やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

98 / 731
前回までの奉仕部の活動

承太郎の依頼で来日したエルメェスを徐倫の代わりに迎えに行った八幡。
そこに静が由比ヶ浜と雪ノ下を連れて合流。
当初の目的であった勉強会を開始する。
そんなとき、一緒に行動する予定だった小町が妙な波紋の使い手に絡まれた。
海岸で戦闘になり、自慢の波紋と体術で相手を圧倒する小町。だが、相手はスタンドを発現させ、戦いは仕切り直しに…なるかと思いきや、乱入してきた八幡の不意討ちにより、男はKO。そのまま放置されるのであった。
結局、彼は何だったのだろうか?


比企谷八幡は一色いろはに1日1回は会わないと発狂する。いろはバースデーイヴの真相。

side比企谷八幡

 

休み時間ほど心休まらない時間もあるまい。

ざわざわと喧騒に満ちた教室、誰も彼もが授業の抑圧から解放されて、友人たちと親しく会話をしながら、放課後の予定や昨日見たテレビ番組の話をしていたりするものだ。飛び交う言葉はまるで異国の言葉のようで、耳に届いても意味をなさない。

それが今日もまた一段とにぎやかな気がした。おそらくは、昨日帰りのHRで徐倫が言った「職場見学」のグループ分けの件があるからに違いない。グループと見学場所を決めるのは明後日のLHRだというのに、気が早いものだ。

「どこへ行く?」という会話はあっても「誰と行く?」という会話にならないあたり、このクラスではほとんどの人間が特定のグループを形成しているということなのだろう。

当然だ。学校という場所は単に学業をするためだけの施設ではない。要するにここは社会の縮図であり、人類全体を箱庭にしたものだ。だから、戦争があるようにいじめだってあるし、格差社会を引き写したようにスクールカーストだってある。もちろん、民主主義そのままに数の理論が適用されもする。俺達は最近、例外扱いされているが。もはやニトログリセリンを扱うような感じである。

 

静「と、ボッチごっこをしているところ悪いんだけど、あと一人はどうするの?ハッチ」

 

人の心の中を読むんじゃあない。

 

三浦「なにその寂しい遊び。ヒキオがボッチってありえねーし。ホントのボッチに謝れし」

 

海老名「承太郎も学生時代は女の子に囲まれていたね。ジョースター家はジゴロの家系かな?」

 

八幡「俺がジゴロ?ワッハッハ!海老名さんや。俺がジゴロとかあり得ないですよ。いろはが俺を選んでくれたこと自体が奇跡とまである。1日1回いろはに会えないだけでも発狂する自信がある」

 

結衣「わかっていたことだけど、そこまでのろけられると案外腹立つし」

 

静「色々あったのよ。ホントに理由もなくイーハに朝一番に会えなかっただけで発狂するし、その自覚を持たせるのには大変な思いをしたわ。私やお兄ちゃんや基本世界の私とお兄ちゃんが…」

 

ジョジョの言うとおり、実際に発狂したし。ホントにこっちと基本世界の東方兄妹には迷惑をかけた。

俺はその時の事を思いだし、語りはじめた。

 

今年のいろはのバースデーイブに大統領によって基本世界(俺ガイル原作世界。ジョジョ勢もいるにはいる。本作とは別の方法でプッチの計画は阻止されており、静・ジョースターの奇妙な日常の世界が展開されている。当然、俺ガイル勢との接点はなし)にドジャアァァァンされた。ドジャアァァァンされた理由はいろはからのバースデーデートを断ったことにより、いろはが不安がってしまったことが原因だ。ちょうどその頃は陽乃さんや小町の誘惑が激しかった時期でもある。

言い訳させてもらえば、別に理由もなくいろはのバースデーデートを断った訳ではない。日本支部の支部長会議がいろはの誕生日の翌日には迫っていたこともあったため、最終調整の事で頭がいっぱいだった。

今思えば、いろはが近くにいることが俺にとっては当たり前すぎていて、そういう節目を大切にする事が疎かになっていたのだろう。そういう点を見破ったのがいろはの前世であるエリナの残留思念だ。

エリナはたまたまパーティーに参加できない大統領が誕生日プレゼントを直接届けに来た際(あの人はどんなに多忙でも、プレゼントは直接渡しに来る)に大統領と交渉し、寝ていた俺を基本世界に飛ばした。

基本世界は今から見て丁度1年後の世界。

ぶっちゃけ、俺はそこで暮らす俺自身も含めて基本世界が嫌いである。

転生者でもスタンド使いでもジョースター家との関わりもいろはと幼馴染でもない基本世界の俺の人間関係。

それはこの俺にとって見てみれば偽物だらけのものだった。まぁ、転生者だった俺とは生まれた段階から違っているのだから、当然歩んだ人生もまるで違う。

一度だけ興味本位で中学時代に見に行ったときは、酷いものだった。クリスマスパーティーイベントとかで活動していた高校生の俺は、半ば女性不振…いや、人間不振になりかけており、近くにいたのはイロハのみ。コマチとですら溝があった状態だ。そのイロハとの関係も、健全な関係ではなかった。

一目見ただけで、俺は基本世界の事が嫌いになった。

そんな世界に寝ていた俺が前触れもなく連れてこられ、目が覚めればどうなるか。

朝の段階からイライラが止まらなかった。朝、当たり前のように一緒に朝飯を食べている一色いろはがいない。

それだけで俺の精神を汚染するには充分だった。

シスコンを公言する俺が、向こうのコマチを速攻で拒絶し、コマチをおいてけぼりにし、早く学校に行きたい一心でよそ様の家の屋根の上を忍者の如く飛び越えて最短距離をショートカット。着地した独神の車をへこませ、当然怒り狂う独神に対して八つ当たりの車破壊。ストIIのボーナスステージも真っ青なくらいに高級スポーツカーをスクラップにした上でロードローラーで念入りに潰す暴挙をやってしまった。気配察知でこの世界と基本世界の東方兄妹が監視していたのがわかっていたからこそ出来た暴挙だったが、この世界の独神とは違い、別に彼女は何も悪いことはしていない。いきなり理不尽に車を傷つけられれば誰だって怒るのは当たり前だ。それなのに、あの始末。今でも自己嫌悪に陥る。

その後も酷いものだった。

授業中は殺気を駄々漏れにし、気の弱いものは次々と体調不良に陥らせたり。まだ戸塚と出会っていなかったので、気安く話しかけて来た戸塚をガン飛ばしで撃退し、もしかしたらいろはに会えるかもと思って奉仕部に行けば、そこにいたのは雪ノ下と由比ヶ浜。

まだ当時はこちらの世界でも材木座のガンズ・アンド・ローゼズと戦う前だったので、二人の事が嫌いだったその時の俺は、当然一触即発の険悪な雰囲気に発展。

そこに飛び込んで来たのはイロハだった。

その日、基本世界の俺は何故か二年生の春なのに生徒会長をしているイロハと何らかの約束をしていたらしく、俺は生徒会室に拉致された。向こうの雪ノ下から「今日の比企谷君はいるだけでも部室の雰囲気が悪くなるだけだから、どこへなりとも連れてってもらっても構わないわ」と言われて追い出されたと言った方が正しいが。向こうの二人にも悪いことをしてしまった。

生徒会室に到着したイロハは、すぐに俺が別人であることを見抜いた。そして、別人であるからこそ、イロハは基本世界の俺へに対する想いを聞くことが出来た。

雪ノ下や由比ヶ浜に遠慮をして、一歩踏み出せない自分と、今の自分とのもどかしい関係。強引に振り回すことでしか俺と関わる事が出来ない自分への自己嫌悪。

イロハの生の声を聞いて、俺は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

俺はいろはが常に一緒にいることが、どれだけ幸せだったのか。当たり前すぎていて、幸せな立場にいたことの自覚を失っていたのか気付かされた。

そして、彼女の右腕を見る。イロハの右腕は生まれたときからのままの腕だ。だが、いろはの腕は違う。

綾瀬絢斗によって一度は消滅させられ、ゴールド・エクスペリエンスによって再生された腕。もしナイチンゲール・エメラルドが治癒能力をもっていなかったら…もしナイチンゲール・エメラルドがクレイジー・ダイヤモンドのように自分を治すことが出来なかったら…いろははあの時、あの暗い独房の中で出血多量により命を落としていたかも知れない。実際、あの時は小町が命を落としかけていたのだから。

俺はバカだった。一番大切な物を失いかけていたことにも気付いていなかった。そして、何が一番大切な物かを見失いかけていた。

そうだ…いろはは元々争い事が苦手だったはず。それなのに、命をかけた戦いに付いてきてくれたし、俺と共にいなければ手を血に染めることもなかった…

イロハを前にしながら無性にいろはに会いたくなった。

それをイロハに伝えると、こう言われた。

 

イロハ「全然違うようで、やっぱり先輩は先輩なんですねー。ダメダメじゃないですかー。異世界のわたしがかわいそうですよー。じゃあ、わたしから、先輩に聞いちゃいます♪先輩にとって、一色いろはは本物ですかー?大切ですかー?」

 

八幡「ああ、本物だ。それも一番の本物だ。俺にとって、いろは以上の本物は絶対にあり得ない」

 

イロハ「それじゃあ、もうわたしを離してはだめだよ?ハチ君♪えへへ、そっちのわたしを真似してハチ君と呼んでみました♪イヤですか?」

 

八幡「いや、お前になら、ハチ君と言われても嫌じゃあない。俺が一番大事なものが何か、それに気付かせてくれてありがとうな。一色。そんなお前に、お礼を兼ねた俺からの誕生日プレゼントだ」

 

俺は制服から「JOJO」と「DIO」書かれた金のボタンを引きちぎる。俺の象徴である前世の名前を掘った、俺オリジナルの装飾品。言わば俺の魂を表現していると言っても過言じゃあ無いもの。無くしたとき用に予備はいくつもある。

だが、これを人に譲るのは初めてだ。俺のいろはですら持っていない。だが、これを譲るだけの価値をイロハは俺に与えてくれた。

 

イロハ「制服のボタン…ですか?卒業式でもないのに何でこんなものを?ハッ!何ですか?もしかして口説いてますか?卒業式じゃないけど制服のボタンを渡して自分のいろはじゃないけど気になってるんですアピールですか?すいません、別人とはわかっていても先輩からの贈り物は素直に嬉しいですが内容が重いですしやっぱりわたしはわたしの世界の先輩が好きなので無理です。ごめんなさい」

 

久々に聞いたよ。いろはの高速お断り。俺のいろはの高速お断りは別物になってしまっているから、本来の高速お断りは懐かしい。思わずクスッと笑ってしまう。

 

八幡「違う違う。あくまでも感謝の気持ちだ。他意はない。俺の前世はジョナサン・ジョースター。初代ジョジョと言われた存在と、ディオ・ブランドー。この2つの名前が彫られたボタンは俺の魂ともいえる物だ。大事なことに気付かせてくれたお前にこそ、俺の魂を贈りたい。」

 

イロハ「先輩の魂ですか…これはこれで重いですけど。まあ、せっかくの先輩のプレゼントですから、いただいておきます」

 

一色はボタンに紐を遠し、愛用のカーディガンに縫い付けた。上着を羽織れば見えない位置になる。

 

八幡「あとな、一色。何を遠慮しているのかはわからんが、お前はこの世界の俺が一番辛いときに一緒にいてくれた奴だ。なんだかんだ言ってお前はこの世界の俺にとって、他の有象無象と同じ位置にいるはずがない。少なくとも、お前にも本物になれる資格は充分にある。俺からは頑張れとしか言えないが、この比企谷八幡からのお墨付きだ。自信を持てよ。あと、もし奇妙な事が身の回りに起こったら、この番号に連絡しろ」

 

俺はこの世界の空条承太郎のプライベートナンバーを記したメモを渡す。この世界の承太郎も、俺の事を知っている。

 

イロハ「これは?」

 

八幡「海洋学者、空条承太郎のプライベート用の携帯番号だ。承太郎を通してアメリカのファニー・ヴァレンタイン大統領閣下に連絡が行く。大統領閣下の能力には別の平行世界へ行く能力があってな、俺はあの人の力でこの世界に連れて来られた。そして、大統領閣下自身が別の平行世界の自分達とのネットワークを持っている。お前の日常が奇妙な者達…スタンド使いによって危険に晒されたのなら…俺は…俺達は全力をもってお前の日常を取り戻す為に命を賭けると約束しよう。出来れば、コレが今生の別れになるのが一番だがな」

 

そう言って俺はザ・ジェムストーンを出現させる。

そして、その右手にはめられているアップルウォッチみたいなスタンド用の通信機を操作して、俺の世界の大統領閣下に通信する。プッチを討伐したことにより、世界を救った報酬として、クリスタル・クルセイダーズに渡された、大統領へのホットラインだ。これを使えば、いつでも大統領が平行世界の旅行へ連れていってくれる。

 

滅多に使える物ではないが、別の平行世界へ調べものするときや、堕ちた別の平行世界の大統領に拐われ、利用されそうになったときの救助要請など、案外使わなければならなかったときは少なくない。閣下は物見遊山で使うのも構わないと言ってくれたしな。

 

八幡『閣下。比企谷です』

 

ヴァレンタイン『答えが出たのかね?』

 

八幡『はい。やっぱりいろはは俺にとって、世界で一番大切な俺の本物です。たった1日、会えなかっただけで気が狂いました。今回はありがとうございました』

 

ヴァレンタイン『構わない。コレが私にしか出来ない公私に渡る友人、一色いろはへの誕生日プレゼントだ。それに、君達の絆はSPW財団と我が祖国にとっても吉になること。我が国の為になることならば、労力を惜しまない。それが私だ。では…しばらく待っていたまえ』

 

数分後。

 

ヴァレンタイン「ドジャアァァァン」

 

生徒会室にアメリカ国旗が現れ、中から閣下と基本世界の俺と、そして…いろはが現れた。

 

八幡「いろは!」

 

いろは「ハチ君!」

 

俺達はお互いを確かめるように抱き合い、そしてキスをする。

 

八幡「やっぱり俺はお前がいないとダメだ。たった1日、お前がいないだけで頭がどうにかなっちまった。それに、この一色のおかげで、どれだけ俺が恵まれているかがわかった。空気なんだよ、お前は」

 

いろは「空気?」

 

悲しそうな顔をするいろは。そんな顔をするな。お前が思っている意味じゃあない。

 

八幡「ああ、空気だ。いつもすぐそばになければ生きてはいけない大切な物。水や食べ物が無くても人間は数日は生きられるが、空気はそうじゃあない。なければどんなに息を止めることが出来ても、数分で人は死んでしまう。特に、波紋の戦士にとっては呼吸が全て。この比企谷八幡にとって、一色いろはは無くては数分で死んでしまう、空気なんだよ。今までありがとうな。そしてこれからは、これまで以上にお前を大切にする。愛してる、いろは。誕生日の仕事はキャンセルだ。一緒にいよう。指輪を買いにいくか?婚約指輪とか」

 

いろは「ハチ君……。嬉しいよ…いつもだったらここで照れ隠しに早口で口説いてるんですか?とかやるところだけど…嬉しすぎて言葉が浮かばないよ…」

 

いろはは顔をくしゃくしゃにして再び俺に抱き付き、胸に顔を埋めてワンワン泣き始めた。だが、悲しみの涙じゃあない。俺達の絆が更に深まる幸せの涙だ。

そして、こうしていろはが俺の胸の中にいてくれる。その事実が俺にとっての何よりの幸福。こんなに嬉しいことはない。

 

ハチマン「うわぁ…見ているこっちが砂糖吐きそうだ。あれ、ホントに俺?」

 

やかましい、基本世界の俺。お前も早く自分の本物を選び抜け。再びこの世界に来たとき、まだフラフラしているようなら『紫水晶の波紋疾走』か『プッツン無駄無駄のラッシュ』、あるいはその両方を食らわすからな!

 

イロハ「ま、先輩ですしねー…この感動がわからないなんて、先輩らしいといえば先輩らしいんですけど…ハッ!もしかして口説いてますか?わたし達もこの二人のように抱き合ってキスしあいたいと遠回しに要求してるんですか?すいません、それもありだなとか正直かなりトキメキましたけど婚約指輪をもって来てから正式に婚約を成立させてからにして下さい最低でも雰囲気が良いところでちゃんと告白してからでお願いします。ごめんなさい」

 

ハチマン「早口すぎてよくわかんねーし、口説いてねーよ。大体、何でそうなる。俺は何回お前に振られなければならんのだ」

 

うん、本日二度目の高速お断りだ。この世界が基本世界である以上、これが元祖高速お断りなのかもな。端から見ていると、子供の時の小町やのりこさん(いろはの母親)が言っていたように、全然断ってないお断りだわ、これは。

こっちの俺も全然気がついていないし。いや、もしかしたら気が付いているけれども、人間不振故に信じて良いのか判断しかねる…って感じかもな。

ほとんど別人とはいえ、同じ俺だからこそ、なんとなくわかるような気がする。

何故なら、もしジョースターと出会っておらず、前世の記憶だけを取り戻していたならば、俺はDIOだった前世ゆえの罪悪感で同じようになっていたのかも知れないな。人並みの幸せなんて、求める資格はない…と。

仗助から言わせれば、吹っ切れているつもりでも、その思いはいまだに俺の中で燻っているらしいが。

 

ヴァレンタイン「ふむ、そろそろいいかね?」

 

イロハ「うわっ!本当にアメリカ大統領だ!はっはー」

 

おい一色。何で土下座を始める。お前は悪代官か?ワシントンでの億康さんみたいな事をするな。こっちでは一色家と虹村家が親戚だったりしないよな?

 

ヴァレンタイン「構わない。楽にしたまえ。私はこの世界のファニー・ヴァレンタインでは無いのだからね。それに、君は八幡に認められたようだな。ならば君はこのファニー・ヴァレンタインにとっても友人と言っても等しい。私の力が必要ならば、いつでも言って来たまえ。これはこの世界の私のプライベートナンバーだ。この世界の私を通じて、八幡達をこの世界に派遣しよう」

 

イロハ「え?え?そ、そんな…こ、こんなVIPな人から友人なんて………」

 

一色はあまりの急展開にめっちゃ困惑している。まぁ、普通はそういう反応だよな?慣れてしまっている俺達が異常なだけで。以前に見た一色だったのならば、その立場を有効に利用すると思っていたのだが、ここまで大物が相手ともなると、また話は違うらしい。

 

八幡「じゃあな、一色。願わくば、これが今生の別れであってくれれば良い。ボタンを見たら思い出してくれ」

 

いろは「この世界のわたし。本当にありがとう!いつかあなたの本物が手に入る時が来ることをハチ君と一緒に願っています。大統領閣下、お願いします」

 

ヴァレンタイン「わかった。さらばだ、基本世界の八幡といろは。願わくば、そのホットラインが繋がる事態が起きないことを願う。では、ドジャアァァァン!」

 

こうして、俺達は国旗に包まれ、基本世界から自分の世界に帰る事が出来た。本当にありがとう。イッシキ・イロハ。お前の想いが通じることを願うぞ。

………あれ?何か忘れてないか?

 

sideヒキガヤ・ハチマン

 

散々な1日だった。変な世界に連れていかれるし、あっちの一色には散々愚痴を聞かされるしのろけられるし。アホの子じゃない小町からは横隔膜に小指で突っ込まれ、「あ、案外才能がある。お兄ちゃんが帰ってくるまで、修行してみる?」とか言って、ガスマスクみたいな物を付けさせられた。危うく呼吸困難に陥るところだったぞ!なんなの?あのマスク!というかあの小町は天使の皮を被った悪魔か!あ、嫌われていたわ。あの小町には。

学校に行けば空条先生という、話は通じるが平塚先生の強化版みたいな人に拳骨を食らうし、何か三浦と海老名さんは怖いし。

奉仕部が奉仕部じゃなかった。何故か当たり前のようにいる小町と一色が「上級幹部の仕事を全員分なんて無理だよー!」とか嘆きながら、普通にパソコンをハイスピードで打っており、俺を見つけたら、危うく変な仕事をさせられるところだった!天下のSPW財団の幹部の仕事なんて出来るかよ!何者だ、あの世界の俺は!

特に会計の簿記計算なんて出来るか!しかも英語で書かれているし!俺は英語なんて書けないし読めない!

それに数学は捨てているから、酷いときは学年最下位だった。それを空条先生に伝えると、「あんたはホントにハッチか!?ほぼ別人とはいえ、ハッチがそんなアホの子じゃあない!ハッチが帰ってくるまで数学の勉強をしろ!」とか言われ、とことん勉強させられた。

雪ノ下には本物の比企谷君は二度と帰ってこなければ良いのに…とか本気で言っているし、由比ヶ浜も距離を取っている感じがあった。ヒッキーよびじゃない由比ヶ浜に違和感を感じて聞いてみたら、本物のヒッキーにヒッキーって言ったら殺されそうなくらいに睨まれるし…って何だよ?

もう、ワケが分からなすぎて、早々に帰宅した。一色が妙に「すいません。ハチ君」とか言ってしおらしく付いてきた。自転車は一色が運転して俺が後ろ。なんか普通に運動神経抜群で、俺よりも体力がある一色に驚いた。

そして、当たり前のように俺の家に馴染んでいる一色にめっちゃ違和感を感じた。マイカップとか置いてあるし、ヘブンティーンではなく、経済新聞読み始める。

頭がどうにかしそうだった。早く帰りたい…と思っているところで、アメリカ大統領が来訪。そして、英語で一色と会話をし、大統領は三人を国旗で包む。国旗がはがされると、そこは生徒会室で和やかに話している俺と一色がいた。後の言葉は言うまでもないだろう。

砂糖を吐きたくなるラブシーンを見せられ、大統領はもう一人の俺と一色ごと旗に包まれて消えていった。

 

ハチマン「嫌な1日だった…何だったんだ?今日は」

 

イロハ「お疲れ様でした、せーんぱい♪それで、今日なんですけどー。仕事はあっちの先輩がすごい早さでやってくれちゃったんでー、暇になっちゃいました☆」

 

ハチマン「だろうね。SPWジャパンの幹部らしいから、生徒会の仕事なんてあっという間にかたずけるだろうね?あんなの、もう俺じゃない…じゃあ、もう帰っていい?クタクタだし」

 

イロハ「ダメですよー。明日はわたしの誕生日なんですよー。だから先輩、デートしましょう♪さっきの二人のやり取り見ていたら、わたしもデートしたくなっちゃいました♪この際先輩で我慢しますから、誕生日プレゼントとしてデートして下さいよー♪」

 

ハチマン「何で?葉山誘えよ。俺は疲れたって言ったじゃあないか」

 

あ、じゃあないかってあっちの一色の口調が移った。というか、「じゃないか」を「じゃあないか」とか言うの、あっちの世界の人間は普通に使ってるし、はやってんの?

とか考えていたら…

 

ガラガラガラ!

 

静「置いていかれたー!お兄ちゃん、置いてきぼりだよ!ハッチ酷い!」

 

シズカ「一足遅かったみたいだよ?兄貴」

 

ジョウスケ「何て言うか…御愁傷様ッス…」

 

仗助「こっちがテメェの後始末していたから忙しかったのに、どういうつもりだ八幡!いろは!」

 

双子?と言いたくなるくらい、二組の兄妹が生徒会室に入ってきた。だが、あっちの俺達は比較的違いがなかったが、この二組は顕著に違う。

 

男の方はこっちの世界の方がリーゼント頭で安っぽいスーツを着崩しており、何か色々バッチをゴテゴテ付けており、チンピラみたいな感じだ。

対してあちらの男はオールバックで高級感漂うスーツを見事にピッチリ着こなし、襟にはSPWと書かれた財団のロゴが刻まれているバッチを付けている。ちなみに、俺はこの人に今、胸ぐらを捕まれている。八幡違いです。体型を見ろよ!あっちの俺は一回りでかいぞ!

 

女の方はどちらがこっちの世界の女かは一目瞭然だった。共通点は雪ノ下並みに整った容姿と、頭に付けているサングラスと星形のピアス、制服にラブ&ピースのバッチを付けている所は同じだったが、他は雰囲気からしてまるで違う。体型も違った。

こっちの世界の方は見たことのないセーラー服を着ており、髪は肩までの癖のあるセミロング。何となく三浦を彷彿させるような勝ち気な雰囲気を纏っている。体型は雪ノ下よりは胸があるかな?程度。

一方、あちらの世界の女は総武高校の制服を着ており、背中まで届くストレートロング。雰囲気は雪ノ下よりも一見柔らかく見える。体型は大きすぎない程度のバランス取れた体型。

 

さて、あちらの女の雰囲気を「一見」と表現したのは理由がある。このサングラス女とは以前にも会っている。両方とも。

実際に人懐こいのはこっちの世界の方だ。あちらのサングラス女は、親しい人間には由比ヶ浜ばりに人懐こいらしいが、それ以外には清々しいほど興味がない。あの出会った頃の雪ノ下が可愛く見えるくらいには容赦がないのを俺は知っている。

 

ハチマン「いや、違いますから。俺はこの世界の比企谷八幡ですから」

 

静「あ、ハッチじゃあ無くて、比企谷さんでしたか。すみません」

 

口調こそ穏やかだが、雰囲気が一変。拒絶オーラが言外に出ている。これだもんな。

 

仗助「わりぃな。興奮してお前につめよっちまった」

 

ハチマン「いえ、気にしないで下さい。それより、俺の後始末って?」

 

仗助「………頑張れよ。こっちの八幡。ジョジョ、閣下に連絡とってくれ」

 

静「了解よ!お兄ちゃん!」

 

その数秒後、二人はドジャアァァァンされていった。

とっとと帰れ!グラサン魔王!

え?その前に、何でオールバック男は肩を叩いて目をそらしていたの?どういうこと?俺じゃない俺は何をやらかしたのん?怖いんだけど。あと怖い。

 

シズカ「ヤレヤレだわ。帰るよ、兄貴」

 

 

その後、ほぼ同時刻に八幡とハチマンの絶叫がこだました。

 

八幡&ハチマン「ふざけるなあの野郎!やはり別の世界の俺はまちがっている!アイツ嫌いだぁ!」

 

 

回想は終わり、そして時は動き出す。

side静・ジョースター

 

ハッチの話が終わった。

つい一月前の出来事。あの後、私とお兄ちゃんはハッチに詰めより、そのまま鬼ごっこが始まった。

当たり前だっつーの!後始末だけやらせといて忘れるなんて、それでも相棒か!無二の親友か!結局逃げ切られたけど。

 

三浦「へぇ、そんなことがあったんだ」

 

海老名「で、その時に作った指輪は?」

 

八幡「普段は家に置いてある。はめて学校に来るわけにもいかないし、ネックレスのように首から提げることも考えたけれど、ドンパチやったりするから壊れたりしたりしたらいけないしな。結構な値段したし」

 

結衣「どんな指輪なの?」

 

八幡「指環はプラチナで、あしらった宝石がヒデナイト」

 

結衣「ヒデナイト?」

 

静「エメラルド色の宝石よ。イーハの誕生石だし、スタンドもナイチンゲール・エメラルドでしょ?婚約指輪としてもピッタリの宝石なのよね。ハッチが決めたんでしょ?ヒデナイトの指輪」

 

八幡「ああ。そしたらいろは、蕩けるような顔になっていたな。もう、可愛すぎて、俺が完璧にKOされた」

 

ハッチが顔を真っ赤にしてのろける。

こんなのはハッチらしくないけれど、たまには良いなと思う。あれだけ苦労したんだから、そうなって貰わないと困る。

あっちのイーハ…イッシキにもその画像を送ってあげたら、喜んでいた。二人の指に輝くエメラルド色のヒデナイトの指輪。真っ赤な顔をしてしまりのない顔のハッチと、うっすらと涙を目に溜めた幸せそうな顔のイーハの顔。もちろん、その写真はイーハの部屋に引き延ばして額縁に飾られている。

その日の内にその画像はアーシス全員にメールで拡散された。グループLINEが凄いことになった。

私の婚約指輪?もちろんお兄ちゃんから貰っているよ?

水晶をあしらった、イーハ達と同じデザインのね♪

 

イロハには大感謝だ。彼女もイーハのような幸せが訪れれば良いなと願うが、あっちのハッチは強敵だ。頑張ってね、イロハ。

私は基本世界のイロハにエールを送った。

 

私達は油断していた。あの日の荒れたハッチを、再び目にする地獄の日が訪れるとは、私達は思いもしていなかった。

 

←To be continued

 

 




はい。今回は八色回でした。

本当は、この話の1日の様子をいろは誕生祭の話として考えていたのですが、出来上がったのが誕生祭にはふさわしくないアンチの塊になってしまい、お蔵入りしていた内容でした。
それが何故、今さら出てきたのか?
静が最後に語っていた事に大きく関係するからです。次からは、アンチヘイトが働きます。
皆さん、俺ガイル原作のこの時期に、何があったのか思い出して下さい。


今回は恒例の原作との相違点はお休みして、基本世界の設定とキャラ紹介。

ジョジョガイル(勝手に命名)勢は何度か基本世界を訪れており、誰かしらに会っている。
ジョジョガイル勢が基本世界を訪れたのは第二章終了から少し経過した頃。八幡達が中学生の頃で、俺ガイルの時代考証はクリスマスイベントがあった頃。ちょうどいろはにスポットが当たっていた時期で、原作八幡が一番ドン底に陥っていた時期に当たります。
修学旅行と生徒会選挙の一件で奉仕部と小町と険悪になっていた時期ですね。ジョジョガイルの八幡にとって、一番見たくなかった時期になります。
好奇心で基本世界を訪れた幼なじみーズは、この時期の基本世界の有り様に失望を覚えて帰ってくる形で終わりました。この話でエリナの残留思念が八幡に対するお仕置きとして基本世界に送った理由もそこにあります。
それでは、それを踏まえたそれぞれのキャラ設定を。

比企谷八幡…スタンドなし。原作の八幡がそのまま高校三年生になった姿。静と出会っており、サングラス女、またはグラサン魔王として怖がっている。また、八幡同士「あんなのは俺じゃ(あ)ない」と言って仲が悪い。

一色いろは…スタンドなし。本作のいろはと出会ったのがディスティニーランド事件の前だった(この頃はちょっと気になる程度の存在だった)ので、八幡とラブラブのいろはに対して男の趣味が悪いという印象だったが、半年たった今ではジョジョガイルいろはを羨ましく思っている。その時にいろはから聞いた八幡像から、今回の話の八幡が別人であると見破った(普通はわかると思うが)。ジョジョガイルキャラ達からは唯一認められているキャラ。

比企谷小町…本当は兄の事を気にかけてはいるのだが、出会った時期が悪かった!本作の比企谷兄妹とは相性最悪。故に両兄妹が互いを嫌っている状態に!ジョジョ八幡をめっちゃ怖がっている。

静・ジョースター…スタンド名「ワイルド・ハニー」
顔の造形に面影があること以外、もはや見た目も中身ももはや別人。既に互いが互いを別人認定。ジョジョ八幡曰く、「相棒…残念になったな…何か色々と…」と、カットされた部分で言われた。基本世界では既にジョセフも亡くなっており、承太郎は仗助に静を預けている。
今でこそ流暢に日本語を話すが、当初は苦手だった。もちろん、仗助との関係は普通の兄妹程度。ジョセフが亡くなるまであまり面識が無かったので、仗助に引き取られてからも距離感を計りかねている。ジョースターコンプレックスは解消済み。
超絶ブラコンのジョジョガイル静にはドン引きしている。静同士は仲は悪くないが、兄貴理論に関しては永遠に解り合えないだろう。
スタンド能力に関しては名前もそうだが、見た目もアクトン・クリスタルとは全然違い、ハチ人間のような見た目。能力は似ているが、基本スペックはアクトンより劣るものの、透明化に関してはワイルド・ハニーの方が優秀な部分があり、透明化したものを認識できている。アクトンの方は一旦解除しなければ、透明化させたアクトンも現状がわからない弱点が存在する。
掛け声は「ドラドラドラ!」とアクトンと微妙に違う。

東方仗助…相変わらずリーゼント。SPWとも無関係。杜王町の普通の会社員。結婚の有無は不明だが、静アプローチがないため、案外普通に結婚しているかも?

その他…パッショーネは「恥知らずのパープルヘイズ」の通り、SPWとは同盟しているものの、完全に同化していない。SPWもジョースター家とは同盟しているが、経営に関しては全く無関係。方針そのものが違うため、ジョジョガイルSPWのように肥大化していない。あくまでも医療系の発展を研究する集団。


活動報告にアンケートを貼りました。川崎兄弟戦の八幡側のタッグが決まっていないので、皆さんの意見を下さい!お願いします。
あと、ケーちゃんの転生者候補やコイツの転生をオリキャラで欲しいとかあったら、そちらも募集します。


それでは次回もまた、よろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。