特訓中に乱入してきた葉山グループ。
対するは戸塚率いるテニス部だった。
先鋒として出たのは雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣。
彼らの行動を見て、自らを省みた彼女達は、持てる力を出しきるも、敗北してしまった。
泣きわめく彼女達を立ち直らせたのは八幡と静。
八幡達は雪ノ下達の覚悟を認め、その奮闘を称える。
そして、彼女達の奮闘によって動かされた者は他にもいた!
共に地獄の特訓をこなしてきたテニス部だった!
彼女達の敵を取れ!テニス部達!
side戸塚彩加
戸部「いやぁ、いけるっしょ!隼人くん!」
葉山「戸部、俺は一旦下がるから、次は大和とやるんだ」
大和「………」
葉山が下がると、ギャラリー達の声援が一気に冷めたものになる。
あの一団は葉山隼人の為の応援団なんだ。
戸部くん達も報われないな。
でも、手心を加える気なんてない。
戸塚「頼んだよ!関内君!瀬谷君!」
関内「はい!雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩の為にも!」
瀬谷「戸塚先輩が安心して部を離れられるように僕らがやります!」
二人の一年生は闘志をたぎらせてコートに入る。
やる気の無かった二人だったけど、比企谷君達の特訓で力を着けた二人は、自信と仲間意識がしっかり芽生えていた。
一方、遊び感覚の戸部くんと大岡くんは冷めた目で関内君達を見ている。
その態度に怒りを覚えたのか、今度は二人が一方的に勝負を決めた。
技術もしっかり身に付いているし、何より気持ちが違う!
ギャラリー「Boo!」
葉山グループが負けたことにより、ギャラリーがブーイングを飛ばす。だが、二人は反応することなく、僕達の方へ戻ってくる。
関内「やりましたよ!部長!それに雪ノ下先輩!」
雪乃「ありがとう。かっこよかったわ、関内君」
瀬谷「由比ヶ浜先輩!無念は晴らしました!」
結衣「すごいよ!あの二人は運動部でも一年の頃からレギュラーなんだよ!二人に勝っちゃうなんて…すごい」
二人は女子から誉められてはにかんでいる。
この二人なら、今の2年が引退したあともテニス部を任せられる。
青葉「次は俺達だ!いくぞ、伊勢崎!」
伊勢崎「ああ、一年に負けられないからな!」
戸塚「頑張って!青葉君!伊勢崎君!」
葉山「大岡、大和、気楽にいこう」
大和「ああ、わかったよ。隼人くん」
大岡「野球部だから球を打つのは得意だからね。あんなやつら、楽勝さ」
二人は葉山に朗らかに笑った後、しかしコートに入ると会話もなく、無表情になった。
なんだろ、この違和感…。
青葉君と伊勢崎君も、運動神経では大岡くんに負けているものの、得意の連携で危なげなく勝利する。
一方の大岡くん達は、息が合わずに、ちぐはぐな動きであっさり負けてしまう。
そうか…彼らは…
伊勢崎「勝ちましたよ!比企谷さん!」
八幡「良くやったな。良く冷静に対処した。戦いは状況の見極めと判断力だ。今の感覚を忘れるな」
青葉「勝ったぞ、ジョースターさん!あなたが鍛えてくれたお陰で自信がついた!ありがとう!」
静「大切なのは闘志と不屈の精神。例え格上でも、闘志があれば、必ず逆転の目が出るわ。今後も頑張って!」
伊勢崎&青葉「はいっ!二人の恩は忘れません!いずれ、波紋も教えて下さい!」
二人が特訓で得たのは体力だけじゃあない。不屈の闘志と自信。たった数日で彼等をここまで変えるなんて、やっぱりジョースターの精神はすごい!
泉「戸塚…お前が安心して部を離れられるように、俺は全力を尽くす。見ていてくれ」
部で一番体力と運動神経が良い泉君。
人間関係が苦手で、昔は葉山以上にサッカーの技術があったのに、嫌われて部にいられなくなり、スポーツに対する意欲を失ってしまった彼。
ジョースターさんに出会う前のスピードワゴンのように荒んだ目をしていた彼も、今は輝きが戻っている。
泉「葉山。確かにお前のみんな仲良く…の精神は素晴らしい考えだ。だが、みんながみんなそうではない。事実、孤立していた俺を無理矢理仲良くさせようとした結果、より周りの反感を買い、俺はサッカーを辞めざるえなくなった。そしていま、またやっかい事が起きている。もうたくさんだ。俺の居場所は俺が守る。二人まとめて来い。お前なんかの為に比企谷や戸塚の手を煩わせるのはもったいない。俺一人で十分だ」
葉山「何を言っているのかわからないな。俺は君の力は買っているんだよ?戻ってくる気はないのかい?」
泉「昔からお前はそうだった…。一時は人間不振にもなりかけたよ。だが、教えてくれたのさ。太陽の精神が。ジョースター家の誇りが。勇気の讃歌をな」
戸塚「勇気の讃歌…それは…」
この言葉はツェペリのおっさんの…。泉君、まさか君も僕と同じ…。
泉「見ていてくれ…黄金の太陽の精神を受け継ぐ戦士達に精一杯の送り出しをしてくる!」
泉君は僕達の方をチラリと見ると、葉山と大岡くんの待つコートへと立つ。
あの目は…。
葉山「残念だ、泉」
葉山の言葉に耳を貸さず、泉君は強烈なサーブを決める。
サービスエース。
そこからは一方的だった。
泉君は1ポイントも奪われず、セットを制し、3セット先取でテニス部の勝利となった。
HA・YA・TOコールもいつの間にか止んでしまっている。
泉「終わりだ、葉山。お前なんかが黄金の戦士に立ち向かうには、あまりにも役者が違う。消えろ」
葉山「いつかは届いてみせるさ。泉。お前にも、ヒキタニくんにもね。いつかは夢を叶えるさ。みんな、仲良く出来るはずなんだ…。そうすることの努力をしないだけで…」
葉山グループは三浦さんと海老名さんを残して去っていった。
比企谷くんを睨みながら。
ギャラリー達も葉山に惜しかったとか言いながら、ゾロゾロと解散していった。
だが、比企谷くんは興味なさげに一瞥しただけで、泉君に駆け寄る。
泉「比企谷、戸塚…いや、ジョジョとスピードワゴン。テニス部の事は青葉と俺に任せてくれ。そして、信じてるぞ。百年前のあの古城の時のように、闇を突き進むその太陽の精神が、俺達を救ってくれる希望になってくれることを。お前達の力になることは叶わないが、応援はさせてくれ」
八幡「お前は…ポコ…なのか?」
ポコ…あの古城のタルカスとの戦いで勇気を振り絞り、ジョースターさんの活路を開いたあの子供…。
泉「ジョジョ。その名前を覚えていてくれただけでも俺の励みになる。さぁ、俺達に出来るのはここまでだ。やるべきことがあるのだろう?精一杯やってくれ」
泉君…いや、ポコはかすかに溢れた涙を拭い、青葉君達の元へと帰っていった。
泉「勝ったぞぉぉぉぉ!テニス部の勝ちだぁ!」
テニス部「うおおおおお!この勢いで地区大会を制するぞぉ!」
泉君達男子テニス部は勝鬨をあげて、校舎へと帰って行った。
そして、昼休み終了のチャイムが鳴る。
side比企谷八幡
ポコ…そして男子テニス部…見せてもらったよ。
お前達の黄金の精神を。
お前達の大切な仲間、戸塚を…預からせてもらうぞ。
三浦「あーし達、いらなかったみたいだね」
八幡「そうでもない。その気持ちだけでも、しっかり伝わっていたと思うぞ」
海老名「あなたは本当にDIO?まるで別人だね」
八幡「残念ながらな。で、どうする?昼休みが終わったし、帰る?」
小町「ゴミぃちゃん…この空気でそれはないよ」
徐倫「安定のハッチって感じでむしろ安心したけどね」
ヤッパリだめかー。
ノリで帰ろうかと思ったのに。
三浦は両手を奇術を使うように前に出して構えを取る。
三浦「
海老名「
結衣「うそ…優美子も姫菜もスタンド使いだったんだ…しかもなんか比企谷くんに敵意を向けてる…助けないと!…でも、どっちを…」
雪乃「私は…比企谷君を助けるわ」
迷う由比ヶ浜と迷いなく入ろうとする雪ノ下。
それに戸塚や材木座も加わろうとするが…
小町「はいはい。ちょっとストップしてくださいね?お兄ちゃんを助けてくれる気持ちは嬉しいですけど、これはちょっと複雑な問題なんですよ」
徐倫「この問題に入り込んで良いのはジョースター家の人間だけ。それも、ひいおじいちゃんのジョセフ・ジョースターと父さん…空条承太郎。後は…」
早速臨戦体勢に入るスターダスト・クルセイダーズの転生者の二人だが…
そこに1人、俺の隣に立つものがいた。
徐倫が言う、この問題に入り込んで良い最後の1人。
あま色の髪、桃色のカーディガン、今日は承太郎のパーバッチを胸に着けた俺の一番大事な女の子…
いろはだ。
いろは「せっかく着替えて来たジョジョ先輩には申し訳ありませんけど、ここは私に譲ってくれませんか?」
静「イーハ……わかったよ。本気なんだね」
いろは「さすがは私の親友ですね。ジョジョ先輩…さて、ナイチンゲール・エメラルド!」
そう言ってジョジョに微笑むいろは。
そして海老名に向き直り、キッと殺気を込めた睨みを入れる。
久々に見る本気のいろはだ。
いろは「海老名先輩…いえ、花京院典明おじさん…」
海老名「おじさんって…あなたは誰?」
いろは「典明おじさんの従姉妹姪、一色いろはです。海老名先輩の前世の親戚…というところですか?そして、比企谷八幡の婚約者でもあります」
海老名「あの子の娘…そうなんだ。不思議な関係だね、私達。ヒキタニくんから前に一度教えてもらっていたけれど、会えて嬉しいな。いろはちゃん…で、良いかな?良く見るとスタンドもそっくりだよね?」
いろは「ええ。構いませんよ?私も会えて嬉しいです。典明おじさん。毎年、おじさんの命日にはおじさんのご両親やジョースター家の人達とお墓参りをさせて頂いています。ハチ君…比企谷八幡も一緒に。もちろん、アヴドゥルさんやイギーさんのお墓参りもしてますよ?」
三浦「それはありがとう。DIOは余計だけどね」
海老名「贖罪のつもりかな、DIO?自分で殺しておいて…で、いろはちゃん。あなたのスタンド能力はハイプリエステス・グリーンと同じなのかな?」
海老名は目が笑っていない笑顔で微笑む。
いろは「能力を敵に教えるスタンド使いがいますか?おじさん」
海老名「おじさんは止めてもらえない?今はうら若き乙女なんだし。でも、わからないなぁ。何でいろはちゃんが敵に回るのかな?ヒキタニくんの前世は私を…前世の花京院典明を殺した男だって知っているよね?」
いろは「もちろんですよ?でも、先輩の前世はディオだけじゃあ無いんですよ」
海老名「DIOだけじゃあない?他の魂もあるってことなのかな?」
いろは「ええ。ハチ君はジョナサン・ジョースターの魂も融合しています。そして私は…私の前世はエリナ・ジョースター。ジョナサン・ジョースターの妻であり、ジョセフ・ジョースターの祖母…それが私がハチ君に味方をする理由です」
いろはが構えを取る。
その構えは中国拳法、太極拳の構えだ。
結衣「一色さんと比企谷くんは前世でも夫婦だったんだね。敵わないはずだよ。それに、資格ありだね」
雪乃「なんて因縁なの…」
雪ノ下と由比ヶ浜が戦慄している。
材木座、戸塚もある程度は知っていたらしいが、ここまで深い話だとは思っていなかったようで、息を飲んでいる。
三浦「あはは。たしかに、あーしらとの因縁に入り込んでくる理由はあるみたいだね。それに、大した殺気だし。結構な修羅場を踏んでるってわけ?」
海老名「正直に言えば、怖いよ。私達も前世は百戦錬磨のつもりだったし、訓練は欠かしてなかったんだけどね。特に、優美子と再会してからは」
いろは「私達は小学生になる前から、ジョセフおじいちゃんや承太郎、仗助にジョルノさんに鍛えられて来ましたし、あなた達のエジプトの旅のような戦いも既に経験しています。人を…殺したことも…」
いろはが醸し出す殺気。
自らの意思をもって人を殺したことがある者が放つことの出来る物だ。
生半可な者が放つことは出来ない。
三浦「参ったね。あーし達の相手になるのはせいぜいヒキオくらいのものだと思っていたのに」
海老名「いろはちゃんの殺気にあてられている人の方が少ないなんて予想外だね。まさかヒキタニくんの妹さんまでもが平然としているなんて…結衣、雪ノ下さん。戻るなら今の内だよ。この人達は次元が違いすぎる」
そう、海老名さんが言うように、この中でいろはの殺気に当てられているのは雪ノ下と由比ヶ浜だけだ。
材木座と戸塚はやはり前世の影響だろう。
前世でくぐった修羅場は少なくない。少し汗ばんではいるが。
逆にアーシスメンバーはけろっとしている。
命のやり取りが当たり前の世界にどっぷり浸かってしまっている。
だが…
八幡「人のことが言えるのかよ。お前らだって、こちら側の人間じゃあないか。この殺気の中で、逆に同質の殺気を送り返して来やがる」
三浦「それもそうだね。でも、あーしらも転生後はさすがに人殺しはしていないからね。まだ結衣達側の立ち位置のほうなんよ」
海老名「正直、まずったかな?完全な本気なら、私達は既に何回殺されているか…」
二人からはだらだらと汗を流している。
八幡「今回は事情が事情だ…さて、そろそろ始めるか」
いろは「お互い、覚悟は決まっているようですし」
三浦「わかってるっての。お互い、終わったあとに生きていればいいっしょ」
海老名「決着を付けよう。DIO…」
さて、真のスタンドバトルを始めよう。
←To be continued
俺ガイル原作第1巻のラストを締めくくる戦いが幕を開けました。
お互いが転生者同士。
比企谷八幡(ジョナサン&DIO)
一色いろは(エリナ)
VS
三浦優美子(アヴドゥル)
海老名姫菜(花京院)
奇しくも第一部対第三部ですね。
それでは、次回もまたよろしくお願いします。