『先生』を愛した赤龍帝   作:女騎士

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十二話

彼女の隣でグレイフィアさんを待つ事十分少々。

自分たちが立ってる大きな道に繋がってる脇道からグレイフィアさんが出てきた。

 

「あ、グレイフィアさん」

「お待たせ、イッセー君」

 

こちらに手を振ってくれるグレイフィアさんに急に呼び出してしまった事を謝ると、首を横に振ってくれて「大丈夫よ」と応えてくれた。

 

「イッセー君がこのまま教会に行って襲われでもしたら大変だからね。・・それで、イッセー君の隣にいるのがさっき電話で話してくれた女の子?」

「あ、はい」

 

グレイフィアさんの問いかけに肯定した俺は隣でグレイフィアさんを見つめてる彼女に今から教会へ行く事を伝えた。

 

ー○●○ー

 

グレイフィアさんに来てもらった俺は、先程、隣にいた彼女に教えた通りの道順を歩いていると、同性だから話しやすかったのかグレイフィアさんと話していた彼女に呼び止められた。

 

「あ、あの!」

「ん?」

「さ、先程は...ごめんなさい!」

「へ?」

「・・グレイフィアさんに教えてもらいました。兵藤さんはその...Hな事が大好きな人だけどそれ以上に優しさで満ち溢れてる人なんだって。・・だ、だから、先程はモノを拾って頂いたのに睨んでしまってすみません」

「え、あ、いや、アレは、俺も悪かったので...別に謝って頂かなくても大丈夫ですよ」

 

頭をこちらに下げる彼女にたじろいでいると、俺と彼女の会話を静観していたグレイフィアさんがこちらに顔を向けて寄せてきた。

 

「イッセー君、彼女と話してみたら?気さくで良い娘よ」

 

目の前で俺と目が合うと気まずそうに視線を地面に落とすアーシアさん。

そんな彼女に俺は、手を差し伸べた。

 

「・・じゃあ、俺を睨んだ代わりとして、俺と友達になりませんか?」

「と、友達ですか?」

「はい。こうやって知り合ったのも何かの縁だと思うので...ダメでしたか?」

「いや、全然!全然、ダメじゃないです!こちらこそよろしくお願いします!」

 

服の裾で手を素早くゴシゴシと拭いた彼女は俺の手を取った。

・・しかし、握手してから十数秒は立っているはずなのに一向に俺の手を離そうとしてくれない彼女を怪訝に思った俺はそっと俯いていた彼女の顔を覗き見ると、泣いていた。

 

「ッ!」

 

どうして彼女が泣いているか理由が気になったものの他人のプライバシーにおいそれと立ち入るわけにもいかないので、共に困っているグレイフィアさんとどうしたものかと次の行動を迷っていると、震えた声で彼女は呟いた。

 

「・・兵藤さん、グレイフィアさん。すみません。もう少しこのまま居させて貰っても良いですか?本当にすみません」

 

立ち止まらされている俺とグレイフィアさんに謝った彼女は自分が何故、泣いているのか震える声で途切れ途切れだったが話してくれた。

自分は特別な力を持つ子供として他の子と隔離され、ずっと自分より年上の人達と暮らして友人と呼べる存在が居なくて、寂しかった事。

そして、そんなある日、自分が生まれた場所に一人の男が血塗れになって木に背中を預けて倒れていたので自分の特別な力を行使して治癒すると、今迄、自分を見てくれていた歳上の人達が態度を急変させ、蔑視する様になり、独りになってしまった事。

泣いてる理由を説明する為に自分の過去を離してくれた彼女は最後にこう付け足した。

 

「だから、兵藤さんと友人になれて独りじゃないって思って安心したら、涙が出てきました」

 

目尻から溢れる涙とは対照的に口元で笑みを浮かべた彼女は、繋いでいた俺の手を離し、足元に置いていたバッグからハンカチを取り出し、涙を拭いた。

 

「あ、そういえば、まだ兵藤さんには名乗っていませんでしたよね?私、アーシア・アルジェントっていいます」

「アーシアさんか、宜しくね。あと、グレイフィアさんが言ったみたいですけど俺も一応、自己紹介しておきますね。俺は兵藤一誠です。友達にはイッセーって呼ばれてるから、そう呼んでくれたら嬉しいです」

「分かりました、では、イッセーさんとお呼びしますね」

 

涙を拭き終えた彼女に自己紹介された俺は、先程話してる時グレイフィアさんに聞いたのだろうが、一応、自己紹介をしておいた。

まずはじめにするべきであっただろう自己紹介をし終えた俺が再び、教会への道を歩き出すと、アーシアさんはグレイフィアさんの隣へと行き、会話を再開させたのだった。

教会までの道のりもあと半分というところで俺はアーシアさんが言った先程の言葉を思い出していた。

 

(さっきのアーシアさんからの話から察するにアーシアさんは何か回復させる系統の『神器』を持っていて、大切に...いや、言い方を変えれば彼女の能力を利用する目的で彼女に優しくし、自分達、天使側の戦力にしようとしていたが、彼女が誤って堕天使か悪魔であった話の最後に出てきた人物を回復させた為に、敵側も回復させる事が出来ると分かったその大人達が争いになった際に、敵側までも回復されては敵わないと考えて彼女を蔑ろに扱ったのだろうな...ホント、組織の為とは言え、女の子に対して、酷い事するぜ)

 

先日、グレイフィアさんに教えてもらった『神器』に関する知識を思い出しながら、アーシアさんが持つ能力について考えを巡らせていると前方からつい1時間ほど前にも聞こえた声が聞こえてきた。

 

(ん...?)

 

声が聞こえてきた方向へ視線を向けると其処には、1組の兄妹がいた。

 

「うわぁぁああんん!!痛い、痛いよ!お姉ちゃぁああん!!」

「ど、どうしよう...と、とりあえず、傷口を洗わないと...!」

 

段差にでもつまづいたのか、こけて膝を擦りむいている弟と泣き喚く弟見てオロオロしている姉。

何かあった時のために一応、絆創膏を持ち歩いている俺が姉弟達のところへ向かおうとすると、グレイフィアさんと話していたアーシアさんが俺よりも早く駆け寄り、泣き喚く男の子の擦りむいているところへ手を翳した。

すると、薄い緑色をした光が男の子の患部に宿りどんどん傷が治っていく。

 

「男の子がこれくらいの傷で泣いてはダメですよ?」

 

優しく男の子に語りかけるアーシアさん。

 

「グレイフィアさん、今のが...」

「ええ。イッセー君が考えている事であっていると思うわ」

「じゃあ、アレがアーシアさんの『神器』の能力...」

 

アーシアさんが持つ能力に驚かされていると、男の子を直し終えて姉弟達に手を振ったアーシアさんがこちらの方はやってきた。

 

「す、すみません。突然話を遮ってしまって」

「ううん、それは大丈夫なんだけど今のがアーシアちゃんの言ってた...」

「・・はい。この能力は主から頂いた能力なんです。凄いですよね...」

「アーシアちゃん...」

 

過去を思い出しているのか、哀しそうな表情を浮かべたアーシアさんに何か言えるはずもなく俺は口を噤み、グレイフィアさんはアーシアさんの気分を少しでも改善させようと話を再開させたのだった。

 

ー○●○ー

 

「あそこが教会ですよ」

 

前方に見える壁が白く塗られた建造物を指差すと、アーシアさんは表情をパァッと明るくし、ペコペコと頭を下げてきた。

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!このお礼と言ってはなんですけど紅茶をご馳走させていただきたいのですが宜しいでしょうか?」

 

鞄から元いた場所から直接日本へ持ってきたのか、日本語ではない文字が書かれた紙袋を取り出すアーシアさん。

悪魔になった事によって世界中のどの国の言葉も日本語で読めて聞ける様になった俺はアーシアさんが差し出す紙袋に書かれた文章を読んでいると、頭の中に痛みが走った。

 

(あ、そっか。教会は悪魔の俺には敵地も同然だからか)

 

頭に痛みが走った俺はこれ以上、長居するのは良くないなと思い、アーシアさんからの誘いをアーシアさんが不快な気分にならない様に丁重にお断りして、グレイフィアさんと共にその場を後にしたのだった。

まだ仕事が残っているグレイフィアさんと中学校の校門辺りで別れた俺は家へと帰り、ベッドに寝転がりながら天井を見つめていると、ポケットに入っていた携帯が振動した。

 

(リアス先輩...?)

 

誰からの連絡か見てみると自分がつい先日、入部した『オカルト研究部』の部長であり、死の間際だった自分を助けてくれた女性からの連絡だった。

通話ボタンを押すと、低い声音で「伝えたい事があるからすぐ部室に来て」と言われ、切られた。

 

(・・あれ?俺、何かしたっけ?)

 

自分の行動を思い出そうとしたが怒気が含まれた口調だった為、即座に思い出す事を辞め、家を出て、学校へとんぼ返りするのだった。




前話を少し書き直しました。

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