ドラゴンボール ギニュー親子の物語   作:残月

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伝説の……

 

 

「ったく……お前ら、給料減額だ!」

「減額もクソも俺達の給料なんか振り込まれていないでしょうが!」

『ンダッ!』

「粉う事なきブラックですね。因みになんで給料が振り込まれないのですか?」

 

 

自身の姿をアッサリと攻撃したアモンド達に怒りを露にするターレスだがアモンド達に逆にツッコまれていた。スーナは給料が無いと叫んだアモンド達に何故なのか問う。

 

 

「ターレス様が俺達の給料の全てを宇宙競馬につぎ込んだ!」

「これですか、単勝一点買い。しかも見事に外れたみたいですね」

 

 

ダイーズが不満と共に紙切れを地面に叩きつける。それは馬券の束だった。その内の一枚を拾い上げて見るとスーナは呆れの声が出た。

 

 

「うるせーな。俺はロマンを金で買ったんだよ」

「ロマンなら部下の給料に手を出さずに、ご自分のお金で買ってください」

 

 

スーナは人事部のトップとしては他の組織ながら部下の給料に手を出したターレスの行動は看過出来なかった。

 

 

「絶対に来ると思ったのに……ケンタウロスホイミ!」

「そんな神話と呪文がごっちゃになった馬に部下の給料全額賭けたんですか」

 

 

頭を抱えるターレスにスーナはターレスが賭けた馬の姿を想像して、とんでもない馬に賭けたものだと逆に感心していた。

 

 

「貴方達もそんなブラック企業に勤めるならフリーザ軍に来ませんか?働き次第で給料は弾みますし、保障も付けますよ?」

「「「「よろしくお願いいたします」」」」

『ンダッ!』

 

 

スーナの提案にアモンド、ダイーズ、カカオ、レズン、ラカセイは膝を着いてスーナに忠誠を誓おうとした。即決である辺り、普段のターレスの行動が如何にダメなのか示している様だ。

その直後、アモンド達の背後からエネルギー波が迫り、アモンド達を飲み込んでいく。スーナは咄嗟に避けたので直撃は免れたが、余波で吹き飛ばされて近くの大岩に叩き付けられてしまう。

 

 

「迷わず、部下を消すとは……やってくれますね」

「忠誠心の無い部下などいらん。それもスーナ……お前が居れば問題ではない」

 

 

痛みに耐えながらも立ち上がるスーナ。そんなスーナにターレスは忠誠心の無い部下は要らないと言い放つが、忠誠心を馬券に変えたのは貴方でしょうとツッコミを入れたくなった。

 

 

「私なんか居た所で……何も変わらないでしょう」

「お前は自分の評価が低いな……貴重な女のサイヤ人であり、フリーザの腹心。こんな人材他には居ないだろうよ。強い奴なら代わりは居るが……スーナ、お前の様な奴は代わりが居ないからな」

 

 

自己評価の低いスーナだがターレスの指摘は当たっていた。単純に戦闘力を求めるなら代わりはいくらでも居るがスーナの様に人事であり、全体に顔が利く様な人材はスーナくらいであり、代わりは居ない。

今回のナメック星侵略はフリーザ主体で組まれているが、仮にスーナが担当していたらもっとスムーズに進んだのは間違いない。

 

 

「く……うっ……」

「お前は知らないだろうが俺はずっと前からお前を知っていた。俺はお前が欲しい」

 

 

ターレスはスーナの腕を取ると無理矢理抱き寄せる。体に痛みが走るスーナは苦悶の表情を浮かべた。

 

 

「わた……しはフリーザ様の……」

「虚勢を張るなよ。強い者に従え……出来ないってんなら……」

 

 

抱き寄せたスーナをメキメキと力を入れて抱くターレス。その痛みと肺が潰されていく事でスーナの意識は薄れていく。

 

 

「それに……フリーザ軍も終わりだ。ドドリアやザーボンは王子様に殺されてたぜ。フリーザも俺が不老不死になり、神精樹の実を食べつつければ、いつか奴を倒す事が出来る」

「あ……う……」

 

 

クックックッと悪い笑みを浮かべるターレスだが、笑みを浮かべながらスーナを抱くターレスの姿は犯罪者のそれである。普段なら辛辣なツッコミを入れるスーナだが意識が朦朧として呻き声しか出なかった。

 

 

「それに……ドドリアやザーボンごときを幹部に据えているフリーザもたかが知れているな。あんな屑どもは俺の部下だった連中にも劣るだろうよ」

「なん……ですって……」

 

 

その言葉にスーナは朦朧としていた意識が戻り始める。スーナにとってもドドリアやザーボンは自分を鍛えてくれて仕事を教えてくれた恩人。その意識混濁の中、スーナは恩人を侮辱し、ターレスに対して深い怒りがフツフツと沸いてくる。その感覚はスーナにとって未知の物だった。

 

そして……その時は訪れる。ターレスのスカウターは一瞬でボンと音を立てて壊れた。

 

 

「ちっ……なんだ?」

 

 

スカウターの爆発に思わずスーナを離してしまったターレスは顔に付着しているスカウターの破片を取ろうとしてピタリと手が止まる。

思わず離してしまったスーナが目の前に立っているのだが、その姿に動揺してしまったのだ。

スーナの長い髪は半分程がサイヤ人特有の黒髪では無く、半分が金髪に染まっていた。

 

 

スーナがスッと右手をターレスの方に差し向けるとターレスは直感的にマズイと感じたのか即座にエネルギー波を放った。その直後、スーナの右手から同じ様にエネルギー波が放たれターレスのエネルギー波を飲み込み、ターレスに迫る。

 

 

「なっ!?くっ……くそっ!」

 

 

スーナのエネルギー波を受け止めたターレスだがその密度の濃いエネルギー波に飲まれ始めて手がブスブスと焦げていく。その最中、ターレスはスーナの姿を見て驚愕した。スーナの黒髪は完全に金髪に染まり、瞳は緑色になっていたのだから。

 

 

「ま、まさか……伝説の、スーパーサイヤ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

その姿にターレスは一つの仮説を打ち立てたが、その直後にスーナのエネルギー波に耐えきれなくなり、飲み込まれていく。

 

姿がこの世から消えたターレスを見て、スーナはフッと意識を失い、その場に倒れてしまう。それと同時に金髪は黒髪に戻り、瞳も元の色に戻っていた。

 

 

 

その後、意識を取り戻したスーナは何故、自分が倒れていたのか。何故、ターレスが居ないのか。その全てを忘れていた。

分かるのは自分が引き連れてきた部下を殺された事とターレスの部下は全て内輪の問題で殺された事と……ドドリアとザーボンがベジータに殺されたと言う情報くらいだった。

そして目の前の抉られた地面にはターレスが着ていた戦闘服の破片が落ちていた。

 

 

「何が……あったんでしょうか。ターレスさんに気絶させられる前後の記憶が定かではありませんが……兎に角、フリーザ様の下へ行かなくては……」

 

 

未だ納得はしていないが何らかの理由でターレスは居なくなり、自分は助かったと判断したスーナはフワリと身を浮かせるとフリーザの宇宙船の方へと飛んでいった。

 

 

 

 

自分が一瞬とは言えど伝説の存在になれたとは知らずに。


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