ツンデレスナイパーの彼氏でポニーテールと乳の幼馴染みで神崎名人のライバルのいる暗殺教室   作:てこの原理こそ最強

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大変お待たせ致しました。
コメントくださった方々ありがとうございます。執筆の励みになりました。


それぞれの恋の時間

 

暗殺旅行最終日、渚達は残り時間を満喫していた

 

「肝試し?今からですか?」

 

「えぇ!真夏の夜にやることと言ったらこれでしょ!」

 

「殺せんせーが遊びたいだけでしょ?」

 

「君達と違って先生ずっと殻にこもってましたから!」

 

「肝試し楽しそうじゃん!」

 

「だな!」

 

「えー。彼方くん私こわーい」

 

「大丈夫だろ。射撃スポット捜索の時この島結構歩いたけどお墓とか見当たらなかったし」

 

「そうそう。それにオバケ役はどうせ殺せんせーだろ?」

 

「そっかー」

 

おそらくそれほど怖いと思ってもいなかった倉橋だが、たまたま近くにいた彼方にくっつくために怖いオバケ怖いキャラを瞬時に演じたのだ。なんてあざとい子なんでしょう

 

「にゅやり」

 

しかしこの時は誰も殺せんせーにゲスな意図があってこの肝試しが開催されるとは思ってもいなかった

 

「場所は海岸沿いの洞窟。ペアで参加してくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペアだし、凛...」

 

「彼方くん」

 

「ん?どうした有希子」

 

「私とペアになってくれないかな?」

 

「いや、オレは凛香と」

 

「あー!神崎さんが抜け駆けしてるー!」

 

「神崎さん手がはやーい」

 

海岸に移動し彼方が早速凛香とペアを組もうとしたところに神崎が来て、続いて倉橋と岡野もやってきた

 

「いやだからオレは...」

 

「こんな時ぐらいいいじゃん!いっつも速水さんと一緒なんだからさー」

 

「そうそう。たまには他の子とも遊んでみると案外楽しかったりすると思うよ?」

 

岡野と倉橋がぐいぐいと彼方に迫る。それほど一緒に回りたいのだろう

 

当の凛香はというとなぜか杉野が足止めをしていた。おそらく神崎が仕向けたのだろう

 

「ちょっと待ったー!」

 

「遅かったね矢田さん」

 

「うん。いの一番に来ると思ってたのに」

 

「ちょっといろいろあってね。それより!私だってカナくんと回りたい!」

 

「だから...」

 

「なので、ここは正々堂々恨みっこなしのじゃんけんだよ!」

 

「えー。矢田さんはいいじゃん。昨日の夜彼方くんとイチャイチャできたんだから」

 

「うっ...」

 

「私達は壁担当だったから最初からじゃんけんすらできなかったんだよ?」

 

「でも...」

 

「矢田さん、いつもいいところ持っていっちゃうから」

 

「有希子ちゃんまで...」

 

「あんた達...」

 

誰が彼方と回るか討論をしていると凛香が現れた。足止めをしていたはずの杉野はというと、浜辺の砂に頭から突き刺さっていた

 

「私がいないところで好き勝手にして...」

 

「速水さん、わかってると思うけど私達だって諦められないの」

 

「...」

 

「速水さんはこれからも彼方くんと一緒の時間があるだろうけど、私達は卒業したら終わっちゃうかもしれないんだよ」

 

「私だって中学三年生としての彼方との思い出は今しかないんだけど」

 

彼方を挟んで目を全く逸らさない両者

 

「...わかった。今回は譲る」

 

「え...ちょっ、凛香?」

 

「どうせ今回の肝試しは殺せんせーが仕組んでるものだと思うから。普通の肝試しとは違うでしょ」

 

「そうかもだけど」

 

「それに、神崎達の言い分もわかるから。多分私が逆の立場だったら絶対引き下がらないと思う」

 

「凛香...」

 

「でもこれっきり。私だってこういう一生に一度あるかないかの行事は彼方と思い出を作りたい。帰ってから休みの日に出かけるとかは別にいいけど、これからある文化祭とかは絶対ダメ」

 

「うん。ありがとう速水さん」

 

「ん」

 

「凛...香っ!」

 

振り向きざま凛香は彼方を睨みつける。その目は「浮気シタラ殺ス」と言っているかのように彼方には届いた

 

「じゃあ私達はどうしよっか」

 

「そうだなー。ここで1人だけっていうのはなんか悲しいよね」

 

「なら彼方くんに1人1回ずつ回ってもらうっていうのはどう?」

 

「それでいいじゃん!」

 

「えっと...私も...」

 

「「「矢田さんはダメ!」」」

 

「そんなー!」

 

なんやかんや彼方とくっついたりいいところを持っていっている矢田は今回許しを得られなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番目は岡野となった

 

「最初は私だね」

 

「あぁ」

 

「やっぱり怒ってる...?」

 

「怒ってはないよ。でも、ちょっと困惑してる」

 

「そうだよね。ごめんね迷惑かけちゃって」

 

「いや、好意を持ってくれるのは素直に嬉しいんだけどさ。でもお返しができないから」

 

「ん?あはは!」

 

「え、なんかおもしろいこと言ったか?」

 

「違う違う。矢田さんや神崎さんはわからないけど、私も陽菜乃ちゃんもそんなこと求めてないよ」

 

「え?」

 

ここは血塗られた...

 

「なんだろ。言葉にするのは難しいんだけど、私達って彼方くんと付き合いたいとか恋人になりたいとかじゃないんだー。あ、でもちゃんと好きなんだよ?」

 

「お、おう」

 

「いつもみたいに一緒のクラスで楽しく過ごして、ちゃんとできたら褒めてくれて頭撫でてくれて。お兄さんみたいな感じかな」

 

「同い年なんだけど?」

 

「わかってるよ」

 

あら?ちょっとお二人さん!?

 

「陽菜乃ちゃんにも聞いてみればわかるよ」

 

「そっか」

 

「うん。ってあれ?終わっちゃった」

 

「本当だ。殺せんせー出てきたか?」

 

「わかんない。話すのに夢中で気づかなかったかも」

 

「やべっ。こんなんじゃ周辺への警戒ができてないって烏間先生に怒られる」

 

「そうだね。ペナルティは山登りかな?」

 

「お、それは好都合だな。昨日のリベンジができる」

 

「ふふん。もしそうなっても勝つのは私だけどねー」

 

全く肝試し感がないまま岡野の番は終わってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二番目は倉橋

 

「次は私だね〜」

 

「おう」

 

「じゃあしゅっぱ〜つ!」

 

「なんかテンション高いな陽菜乃」

 

「なんか探検みたいでいいよね」

 

「あー。陽菜乃は生物好きだからジャングルとか行っても大丈夫そうだな」

 

「うん!多分全然平気だと思う」

 

「普通の女の子なら虫がダメでジャングルなんて行ったら悲鳴しか聞こえない気がするんだが」

 

「ちょっと〜、それって私が普通の女の子じゃないってこと〜?」

 

「まぁこのクラスで暗殺なんてしてるE組の女子は全員もう普通の女の子ではないでしょ」

 

「あ〜確かに」

 

ここは血塗られた...

 

「そういえばひなたちゃんから聞いた?」

 

「あぁ」

 

「そっか。私もひなたちゃんと同じだよ。彼方くんと一緒にいたいけど恋人になりたいってわけじゃないんだ〜」

 

「そうなのか」

 

「うん。でも気づいたら目で追っちゃってるしこの間お姫様抱っこしてもらった時はキュンってしたな〜」

 

「あれは仕方なく」

 

「わかってるよ〜。ん〜、私にとって彼方くんは友達以上恋人未満。ただし比較的恋人に近い関係になりたい人なんだ〜」

 

「やけに難しいな」

 

「私もよくわからない。好きな人は前にもいたことあるけど、好きな人には彼女がいて、それでも一緒にいたいって思ったのは初めてだったから」

 

「普通はそんな経験ないだろうからな」

 

にゅや!またですか!?

 

「私今すっごく楽しいんだ〜!クラスのみんながいて、彼方くんがいて。彼方くんが甘やかしてくれて褒めてくれて。でも、たまに2人になりたい時もあって」

 

「んー」

 

「でも今の生活にすっごい満足してるんだ〜」

 

「そっか」

 

「速水さんがいるけど私のこともそれなりに構ってね?」

 

「ぜ、善処します...」

 

「あれ、終わっちゃった」

 

「あちゃーまただ」

 

「また?」

 

「さっきひなたの時もこんな感じで終わっちゃったんだよ」

 

「そうなんだ。お話するのに夢中になっちゃって殺せんせー出てきたのかわかんないや」

 

「まぁいいでしょ。どうせ碌でもないこと考えてるんだろうから」

 

「そだね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後が神崎

 

「よろしくね、彼方くん」

 

「はいよ」

 

岡野や倉橋はただ距離が近かっただけなのだが神崎はピタッとくっつき腕を組んでいる

 

「有希子」

 

「怖いから、このままでもいい?」

 

「嘘つけ。ゾンビゲームとかバンバンやってたじゃんか」

 

「ゲームと現実は違うよ」

 

「そりゃそうだろ」

 

「だからこのまま、ね?」

 

こうなってしまったらてこでも動かない。彼方は諦めてキョロキョロと周りを見渡す。さすがにこの状況を見られたら背後から撃たれてしまう。凛香に...

 

「彼方くん。改めてありがとう、助けてくれて」

 

「あれはみんなで頑張ったんだ。オレだけじゃない」

 

「みんなにも伝えたよ。でも彼方くんにはまた助けてもらったから」

 

「修学旅行のことか?まぁあれは危なかったな」

 

「うん。それにその前のことも」

 

「だからあれは」

 

「そうだね。でも彼方くんのおかげで自分がちゃんと自分なんだって思えたの。だから感謝してる」

 

「頑なだなー」

 

<ここは血塗られた...ぎゃー!日本人形!?

 

「ん?」

 

「今、私の方が殺せんせーに怖がられちゃったみたい」

 

「渚が言ってたけど殺せんせー意外とビビリらしいからなー」

 

「そんなこと言って、彼方くんだって結構ビビリじゃなかった?」

 

「びっくり系がダメなだけ」

 

「ふふっ、風船の爆発音でもびっくりしちゃうもんね」

 

「誰でも驚くでしょ」

 

「私はそうでもないかな」

 

「マジで有希子の心臓がどうなってるか見てみたい」

 

「解剖したいってこと?」

 

「いやサイコパスじゃん。有希子の度胸がすごいってこと」

 

「そっか、ありがと」

 

「見た目は清楚なお嬢様な感じなのにな」

 

「彼方くん...?」

 

「なんで怒ってるんだよ。褒めたのに」

 

「私は普通の女の子でいたいの」

 

「ウチのクラスクセが強いの多いから、その中では普通な女の子なんじゃない?」

 

「彼方くんも相当だけどね」

 

「何を言うか。オレほど普通の男子中学生はいないだろ」

 

「...」

 

「ごめんなさい。だからそんな真顔で見ないで」

 

「ふふっ」

 

「ん?」

 

「やっぱり、彼方くんといると楽しいなって」

 

「そっか」

 

「うん」

 

有希子はさギュッと抱きつく力をさらに強くし、彼方と一緒にいる楽しさを存分に味わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が周り終わり肝試しも終了、となったのだが・・・

 

「シクシク・・・シクシク・・・」

 

「どうしたの?あれ」

 

「なんか思惑と違って悲しんでるっぽい」

 

「思惑?」

 

「要するに怖がらせて吊橋効果でカップル誕生!を狙ってたと」

 

「怖がらせる前に狙いばればれだし」

 

「だって!手繋いでデレデレする2人とかニヤニヤ見たいじゃないですか!コラッ!不純異性交遊はダメですとか先生っぽいことしたいじゃないですか!」

 

「泣きギレ入ったよこの人...」

 

「ゲスい大人だ...」

 

「そういうのはそっとしときなよ。ウチらくらいだと色恋沙汰とかに敏感なんだから。みんながみんな前原みたいに見境なくってわけじゃないんだから」

 

「ん?どういう意味だ中村!!!」

 

「そのまんまっしょ。ていうか殺せんせー、そういうの彼方くん1人で十分でしょ」

 

「勝手に人の名前出すなよ...」

 

「だって彼方くん!ちょっと揶揄おうとしたら逆にせんせーのこと煽ってくるんですよ!」

 

「あらー。殺せんせーがこうなった原因は彼方くんだったか」

 

「いやいや。殺せんせーが勝手に自爆してるだけだろ。オレは何もしてないぞ」

 

「本当のところは?」

 

「この前凛香とデートしたときの隠し撮り写真見せられたからそのときのことを詳しく話したら途中からキレられた」

 

『はぁ...』

 

「え、何みんなそのため息」

 

全員殺せんせーが言うことが少しだけわかった気がした

 

「なによ!肝試しって言っても誰もいないじゃない!怖がって損した...」

 

「だからそんな引っ付くな」

 

「なによ!こんな美女が隣にいるんだから優しくエスコートするぐらいの気概を見せなさいよ!」

 

クラス全員が肝試しを終えてから15分が経ち、参加してたことすら知らなかったビッチ先生と烏間先生が出てきた。

 

「ちょっと前から思ってたけどさ...」

 

「ビッチ先生って、そう言うことだよね?」

 

「多分。どうする?」

 

「明日帰るまでにまだ時間があるしー」

 

『くっつけちゃいますか...ひひひひひ!!!』

 

殺せんせーよかったね。みんなあなたのゲスさを受け継いでいますよ

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、やってらんない!鈍感にも程があるでしょあの男!」

 

「ビッチ先生意外だわ。あんだけ男を自在に操ってたのに」

 

「自分の恋愛には不器用なんだね」

 

「恋愛?はっ!そんなんじゃないわよ」

 

「え、違うんすか?」

 

「あの男が世界クラスの堅物だから珍しかっただけよ!その珍しさについ本気になってたら...そのうちにこっちが...」

 

「うっ!カワイイって思っちまった...」

 

「なんか屈辱...」

 

「なんでよ!!!」

 

コテージに戻ってきたクラス一同はビッチ先生を囲んで真意を聞いていた

 

「よし!俺達に任せろ!2人のためにセッティングしてやるぜ!」

 

「いいね!」

 

「あんた達...」

 

「では、恋愛コンサルタント3年E組の会議を始めます」

 

「ノリノリねタコ...」

 

「同僚の恋を応援するのは当然です。さて、早速意見のある方は?」

 

「まずさービッチ先生服の系統が悪いんだよ」

 

「そうそう。露出しとけばいいや的な。ビッチ先生も烏間先生が相当の堅物だってわかってるんだから。あんな人の好みじゃないって今のビッチ先生。もっと清楚じゃないと」

 

「清楚か...」

 

「清楚って言えばやっぱ神崎ちゃんか。昨日着てた服乾いてたら貸してもらえない?」

 

「うん」

 

神崎が持ってきた服をビッチ先生が着てみると、なんと言うことでしょう!あのビッチ先生が清楚に...

 

『ならねぇ!!!』

 

「なんか逆にエロくね...?」

 

「まずすべてのサイズが合ってない...」

 

「神崎さんがあんなエロい服着てたと思うと...!」

 

「ちょっと岡島くん!」

 

「へー同じ服でも着る人が違うと印象が全然違うんだなー」

 

「彼方くんも変な想像しないで!」

 

「してねぇよ!?」

 

「あーもう!エロいのは仕方ない!大事なのは乳よりも人間性だよ!」

 

「そうだよね!乳なんて重要じゃないよね!?さすが岡野さん!!!」

 

「か、茅野っち大丈夫...?」

 

「では、誰か烏間先生の好みを知っている方は?」

 

「あ、そういえば以前テレビのCMに出てるあの人のことベタ褒めしてた。なんだっけ、暮らしを守る...」

 

『それ理想の彼女じゃなくて理想の戦力じゃねぇか!!!』

 

「じゃ、じゃあ手料理とかどうですか...?ホテルの食事もいいですけどそこを敢えて手料理を振る舞うと言うのは」

 

「烏丸先生ハンバーガーとカップ麺しか食べてんの見たことないぞ」

 

「それだと逆に2人だけ可哀想...」

 

「ぐっ!付け入る隙がなさすぎる!」

 

「なんか烏間先生に原因がある気がしてきた...」

 

「でしょでしょ!!?」

 

「私だって何度あの人に泣かされたことか!」

 

こうしてなぜか烏間先生がディスられ始めた

 

「とにかく!ディナーまでにできることを整えましょう!女子はスタイリングの手伝いを。男子は2人の席をムードよくセッティングです」

 

『はーい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<女性陣営>

 

「兎にも角にも服装だよねー」

 

「露出を減らしつつも大人の色気は出せる服装がいいのかなー」

 

「速水ちゃんなんかいいアイディアなーい?」

 

「なんで私なのよ」

 

「だってクラスで彼氏いるの速水ちゃんだけだし」

 

「だからって...」

 

岡野や矢田、中村が眉間に皺を寄せながら考えるも所詮は中学生のファッション知識。全く思いきそうになかった。そこで中村が唯一の彼氏持ちである速水に声をかけてみた

 

「ドレスコートはどう?」

 

「ドレスコート?」

 

「高級なレストランにはそれ相応の服装しなければいけない文化があるみたい」

 

「へー。でもそれくらいならビッチ先生もわかってるんじゃない?」

 

「それでもドレスコートって派手さは必要だけど下品になっちゃダメみたい。そういうのって今のビッチ先生に必要なんじゃないかな」

 

「なるほど」

 

「あった、ドレスコート。んー今できるのならこんな感じかな」

 

「え!原さん作れるの!?」

 

「なんでか売店に布が売ってたから大丈夫そう。ドレス自体はビッチ先生たくさん持ってそうだし、あとはホテルからミシンさえ借りれればなんとかなるかも」

 

「じゃあ決まりだね!」

 

「でもよくドレスコートなんて知ってたね速水さん」

 

「前に彼方と観に行った映画でやってた」

 

「カナくんと...」

 

「映画...」

 

「ちょっ!矢田さん!?神崎さん!?どうしたの!!」

 

「前に誘ったとき断ったくせに...!」

 

「彼方くん、前に恋愛映画は苦手って...!」

 

ビッチ先生のことのありますが、何やらこちらも楽しくなってまいりました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<男性陣営>

 

「っ!なんだ...?」

 

「どうしたんだ?彼方」

 

「いや、なんか急に背中がゾクってして」

 

「風邪か?まさか後追いでウイルスが!?」

 

「慌てんなよ三村。そんなんじゃないから」

 

「そ、そうか?それならいいんだが...」

 

男性陣は会場のセッティングをどうするか悩んでいた

 

「さて、続きを話そうか竹林。要するにムードってどうすればよくなるんだろ」

 

「まずどうすればムードが良くなるのか考えないといけない。何が原因でムードというものは良くなるのか。それを彼方に聞きたいんだ」

 

「オレに?」

 

「唯一の彼女持ち。ならばムードについて今まで経験してきたものからそれぞれ共通したものがあればより的確にムードがよくなる方法が割り出せる」

 

「なるほど。んー、とにかくオレが凛香といい雰囲気になったときだろ?」

 

「あぁ」

 

「家で2人きりのときかな。他に誰もいなかったとき」

 

「なるほど。それはいいかもしれない。周囲の騒音度によってムードは上がり下がりするだろう」

 

「でも騒音って言っても色々種類がないか?確かに工事の音だったり電車の音は嫌だけど花火とか波の音だったら逆にムード良くないか?」

 

「確かに。それならムードが良くなる音の大きさ、デシベル数で測ることができる」

 

「なるほど。一定の音量を超えるとムードは下がるのか」

 

「森などで聞こえる鳥の囀りが約20デシベル。駅の改札での音が約70デシベルだな」

 

「なら最高でも20、もしくは30ぐらいってとこか」

 

彼方の経験談をもとに竹林が意見を出しなぜかムードというものを計算で出そうとしている彼方と竹林

 

「他にいいムードと感じたのはいつだ?」

 

「んー。あ、プラネタリウム行ったときはよかったかも」

 

「プラネタリウム。静かではあるな。他に要因があるとすれば...」

 

「その場所の明るさ、とか?」

 

「明暗度合いか。確かに心理学的にも暗い場所だと積極的になるとあった気がする」

 

「よくそんな知ってるな竹林」

 

「たまたまだ。さて、彼方からのみの情報でだがムードとは30デシベル以下の少々薄暗い場所が最適か」

 

「あとは周りに誰もいないこととかもいるんじゃないか?ただのデートなら別にいいけど、ムードが良いってなると周りに人がいると下がるんじゃないか?」

 

「ふむ。ならばこの島はうってつけじゃないか」

 

「あ、確かに」

 

「決まったな。ならすぐに音量が30デシベル以下で暗さも最適な場所を探そう」

 

「おう!」

 

『ぜ、全然ついていけなかった...』

 

こうして男子ほとんどを置いてきぼりにした彼方と竹林はホテル内外を隈無く捜索した。ちなみに数値を測る機械などなかったため殺せんせーに評価を頼んだ

 

こうしてこの島で把握している場所で一番ムードがあるであろう場所は夕日の見える砂浜となった。先生達にはあらかじめ時間をずらして伝えビッチ先生が烏間先生を待つ形にした

 

「全員で食事と聞いたが」

 

「あ、烏間先生はこちらです」

 

「波風くん、そっちは外だが」

 

「いいからいいから。オレ達からの感謝を込めてってことで」

 

レストランに来た烏間先生を彼方がビッチ先生の待つところまで案内する

 

「あちらです。どうぞ良い一時を」

 

案内された烏間先生はビッチ先生が先に座っていることを確認しつつも引かれたイスに着席した。それを確認した彼方は静かに退散した

 

「グッジョブ彼方くん!」

 

「あぁ。あとは見守るだけだな」

 

既にレストランにいる生徒は0。全員ビッチ先生のその後を陰から見ていた

 

「凛香」

 

「ん?」

 

「こっち」

 

「え?でも...」

 

彼方は少し強引に凛香を連れ出した。向かったのは少し離れた浜辺。そこからもビッチ先生達と同じように夕日が拝めた

 

「キレイ...」

 

「そうだな」

 

水平線はオレンジに輝き波も穏やかでムード値は最高と言っていいだろう

 

「でもどうして?」

 

「凛香と2人で見たかったんだ」

 

「そ、そう...」

 

彼方の顔を見上げる凛香。その目は真っ直ぐ水平線を見つめ髪は風で靡いている。にっこり笑い口元。見とれるには十分だった

 

「ん?どうした?」

 

「な、なんでもない!」

 

「そっか」

 

凛香は絶対に顔が赤くなってると自分でも感じていた。夕日の光のせいと誤魔化せるかドキドキしている

 

「さて、戻るか」

 

「え...」

 

もう終わり?凛香はそう口に出そうだった。これだけのシチュエーションが揃っていて凛香だって期待していた。するとそんな凛香の気持ちが伝わったかのように彼方がそっと口づけした

 

「な、な、な...!」

 

「あれ違った?」

 

不意打ちだった。それはもう大ダメージを食らって言葉が出ないぐらいの特大な

 

「すまん。もどろ」

 

「ま、待って...」

 

戻ろうとする彼方の上着の裾をつまんで止める凛香

 

「もう、一回...」

 

「...」

 

恥ずかしくて俯く凛香。彼方から言葉はなく、ただ彼方の手が凛香の頬に触れて見上げさせる。近づく彼方の顔。凛香はドキドキしながら目を瞑り唇に触れる感触が心を満たした

 


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