「で、貴方は何を希望するんですか?」
白い部屋の中、目の前にいる女性・・・女神はそう言ってきた
ここは女神曰く転生の間、女神によって選ばれた者達がここで転生を行い、そして驚異的な能力や武器を貰うことになる空間らしい
「まぁ、早く決めて下さいね。申し訳ありませんが貴方は本命ではありませんので」
どんなことを希望するか迷っていた俺に女神はこうも言ってきた
早く決めてほしい?本命ではない?俺はそのことに疑問を思い、女神に聞いてみることにした
「あぁ、本命ではないことですね?貴方は主体性のない引きこもり。そんな貴方が世界を担う役割にでもなると?貴方は本命がいるクラスにいたから偶然巻き込まれただけです。所謂モブですね。ですから早く決めてほしいのです」
つまり俺は巻き込まれただけ?その本命が俺たちのクラスにいただけだから?
それだけで俺はここにいるのか?そしてモブになることすらも決まっているのか?
「えぇ、一応決まっています。そして私が貴方にこのような話をしているのも貴方に話してもモブであることは変わませんし、悩む時間を少しでも短縮してもらいたいという考えのもとですので」
だから悩むなと、そして早く決めて出て行けとそういいたいのか?
「えぇ、そうですが何か?」
・・・俺は別の世界にいっても俺自身を変えることすら出来ないのか、いつも囲まれて人気者のアイツや、人気者ではないけど人を惹きつけて可愛い女の子が近くにいるアイツにすらなれないのか・・・?
「そしてそのことを思っていても努力をしない、変わろうとも思わない。思っていても実行しない。だから貴方はいつまでも主体性のない引きこもりなのですよ。元の世界でも、これから行く異世界でも・・・ね」
女神は冷淡だ、ただ俺に真実のみを告げてくる。そこにあるのはただ仕事を終わらせたいという思いだけがあるような気がする。
いや、実際にその思いだけなのだろう。女神の声や態度からもそのことが確実に伝わってくる
「さぁ、早く希望を決めて下さいね。とりあえず転生する以上はこちらのサポートができる限りはなんでも致しますので」
女神に急かされ、俺は転生希望を考え始める。
・・・何も思い浮かばない、何をしたらいいのかが全く分からない。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い
伝説の武器も良いかもしれない、けど俺にそんなのが扱える才能があるのだろうか?
驚異的な能力もいいかもしれない、だけどそこなら何が出来るのかすらも分からない
考えれば考えるほど不安がやってくる。
何を選べばいいのだろうか、何をしたらいいのだろうか
選ばない、行動が出来ない。俺には不安しかない
けど動けない、変えれない。俺にはそんなことを言える勇気や、人がいない
いない・・・
「・・・いい加減決めてくれませんか?決めなきゃ私が決めますよ?」
・・・いた、いたじゃないか。変えてくれそうな人が、女神が。
女神ならば俺自身を変えることが出来るじゃないか。
「いや、決めたぞ。女神」
「やっと、決まりましたか?なら早くいって下さいね」
俺の願いは女神に俺自身を変えて貰うこと、けれども俺自身の人格を変えるなんて俺が怖くて出来ない
「・・・修行を」
「・・・・えっ?」
その時の女神の驚いた顔は今でも忘れられない。
俺が主体性がないのは女神から言われる前から知っている。ならば俺が主体性をもつようにして貰えればいい
「その世界に生きていけるように経験を、力を、知識を、ここで身に付けたい」
そしてその為の物は目の前にあるのだ
なら、やってもらったほうがいいではないか
「俺の希望は、生きて行くために充分な知識と力を身に付けること」
その為に女神を使ってもいいだろう?
「その為に俺はここでの修行を希望する」
「・・・・・」
女神は俺の言葉に対し少し絶句したのち
「ふふ、ふふふ、な、なんですかそれ!クラスの中でそんな希望したのは貴方が初めてですよ!し、しかも内心私に!この私に自分を変えて貰うためって!お、可笑しい!可笑しいですよ!」
そう言いながら腹を抱えながら大笑いし始めていた
俺の希望はクラスの中で一人もいなかったらしい。ということは皆能力や武器を持って転生したのか
そんなことを考えていると女神の笑いは収まってきたらしい。腹を抱えるのをやめ、希望を答える前の状態に戻っていた
「まぁ、前例はないですが希望は希望です。貴方の望み通り、貴方があの世界で生きていけるようになるまでここでの修行をしましょうか」
女神はそう答えると白い部屋だけの状態から一変して青い空間が広がっていった。
いや、青い空間じゃない。これは・・・
「空・・・?」
「正確には貴方が転生した後の世界の空ですね」
空を見ていた俺に女神の声が後ろから聞こえ、振り返ってみると
「め・・が・・・み?」
確かに女神の声はしていた。けれども女神の姿は俺が見ていた女神の姿とは大きく異なっていた
白に統一していた髪や瞳、服は無くなり。代わりにあったのは
金の髪に白い瞳、そして動き易そうな緑の服を着込んでいる女性の姿であった
「貴方の希望通り、これから神界での修行を開始します。希望した以上は音を上げることも許しませんよ?」
そこは頑張る、頑張る・・・
「頑張るが何かですか?」
何故女神の姿が変わっているんだ?
女神は俺の疑問に呆れたような表情になり
「何故って、貴方と修行するには転生の間としての姿より本来の姿の方がいいと思ったからですよ」
なるほど、あれは転生の間としての姿だったのか。そして貴方と修行か・・・貴方と修行?
「貴方がそう希望したんじゃないですか、私に自分自身を変えてもらおうって・・・ね?」
そういうと女神はニッコリと満面の笑みを浮かべながらこう告げた
「では修行を開始しますね?バカ弟子さん♪」
これが女神の・・・いや、師匠との修行の始まりだった
ちなみにその日は一瞬で吹っ飛ばされたことをここに記しておく