地球で病死したはずの主人公、神様にユニークスキルを持たされて異世界に転生させられる。主人公は生き残るために修行しようとするが、ユニークスキルが名前のわりにチート過ぎて……?



 『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』がアニメ化されるので、その二次創作をこの度書かせていただきました。
 サトゥーなどのメインキャラは一切出ず、オリ主の転生してからの人生を本人視点から書いただけのものになります。「出来れば、こんな感じの話を誰か書いてくれないかなぁ」と思いながら書き記したものですので、はっきり言ってつまらないと思う人がほとんどだと思います。それでもよろしければお読みください。

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 サトゥーなどのメインキャラは一切出ず、オリ主の転生してからの人生を本人視点から書いただけのものになります。本格的なデスマの二次小説とはとても言えないので、ご注意ください。
 
 また、「転生」「チート」「女主人公」などに嫌悪感を持つ方は、お読みしないことを推奨いたします。作品内の設定についても誤解している部分があるかもしれませんが、お許しいただけると幸いです。

 「出来れば、こんな感じの話を書いてくれる人が出てこないかなぁ」と思いながら執筆したものですので、はっきり言ってつまらないと思う人が大多数だと思います。それでもいいという方のみ、読んでくださることをお勧めいたします。

 それでは、始まります。


アラフォーからはじめる異世界独奏曲

 突然だが、私は死んだらしい。

 

 私は紫色の空間にいて、なにやら神を名乗る存在と対峙している。その自称神様は、死んだはずの私に私自身の死亡宣告をするという世にも奇妙なことをしでかした後、ユニークスキルという特殊な能力を付けて異世界に転生させてやると言ってきている。

 

 正直、何を言ってるのかサッパリだ。異世界って何だ? ユニークスキルって何かのゲームか? 

 教えてほしいと問いかけても、自称神様――以後「カミサマ」と呼ぶことにする――は不要とか不能とか、単語で返事してくるのでコミュニケーションが取りにくい。S○riとかP○pperの方がずっとマジだな、とか考えながら、どうしてこうなったのか振り返っていた。

 

 最近体の調子が悪くなって病院に行ったら、まさかの「余命一週間です」宣告。

 半年とか一年とかならともかく、一週間はいくらなんでも短すぎるだろとか思ってたら、すぐさま入院。その後いろいろあったが、結局「ああ、自分は死んじゃうんだ」という実感もろくに持てないまま昨日まで病院のベッドの上で寝ていたはず。今思えば、入院してからは意識がかなりぼんやりしていたかもしれない。

 

 あの状態で死んでしまったというのなら、私の自分の死に対して「命ってこんなにもあっけないんだな」という感想しか抱けない。それほどまでに私の死は、病気で苦しんでいる人が抱える苦悩とか苦痛とか生への渇望とかを伴わないものだった。

 こういう場合、遺された家族のことを心配すべきなのだろうが、私の両親は私一人を残してとっくの昔に他界しているし、アラフォーになっても未婚+処女な私には子供も夫もいないので、そういう意味では独り身で良かったと思っている。一応親戚もいることにはいるのだが、両親が亡くなったのは私が成人してからであり、小説のようにお世話になったとかはないので正直そこまで気にはかかっていない。少し薄情かもしれないが。

 

 でも自分の死後の後始末はどうなるんだろうとか考え始めたところで、目の前に紫色の球体が浮かび上がった。

 いきなり目の前に現れた不思議物体に対してリアクションに困っていると、「カミサマ」から「接触」とか「入手」といったメッセージが送られてきた。どうやらこれに触れてほしいらしい。

 

 私は右腕を不思議物体に向けて伸ばしていった。

 手が物体に触れようとしたその時、水面に触れるような感触を覚えた後、伸ばした勢いのまま腕がずぶずぶと飲み込まれていった。なんだこれ? ブラックホールみたいだ。

 

 手に取ろうとしたら水に突っ込むような感じになって驚いてしまい、慌てて右腕を引いて球体から引っこ抜いたら、手に紫色の光が纏わりついていた。しかも三つも。なぜかエアー抽選機を思い出した。

 

 「選択」というイメージが「カミサマ」から送られてくる。やっぱりエアー抽選機みたいな感じなのか。

 手にした光を握りしめると、今までの人生では感じたこともないような、「体に力が漲ってくる」という言葉がふさわしい感覚が伝わってくる。

 漫画の中でしか有り得ないような「覚醒」という現象が自分に起きたことに困惑していると、頭の中に言葉が浮かんでくる。「限界超越」、「器用貧乏」、そして「第二者観」の三つだ。たぶんこの三つが、私が手に入れた力の名前だろう。

 

「なにこれぇ」

 

 思わず口に出てしまった。

 「限界超越」は分かる。追い詰められたときに真の力や限界を超えた力を発現するとか、小説や漫画にありがちな展開を起こす能力だろう。

 だが「器用貧乏」ってなんだ。能力というより私への当てつけじゃないのか。「第二者観」とか完全に造語だし。

 

 「カミサマ」は私が三つの能力を獲得したのを確認したら、また曖昧なメッセージを送ってきた。

 なんとか理解したところ、どうやら今しがた手にした力を使いながら、転生した先の世界で神々と戦ってほしいらしい。

 戦いの「た」の字も知らない私にどうしろと? しかも三つのうち二つが訳わからない力だし。「器用貧乏」で全能の神にどう勝てと?

 

 鍛えれば強くなる、精進しろ。そんな感じのメッセージを「カミサマ」から受け取り、私の意識は紫色の闇に溶けていった。

 

 

 ◇

 

 

 二度目の人生を迎え、私が現状を把握できるようになったのは、転生してから5年は経った頃だ。

 

 意識自体は多分母親のおなかの中にいた頃からあったのだろうが、やはり脳が出来上がっていないためか夢の中にいるようにぼんやりとした状態が長い間続いていたようだ。

 視力や聴力も同様で、はっきりとした感覚となるまで一年はかかったかもしれない。意識ははっきりしているのに、ぼんやりとしか周りが見えず、耳も聞こえづらいのは結構怖かった。

 

 ようやく目と耳が出来上がり周りの状況を確認することができた頃、自分が洋風の一軒家で生活していたことに気づいた。

 数人の女性が住み込みで私の面倒を見てくれていたらしい。一体どんな家族構成なのだろうと、私は彼女たちを存在を把握して(二度目の人生では)初めての疑問を抱いた。

 

 やはりというかなんというか、この世界――少なくとも私の生活圏内――では日本語は使われていないようで、言葉を覚えるのに時間がかなりかかった。とはいえ、赤ちゃんの頭は言語を覚えやすいように出来ているのか、我ながら信じられないくらいスラスラ覚えていった。

 

 その後、食事の仕方や服の着方を女性たちに手伝ってもらいながら、私はスクスク育っていったが、一つだけ疑問に思い続けていたことがあった。

 私の髪は薄紫色をしているのだが、私のお世話をしてくれる女性たちの誰とも髪の色が一致しない。つまり、彼女たちの中に私の母親はいないかもと思っていたのだ。

 もちろん父親からの遺伝というのも考えられるが、今まで父親らしき男の人は見たこともない。せいぜい執事みたいな人が時々訪れるくらいだ。

 彼女たちの私に対する態度も、自分か知り合いの娘に接するようなものではなく、まるで目上の人を相手をしているかのように丁寧なものだったのだ。

 

 3歳くらいから勉強が始まり、父親や母親といった親子関係についても知識を得るようになった。なので、私は4歳の時に思い切って「わたしのおとーさんはどこー?」とお世話をしてくれていた女性の一人に尋ねた。

 彼女は突然の質問に戸惑っていたようだが、幼い私でも分かりやすいように――そして心を傷つけないように――答えてくれた。

 

 曰く、私のお父さんは国でも非常に高い地位にいるが、わけあって私に会えないということだった。

 なるほど、よく見れば彼女たちの服装は、一般家庭の物よりもずっと上質な代物に見える。なにかしらの事情で表ざたにできない私を、彼女たちに命じて世話させているということなのか。

 

 正直もっと聞きたいことがあったのだが、これ以上踏み込むと疑われてしまうだろうからと、それ以上追求するのはやめて彼女にお礼を言った。

 私がそれ以上質問しないと分かると、彼女はホッとした様子を見せた。どうやら、私は厄介な事情を抱えて生まれてきてしまったらしい。

 

 後で分かったことだが、原因は私の髪の色にあったらしい。

 なんでも私の父親はこの国の次期公爵であり(ちなみに祖父は公爵だった)、彼と国王の娘との間にできた娘として私は生まれたらしい。

 だが、この世界では私の薄紫色の髪は昔から不吉な色とされているらしく、公爵家に生まれた娘が忌み子なんて縁起が悪いにも程があり、結局()()()()()()()()()は死産とされ、公爵家とは関係のない人間として密かに私は育てられてきたというわけだ。

 

 聞く人が聞いたら怒るかもしれない話だが、仮に正式な公爵家の娘として育ててもらったとしても、忌み子が生まれた家なんて評判ガタ落ちだろうし、私の扱いも酷いものになっていた可能性が高いだろう。場合によっては殺されていたかもしれない。

 そういうことを考えたら、こうして生かしてもらって、おまけに好待遇で生活させてもらっていることに感謝すべきなのだろう。

 おまけに、私が生まれた数年後に、とある侯爵家が私と同じ紫色の髪をした呪われ子に滅ぼされたらしい。もし公爵家にいたら、お家を守るためにと有無を言わさず殺されていただろう。ますます顔も知らない父や祖父の英断に感謝するほかない。

 正直、貴族として振舞うなんて自分には無理そうなので、意外とありがたい結果に収まってくれたという気分だ。

 

 さて、そんなこんなでオーユゴック公爵家から(ある意味)絶縁された私は、オーユゴック公爵領にある都市の一つ、グルリアン市で表向き平民として育てられることになったわけだ。

 というか、この都市の銘菓「グルリアン」だとか言って時々出されるお菓子が、おはぎそっくりなんだけど……。あれか。「グルリ(アン)」ってか。もしかしたら私と同じように転生した人はたくさんいるのかもしれない……。

 

 このまま平和に生きていたいとは思うが、どうやらこの世界には、ゲームやアニメのように魔物とかいうモンスターや、魔法、スキルといったものが存在しているらしい。予想はしていたが、ヘラルオンとかガルレオンとか、神と呼ばれる存在も確認できた。

 神々と戦うために力を持たされて転生した以上、向こうから攻撃される恐れもある。それに、魔物や魔族、その上位の魔王は人間を襲うらしく、戦う術を持たないままではあっけなく第二の幕切れを迎えてしまうだろう。

 そうならないために、力をつけるしかない。なんだかんだでもらった第二の命を無駄にしたいと思うほど、私は自分の命に執着を持てない人間ではないのだ。

 

 自己確認(セルフ・ステータス)。自分の覚えている(魔法含む)スキルの種類とレベル、数値化された筋力や知力、体力などを把握することができるスキルだ。ユニークスキルである「限界超越」、「器用貧乏」、「第二者観」の三つもしっかり表示されていた。

 スキルというのは一応周知されているようだが、この自己確認(セルフ・ステータス)は一般的には知られているものではないらしい。ギフト(先天スキル)という欄に表示されていたので、もしかしたら転生者特有のスキルなのかもしれない。

 にしては便利なスキルで、スキルポイントというものがあり、それを割り振ることで一覧の中から好きなスキルを選び放題らしい。さらに、自身のレベルが上がるごとにスキルポイントが追加され、能力値と同じように割り振ることができるらしい。

 

 ちなみに、どうやらスキルの使い方は、そのスキルを使おうとする、もしくは使っている最中にだんだんと理解していくものであり、何も知らない私でもスキルをそれなりに使うことができた。最も、自己確認(セルフ・ステータス)やユニークスキルを除いて、知識がないことはスキルがあっても出来ないみたいだが。

 スキルが私に「こうすればいい」と教えてくれていると言っても過言ではないだろう。

 

 だが、ここで私のユニークスキル「器用貧乏」が早速発動してくれた。

 

 なんとこのスキル、他のスキルの獲得を容易く行わせ、さらに一気に実用可能なレベルに押し上げてくれるものだったのだ。

 例えば、「両手剣」スキルを覚えるとする。木刀を持って数回素振りして、「両手剣スキルLv3」獲得である。

 なんという成長速度。しかもそれが、特殊なスキルを除く全てのスキルに対して適用なのである。傍から見れば、自分は才能の塊に見えるだろう。自分のスキルとはいえ、馬鹿にしてごめん。

 最も、「器用貧乏」と言うだけあって、Lv3以上は自力で上げる必要があるが、それでも十分強力過ぎるスキルだ。初めて自己確認(セルフ・ステータス)でスキルを確認したとき、Lv3のスキルがズラッと並んでいて驚いたのは記憶に懐かしい。

 

 そんなこんなで転生特典ポイントやらは、「器用貧乏」が反映されないギフト(先天スキル)の確保に全部回した。というか、そのポイントが使えるのは最初からギフト(先天スキル)しかなかったかもしれないが。

 とりあえず、自分のスキルを隠せる技能隠蔽(ハイド・スキル)と物をため込んでおける宝物庫(アイテムボックス)を入手しておいた。

 鑑定(アナライズ)能力鑑定(ステータス・チェック)など、ヒトやモノの情報を得るためのスキルも存在したが、似たようなスキルを既に「器用貧乏」で入手していたため、これから入手する可能性を考えてやめておいた。まだ先のことだが、ヤマト石という触れた人間のステータスを表示する石でステータスを確認した際に能力鑑定(ステータス・チェック)を入手したこと、すべての鑑定系のスキルを得た時に鑑定(アナライズ)を得たことを考慮すると、この判断は正しかったのだろう。

 

 また、同じく使えなさそうなユニークスキルだった「第二者観」も、予想に反して使えるスキルのようだ。

 簡単に言ってしまえば、私が相対している単独・複数の人間の頭の中が分かる能力だ。今考えていることだけでなく、私が知りたいことも相手の知りうる限り把握することができるみたいだ。

 今のところは会話における相対に限るが、もしかしたら戦闘で、魔物相手でも通用するスキルかもしれない。無理を言うようかもしれないが、神々を相手にするかもしれない状況下で戦闘経験を積んでおかないのはあり得ない。将来的に戦わせてもらうようにしなければ……。

 

 無論戦闘に限らず、交渉事や情報収集にも使えるスキルだろう。最も、「相手の考えていること=真実」とは限らないので過信はできないが。それでもオンオフの切り替えができる分、小説とかのように「心を読み過ぎて病んでしまう」という事態は回避できることを考えると非常にありがたいスキルだろう。

 「器用貧乏」ほどじゃないけど、「役に立たなそう」とか思ってゴメンね。

 

 残るユニークスキルは「限界超越」のみだが、これだけは使い方が未だに分からない。

 恐らく、戦闘になった際に初めて使用可能となるスキルなのかもしれない。使える時期にならないと使い方や効果が分からないのは、不安を掻き立てられるようで怖い。

 

 だが、魔物を相手取るにしても、ユニークスキルに頼るのではなく、レベルを上げてスキルや能力値を向上させることが大切だろう。スキルとは別に、戦闘経験を積む必要もあるのかもしれない。

 幸いにも、魔物を倒したりしなくても、筋力トレーニングや読書なんかでもレベルを上げることはできるようだ。魔法の本をたくさん読むことで、レベル上げと魔法系スキルの獲得を両立できるかもしれない。無理かもしれないが、今度せがんでみよう。

 

 「限界超越」がどんなスキルか、おそらく戦闘になるまで把握できない以上、それまでに自分がやっておくべきことは以下の通りだろう。

 

①筋力トレーニングでレベル上げ

②読書でレベル上げ+情報収集

③魔法の本を読んでレベル上げ+魔法系スキルを「器用貧乏」で獲得

自己確認(セルフ・ステータス)のスキル欄で入手したいスキルを見つけ、可能な限り「器用貧乏」で入手

⑤レベル上げで入手したスキルポイントを、使えそうなスキルのレベル上げに割り振り

 

 とりあえず、こんな感じでいこう。人間相手の模擬戦が受けられるのなら、可能な限り受けておきたいと思う。

 戦いに人生をささげてしまうような感じになるかもしれないが、どのみちこの世界は弱いものに優しくなさそうだ。だったら、与えられたものを最大限生かして強くなろう。

 

 私の二度目の人生はまだ始まったばかりなのだから。

 

 

 ◇

 

 

 転生してから25年、いろいろあった。

 死ぬかと思った時もあったが、なんとか切り抜けてきたのは、多分運とユニークスキルによるところが大きいのだろう。

 

 といっても、迷宮都市セリビーラの迷宮に籠ってレベル上げしていることがほとんどだったのだが。

 別に迷宮にしか魔物が沸かないというわけではないが、やはり迷宮が一番魔物と遭遇しやすいような気がしたからである。迷賊に出くわしても、「第二者観」ですぐ判断できた。

 探索者の名前登録が自由で良かった……。もしヤマト石を持ち出されたら、公爵家との関わりが明らかにされるところだった……。

 

 探索者として活動することを認められたのは、私が15歳くらいのころだ。12歳の頃から魔法について教わり、3年ほど魔法の練習と戦闘訓練を積ませてもらって、ようやく許可をもらえた。「詠唱」スキルを獲得するまでが一番大変だったよ……。

 

 魔法を学ぶことに関しては許してもらえるかどうか結構懸念していたのだが、意外とあっさりと許してもらい、さらには全面的に協力してくれた。

 よく許可してくれたな、とも思ったが、この裏には、私が絶縁された後に生まれた同腹の妹である「リーングランデ・オーユゴック」の存在が大きいと私は見ている。

 

 10歳の時に飛び級で王立学院に留学、2年で学士号を得て、風と炎の魔法を上級まで修める、失われたとされていた爆裂魔法、破壊魔法の2種類を復活させる等々、後世にまで語り継がれるだろう偉業を成し遂げた天才は、幼いころから既にその片鱗を見せつけていたらしい。

 そこに彼女の姉である私からの「魔法を習いたい」宣言が来たもんだから、「もしかしたら」と思い魔法を学ばせてみた、というところだろう。

 もしかしたら私にも本来それぐらいの才能があったのかもしれないが、「器用貧乏」なんてものを持っているため、結局魔法の才能が私にあるのかないのか分からなかった。それでも周りは天才だと持て囃してくれたが。

 

 そうそう、そういえば迷宮で彼女と何度か顔を合わせたこともあった。彼女は13歳から15歳ぐらいまでの間――私の歳でいうと16歳から18歳の間だ――、迷宮で魔術を磨きながら研究をしていたのだ。

 やはりというかなんというか、彼女は私を姉だと知らないようで、最後まで気づくことはなかった。まあ、わざわざ私から言う必要のあることではないのだが。

 

 公爵家という国でも有数の高貴な家に生まれたからか、それとも生まれながらの天才だからなのか、高飛車な感じだというのが彼女に対する私の印象だ。もっとも、心根は悪い子じゃなくてよかった。

 爆裂魔法、破壊魔法も目にしたことがあるが、とんでもなかった。本物の天才は違うなぁと実感した瞬間であった。ちなみに後でこっそり「器用貧乏」で習得させてもらった。

 

 「器用貧乏」といえば、最後に効果が分かったユニークスキル「限界超越」には何度も助けられた。

 「器用貧乏」や「第二者観」もたいしたものだが、「限界超越」の効果は、私が思っていた以上に凄まじいものであった。

 

 「限界超越」は、予想していた通り己の限界を超えた力を発揮するもので、なんと発動時のレベル+50レベルに相当する値まで各能力値が引き上げられ、発動時から1時間経過するまで能力を向上させ続けるという驚異のスキルだった。

 スキル発動、及びスキル発動中になんらかの制約が掛けられるということはなく、1時間というリミットは長すぎるくらいだった。まあ、発動から1時間が過ぎたら、急激な能力向上の反動か、レベルアップ痛――大幅にレベルアップすると筋肉痛のように全身が痛くなる時がある。この痛みを私はレベルアップ痛と呼んでいる――に似た激しい苦痛が全身を襲い、一日経つまで動くことすらできないので、制限時間が来る前にいろいろと対策しておかないといけないのだが。

 

 さて、ここまでが私の想定していた範囲内の「限界超越」の効果だが、実はもう一つ、大きなメリットがあった。

 

 自分以外の人間がいないことを確認してから、私は初めて戦闘で「限界超越」を使ってみた。すると体に信じられないほどの力がみなぎり、通常時では結構手こずる相手であるはずの魔物を一瞬で葬り去っていた。

 自己確認(セルフ・ステータス)で自分のステータスを確認したときは、想像通りの効果とはいえ、予想以上の恩恵に驚いた。

 が、制限時間という可能性も考慮に入れていた私は、すぐさま迷宮から出て、自分の自宅にとんぼ返りした。その判断は正しく、自宅という安全地帯の中で一日中ベッドの中で存分に苦痛に悶えることができた。迷宮の中にいたままだったら、時間が切れて身動き取れない私は、魔物の餌か迷賊の()()になっていただろう。

 

 問題はこの後である。一日経ってようやく激痛から解放された私は、グッタリとした気分の中で、この忌々しい反動に対してどう対策を取ろうかと思いながら、他にデメリットはないかどうか確かめるため自己確認(セルフ・ステータス)で自分のステータスを見た。

 

 結果として、異常はあった。自分のレベルが5も上がっていたのである。

 

 あの時は自分の目を疑ったが、何度確認しても「限界超越」発動前のレベルより5も高いレベルになっていたのである。

 レベルの数値だけでなく、各能力値の値も、スキルポイントでさえ、上昇したレベルに比例して増えていたのである。

 

 これが、「限界超越」がもたらした第二の恩恵である。

 すなわち、このスキルは()()()()限界を大きく超越した力を発揮させてくれるだけではなく、()()における限界すらもレベルアップという形で超越させてくれるというわけだ。ちなみにどちらも、平常時のレベルがいくつであろうとスキルによるレベルの上昇幅は同じみたいだ。

 ……まあ確かに、「一度限界という『枷』を壊したのなら、反動で力を失うのも最もだとしても、通常時における能力が向上するのもアリなのでは?」と思ったこともあるが。

 

 ちなみに、一度戦闘で「限界超越」を使ったおかげで発動の感覚を掴むことができ、戦闘をしていなくとも発動できるようになった。

 つまり、戦闘をしなくとも、反動による激痛さえ我慢すれば、レベルをいくらでも上げることが可能なわけだ。

 

 と言っても、そこまでうまい話はいくらなんでも存在しなかった。

 このスキル、一度発動したら次に発動できるまで三か月という期間を必要とするのである。よって、一年に発動できるのは最大でも4回、このスキルのみによるレベルアップだと20アップまでということなのだ。

 それなら戦闘訓練も積める実践の方がレベルアップ、もとい強くなるのに向いている。それに、「もしものための切り札」というのが「限界超越」の最大の存在意義であると私は考えていたため、三か月の冷却期間がある以上

おいそれと使うわけにはいかなかった。

 

 まあ、通常時でも中層の魔物なら軽く倒せるぐらいのレベルになってからは、次のレベルに上がるまでの経験値がだいぶ多くなってしまったため、ついついレベル上げのために「限界超越」を使うようになってしまったが。

 もちろん「限界超越」を使った後は、窮地に陥ることがないように次の「限界超越」が使えるようになるまで上層でしか魔物を狩っていない。安全第一である。

 

 そのおかげか、今の私のレベルはなんと183である。我ながら、このレベルの高さに笑うしかない。

 レベルっていうのは、普通99で打ち止めになるものなんじゃ……。もしかして、「限界超越」でレベルの限界まで壊しちゃったとか……?

 

 それでも、神々を相手取るには不安が残る。なにせレベルをここまで上げても、まだ魔王とも戦った経験がない。各スキルのレベルもかなり上がっているとはいえ、どこまで通用するのか分かったものじゃない。

 仮に神を相手にする時が来た場合、できれば素のレベルは200は超えておきたい。戦闘経験も積んでおきたいから、今までは安全を考えて下層には行っていなかったが、そろそろ中層よりも強い相手と戦うべきだろう。

 

 いずれにしても、このまま黙って死を迎えるほど私は素直な人間じゃない。そのために、平穏な暮らしにも、遊びや娯楽にも、なによりも女としての幸せにも目をくれず鍛え続けてきたのだから。

 

 ……ええ、今現在処女のままアラサー道まっしぐらですよ。このままだと前世と同じく未婚のアラフォー間違いなしですよ。

 いや、実のところ「戦いにこの身を捧げているから」とか高潔そうな理由で結婚していないわけじゃない。もっと個人的な、私の気持ち的な問題なのだ。

 

 この20年、数えるのも億劫なほどいろんな男性と出会ったのだが、誰一人として「まあこの人でもいいか」と思える人がいなかったのだ。

 別に高望みしているわけじゃないと思う。ただ単に、自分は結婚というものに価値を見出せない人間なのだと主張させてほしい。今思えば前世からそんな人間だったから、男を知らないまま死んだのだろう。

 

 でもやっぱり、前世ならともかく、この世界では結婚していた方がいいんだろうなぁー……。

 この世界は昔の地球とおんなじで、女の人は早く結婚した方がいいみたいだ。

 一ヶ月前からグルリアン市の家に戻ってきているんだけど、侍女たちがお見合いの話ばかり持ってくるんだよなー……。

 でもなー、私は神と戦うことになるかもしれない人間だしなー……。

 

 私よりずっと強い男性が、現れてくれないかなー……。はあ……。




 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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