『先生』を愛した赤龍帝   作:女騎士

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評価がオレンジバーになっていてお気に入り件数もすごく上がっていて驚いてる女騎士です。
皆さん本当に評価とお気に入りにしていただいてありがとうございます!



六話

彼は私を怒るだろうか?

失望するだろうか?

軽蔑されるだろうか?

こんな私の正体を明かしても好きでいてくれるだろうか?

 

ドキドキと心臓が早鐘を打つ中、自分の正体を明かす決心をした私は遂に兵藤君に話した。

 

「・・あのね、兵藤君。私...いや、私と彼女はね、その『悪魔』と呼ばれる種族なの」

 

彼に嫌われる恐怖で今にも崩れてしまいそうな両脚に力を入れ、必死にその場で立っていると、彼は「は?」と狐につままれたかのような表情をし、私の方を呆然と見上げてくる。

彼の表情から「信じてもらえてないな」と結論づけた私は、リアスさんにも促し、背中に力を込め漆黒の翼を出した。

 

「そ、その証拠としてほら。翼があるのよ」

 

二人で自分の翼を指差し、自分が悪魔である事を証明する私達。

数秒の間、私達の翼を呆然と見ていた兵藤君はハッと我に帰り、動揺を見せる。

 

「え、えと、しゅみましぇん。いきなりのこと過ぎてまだあんまり理解出来てないのですが、取り敢えず先生と先輩は悪魔って事なんですよね?」

 

しゅみましぇん... ⁉︎・・言葉足らずな兵藤君...良いわね。

中学時代見た事がなかった舌足らずな感じに話す兵藤君の姿に兵藤君の事を静かながら想っている私はテンションが上がり、クスッと笑みをこぼしそうになった私だったが、持ち前のポーカーフェイスで彼に悟られないようにする。

 

「ええ。その理解をしてもらえると助かるわ」

 

内心でクスクス笑いながら、兵藤君の姿を見ていると、彼は驚きが強過ぎたのか、何度も「先生が悪魔...先生が悪魔...」と呟きながら、終いには鼻血を出し始めた。

・・あれ?この顔、すごく見覚えがあるわね...。

既視感を感じた私が脳内の記憶を探っていると、思い出した。

 

ー○●○ー

 

あれは確か彼がまだ中学1年の春から夏にかけて段々と暑くなる六月頃の事だった。

その日は確か、昼頃に私がたまたま自分のクラスに用があるのを思い出して向かってみると、室内で兵藤君と松田君が元浜君の席に集まっていて、何かを見ながら「おお!」や「スッゲェ!」などと騒いで目を輝かせながら喜んでいたので、何か嬉しいことでもあったのかと近づいて覗き込んでみると、驚く事に彼等は何処から購入してきたのか成人向けの本やDVDを学校という公衆の場で堂々と机の上に広げていて本の表紙やDVDのパッケージをみて「やっぱ女医だな」とか「いや、ロリに決まってる!」や「んなわけあるか。お姉さんに決まってるだろ!」などと公衆の面前で普通は憚れるような言葉を結構大きな声を出して話していた。

その時は、私がそれらを取り上げて放課後に返したのだった。

 

ー○●○ー

 

そう。確か、あの時見た彼の顔と一緒の顔をしている。あの、俗に言う『エロ本』を見てる時と同じ顔を。

しかも現に、前と同じように鼻血を出してる。

 

「先生が悪魔...先生が悪魔...先生が悪魔...」

「兵藤君、何を考えてるのかしら?」

「先生が... ⁉︎ いえ!何も!」

「宜しい。じゃあ、話を再開するわよ」

 

衝撃的な事実を告げて、嫌われても良い筈なのにこんな私で興奮してくれてる彼の姿を見て一瞬、嬉しくなったものの今日中に話を終わらせたかったので少し、プレッシャーを出しながら兵藤君に問いかけると、彼は妄想をやめて、すぐ様、私の話に耳を傾けた。

 

「兵藤君、この世界には私達『悪魔』の他にも、異形の種族がいるの。神や妖怪なんかもいるんだけど、多分1番貴方と関わりが深くなってくると思われるのは『天使』と呼ばれる種族と『堕天使』と呼ばれる種族よ。

この二つの違いはね、とても分かりやすいんだけど兵藤君。分かる?勘でもいいから言ってみて」

 

人間がこの二つの単語を聞いてどう思うのか興味を持った私が問いかけると、兵藤君は迷いながら、答えてくれた。

 

「うーん...堕天使には『堕』って文字がついてるぐらいだから、天使は見本のような善の心を持っていて、堕天使というのは悪の心を持っている事でしょうか?」

「! そう!凄い!」

 

一発で正解を言い当てた兵藤君に賞賛を浮かべた私は先程、彼を滅多刺しにし、殺しかけた彼女を例にしながら簡単に天使と堕天使の違いを説明し、次の話に繋げるため、私が知っている悪魔の歴史も簡単に説明した。

そして、この時、私は自分の話を頷きながら聞いてくれていた兵藤君に内心で賞賛していた。

何故なら、先程まで、悪魔の「あ」の字も知らず、普通の人間として生きてきて普通ならば、未だに混乱している筈なのに彼は、あまり混乱せず、真摯に聞いていたからだ。

 

兵藤君に大体の、自分が現在置かれている状況を説明し終えた私は次に、隣にいたリアスさんが気になっている私の過去を話し始めた。

 

「次にリアスさん。コレは兵藤君にも聞いておいて欲しいのだけれど私は貴女がさっき言っていた通り、『継戦派』と呼ばれる派閥に属していたわ」

 

まだ、悪魔に関わって数時間しか経ってない兵藤君が『継戦派』を理解出来ているのか不安だった私だが、先程の説明が功を奏したのか、兵藤君は理解しており、その上「属していた...?」と呟き、過去形の部分に疑問符を浮かべた表情をしている。

 

「私は魔王ルシファーに仕える六家の一つである『ルキフグス』の家の出なのよ。だから、継戦派の一人として長い間戦って沢山の命も奪ってきたわ。

でも、ある日の事だった。

その日、一つの隊を任されていた私は隊員達を率いながら山に入り、敵戦闘部隊と戦っていたのだけれど、敵部隊を倒して、山の中を散策していると一人の悪魔がボロボロになりながら倒れているのを私は見つけたの。・・その悪魔とは何度も戦いを繰り広げた仲で、一方的だっただろうけど私は親近感を覚えていたわ。でも、戦闘時にそんな感情は不必要。だから...私は...いえ、あの時の世間から見れば間違いを起こしたの」

「間違い...?」

「・・ええ。私は、その悪魔を見逃して、隊員達にその場から離れるよう指示を出したわ。けど、それを見ていた誰かに家へ連絡され、家を裏切った私は見放され、どちらの派閥にも殺される理由がある私は冥界に居られるはずもなくこの世界に来て、隠れながら密かに生活を送っていたのよ。生活は大変だったけど後悔はしてないわ」

 

私の話を聞いていたリアスさんは驚きを露わにし、兵藤君は俯いていた。

まぁ、そうなるわよね。こんな手が血で染まってる様な女嫌っても仕方ないわよね。

私が「しょうがないか...」と落ち込んでいると、兵藤君は顔を上げ、微笑みを浮かべながらこう言った。

 

「先生はとても優しい悪魔ですね。もし、自分が先生の立場ならば、その何度も戦った相手から殺される前に自分が殺そうとすると思います。しかし、先生はその手負いの悪魔を見逃して罰を受けた。それに、俺は先生と出会う事が出来たのでその間違いに感謝を述べたいです」

 

兵藤君の言葉に段々と顔が火照っていくのを感じた私がそっぽを向くと兵藤君は慌てた様子で謝ってくる。

 

「あ、す、すみません。前に嫌な気分にさせてしまったのにまたこんな事を言ってしまって...」

 

え、嫌な気分?そんな事あったかしら?

脳内にある記憶を探るが、全然思い出せなかった為、私は兵藤君に訊いた。

 

「ねぇ、兵藤君。それっていつの事?」

「え、覚えてないんですか?」

「ええ」

 

逆に聞き返された為、私が返答すると、兵藤君が顔を赤くしてリアスさんに視線を向けた。

・・あ、成る程。私に告白してくれた日の近くなのね。

兵藤君の考えてる事が分かった私はリアスさんに断りを入れ、兵藤君と一旦、その場から少し離れる。

 

「俺が、先生に振られた後日、先生がバイクで帰る際、未練がましく『振り向かせてみせます』って宣言してしまって、それで俺の事嫌いになったんじゃなかったんですか?」

「? 嫌いになんてならないけど?むしろ嬉しかったわよ」

 

確か、あの時は兵藤君に好きって言われて嬉しかったけど自分の気持ちに正直になれば、また好きな人が先に逝って悲しくなるだけだって自分の気持ちを押し殺して泣いてしまったわね。

兵藤君が言った日の事を思い出していると、兵藤君が驚いて聞いてくる。

 

「じ、じゃあ、何で俺が話しかけたら逃げる様に何処か行ってたんですか?こんな未練がましく話しかける俺が嫌になったんじゃ...」

「⁉︎ それは違う!私が悪魔だって事が分かってもらえた今だから言うけど、あの時、私は嬉しかったの。優しい兵藤君に愛してもらえて、本当に嬉しくて私も貴方の事が好きですって伝えたかった...!・・でも、ほらさっき説明したでしょ?悪魔って長い年月を生きるって」

 

兵藤君の言葉を全力で否定した為、大声が出てしまい、リアスさんを驚かせてしまった。

けど、今はそんな事どうでもいい。

私は、兵藤君の勘違いを直すため、必死にあの時、私が思っていた事を彼に説明した。

 

「先に謝っとくわね。私を好いてくれてるのにこんな話をしてしまってごめんなさい。・・私、昔ね、一回だけ結婚した事があったのよ」

「え?結婚ですか?」

「ええ。その彼も貴方と同じ様に優しい人でね。彼といる時間が楽しかったわ。でも、そんな楽しい日はあまり続かなかったの」

 

初めて人前で話す私の過去に、兵藤君は驚愕した表情をみせる。

当たり前よね。こんな私を好きでいてくれたのに実は一回結婚していたなんて。

酷い女で本当にごめんなさいね、兵藤君。

静かに謝った私は話を続けた。

 

「元々体が弱かったその彼が病気で死んでしまったの。取り残された私は何日も泣いて、自分の技術不足を呪ったわ。もっと私に力があれば彼は死ななかったんじゃないか?って。そして、その時思ったの。もしまた、私の事を好きになってくれて私もその人がすきでも、付き合わないでおこう。付き合ったらその人が死んだ時、悪魔である私の方が必ず見とる側になるのだからまた悲しい思いをしてしまうってね。だから、兵藤君と私は付き合えな...」

 

私は自分の過去を振り返りながら、胸が張り裂けそうな気持ちで何故、兵藤君の気持ちに応えてあげられないか語った。

そして最後に「付き合えない」と言おうとしたその時だった。

いつのまにか私たちの隣に立っていたリアスさんに「あの...」と話を遮られた。

話を遮られた私が少し眉間に皺を寄せながら、リアスさんの方に視線を送ると、一瞬ビクッと身体を跳ねさせたリアスさんは衝撃的な言葉を紡いだ。

 

「付き合えますよ?」

「は?」

「すみません。人の恋路を盗み聞きするつもりはなかったのですが、耳に入って来てしまった上、あまりにも二人が相手の事を想っていたので邪魔をさせていただきました」

 

何を言っているの?この娘は?

リアスさんが話した言葉に、呆然としていると人の話を盗み聞きしていた事を詫びたリアスさんは小さな転移用魔法陣を手元に顕現させ、一つの小さな箱を手の上に乗せた。

そして、「昔はよく知りませんが...」と前置きした後、箱を開けて、その中に入っていた赤い...いや、綺麗な紅色をしたチェスで使われるポーンの駒の形をした物体を一つ取り出した。

 

「これは、現魔王アジュカ・ベルゼブブ様がお造りになられた物で名を『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』と言います。そして、これは人間や妖怪などをその所有者の眷属として悪魔に転生させる事が出来る代物です」

「ッ⁉︎」

 

悪魔に...転生出来る...?

リアスさんの言葉に耳を疑った私が再度、呆然としてしまっているとリアスさんは微笑みを浮かべた。

 

「あ、あの、リアス先輩。それを使えば、俺は悪魔になれるって事ですか?」

「ええ。これからもグレイフィアさんと愛し合えるわ」

「ッ!」

 

ギュッ

 

先程、リアスさんの方に視線を送り、恥ずかしがっていた兵藤君はどこへ行ったのか?

先程、顔を赤くしていた兵藤君は現在、リアスさんが見てる前で私の手を握り、私と視線を合わせこう言った。

 

「先生、俺が悪魔に転生したら、結婚を前提に付き合ってくれますか?」

「はい、喜んで」

 

スッと口から出る言葉。

自分の口から出る言葉のスムーズさに自分自身が驚いてると、「よっし!」っとガッツポーズをしたのだった。




最後の方、急展開過ぎたかなと反省してる女騎士です。
あと、月3回を目標に更新していけたらいいかなと思ってます。
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