今日も鴉天狗が絡んできます【完結】   作:秋月月日

11 / 12
 三話連続投稿でーす。



第十一報 久延毘古

「『あーもう、そんな簡単に正体バラしちゃダメだよ、八雲ちゃーん』」

 

 いつもの無愛想な案山子とは違う、どこか飄々とした態度の案山子――いや、久延毘古は、にやぁと口角を吊り上げながら、カラカラと子供のような笑い声を上げる。

 これが、全てを知識として保有する唯一の神。

 山の神、農業の神、田の神として崇められている――案山子を神格化した絶対神。

 紫は少しだけ驚きながらも、すぐに扇子で口元を隠す。

 そしてあくまでも平静を装いながら、

 

「……まさか、二重人格だったとは、流石の私でも気づけませんでしたわ」

 

「『いやいやー、別にそんな大層なもんじゃねえよ? これは二重人格っつーよりも、ただ単純に奥の方でかくれんぼしてたオレが出しゃばって来ただけって感じだよ。云わば、封印が解かれたぞーって感じぃ?』」

 

 そう言って久延毘古は再びカラカラと笑う。その姿はまるで、純粋な子供そのものだった。

 久延毘古は一体どこから取り出したのか、例の畑にブッ刺さっているハズの棒の上に腰を下ろす。案山子でも久延毘古でもそのバランス感覚は変わらないようで、彼は棒の上で器用に胡坐を掻いていた。

 「『で、さっきの質問の答えだっけ?』」と九延毘古はとぼけたような表情を浮かべ、

 

「『んー。昔のことすぎてあんまり覚えてねえんだけどさー……確かオレ、この依代を作った少女に一目惚れしちまってたんだよねえ』」

 

「………………は? 一目、惚れ?」

 

「『そそ。一目惚れ一目惚れ。まぁ、一般的な言い方するなら――あの子にニコポされちゃったって感じ? まーそんな感じで知識の神こと久延毘古さんは普通の人間の少女に一目惚れしちまった訳ですよ。デューユーアンダスターン?』」

 

 どこからどう見ても子供としか思えない久延毘古の態度に、紫の背中に寒気が走る。伝承通りならば凄く誠実で知識神のはずなのに、今の九延毘古からはそんな高貴な匂いなど微塵も感じられない。ただのおチャラけた軽男、という称号の方が似合っている。

 そもそもの問題で、この神は再び封印される気はあるのだろうか? このままずっと久延毘古として生きていくつもりだとしたら、それはそれでこの幻想郷のパワーバランスが崩れてしまうおそれがある。

 幻想郷には他にも何体も神様が住んでいるが、それはあくまでもそれ相応程度に力を抑え込んだ状態で、の話だ。むろん、武神である神奈子も例外ではない。

 だが、この山の神は、本当の実力が底知れない。伝承通りの役目だけを持っているとするならまだ大丈夫だが、もし、それ以上のチカラを持っているとしたら? 全ての知識を有しているのに更に実力も折り紙つきとあれば、それは幻想郷を支配されかねない超絶望的な異変が巻き起こってしまう可能性がある。

 なんとかして、この神を案山子の奥に戻さなければならない。あの無愛想で無頓着な案山子を引きずり出し、不安要素を根こそぎ消し去る必要がある。

 ――しかし。

 

「『おいおい、そんなに怖い顔するなよ八雲ちゃーん。別にオレ、この世界を壊す気なんて毛頭ねえって。っつーか、今のオレにそこまでのチカラはねえよ』」

 

「……『今の』オレ?」

 

「『そそ。今のオレは元の百分の一ぐらいのチカラしか復活させれてなくってねー。アンタには絶対に勝てないし、あと数分もすりゃ「アイツ」に身体のコントロールを奪われちまう。ったく、随分と強力な奴に憑いちまったもんだよ、オレも。――まぁ、だからこそコイツを選んだわけなんだがな』」

 

 そう言って久延毘古が溜め息を吐いた――直後の出来事だった。

 地下と地上を結ぶ唯一の扉が勢いよく吹き飛ばされ、一人の少女が土足で入室してきたのだ。

 肩の辺りで切り揃えられた黒髪の上にはちょこんと赤い頭襟が乗っかっていて、舞い散る椛があしらわれた半袖シャツと白いフリルが付いた黒のスカートが強風によってたなびいている。高下駄風の赤い靴が彼女の身長をより高めていて、掴めば折れてしまいそうなほど華奢な手には椛のような形状の扇子が握られている。

 射命丸文(しゃめいまるあや)

 とある案山子の為にずっと踏ん張ってきた鴉天狗の少女は、紫たち二人に扇子を突きつけながら――

 

「話は全て聞かせてもらいましたが、今の私に聞く耳なんてものはありません。神様だか何だか知りませんが、案山子さんは返してもらいます!」

 

 ――彼女にしては珍しく、本気の本気でブチ切れていた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「いやー、久しぶりに博麗神社に来てみましたが、まさかここまで盛況になっているとは……昔は賽銭一つ入れてもらってなかったのに」

 

「…………ご先祖様、アンタらも同じ境遇だったんかい!」

 

 数多の出店が立ち並ぶ博麗神社の境内で、死者スタイルの少女と博麗霊夢はほのぼのとした漫才を繰り広げていた。因みに、小町は仕事に戻っている。サボりにサボりまくったせいで無駄に溜まった仕事を消化させるべく、四季映姫が身柄を拘束したのだ。

 幽霊の少女は「可愛いからサービスだ!」と言って渡された綿アメにパクつきながら、何気なく空を見上げる。

 ――そこ、には。

 

「逃げ回ってないでちゃんと戦え! さっさと私にぶっ飛ばされて、案山子さんを解放してください!」

 

「『いやいやー、実は解放されるっつー立場なのは、コイツじゃなくてオレの方なんだけど……って、聞いちゃくれねえか!』」

 

 黒い翼を生やした少女と、とても見覚えのある少年による、弾幕勝負が繰り広げられていた。

 翼が生えているところから察するに、あの少女は鴉天狗なのだろう。使用している弾幕も風関係が多いようだし、そもそもあの扇子には凄く見覚えがある。確か昔、仲が良かった鴉天狗の少女が持っていたものと同じタイプではなかっただろうか。いやまぁ、記憶が薄らとしているからよくは覚えてないのだけれど。

 あまりにも高位過ぎる弾幕勝負を繰り広げている少女と少年に、霊夢は「何なのよこの状況……」と呆れの表情を見せる。――まぁ、周囲の人々及び妖怪たちは無駄に盛り上がっているようだが。

 綿あめを食べ終えた少女はこれまたサービスしてもらったリンゴ飴をペロッと人嘗めし、

 

「あの言葉づかいってことは、『あの人』が出てきちゃってるってことなんですかねー」

 

 凄く懐かしそうに、やんわりとした笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 弾幕勝負で大事なのは、全てを上回るスピードだ。

 それは幻想郷一のスピードを誇る射命丸文だからこそ言えることであり、逆に他の奴らだったら絶対に口にもできないような格言だ。

 だがしかし、九延毘古はその速さを打倒する。

 

「『オレは全てを知ってるから、アンタの早さを奪うことだって容易なんだよ!』」

 

 そう言いながら懐から取り出したのは、凄く見覚えのある猟銃だった。――だが、彼の猟銃は錆び付いてもう使い物にならなくなっていたはずだ。それにあの猟銃は、畑に放り捨ててきたはず。今の彼がそんなものを持っているはずがないのだが……。

 

「『オレは一歩も動けない代わりに、ありとあらゆるものに手を伸ばせる得意な力を持っててね。まぁ簡単に言うならば、八雲ちゃんの隙間に少し似てるかな? そんでオレは、自分の知識を現実にするために必要なものを――瞬きするよりも早く揃えることができるってわけだ!』」

 

「ッ!?」

 

 前触れなく発射された銃弾が、文の頬を掠める。案山子の銃弾を長いこと喰らっていた文だからこそ分かる。――あの人の銃弾とは、比べ物にならないぐらいに速すぎる……ッ!

 だが、速さには自信がある。数多の弾幕勝負を速さだけで切り抜けていた私に、抜けない速さなんて存在しない!

 黒い翼を羽ばたかせ、久延毘古に向かって一直線に飛翔する。

 久延毘古はニィィと口角を歪ませ、

 

「『幼いころに習わなかったのか? 空を飛ぶときは――前後左右全てを警戒しろってなぁ!』」

 

 直後、文の後頭部に鈍痛が走った。

 あまりの痛みに思わず意識を失ってしまいそうになるも、根性だけで気絶をギリギリ回避する。後頭部を手で抑えると、ぬめっとした感触が手の平を襲った。慌てて手の平を見てみると、そこには赤い液体がべっとりと付着していた。

 そして、文は気づいた。自分の後頭部を襲ったものの、正体を。

 それは――

 

「さっきの、銃弾……ッ!?」

 

「『まぁ、今回は警告なんで、貫通弾にはしなかったけどなー。っつーかお前、俺の話は最後まで聞けって。別にオレ、コイツの身体を乗っ取る気なんて、一ミリもねえよ?』」

 

「―――――――――、え?」

 

 予想にもしなかった言葉に、文の頭を困惑が襲う。血は大量に出ていて今にも意識を失ってしまいそうだったが、今の言葉の真相を聞くまでは意識を失う訳にはいかない。

 ぐぐぐっと体に力を込める文に溜め息を吐きながら、九延毘古は言葉を続ける。

 

「『「コイツ」は結構お前のことが好きみてえだけど、オレが好きなのは、現在進行形でこの戦いを観戦しているいつまでも子供っぽい女の子なんだよ。結婚して子供も産んで天寿を全うしたくせに成仏しきれてねえ、あのバカな幽霊のことだけを、オレはずっと愛し続けていたのさ』」

 

「……それが、あの人の身体を奪わないことと、どう関係してるんですか……」

 

「『まぁ、簡単な話だわな』」

 

 そう言って久延毘古は子供のような笑みを浮かべ、

 

「『アイツに告白する。その願いさえ叶えられりゃ、もうこの身体は用済みなのさ』」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 気づいた時には、あの案山子が目の前にいた。

 自分の手で作って自分の手で整備し続けてきた案山子が、リンゴ飴をぺろぺろとなめている少女の前に、いつの間にかあらわれていた。

 だが、その中身はかつての案山子とは違う。

 案山子を神格化した存在である、九延毘古。山の神、農業の神、田の神、という側面を持つ、完全無欠の八百万の神だ。

 少女はリンゴ飴をペロッとなめ、

 

「女の子を傷つけちゃダメだって、あれほど言ったのに……まーた私の約束シカトですか?」

 

「『いやいや、陽香ちゃん。今回のはあっちから仕掛けてきたんだから正当防衛じゃね? っつーかスゲー久し振りだな。なに、かれこれ五百年ぶりくらい?』」

 

「…………そんなに経ってませんて。というか、あたしの案山子になに勝手に憑依しちゃってるんですか。さっさと出て行っていつもの姿に戻ってください。――どうせ、その身体から出ていっても、案山子の自我は保たれたままなんでしょう?」

 

「『………………おいおい陽香ちゃん。即行のネタバレは禁則事項だって習わなかったのか?』」

 

「知りませんから、そんなこと」

 

 「『はぁぁぁ』」と露骨に溜め息を吐くと、直後の案山子の身体から長髪の美青年が飛び出してきた。身に纏っているボロボロな着物が、妙な哀愁を漂わせている。

 青年は呆れたように頭を掻き、

 

「っつーか、こんな形で告白させられるオレの身にもなってくれね? 普通さ、こういう時って夜空を見上げて抱き合いながら、『愛してるぜ、ベイベー』『いやん、私も!』みたいなシチュエーションになるべきなんじゃね? いやもう、相変わらず常識が通じないねえ、陽香ちゃんは」

 

「うるさい黙れ。というか、告白なら地獄で死ぬほど聞いてあげますから、今はちょっと黙っててください。急がないと即売会が終わっちゃうじゃないですか」

 

「うぇーい、相変わらずの腐女子っぷりに開いた口が塞がらねえぜェ……」

 

 露骨に嫌そうな顔でリアクションをする久延毘古。

 そんな彼が依代としていた案山子はいつの間にか意識を取り戻していたようで、「え? え? なにこの状況何で俺こんなとこにいるのそして何でこんなところに貴女がいるの!?」と凄まじいほどの混乱に襲われているようだった。

 そんな案山子に少女は苦笑を浮かべ、更に友人に体を支えられながらこっちに近寄ってきている鴉天狗の少女を視界に収め――

 

「――本当に久しぶりですね、涼夢(りょうむ)

 

 ――ニッコリと、大人のような笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 夜畑涼夢(よるはたりょうむ)

 そんな凄く非常識的な名前こそが、射命丸文が好きになった案山子の本名であるらしい。

 

「といっても、この名前を思いついたのは地獄に行ってからなので、あたし以外は誰もこの名前を知りませんでしたけどね」

 

 あははは、と快活に笑う少女を見て、(うっかりさんなのかな?)と思ってしまった文は悪くない。

 はたてによって応急処置を施された文と意識を取り戻した案山子――涼夢。そして元の姿を取り戻した久延毘古と陽香と名乗る少女の四人は、博麗神社のシンボルでもある巨大な梅の木の下にまで移動していた。彼らの周囲では、相変わらずのバカな連中が相変わらずの酒盛りを続けている。

 ぶすーっと不貞腐れた様子の九延毘古から目を逸らし、少女は話を続ける。

 

「実のところ、この案山子を造るようにあたしにアドバイスをくれたのは、何を隠そうこのチャラケポンチだったんです」

 

「ちょ!? 陽香ちゃん流石にそれは酷すぎない!? 確かにオレはおチャラけてるけど、流石にポンチって言われちゃー黙っちゃいれねえよ!?」

 

「黙れ」

 

「オーライ了解だだから猟銃向けないで!」

 

 どこから取り出したのか相変わらず不明瞭な猟銃を突きつけられ、九延毘古は両手を上げておどけてみせる。文といい久延毘古といい、人外は猟銃に極度に弱いらしい。

 久延毘古の額に猟銃を突きつけたまま、少女は続ける。

 

「病弱で家から全然外に出ることさえできなかったあたしはある日、このチャラケポンチと出会いました。どこからどう見ても不審者にしか見えないこのチャラケポンチは、満面の笑みでこう言ったのです。――神であるオレはアンタと一緒に居られねえ。だから、オレの依代として、案山子を造っちゃくれねえか――と」

 

『……………………うわぁ』

 

「オイオイお前らなんだよそのドン引きフェイス! 別にキモくなんかねえだろ? 好きな奴と一緒に居るための方法を提示してやったってだけのはな」

 

「黙れキモ男」

 

「今掠った! 銃弾絶対に顔掠った!」

 

 ドタバタ騒いで暴れる久延毘古から視線を外し、陽香は続ける。

 

「もちろん、最初は断りました。別にあたしはこんなキモ男のことなんて好きでもなんでもなかったですし、そもそも私は凄まじい程に手先が不器用でしたので、丁重にお断りしたのです」

 

「……でも、結局は了承した、と?」

 

「ええ。――十年も泣き付かれましたので」

 

『…………………うわぁ』

 

「お前らマジで許さん! もうココでぶっ殺」

 

「黙れ」

 

「ぎゃぁああああああああああッ! ひたっ、額に風穴が空いてるぅうううううううううッ!?」

 

 猟銃で頭を撃ち抜かれても尚ギャースカ騒ぎたてている神様に、涼夢と文は頬をヒクヒクと引き攣らせる。――なんでこの神様、こんな扱いされてるのに、この人に惚れてるんだろう。

 その後も、少女の話は続いた。

 仕方なく作った案山子に久延毘古が憑依したのは良いものの、『もうコイツ出てこないでほしいな』という少女の想いが強すぎたせいで案山子に植え付けられてしまっていた人格が、九延毘古を封印してしまった――という事実。

 人格はあるが話せないし動けなかった案山子を大切に扱ったことで、涼夢という存在が生まれてきてしまった――という事実を。

 そして。

 陽香は涼夢にお礼を言う為だけに、わざわざ地獄から連れ出されてきた――という事実を。

 

「本当はお礼なんて言わずにずっと見守っていたかったんですけど、流石に期間を引き延ばしすぎたかなーって思いまして。いやまぁ本当は同人誌を買い漁ってから来ようと思っていたんですけど、映姫さまのお怒りモードが怖くて怖くて。故に、こうして着のみ着のままでやって来たという訳ですよ」

 

「…………あなたのご主人様って、凄くイイ性格してますね」

 

「…………わざわざ言うなよバカヤロウ。俺だって今スゲー悲しんでるんだからさ」

 

「??? 何か言いましたか?」

 

『いえ! なにも! だから猟銃をお納め下され!』

 

 ニッコリ笑顔の癖に両手で二丁の猟銃を構える陽香に、涼夢と文は迷うことなく五体投地する。

 陽香はニコニコ笑顔のまま猟銃を久延毘古の顔面に投げつけ、

 

「あ痛ぁっ!」

 

「そんな訳で、あたしはこの場をお借りして、涼夢にお礼を言わせてもらおうと思います。――あたしの友達になってくれて、ありがとう」

 

「…………いやあの、流石に状況がコメディチックすぎて、全然感動できねーんで」

 

「きっ、傷が塞がらねえ! くそっ、まだ本調子じゃねえからかぁああああああああッ!」

 

「あたしの子孫たちの為に畑を護ってきてくれて、ありがとう」

 

「いやだから、あなたの真下で暴れ狂ってる神様のせいで、全然感動できないんですけ」

 

「ふぅーっ! ふぅーっ! おさまれ、痛みよおさまれーっ!」

 

「もうあなたは、あたしたちの呪縛に縛られる必要はないのです。そこの女の子と一緒に、幸せに暮らしても、いいんですよ?」

 

「だーかーらー! せめてそこの神様黙らせてからこのシーンに繋げろっつってんですよ! スゲー感動的なシーンのはずなのに、全然心震えねーんだよ! 自分でも驚くぐれーに空っぽな気持ちだわ! まさに虚言! 全然思いが伝わってこないナニコレ不思議!」

 

「お、落ち着いてください、案山子さん! 混乱のあまりキャラが崩壊してしまっています!」

 

 あくまでもマイペースな陽香と未だにのた打ち回っている久延毘古。そしてツッコミをしすぎるあまり自分のキャラを見失ってしまっている涼夢を前に、文は酷く疲れ切ってしまっていた。とりあえず涼夢の身体に抱き着くことで引き止めているのは、少しだけ欲望が反映されていたりいなかったり。

 しかし陽香はあくまでもマイペースを貫き通すつもりの様で、苦しみ呻いている久延毘古の頭をガシッと掴むや否や、

 

「あだだだだだだだだッ! かみっ、髪が引き千切れる! 神なだけに――げぼらぁ!」

 

「それでは、あたしは地獄に戻って同人誌即売会に参加しなくてなならないので、これでお暇させてもらいます。ああ後、――避妊なんてしなくてもいいですからね、涼夢」

 

「よーっし分かった。お前ら二人その場に正座しろ! 常識とは何たるかをこの俺が痛みと共に刻み込んでやる!」

 

「……………………私もう、知ーらないっと」

 

 そんな風に冷たい言葉を放ちながらも――

 ――文の顔には子供のような笑顔が浮かんでいた。

 




 感想・批評・評価など、お待ちしております。


 次回、エピローグ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。