黄金の獣の廻り者   作:征嵐

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 もはやなんで書いたのか分からない。


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 白いコートを身に纏い、フードを外した彼女の左目には、十字線(レティクル)じみた模様が浮かび上がっていた。

 

 呼気が空気を白く染め、敵に見つかるのを避ける為か、口元をマスクで隠した彼女の名前は──シモ·ヘイヘ。

 勿論本名ではない。その名を持つ男は、何年も前に死んでいる。だが、しかし、彼女は、白い死神の才能を受け継いでいた。

 

 彼女の持つ超ロングモデルのライフルの銃口は既に私の胸に押し当てられている。この状況で彼女が外すことなんてないだろう。辺り一面はすでに彼女の手中であることを示す銀世界。踵を返して逃げようと、背中を撃たれるビジョンしか見えない。

 

 「お前も廻り者なんだろう? ほら、才能を見せてみろ!!」

 

 彼女が叫ぶ。私の腰に着けた携帯端末は完全に沈黙し、普段であれば未来予知にも近い支援をしてくれる"彼女"の援護は期待できず、ここが目の前の彼女の世界である以上、"偉人の杜"からの増援は無いものと思っていい。そもそも、シモヘイヘ相手に並の増援など無意味。ライフルで穴だらけにされて終わりだ。故に、自力で対処しなくてはならない。ノイマンからのオーダーは1つだけ。"仲間にするから穏便に"。だが戦いを挑んできた以上、穏便には済むまい。よって次善。殺さずに無力化しなくてはならない。

 

 「生憎と、私の攻撃手段は殺傷力が高くてね···まぁ、そういう訳だ。死んでくれるな、死神。」

 「何を···ッッッ!?」

 「卿は撃ち合いがお好みなのだろう? 仲間になれと勧誘に来た身だ。卿の好みに合わせても、彼女は怒らんだろうさ。」

 

 

 我は輝きに焼かれる者。 届かぬ星を追い続ける者。

 

 

 届かぬ故に其は尊く、尊いが故に離れたくない。

 

 

 追おう。追い続けようどこまでも──我は、御身の胸で焼かれたい。

 

 

 逃げ場なき炎の世界。この荘厳なる者を燃やし尽くす──。

 

 

 焦熱世界(Muspellzheimr)·激痛の剣(Laevateinn)

 

 

 ──白銀の世界は、灼熱に飲まれた。しかし、私のいる地点と彼女のいる地点だけは、炎が犯さぬ絶対領域。世界もろとも焼き尽くすのは楽だが──それではつまらぬ。さぁ白い死神よ。その絶技で以て、この私に追い縋ってみせろ!!

 

 私の背後には、私の体躯など遥かに超えるサイズの列車砲が控え、彼女に照準を合わせている。

 

 「さぁ、どうする? 何メートル離れて撃ち合う? 卿が決めたまえ。今や世界の支配権は私にあるが──何度も言うように、私は勧誘に来たのだ。卿に合わせても──」

 「──罰は当たらない、か。く、くくく···300メートルだ。私が離れよう。」

 「あぁ、離れる前に1つだけ···血沸くかね?」

 「あぁ···肉踊るとも!!」

 

 彼女が離れて行く。100メートル···150メートル···200メートル···300メートルに達した瞬間、確かに目で追っていた筈の彼女の姿が掻き消える。窪みに伏せたか、塹壕に飛び込んだか。本来なら、列車砲に対して有効な行動ではない。雪の窪みだろうと、木の板で補強された塹壕であろうと、土嚢の積まれた掩蔽壕であろうと、列車砲が直撃すれば中の兵士もろとも均される。だが、今は違う。彼女を殺す訳にはいかない以上、闇雲に撃つのは得策ではない。ならば何故極大火砲·狩猟の魔王(デア·フライシュッツェ·ザミエル)などという特級の聖遺物を出したのかと問われれば、答えはこうだ。ただ一言、"興が乗った"と。

 

 

 side シモ·ヘイヘ

 

 私が"完全な廻り者"、つまり、輪廻返りが解けなくなってから数日のことだった。私の元に、その男がやってきたのは。才能を何に使うでもなく、ただ退屈極まる日々を過ごしていたら、唐突に目の前にその男が表れたのだ。一人の少女──確か彼は"アインシュタイン"と呼んでいた──を従えて。困惑する私に、彼は「偉人格を集めた組織を作っているのだが、卿にも参加して頂きたい。無論報酬は出るし、休暇もある。」なんて言ってのけた。流石に意味が分からなかったので、「何を言ってるんだ、お前は。」と言ってしまったのだが──それを聞き咎めたのは、彼ではなくアインシュタインだった。「ちょっと、何なのよ、その口の聞き方は。この方を誰だと」云々。どうにも彼女とは馬が合わないらしく、そこから先は売り言葉に買い言葉。気付けば私の世界(フィールド)で戦う流れになっていた。

 

 後悔しているかと問われれば、間髪入れずに頷くだろう。一目見た時点で「私が傅く側(弱者)だ。」と悟らせるほどの覇気を纏う相手に、何が悲しくて一対一の戦いを挑まねばならないのか。アインシュタインさえいなければ、彼の勧誘には即座に跪いて応じたというのに。

 

 ──後悔に浸る暇はない。"勧誘に来た"という言葉を信じて身を隠したが、至近弾でも吹き飛んでしまうような窪み身を伏せただけでは全く安心できない。何しろ相手は列車砲だ。一発撃てば次弾までには時間があるだろうが···その一発を撃たせる方法を考えねば。

 

 side out

 

 

 「ほう。」

 

 カシャン!! と、遠くで微かに音がした、と、そう知覚した時には、すでに服の肩に氷の弾丸が触れていた。だが、氷の弾丸と私の体では、優先度は私にある。不死身(エインフェリア)であり、幾百万の魂を内包する私には、そして、私の命を刈ろうとする弾丸をすら愛する私には、その殺意は届かない。 パァン!! と、音を立てて弾丸が弾ける。服に付いた破片を払い、背後の列車砲へ命令を下す。先程まで彼女のいた位置を凪ぎ払えと。

 

 「Feuer.」

 

 轟音。擬音では到底表せない程の轟音と共に、炎の砲弾が射ち出される。相手も超一流のスナイパーだ。射撃後に同じ位置に留まるような愚は犯すまい。

 

 期待通りに回避していたようで、次は右側から太ももを撃たれた。列車砲の特性状、即座に照準を90°近く変更できないのだが──甘い。聖遺物『極大火砲·狩猟の魔王』の攻撃方法が、ただの射撃だけと思って貰っては困る。

 

 右手を掲げ──振り下ろす。命令に従って、列車砲は()()()()()()()()、先程射撃された位置に火柱を立てた。──おっと、このままではいずれ殺してしまうか。いかんな、"彼女"に怒られてしまう。では──幕引きと行こうか。

 

 

 side シモ·ヘイヘ

 

 なんだ、今のは!? 確かに肩口を撃ち抜いた筈の弾丸は、彼の肩で砕け散ったように見えた。鉛ではなく氷の弾丸とはいえ、貫通力や硬度は普通の弾丸に引けを取らない。あの列車砲といい、不死の才能を持つ偉人か。

 

 彼を回り込むように移動していたとき、先程まで自分がいた位置が完全に焦土と化すのが見え、回りは灼熱の世界だというのに背筋が凍った。

 

 頭を撃ち抜くのも何故か気が引けて、次弾は右足を狙った。だが、全く効いている様子はない。位置取りとしては彼の真横だから、列車砲がこちらを向くにはまだ時間がある。今のうちに後ろに回り込んでおこう。

 

 ──甘かった。移動を終えた時には、またさっきまでいた位置に火柱が上がっていた。それは彼が私の世界を塗り潰した時点である程度予測できていた。ここは最早彼の手中として理解していた。だが──今起きている現象は、なんだ? 彼は虚空に向けて拳打を放ち、そして──世界が割れていく。脳が理解を放棄し、私の世界が完全に壊された──否、終焉を迎えた事で、風景が切り替わっていく。白銀の雪も、紅蓮の焔も、全てが消えていく刹那、『ミズガルズ·ヴォルスング·サガ』と、彼が詠うのが聞こえた気がした。

 

 

 side out

 

 

 「貴方は──何者なんだ。」

 「卿と同じ廻り者だとも。シモ·ヘイヘ。」

 

 双方無傷のまま、彼女の世界に引きずり込まれる前にいた、小さな公園で向かい合って立っていた。隣ではアインシュタインが心配そうにこちらを見ているので、問題ないという事を示す──こともせず、ヘイヘの方に歩み寄る。右手を差し出し、なるべく穏やかな表情を作って問いかける。

 

 「さて──シモ·ヘイヘ。私の勝ちだが···共に来てくれるね?」

 「···。」

 

 彼女は無言のまま私の前に跪き、私の手を取った。

 

 「この身を、どうか貴方の為に。」

 

 

 side シモ·ヘイヘ

 

 彼の所属する組織"偉人の杜"のアジトに連れて来られた私は、それなりに歓迎された。彼と一戦交えた──と、言うよりは一方的に遊ばれただけだったが、それでも、彼に銃口を向けたことは、並み居る偉人たち、特にアインシュタインやノイマンといった女性陣の顰蹙を買ったらしい。が、まぁ仲間になったことや、彼の「ノイマン、卿も初対面の時には私を試すような事をしただろう? あまり新人を虐めてやるな。」という一言で鎮火した。

 

 「ノイマン、彼は──誰なんだ? 彼の才能は、世界を作り変えるものなのか? 或いは、世界を壊す──」

 「彼の才能の、その全貌は私にも分からん。名前から推察できる才能とはかけ離れた、強大な力を持っていることは知っているがな。」

 「そうだ、彼の名前は?」

 

 私が聞いたとき、呆れ顔を見せたのはアインシュタインだった。馬鹿にしたような目の中には、意外にも私への軽蔑や敵意は僅かにしか見えない。それも彼に銃口を向けたことによるものだろう。彼女を支配するのは、ただ彼への崇拝にも近い敬意。

 

 「それを聞かないでここまで来たの? 彼の名前は──」

 

 彼女の言葉に被せるように、アインシュタインの頭に白い手袋で包まれた手が置かれる。腕を隠す黒い軍服を辿って行くと、予想通り、黄金の双貌と目が合った。

 

 「自己紹介くらい、自分でさせてくれ、アインシュタイン。私はラインハルト·ハイドリヒ。その廻り者だ。」

 

 

 

 ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼

 

 

 PERSON vol.01

 

 ラインハルト·ハイドリヒ

 

 所属:偉人の杜

 年齢:??

 前世:ラインハルト·ハイドリヒ(?)

 

 "偉人の杜"において新人の勧誘を率先して行う人物の一人。

 

 纏う雰囲気からか、どんな相手からも尊敬され、畏怖され、憧れられ、惚れられ、と、好意的な印象を持たれる。が、『こいつは強い。だから戦え!!』という流れになることも多い為、勧誘から戦闘に発展するケースも多い。

 

 相手が確固たる自己を築いていないなら、即座にその足元に身を投げ出してしまうケースすらある。ヘイヘの場合は、自分の世界に相手を引きずり込んでしまうほどに確立した自己を持っていた為、逆にアインシュタインに見咎められた。

 

 〔才能〕

 

 ???

 

 




 続かないと思ってくれて構わない。
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