『先生』を愛した赤龍帝   作:女騎士

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十五話

森沢さんとドラグ・ソボールの談議をした翌日。

俺は、昨日に引き続いて契約を取りに、とあるお宅へと赴いていた。

表札を頼りに依頼してきた人物を探し当てた俺は目の前にあるインターホンを指で押した。

すると、少し時間が経過した後、反応があった。

 

『開いています。どうぞにょ』

 

野太い声。男か。

インターホン越しに聞こえてくる声を頼りに依頼主の性別を判断していると俺の心の中で違和感が芽生えた。

・・あれ?今、何か変な声が聞こえなかったか?「にょ」って。

・・いやいや、まさか、そんな語尾あるわけないだろ...そうか。きっと、俺、疲れてんだ。

悪魔に転生して日が浅い上、連日で「契約を取る」って仕事してるから疲れてんだ。そうだ、そうに違いない。

心の中で芽生えた違和感を無理矢理片付けた俺はノブを握って回し、扉を開けた。

すると、其処には、世紀末覇者がいた...。

 

「・・・」

 

鍛え上げられて丸太の様に太くなった腕と脚に近寄りがたい厳しい顔つき。

そして、ゴスロリの服。

・・ゴスロリ...え⁉︎

圧倒的な強者の風格を持った目の前の男性とその男性が着ている服のミスマッチさに驚き、唖然としていると大きな胸筋のせいで今にも千切れそうだったボタンが千切れ、すごい速さで俺の方へと向かってきた。

 

「い"っ!」

 

悪魔になったおかげで視力が良くなった筈なのに、それでも見切れない速さで飛んできたボタンが俺のおでこに当たると、ボタンはおでこに若干、めり込んだ。

シュー、と煙を出しておでこにめり込んで止まったボタンをやっとの思いで外し、おでこをさすりながら目の前にいる男性へ返すと、「ありがとにょ」と礼を述べられた。

・・「にょ」って聞き間違いじゃなかったんだね....。

 

「ミルたんを魔法少女にして欲しいにょ」

「・・へ?」

 

目の前の世紀ま...じゃなくて、ミルたんさんに連れられて、リビングまでやってきた俺が望みを問うとミルたんさんは真顔でそう言ってきた。

ミルたんさんから発せられた言葉に思わず呆けてしまっているとーー。

 

「悪魔さん!!」

 

うぉ⁉︎

 

ピシビシピシッ!

 

「ッ⁉︎」

 

目の前にいるミルたんさんから発せられた先程より少し大きめの声で、俺が驚いていると壁にヒビが入り、ポロポロと微かに壁を作る際に使われたであろう土がフローリングに落ちる。

先程のボタンの件といい、今の声だけで壁に亀裂が走ることといい、人生で体験した事がなかった経験を一日で二回も経験した俺が唖然としていると、ミルたんさんは自分を指差して言った。

 

「ミルたんを魔法少女にして欲しいによ」

「魔法少女ですか?」

「そうにょ」

「・・分かりました。因みに、ミルたんさんが宜しければ魔法少女になりたいと思った経緯など教えて頂けたら幸いなのですが...」

 

自分とミルたんさんの圧倒的な力量差に戦きながら問うと、ミルたんさんはスッと椅子から立ち上がり、俺がいる方向に歩いてきた。

ヒッ!

身体中から迸る闘気の様な何かに反応し、全身の毛穴から汗が噴き出ていると俺の隣を通ったミルたんさんは戸棚を開けてそこから一組のブルーレイBOXを出した。

そして、ブルーレイBOXを持ったミルたんさんは恐怖で足がガクガクと震えだした俺の隣を通り、元いた俺の目の前に置かれた椅子に座った。

・・すっげぇ、あの椅子が何で出来てるか知りたいんだけど....。

自分が座ってる椅子と色や形が違う椅子を見て苦笑していると、ミルたんさんは机にブルーレイBOXを置いた。

 

「これにょ」

「魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブですか。懐かしいですね」

「知ってるにょ⁉︎」

 

ぶぉん!

 

机に置かれたブルーレイBOXのパッケージを見て、つい感想を漏らしてしまうと、俺が知ってると思ってなかったのかミルたんさんが顔を有り得ない速さで此方に顔を近づけてきた。

厳つい男性...最早、漢と呼べるであろうミルたんさんが此方に顔を近づけた事により生じる風が壁に掛けられていたカレンダーを揺らす中、俺がミルたんさんの問いに頷いて答えると、ミルたんさんはパァっと顔を輝かせてブルーレイBOXからブルーレイ・ディスクを取り出し、ブルーレイ・ディスクを読み込む機械にセットした。

そして、そこから始まる魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブの鑑賞会。ーーー俺の長い長い夜が始まったのだった。

 

ー○●○ー

 

「・・それで、契約は取れたの?」

「はい、なんとか頂きました」

 

俺の肩に腕を乗せて背中に寄りかかっているグレイフィアさんの問いになんとか答えた俺は、立ち上がり、眉間を親指と人差し指で挟んで揉んだ。

いやぁ、地獄だった。

なんせ、六時間ぶっ通しでアニメ見てたからなぁ。

アニメを見た後、そのままグレイフィアさんとの修練だった為、眠いったらありゃしない。

ふわぁ、と出そうになる欠伸をなんとか噛み殺していると、いつもならバイクにまっすぐ向かうグレイフィアさんがベンチへと腰掛け、手招きした。

グレイフィアさんの行動に疑問を持ちながら彼女の方へと歩くと、彼女は自分の隣の席を軽くポンポンと叩いた。

「ここに来て」という事なのだろうか自身の考えに不安になりながらもグレイフィアさんにされた様に隣の席へ座ると、グレイフィアさんは俺の左肩に手をあてて自分の方へ引いた。

ポフッ

グレイフィアさんに引かれた事により俺の上半身はグレイフィアさんの太ももの上に乗った。

や、柔らかい...。

上半身の右半分に当たるグレイフィアさんの太もも。

太すぎず細すぎず、ムチッとした大人の女性特有の柔らかさに興奮していると髪の上から頭を撫でられた。

・・これって、もしかして膝枕?寝てていいよって事なのか...?

過去に一度体験した事があり、グレイフィアさんの行動の意図に気付いた俺は体を動かし、ベンチに足を乗せ、頭だけをグレイフィアさんの太ももの上に乗せさせてもらった。

 

「ありがとうございます。ふわぁ」

「ん」

 

恋人の太ももの上という最高の枕に頭を置かせて貰っている俺はあまりの気持ちよさに一分も経たないうちに夢の中へと旅立っていった。

 

ー○●○ー

 

今朝、グレイフィアさんの太ももで眠れた俺は現在、リアス先輩達と共に、町の郊外にある廃屋へと赴いていた。

ここへ、訪れた理由は先程、姫島先輩の元に大公という爵位を持つ悪魔の方から、はぐれ悪魔の討伐命令が出されたからだ。

この、「はぐれ悪魔」というのは爵位持ちの悪魔に下僕にしてもらったのだが、その主人を裏切る又は、殺して主人無しの状態になり、自分が悪魔になった事によって授かった力を行使して各地で暴れ回る者の事だ。

リアス先輩にここへ来る前に教えて貰ったことを反芻していると、何か姫島先輩と話していたリアス先輩が俺に話しかけた。

 

「イッセー、いい機会だから悪魔の戦いというものを経験しておきなさい」

「え⁉︎毎朝、グレイフィアさんに稽古つけて貰ってますけど俺なんてまだ全然弱いと思いますけど」

「そうね。初めて会った時より結構強くなったけど、まだはぐれ悪魔の戦闘を任せられる程、貴方は強くないわ」

 

うぐっ、自分で言っといてなんだけど結構、心が痛むぜ。

リアス先輩のはっきりとした言葉にへこんでいると「でも、」と言って話を続ける。

 

「悪魔の戦いというものは見れる。それに、『悪魔の駒』の特性も見れるわ」

「『悪魔の駒』の特性ですか?」

「そう。じゃあ、見せてあげ...と、向こうから来てくれたわね」

 

『悪魔の駒』の説明を行なってくれていたリアス先輩が向けた方向へ顔を向けると其処には、上半身は女性の身体なのに下半身は言い表す事が難しい異形の存在がいた。

 

「不味そうな匂いがするぞ?でもうまそうな匂いもするぞ?」

 

アイツか。

ここへ訪れた時から感じていた殺気の様な威圧感を放っていた存在を漸く視認できた俺は気持ちの悪い声色で話すアイツを睨む。

すると、隣にいたリアス先輩がアイツの名前を述べた後で殺すと宣言した。

その言葉を聞き、激昂したアイツは両手に槍を携えながら此方に向かってきた。

中々のスピードで此方に向かってくるアイツに俺が驚いていると、リアス先輩は木場を呼び、戦う様指示した。そして、木場へ授けた『騎士』の駒がどういったものなのか説明してくれた。

 

「『騎士』の駒が与えられた者の特性はスピード。『騎士』になった者は敏捷性が格段に上がるの」

 

リアス先輩からの説明を確認すると、木場の速さはどんどん上がっていき終いには目で追えないスピードとなっていた。

す、凄ぇ...!

木場の動きについていけず、やられっぱなしのアイツ。

すると、やられっぱなしだったアイツは木場から視線を外して、近くにいた子猫ちゃんに手を出した。

 

「危ない!」

「近づいてはダメよ、イッセー。ここで見ておきなさい」

「で、でも、小猫ちゃんが...!」

 

アイツの攻撃を受け、制服が裂け、身体に裂傷を負う小猫ちゃんを見て堪らず、助けに駆け出してしまいそうになるがリアス先輩に腕を掴まれ、諭される。

 

「大丈夫だから、ね?」

「・・分かりました」

 

リアス先輩の言葉を信じ、小猫ちゃんの戦いを見ていると、アイツからの攻撃を受け止め、耐えて、拳を捻じ込む小さな女の子らしからぬ姿があった...。

 

ヒュン!

 

っぶねー!

此方に向かって飛んでくる手のひらサイズの廃材を避けると、次々に廃材が飛んでくる。

 

「ちょ、小猫ちゃん⁉︎」

「・・小さくないです」

 

何で声に出てなかった筈なのにわかってるの⁉︎

つい、ツッコミを入れそうになるが、取り敢えず、これ以上廃材を投げられたくないので謝る事にした。

 

「ゴメン!小猫ちゃん。小猫ちゃんは小さくなんかないね」

「・・分かれば良いんです」

 

謝ると、次に投げようとしていた廃材を地面に下ろし、木場と交戦中のアイツの方へと向かった。

 

「見ていて分かったでしょうけど、小猫にあげた『戦車』の駒の特性は馬鹿げた力と屈強な防御力よ。だから、あんな悪魔に遅れをとる事なんてあり得ないのよ」

 

廃材を投げられる俺を苦笑して見ていたリアス先輩の説明により何故、先輩が落ち着いていたのか理解した俺は、姫島先輩の方を見た。

すると、その視線に気づいたのか姫島先輩が俺の方に微笑みを向けてくれた。

 

「じゃあ、最後に朱乃。貴女の力をイッセーに見せてあげなさい」

「分かりましたわ。部長」

 

ウフフと笑みを浮かべ、リアス先輩の隣からアイツの元へと向かった姫島先輩は手元に魔力を込めつつ木場と子猫ちゃんにその場から退くように告げ、放った。

 

バリバリバリッ!!

 

「アアアアアアッ!!!」

 

息も絶え絶えになっていたアイツに襲い掛かる電流の嵐。

姫島先輩から放たれた電流を受け、叫び声をあげながら苦悶の表情を浮かべつつも何とか耐えたアイツに姫島先輩は再度、電流を放つ。

それが、二、三度。

笑みを浮かべながらもアイツを追い詰めていく姫島先輩の姿に戦いていると、俺の表情を見て苦笑したリアス先輩が説明してくれた。

 

「朱乃は『女王』。私の次に強い存在で『兵士』、『騎士』、『戦車』、『僧侶』の能力を併せ持った最強の副部長なの」

「成る程、そうだったんですね。・・あれ、でも、リアス先輩」

「何かしら?」

「『僧侶』っていましたっけ?」

「いる事にはいるんだけどちょっと事情があって、連れてきてないのよ。今度紹介するわね」

「分かりました。ありがとうございます」

 

リアス先輩に質問していると、アイツを攻撃していた姫島先輩が俺達の元へと歩いてきた。

 

「部長、終わりましたわ」

「分かったわ」

 

姫島先輩から報告を受けたリアス先輩は最後、アイツに何か問いかけ、一言二言、言葉を交わした後、手元に作っていたドス黒い魔力の弾をアイツに放出し、アイツは消滅した。

 

これにて、俺の初めてのはぐれ悪魔討伐は終わったのだった。

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