや。比叡と2人ならなんでも楽しい。

 

「……死ぬ時は私も一緒です、指令」

 

「……そうだね。一緒にいよう」

 

僕と比叡はその日、夜に視察(という名のサボリチェック)に来た大淀に怒られるまで、世界の終わりみたいにずっと手を繋いで過ごしていた。

 

 




HDDの奥底で眠ってた2年前の没小説を供養。恥ずかしいので匿名投稿。

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