コミ1やら夏コミ準備やらで更新かなり遅れましたぁ!
ちなみに今オリジナル企画も進めるので、更に遅れますぅ!
あとPixivでもこの作品見たいと声があれば、そちらでも公開するのでよろしくお願いしますうううう!
「こんにちはー! てな訳でさっそくお邪魔しまーす」
「どうぞ、どうぞー。というか小町ちゃん、ここに来るの初めてだよね?」
「そうですね、まあ今は忙しい時期ですから」
イベント前日の正午。
玄関から入ってきたのは最愛の後輩だった。
先輩組は試験やら買い出しやらで、それぞれ用事があるらしく、今いるのは私だけ。まあバイトもないし、せっかく来てくれてる訳だし。
「で、どうですか? 進捗の具合は?」
「し、進捗? 先輩の原稿なら」
「そっちは知ってますよ。どーせ今回もギリギリだったんでしょ?」
妹だから兄の趣味を知っていて当然と、呆れた表情でため息をしている。
本当この兄妹で隠し事とかしないよねぇ。
で、だ。
「進捗は……変わらないかな。というかここ、恋愛禁止っていうルール設けてるし」
「何ですか、それ?」
「ここに住むときに雪乃先輩と決めたの」
最もこのルールに関しては実は例外がある。本当の本当に最後で最終ともいえる唯一の抜け穴が。というよりもはや若干グレーゾーンに入っているものだけれど、少なくともそれだけが先輩と私が先輩後輩という関係を終わらせる事が出来る。
でも、正直に言うと、今はまだいいかなって。
「とりあえず紅茶淹れるから、適当に座って」
「はーい」
せっせとキッチンで紅茶の準備を始める。少し前までは懐かしいと思えたこの味も今じゃ舌が慣れてしまった。
小町ちゃんの元へ持っていくと、彼女も嬉しそうに口にする。
「うーん、しばらく飲んでないせいか、懐かしいですね」
「その感想、私も言ったなー」
顔を見合わせて、二人で笑みをこぼす。本当、可愛い後輩だね。
「そういえば今日はここでパーティー開くんですか?」
ふと、いきなりそんな話題が投げられた。
へ? という間抜けな声と共に小町ちゃんの方に顔をやる。
「パーティー?」
「ええ、パーティー」
「何の?」
「何のって……いろはさん、冗談ですよね?」
「いや本当に分からないんだけど……」
何でそんな驚いた表情をしてるんだろう。
今日って何かあったっけ? 八月八日、イベント前日。明日から三日間に渡るイベントの準備くらいしか……ん? 去年のこの日って確か……
ようやく私は気付いてしまい、大きく口を開く。
「あ、あ……ああああああっ! すっかり忘れてたぁ!」
「い、いろはさん……あぁ……」
ここのところ、アニメみたいな展開が続くのは無意識だと思ってる。
× × ×
「で、どうしようか?」
「いやーそこは小町が口挟むとこじゃないので」
「妹ならお兄ちゃんが喜びそうな物とかわからないの?」
「マッ缶とラノベと小町じゃないですかね……」
それ、自分で言っちゃうの?
なんてツッコミを入れたいところだが、最優先事項はこの後である。
「そもそもこういう事は雪乃さんが既に準備してるとかないですか?」
「うーん、試験勉強続きだから、雪乃先輩も忘れていると思う。あの人って集中し過ぎると周りが見えなくなるタイプで」
そんな先輩への暴言を口にしている途中で、後ろから冷めきった声音が耳に更新される。
「誰が周りが見えなくなるのか、もう一度言ってもらえるかしら?」
「あ、あぁぁぁ……あはははは」
「試験終わって、帰ってみたら、随分と勝手に口走られているものね。あ、小町さん、こんにちは」
「こんにちはー!」
元気いい挨拶なんていいから、フォローしてくれ。念じた私の想いはもちろん最愛の後輩に届くことはなく、無情にも帰宅したばかりの女王様が隣に腰を下ろしてくる。
無論、この件につきまして、後程然るべき注意を受けたのだが、ひとまず置いといて。
「ところで何の話をしていたのかしら? もしかして誕生日について?」
「さっすがー! 雪乃さんなら覚えてると思いましたよ」
「彼ほど覚えやすい誕生日がないだけよ」
嘘つけ。
部屋のカレンダーのところに大きく赤丸つけているのを私は見ている。もちろん禁句なのは理解しているのでお口チャック。
「で、何かやるのかしら?」
「それがですね……私、すっかり忘れてまして」
「そうなの? てっきり一色さんの事だから、影でこそこそと準備しているものだと思ってた。ああ、そういえば最近はイベント? で忙しかったものね」
「不甲斐ないです……」
しかし肩を落としたところで解決してくれる展開はやってこない。
「という訳で、どうしましょうか?」
「そうね……一応考えている事があるのだけど」
それから雪乃先輩の案を聞き、すぐに採用。いやまさかね。高校時代ツンツンバリバリの雪乃先輩がこんな事を言うなんて、もうなんか感無量というか、ねぇ?
誰に問いかけているのかも置いといて。
結局、この日は先輩の誕生日祝いはなく、女子会兼雪乃先輩試験お疲れ様という事で簡単な料理とおつまみ、それからアルコール入りの飲み物を用意。いやーはりきって色んなカクテルとか開けてなかったワインとかもみんなで飲んで、そりゃあもう……でへへ。
そんにゃ訳で……まだまにゃ……ちゅぢゅく……ばたり。
× × ×
地獄絵図。
その言葉の意味はむごたらしい状況、惨事、残酷。まさに言葉通りの意味。
この世にいる間にその光景を目にする事は珍しいとされているが、ラブコメラノベの主人公だとよく目にする事が多い。つまりは二次元という意味で。
では三次元だとどうだろう?
「にゃははははー! ゆきゅのしぇんぱい、いよはしぇんぱい。まだまだゃぁ!」
「本当何でですかね? どうして先輩は、先輩は、先輩は! いっそ私以外の女の子に振り向かないようにヤンデレ体質になりましょうかね。それなら雪乃先輩相手でも」
「は? あなた私に勝てると思ってるのかしら? 大体、あの男のどこがいいのやら。あんなの捻くれてて、手に負えなくて、取扱いが難しくて、でも一緒に買い物行くと、必ず歩道側に立ってくれたり、重たい荷物は持ってくれたり、あと暇な時は一緒にご飯作ってくれたり、あとあとっ! こないだ二人で映画館に」
「ざーんねんでした! 私なんか二日前に先輩のベッドで一緒に寝ましたもんね! 先に先輩が寝ちゃってるから、こっそり忍び寄りましたもんねぇ!」
「いいじぉー! もっとやれー!」
「何これ?」
開口一番にこぼれた言葉である。
今朝までは今日の試験に対して、徹夜で勉強してたであろう雪ノ下が眠たそうに大学へ行くところを見送り、同じく連日のイベント準備で眠たそうな一色に見送ってもらった。そう、つい数時間前までは。
「おい」
「あれぇ? 先輩、お帰りなさい。もう買い出し終わったんですか?」
「いやもう夜八時なんだけど。普通に大した買い物じゃないからな。で、勝手にベッドに侵入した件について、kwsk」
「いーやーでーす! いつも一緒に寝てくれない先輩が悪いんですもんね」
この家のルールを大声で叫びたくなる、そんな感想だ。
とろけきった顔だけではなく、乱れた服装からは目を逸らしたくなるような黒い布生地がチラチラとこちらにアピールしてくる。案外派手なのつけてるなぁ、こいつ。
そんなはしたない淑女らしからぬ様子なのは他二名も同様。最も小町はただ騒いでいるだけのご様子なので、放置していれば、疲れ果てて寝てしまうだろう。
あとはこちらのお嬢様か。
「んー、比企谷君。お帰り」
「ただいま。ワイン飲んだのか」
返事の代わりにこくりと縦に首を振る。
「随分と飲んだな。お前ここまで飲めたっけ?」
「ううん。なんとなく、ね」
「なんとなくか」
「そ」
こちらもふらふらしているので、近くに行き、身体を支えると、ぐにっと柔らかい手が腰に回る。このままスープレックスとかやられて、KOされてしまうのだろうか。もちろん防御の姿勢を取るも、続けて顔を胸に埋めていく。ああ、これで俺の胸に孔を開けるのか。
とうとう俺も虚化の時が来たのかと、覚悟するもすりすりと柔らかい感触がSAN値を削っていく。
「……どうせこの件で後日怒られるんだろ?」
問いかけるも無視される。いやいいんだけどね? この子達の酒癖の悪さは知っているし。
ただ、今日はいつにも増して、ウェーイ状態化してるなぁと。もしかしてスペシャルゲストで戸部でも来た?
とりあえず引き離そうとするも、この酔っ払いな雪乃お嬢様は上目使いで抵抗。八幡はめのまえがまっくらになった。そんな訳でしばし待つこと一時間。ようやく解放。というより夢の世界へ旅立っていった。
「ふー、疲れた」
「お疲れ様」
「何だ、起きてたのか」
気付けば、先程と打って変わり、落ち着いた小町がいた。
せっかくなのでテーブルからソファへ移動し、久々の兄妹トークに花を咲かせることにする。
「どうだ、最近は?」
「黙秘します」
「弁護士は呼んでも来ないぞ。何なら俺が生涯の弁護人でもある」
「異議しかなさそうだから、嫌だ」
いやいやいや。
何ならステルスヒッキー発動して、完全犯罪まで起こせちゃう。これにはメガネのボウズもびっくり。まあ彼に会う=殺されるという方程式に当て嵌る確率の方が高そうだけど。
「で、実際のところはどうなんだ?」
「お父さんみたいな事言うの辞めてよ。それ結構聞き飽きてるし、うざい」
「最後の言葉は親父も聞き呆れてるだろうよ」
その度に枕を濡らしているだろうよ。
しばらくして、小町は口を開いた。
「別に。そこそこ上手くやってるよー。サークルも楽しいし」
「あーボランティアサークルだっけ? 好きだよなぁ、お前も」
「奉仕部の魂が生きてるからねー。まあぶっちゃけるなら、就活対策♪」
楽しそうに話しているのに、何故内容を聞くと、頭が痛いのか。何故ここ数か月でインターンシップのガイダンスが多いのか。その答えはただ一つ。比企谷八幡! 君が就活を控えた学生だからだぁぁぁぁ! フハハハハハハァ!
「そういうお兄ちゃんはいろはさんとイベント参加のようで」
「まさかここまでアニメに嵌るとは思わなかったなぁ」
ちなみに二人共、近くにある寝室で気持ちよさそうに睡眠中。本当はそれぞれの部屋へ送りたいところだが、二階にあるのと寝かしつけるまで面倒だったので、放り投げた。
「いろはさんがコスプレかぁ。私もしてみようかな」
「その場合、まず兄ちゃんに写真を送るんだ。きわどい衣装なんか着られて、変態カメコ共に目をつけられ、そこから同人誌のネタにされ」
「黙れ、変態」
ドスの効いた声音が響くので、八幡、静止する。
「で、実際どうなの? 雪乃さん? いろはさん? もう高校からずるずる引っ張ってるんだから、いい加減はっきりさせなよ。それともこのまま誰とも付き合わないなんてくだらない事言うと、小町本気で怒るよ?」
「いやお前も聞いたかもしれないが、この家は恋愛禁止っていうルールがな」
「別にこの家だからでしょ?」
あっけらかんと小町はそう言った。
いや話を聞いてたよね。この家じゃ……ああ、そういう。
「今更引っ越しは面倒」
「そうも言ってられないでしょ。二人共早いとこ返事が欲しいんだよ」
「いや正式に告られた訳でもないのに、返事をするっておかしいだろ」
自意識過剰もいいところだ。
告白というのはあくまで形式上として必要な手順、つまり二人の関係性を変更する為に必要な手続きであり、これがある事でスムーズに行える。それを無視して、返事なんて一方的にもほどがあるし、俺の勘違いという事もある。
そりゃあ、いくら仲がいいとはいえど、シェアハウスなんてテレビの企画でもない限りは異性と暮らすなんて中々出来る事ではない。よっぽどの信頼が無い限りは。
もちろん最後の一点に関してはこちらも同じだ。大学の連中なんかよりも心の底から信用出来るし、何なら俺が死んだ後の小町の事を任せられる奴らだ。いや小町が結婚するまでは死ねない、あ、でも結婚相手を塵遁・原界剥離の術で分子レベルで塵にするから、一生無理だな。
ともかく雪ノ下雪乃と一色いろはに対しては特別扱いしてるか、してないかと聞かれたら、肯定である。
しかし、俺の中ではまだそれを好意と呼んでいいものかどうか、決めあぐねている。
「ふーん、ま、この件は次回までに変化がある事に期待って事で」
「善処はする」
「さーて、小町も寝ようかな。明日は雪乃さんとショッピングだし」
立ち上がって、寝室へと向かう小町は扉の前でくるっとこちらに不利かった。
「あ、お兄ちゃん」
「ん?」
「……誕生日おめでと」
二十歳を超えると、どうにも特別感がなくなるのは俺だけだろうか。