兵藤と別れたグレイフィアは学校からバイクで20分程かかる自宅へと帰り、乗ってきたバイクを駐輪場へと置いた。
ヘルメットをバイクの上へと置いた彼女は、片手を目元にやり体を震わせる。
「私の事が好き...?私も好きよ...でも、また悲しい思いをするだけじゃない」
昨日、今日と兵藤から言われた言葉を思い出した瞬間、過去に経験した体験を思い出すグレイフィア。
凄く性欲が強く、少しバカだけど、とても他人にも人じゃない植物や学校で飼われている動物達にも優しい兵藤に好感を持っている自分がいる。しかし、自分の気持ちを抑えないと悲しんでしまうであろう自分がいる。
心の中に住まう二つの感情が自分を支配していく事を感じたグレイフィアは、頭を左右に振り、バイクから鍵を引き抜いた。
ー○●○ー
その翌日から、グレイフィアは少し変わった。
いつも凛々しい姿で時々可愛らしい微笑みを見せていた彼女が頻繁に考え事をするようになり、その都度悲しそうな顔をするようになったのだ。
数日が経ち、クラスの何人かがグレイフィアの機微に気付き始めた中、グレイフィアの事が好きでそれに学校中の誰よりも早く気付いた兵藤がグレイフィアに問いかけようと近づくと慌てて立ち止まり、その場から逃げ出すようになった。
「せんせ...」
「! ご、ごめんなさいね、桐生さん。私、急用を思い出しちゃって今すぐ行かないといけないからその話は今度でもいい?」
「あ、はい...ん?兵藤どうしたの?」
「・・いや、何でもない」
同じクラスの女子生徒とは話すのに自分とは話してくれず自分が姿を見せると、その場から逃げ出すように立ち去るグレイフィアに、「自分の行動がいけなかったのか」と悔いた兵藤はその女子生徒と共に自分のクラスへと戻っていった。
その日から兵藤とグレイフィアは話さなくなった。
兵藤とグレイフィアが話さなくなった日から二年と少しの日にちが経った。
中学を卒業した兵藤は、小学校時代から腐れ縁である松田、元浜という男の子と共に三年ほど前まで女子校だった駒王学園へと入学し、学園生活を送っていた。
「おーい、イッセー、元浜ー」
「ん?」
「今度ゲーセン行かね?」
「おお、そだな」
「おう、行こうぜ」
授業が終わり、放課後となった現在。
一足早く帰る準備を終えた松田が教科書をカバンに入れていた兵藤をあだ名のイッセーと呼びながら、イッセーの近くで共に教科書をカバンに入れていた元浜に問う。
すると、松田の意見に賛成した二人は忘れ物がないかと机の中を確認し、カバンのチャックを閉めるとイッセーの背後から突然声が聞こえてきた。
「なぁに〜?三バカトリオがエロトーク?」
「おわっ⁉︎ ・・な、何だ。桐生か」
「愛華」
「ちげぇよ。ただ、今度ゲーセン行こうって話ししてただけだ」
突然の声にイッセーが驚くと、元浜が桐生の問いを否定し、先ほど話していた事を話す。
すると、桐生は「私も行くっ」と勢いよく挙手をする。
「はいはい!私も行くから!」
「え"っ⁉︎」
「『え"っ⁉︎』とは何よ。なぁに?私だけ仲間外れにする気?」
「い、いやぁ、お前超強いじゃん?だからボロ負けするだろうなって...」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと手加減するから」
「だ、だけど...」
「あ、そう。・・・じゃあ...おーい!桃ちゃ〜ん!」
「ん?どしたの?愛華」
「今日の朝ね、この三バカがね...」
自分を仲間に入れないイッセー達に悪い笑みを浮かべた桐生は近くで話していたクラスメイトに声をかける。
すると、イッセー達は慌てて桐生の口に手をやり、桐生を止める。
「わぁー!!!かったよ。桐生。お前も来ていいから!」
「・・そう?じゃあ、よろしく〜。あ、ごめんね。桃ちゃん何でもないの」
「・・・?」
桐生の言葉を怪訝に思った女子生徒だったが桐生がすぐ帰ろうとしていたので問う事をやめたのだった。
ー○●○ー
あの子が此処を卒業して一年が経った。
彼はどうしているだろう?
ちゃんと勉強についていけてるかな?
本当にとても優しい彼だけど女の子ばかりにちょっかいかけて嫌がられてないかな?
とても心配だ...。
私が去年卒業した兵藤君の事を思い出していると、肩をポンポンと叩かれた。
「へ?」
「もう、ちゃんと聞いてましたか?グレイフィア先生。今度の休みに校長先生の発案で教員達で飲み会があるんですよ?」
「あ、そ、そうなの。ごめんなさい。ボーッとしてしまってちゃんと聞けてなかったわ」
突然の事で現在何がどうなっているのか分からなくなっていると、隣にいた一色先生が教えてくれた。
兵藤君の事を思い出して全然聞いてなかった為、「ありがとう」と私が謝辞を述べると「いえいえ」と言ってくれた。
時間が進み、夜の八時ごろとなった。
職員室を施錠した私が鍵を警備の担当者がいる部屋へと戻し、駐輪場へ行くと、私のバイクのシートに軽く腰をかけて、携帯端末を操作している一色先生がいた。
それもそのはず。
何故ならば、最近彼女とは共に帰っているからだ。
「ごめんなさいね、待たせちゃって」
「いえいえ。送ってもらう身ですから当たり前です」
夜に若い女性を一人で歩かせる訳にはいかないと思っていた私は先日、何気なくどの辺に住んでいるのかと聞くと家が同じ方面だった為、彼女が赴任してきた四月から共に帰ることになった。
バイクをふらつかせないように足をしっかりと地面につけ固定させると一色さんは出っ張りに足をかけ私の後ろに座る。
「じゃあ、発進するからいつも通りしっかり掴まっといてね」
「はい」
キーを回し、エンジンを回転させた私は念入りに左右をチェックした後、学校を出たのだった。
ー○●○ー
松田、元浜、桐生とゲーセンで遊んだ俺は現在、一人帰路についていた。
ああ、何処かに可愛い子いねぇかなぁ...
初めて恋した女性には話しかけて貰えなくなったし、執拗に迫ってしまったのが悪かったのかな...?
中学の時、初めて恋をしたグレイフィア先生がまだ自分が嫌われる前に見せてくれていた笑顔をふと思い出して歩いているといつのまにか駅前に来ていた。
「・・・いつのまに」
家がある方とは全然、違う方向に来てしまっていた俺が急いで家がある方向へと戻ろうとすると、「ハイ」と勢いよく目の前にポケットティッシュを差し出された。
「え?」
「裏面見てください」
突然の事で訳がわからなかったが取りあえず、見てみると其処には何か絵のような物と『あなたのお望み何でも叶えて差し上げます』という文字が書かれていた。
「これ一体...綺麗だ...」
「は?」
渡されたポケットティッシュの裏面に書かれていた文字の意味が分からずつい問いかけようとし、頭を上げた瞬間、自然と口にしてしまった言葉を聞かれてしまい慌ててしまう俺。
「・・⁉︎ あ、いや、何でもないです」
「そう?じゃあ、何か願いがあったらその紙に願ってね。もしかしたら助けてくれるかもしれないから」
「?」
「それじゃあまたね」
「どういう意味ですか?」と目の前でポケットティッシュを配っていた美女に問おうとした瞬間、話を打ち切ってその場から去っていく美女。
あのカッターシャツから見える谷間。
スラっと長い脚。
そして、綺麗な顔立ち。
グレイフィア先生を最初見た時と同じ衝撃を受けてしまった俺だったが、ティッシュ配りの仕事を邪魔しては悪いのでその場から立ち去る俺だった。
今朝、母親に醤油を買ってくるよう頼まれた俺はスーパーで、いつも使ってる醤油を買って、近道をする為に公園へと立ち寄った。
公園の近くにある自販機で買った缶コーヒーを片手に先ほど出会った美女を思い出していた俺がふと周りを見渡してみると、かけっこをしたり、ブランコで遊んだり、木に登ったりして遊んでいた筈の子供達や仲良さそうに話す老人達が居なくなっていた。
「・・あれ?」
何時もとは違う風景に一瞬の間、戸惑った俺だったが「まぁ、そんな日もあるか」と思いその場で再度、缶コーヒーを呷っていると、何か風切り音が右方向から聞こえてきた俺はその場から前方に跳躍する。
すると、左側にあった木に見たことない槍の様な物が刺さっている。
「光る槍?」
鈍色に輝くのではなく、本当に光を放っている槍に驚いていると、飛んできた方向から笑い声が聞こえてくる。
「ハハハッ!アレ避けるんだ。人間の癖してやるのね、アンタ!」
「・・・⁉︎」
声が聞こえてきた方向に視線を向けて見ると、公共の場だというのにボンテージ姿の黒髪の美女が木に刺さっている槍と同じ槍を手に携えて、一歩一歩歩いてきた。
「あーあ、今ので殺したかったんだけどなー」
ケラケラと笑いながらクルクルと手首を支点に槍を回転させる美女が、恐怖で体が震え、その場で立ち竦んでいる俺の真ん前まで歩いてくると、先程まで笑みを見せていた彼女の表情が一転する。
「・・ま、いっか。じゃあ、君には死んでもらうわよ。兵藤一誠クン」
「⁉︎ な、なんで俺の名前を...?」
「ん?調べたからだよ?君が神器を持ってるって確証した時から」
「神器...?」
「それはねー...! チッ、悪魔に気づかれたか...」
初対面の美女の口から自分の名前が出るなんて思ってもみなかった俺が驚いていると、舌打ちをした美女が槍を振りかぶる。
「じゃあね、兵藤くん。・・恨むんならそんなモノを持って産まれた自身の運命を恨みなさい」
シュッと空気を切る音が聞こえた瞬間、美女から放たれた槍は俺の腹に大きな風穴を開けて背後にあった木に突き刺さっていた。
「グォッ⁉︎」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
一瞬の出来事で訳が分からなかったものの段々と痛みが全身に走り、口から大量の血を吐き出してしまう。
倒れ臥す俺を見て恍惚な笑みを浮かべた彼女は更に槍を手元に作り出した。
死ぬ...?
彼女の作り出した槍を見て自身の未来を直感した俺は必死に逃げようと手に力を入れる。
「・・・」
「ッ!人間の癖にしぶといわねッ!」
「ガッ⁉︎」
全身に走る痛みに必死に堪えながら腕立て伏せをする要領で上半身を上げようとする俺に怒気を孕ませた声音で叫んだ彼女はどうやったか分からないが手元に作り出した槍で俺の両手を突き刺した。それも何度も何度も。
「ほら!さっさと死になさいよ!」
グサッ、グサッ、グサッと突き刺しては引き抜かれること十回程。彼女からの一方的な蹂躙を受けた俺にはもう体に力を入れる事は出来なかった。
そして、動かなくなった俺を確認した彼女はガッと俺の横腹を蹴り、仰向けにさせた。
「じゃあ、今度こそバイバ...えっ?」
先程よりも少し大きめに創られた槍が俺を確実に殺そうと心臓に向かって突き刺そうとした瞬間だった。
彼女の腕が何かに切断されたかの様に綺麗な切り口で真っ二つになっていたのだ。
「ぎゃあああああ⁉︎⁉︎⁉︎」
「ごめんなさい、遅れてしまって」
飛んでいった彼女の腕と頭にガンガン響く様な声を上げる彼女の姿に呆然となってしまった俺の耳に声が聞こえてきた。それは忘れたくても忘れられない声だった。
体が動かない為、目を動かして声が聞こえてきた方へ視線を向けると其処には、慌てて来たのか額に汗を浮かべたグレイフィア先生が居た。
「・・・先生...?」
人生の中で最初で最後に恋をした人の顔が見れて安堵したのか俺の意識はそこで途絶えたのだった。
原作とは違う殺され方のイッセーでした。
後、ハーレムじゃなくグレイフィアを一途に愛するイッセーも良いかなと思ったのですが、読んでくれてる人はどう思いますか?感想頂けると嬉しいです。