『代理』を受けてもらうのに必要なものとは。
異世界転生って言葉を知っているかい?
死んで元いた世界と別の世界に生まれ変わるというものだ。
ラノベ等で読んだことがあるだろう?
異世界転生した奴らの中には勇者になって世界を救ったりする奴もいれば、元いた世界の知識を生かしてのし上がっていく奴もいる。こんな感じに適用していける奴もいるがそれはごく少数だ。大抵の奴らは今までと違う環境に適応出来ずに早死したり、非道に走ったりする。中には異世界なんて来たくなかったと思う奴もいるだろう。帰りたいと思う奴らもいるだろ。
そんな奴等の代わりに異世界転生したり、冒険をしたりする───つまりは、『代理』をするのが私の仕事だ。
まぁ、仕事って言っているぐらいだから貰うものは貰う。
物事にはそれなりの代償が伴うものだ。
何だと思う?
大量のお金?
いいや、違う。
神様から与えられた、とんでもないチート能力?
それも、違う。
人を掌握できる権力?
それでもない。
『代理』の代償は────
───────────アナタの············
──────────────────────
僕の名前は
僕は、幼馴染の
目の前には神様を語る光の塊が浮いており、異世界転生をさせてくれると言う。
しかし、あまり乗り気になれない。アイツのいない世界なんて生きていても意味が無い気がする。こんな事になるならちゃんと告白しておけばよかった。
「異世界転生。別にしたくないな······」
ふと、そう呟いた時だった。光が闇に呑み込まれ辺りが暗くなる。そして、目の前には真っ黒な軍服を身にまとった人が現れた。目の前に現れた人は真っ赤な椅子に腰掛けこちらを見ていた。深く被られた帽子の下から緑色の鋭い瞳がじっとこちらを伺うように。
「あ、あなたは?」
「私は代理人。貴方の異世界転生を『代理』しましょうか?」
軍服の人は男か女か分からない声で問を提示した。
突然のことに驚きつつも質問をする。
「もしかして、貴方に頼めば元の世界に帰れるんですか?」
「はい」
「本当ですか!?」
「はい」
「元の世界に戻れはまた彩に会えるんですね」
黒い軍服の人は笑顔で答えた。
希望を失っていた僕に光がさした。
また、アイツに会える。会って好きだって伝えるんだ。もう伝えられないと思っていた言葉を伝えられる。そう思うだけで気分が高揚した。
「お願いします。元の世界に戻らせてください!」
「わかりました」
黒い軍服の人はニコリと笑い、パチンっと指を鳴らした。その瞬間、僕の体が光を放ち出した。
やっと、会える。やっと、伝えられる。
そう考えていると黒軍服が耳元で嘲笑うように囁いた。
「あぁ、因みに幼馴染の柏木彩さんは死亡し、異世界転生しましたよ」
「えっ?」
頭が真っ白になる。彩は死んで異世界転生した?じゃあ、僕は何のために戻るんだ?
「貴方が私に代理を頼んだのはちょうど柏木彩さんと同じ世界ですね」
「だ、代理を取り消してくれ!!彩がいないなら戻ったって意味が無いじゃないか!!彩は元の世界に居るんじゃなかったのか!?」
「契約は既に済みましたので変更できません。それに、私は一度も柏木彩さんが元の世界にいるなんて言ってませんよ」
「あっ、あぁ。あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
今までの会話を思い出し思わず叫ぶ。体から発せられる光はまったく収まる気配はなく、さらに輝きを増していった。
僕は、何も出来ないまま光に呑み込まれた。
最後に見たのは、おぞましい笑みを浮かべた黒軍服の顔だった。
目が覚めると、そこは病院で僕は一命を取り留めていた。
そして、数日後。彩が死んだ事を知らされた。
──────────────────────
代理人。
異世界の転生、冒険を代理してくれる者。
代理に対する代償は────
────────────アナタの『