「そんな訳でな……フリーザ軍は事実上の壊滅。俺は船と部下を無くし……俺は何処か虚しくなってな。後の事は知った事ではないが貴様に知らせないのは筋が通らないと思ったんでな。これが今のフリーザ軍の資料だ」
「……拝見します」
フリーザの復讐とコルドの横領でガタガタになったフリーザ軍と船と部下を失い、軍を率いる気が失われたクウラは後の事は知った事ではないと言う。クウラは最低限、資料と話くらいの筋を通すつもりだとスーナに告げる。
「オメェはフリーザみてぇに侵略はもうしねぇんか?」
「今更、侵略するのもバカらしくなってな。これからは気儘に宇宙を旅しながら強い奴と戦うのも悪くない」
悟空が気軽にクウラに話し掛けると、クウラは何処か疲れた様な達観した様な顔をしながら悟空の疑問に答える。
「なんか……根っからの悪い人じゃなさそうですね?」
「ああ、それに奴からは邪悪な気を感じない。どちらかと言えば奴が纏っているのは武人としての威圧感だ」
悟飯とピッコロはクウラがフリーザの兄と知ると警戒していたのだが、先程からの話とクウラの言動から純粋に戦士として生きようとしているのを感じていた。
「クウラさんは……桃香ちゃんが心配だったべな……」
「俺はそんなお人好しではない」
チチは今までのクウラの話を聞いて同情100%の視線をクウラに向けている。
そしてチチの言葉を否定するクウラだが、スーナの様子を見に来たのは明白である。因みにクウラにはスーナが孫家では桃香と呼ばれている事は既に説明済みである。
「宇宙競馬に経費を三億……コルド大王様が横領したから兵士達の給料の未払いが……それに離反する兵士が増加して……思えばフリーザ様が不在になり、コルド大王様が横領。主だった幹部がナメック星で殉職。それで給料未払いにもなれば当然ですね……それに残った部署の方々では建て直しに翻弄されて……アボさんとカドさんが行方知らず?第三星域だけが唯一安定してますね……」
そしてスーナは鬼気迫る表情でクウラから渡された資料に目を通していた。自分が想定していた以上にフリーザ軍の内部が荒れている事に驚いていた。
「鬼気迫る感じですね」
「元の就職先が荒れてれば気になるだな」
悲しき中間管理職に戻りつつあるスーナに悟飯とチチは引き気味である。悟空とピッコロは就職に無縁だった為にピンと来ていない様である。
「今のフリーザ軍は勝手に崩壊している状態だ。そんな沈み欠けの船になんぞ誰が乗るものか」
「だったらよ。オラと戦ってくんねーか?」
クウラがもう侵略行為をする気がないと分かった悟空はクウラに戦いを挑もうとしていた。
「なんだと?」
「フリーザの兄貴ってんなら強いだろうし、オラ達は修行中だ。何処まで強くなったか知りてぇんだ!」
クウラの声が若干低くなったのも気にせず、悟空は強い者と戦える事にワクワクしていた。
「……まあ、いいだろう。そこのナメック星人もそれなりに出来そうだしな……だが」
悟空やピッコロが実力者だとクウラは見抜くが悟飯に視線を移すと呆れたような顔になる。
「そこの小僧はまだ未熟だな。戦士ごっこには早いんじゃないか?」
「なんだとっ!?」
悟空が地球に戻ってから厳しい修行をしてきた悟飯はクウラの挑発に乗ってしまう。今にも飛び掛かりそうな雰囲気になっている。
「クウラ様……悟飯は強いですよ。聞いた話ではフリーザ様も手を焼いたそうです」
「フン……フリーザの甘さが原因だろう。まあ、いい……スーナのお墨付きならば相手をしてやるぞ小僧。表に出ろ」
資料にある程度目を通し終えたスーナが会話に加わる。スーナは後ろから悟飯の両肩に手を添えてクウラに悟飯の強さを語った。クウラは鼻を鳴らすと、ならば確かめてやろうとばかりに玄関から外へと出る。
こうして悟飯VSクウラの戦いが決定されてしまった。