思えば、私は。君とはじめて出会ったあの時から、君の事だけを見ていたのだろう。今更ながらに、そう思った。ああ、何でこんなことになってから気づくのだろう。いつも、いつもこうだ。私はなにか大切なものを失ってからその大切さに気づく。ただただ憎い。別にこの世界が憎い訳では無い。私は私自身が憎いのだ。こんなにも無力な私自身が。ああ。伝えたかった。僕は君にただ一言だけ「愛してる」と。叶わぬ願いだとは分かっているのだ。でも、それでも。もし叶うのならばもう一度君に会いたい。今度は、今度こそはきっと君に伝えるのだ。
私達二人はお互いがお互いのことが好きであることに薄々気づきながらも、今の関係を壊したくなくて、一歩踏み出す事が出来ずにいた。共通の友人からは、もうとっとと付き合ってしまえとか言われたこともあるのだが、二人とも何故かこの友達以上恋人未満な関係が気に入っていて、相当ななにかが起こらなければこの関係が動くことはないだろうと思っていた。しかし出会って5年目のクリスマスの日。その友人の策略で私達は俗に言うデートというものをすることになった。友人曰く楽しんでこいよ。だそうだが正直緊張でガチガチである。そんな感じで、着ていく服などで悩んでいるともう当日になってしまった。普通に喋れるかすら心配である。
そして、約束の時間。彼は既に待っていたようだ。
「ごめん。待たせた?」
そんなテンプレなことを聞く。そうすると彼は彼で
「ううん。待ってないよ。さっき着いたところ」
とこれまたテンプレな言葉が帰ってきて、二人で少し笑う。いつもの空気感になってきたかもしれない。
そして色々なところでウィンドウショッピングを楽しんだあと彼は言った。
「なあ、俺たち付き合わないか?」
「うん。もちろん。これからもよろしく。」
もちろんOKである。彼も私を好きでいてくれて本当に嬉しかったので少し泣いてしまったことは秘密だ。
その後彼はアクセサリーショップに行こうか?と言った。彼からアクセサリーを貰えるなんて嬉しすぎる……!と感動しながら私は彼より少し歩く速度が早まっていて、そして、上から落ちようとしているソレに気付けなかった。
「危ない!」
彼はそう叫ぶと同時に私に覆いかぶさった。その数瞬あとにはもう鉄骨は降ってきていて、彼は全身から血を垂れ流していた。
「うそ……うそでしょ……ねぇ……返事してよ!起きてよ!」
そんな事を叫んだって変わらないのは知っている。でも、それでも叫ばずにはいられなかった。
「良かった……今度こそ、君を守れて。私の、大切な人……」
そう言って彼は眠った。否、それも違う。恐らく死んだのだろう。だが私はそれが認められなかった。
数日経って、私は彼の葬儀に行って、そして彼のご両親にあった。彼のご両親も彼同様優しい人で、私にごめんね。と言っていたが謝らなければいけないのは私の方だ。そう思っているとひとつの手紙を渡された。私宛に書かれていて、ご両親は読まなかったらしい。なんだろう。と思いながらもそれを開けて中の手紙を読む。
君がこの手紙を読んでいるということは私は今度こそ君を守ることが出来たのだろう。そして、それと同時に死んだのだろう。変な人だと思うだろうが聞いて欲しい。私は君があの時落ちてきたもので死んでしまうという夢を見て、今これを書いている。正確に言うなら夢ではなくて実体験なのだが。何回も何回も。私は目の前で起こることに何も出来ず、君を見殺しにしてしまっていた。だけどやっと決心がついたんだ。私が死んでも君を守ろうと。私は君が大切だ。最も大切と言える存在だ。だから、君はどうか私の事なんて忘れて幸せになって欲しい。君の幸せを願っている。
馬鹿な人。読み終わった感想がそれだった。私はあなたがいないとダメなのに。あなたがいてこその幸せなのに。あなたがいない世界に幸せなんてないのに。
「私は、貴方以外なにも、いらないのに」