うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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大阪大乱闘編

雪光が命名したのは「大阪大乱闘編」だった。

 

 

九校戦最終日、ミサイルに狙われた会場を救うべく俺は富士基地に単身潜入した。

そこで出会ったのは魔術師を名乗る男だった。

俺は右腕をもがれ、司波達也の再成で助かった。スゲーな再成。

 

ジードヘイグを操り日本を混沌の淵へと落とそうとする男。

その男を追う為、国際都市となった大阪を単身走り回ることになった。

裏社会や闇の世界を調べ、情報を集めていく。

 

 

【俺の単独行動に業を煮やして勝手に裏社会で情報収集を始め、貞操の危機をぎりぎりで俺に救われたカナデ】

 

「マダム、その人は連れて行くよ」

マダム・キャンサーの隣には上半身裸で下半身は下着と破れかけたストッキング姿のカナデが護衛に無理やり立たされていた。

カナデの顔にははっきりと殴られた跡がある。

 

「もう一度言うよ。マダム、彼女を放せ」

出来る限り優しく。いや優しく言わないと俺の殺気でみんな死ぬ。

60代のマダム・キャンサーは年齢に似つかわしくない若々しさを恐怖に引き攣らせていた。

「その女をお放し!早く!」

護衛の男はカナデを俺の方へ押し出す。カナデはふらふらと俺の胸へと倒れ込む。

そっとお姫様抱っこをする。カナデの鼻は少し曲がっている。鼻血も渇いている。

「無理しすぎだよ」

そう言うとカナデは恐怖を抑えてあの無機質な声で「うん」と答えた。

無機質な声を出すほど彼女は自分の恐怖と戦っているのだ。速くこの場を離れ、彼女を泣かせてあげたい。

恐怖は泣くと空へと逃げていくと俺は思っている。

 

彼女を抱いたまま、このカジノのオーナールームを出ようとする。

ドアの前に立った時に

『マダム、あとでまた寄るよ』

俺は彼女の国の言葉でそう言って部屋を出た。

そう言えばマダムは俺のことを小鬼と呼んで忌み嫌っていたが、今も嫌っているのだろうか。

 

 

カナデは捜査本部隣りのホテルでワンワン泣いた。

「馬鹿!怖かった!」とか「心配した~あ~」とか「ほんとに、ほんとに心細かった…」と感情を爆発させ泣いた。

カナデはそのまま寝て、俺は起きるまでそばにいた。

 

翌日カナデを連れてマダムのところに行った。連れて行く気はなかったけど、彼女が譲らなかった。

カナデはマダムと対面すると、近くにいたマダムの血縁の男に近づき思いっきり殴った。

後で聞くと「あいつが無理やりキスしてきた」らしい。

殴った後少し震えるカナデの肩を抱き、マダムキャンサーに今の裏社会に蠢く闇医者たちの住所を片っ端から聞き出した。

 

ちなみに帰り道に邪魔してきたカナデに殴られた男と10人の護衛は皆まとめて入院してもらった。

カナデにキスした男は片金または片玉人生を送ることとなった。

男としては同情する。

だが俺の女に手をだすのは許さない。

 

 

【カナデにくっついてきた緋村少年と、緋村少年に呼び出された鬼一法楽少年】

 

「なんだ、はぐれたと思ったけどアラタ先輩のとこに居たのか」

俺は隙をついてデコピンを緋村少年に喰らわす。

「女ほっとく奴に喋る権利はない」

「じゃあアラタも無いわね」

ぐうの音も出ません。はい。

カナデはそう言って紅茶を飲む。

ホテルの深夜のラウンジは四人しかいない。

既にラウンジの明かりは落とされ、俺たちの居るソファだけが室内灯に照らされている。

 

俺、カナデ、緋村少年、鬼一少年だ。

「護衛代わりに無理に着いてきて貰ったの。我慢できなくて単独行動したのは私だから許してあげて」

カナデの声に調子が戻ってきた。

 

「で、これで俺たちはお役御免か?」

鬼一少年がつまらなそうに聞いてくる。

精悍な顔に立派な体躯。荒武者もかくやという感じだ。

どうやらこいつは暴れる目的で付いてきたらしい。

くぅ~、脳筋三校め。あの学校は男塾か!

 

「もう少ししたら暴れられるから土日は大阪に泊まり込む気はないか?」

俺の言葉に嬉しそうな顔をする鬼一少年と緋村少年。

あ~同類コンビなのね、君ら。

「いいかよく聞け。俺はこれから大阪でデカい狩りをする。そのためには仕事が出来る狩人が何人もいる。出来れば強くて加減を知らない奴だ」

俺は少年二人の顔を見てニッと笑う。

笑いかけるというのは意外と効果的で敵対者ではない意思表示と味方であるポーズでもある。

 

「いいか。学校がある時は仕方がない。だが土曜の夜には大阪に来い。お前らにも狩りするチャンスをやる」

二人は俺の笑いに俺と同じような笑いで返す。

暴れることを楽しむ笑顔だ。単純だな~。

これで労働力をゲットだ。

「なあ報酬は?」

鬼一少年は欲張りなようだ。

「それなら、先輩。本気で試合ってよ」

「俺も俺も」

緋村少年のアイデアに身を乗り出しす鬼一少年。

 

結局俺は二人との試合を受けることになった。

 

 

【「十師族として介入することとなった」と言いつつ、雪光に「友達が心配なんだって」と冷やかされる光夜】

 

「何をやっていた」

「秘匿任務をちょっと・・・」

地下街での追跡劇に現れた光夜は、翌日の捜査本部にも現れた。雪光を連れて。

なんでも「四葉」から捜査本部へ顔を出し、圧力をかけるよう指示を受けたそうだ。

四葉の存在を陽動に裏で何かをするのか、それとも七草への牽制か。

 

大阪到着直後から地下街での戦闘に遭遇したというのだ。スゲー偶然である。光夜よ、お前出番待ちしてなかった?

 

応接室には三人しかいない。

「で、今回四葉はどうするんだ。警察、軍合同で動いているから首突っ込むすき間はないぞ」

「俺は顔を出しただけだ」

「まあ、裏でコソコソするのは黒羽家に任すよ。ねぇ光夜兄さん?」

なにやら雪光がニヤニヤしながら光夜をみる。光夜は心なしかいつもより仏頂面だ。

なにか面白いことでもあったのか?

 

「光夜兄さん九校戦後ずっと心配しててさ。カナデと一緒に情報収集したり風間さんにアポなしで面会しようとしたりして・・・」

「雪光」

光夜が雪光の名前を呼んで言葉を遮る。

あ、光夜少しだけ顔赤くなってる。アラタ×光夜なのか?光夜×アラタなのか?

 

「友達を心配して何が悪い」

おい、ボッチ、横を向かずに俺の眼を見て言ってくれ。嬉しいから。

いかんな、雪光のニヤニヤが伝染したか?頬の筋肉が緩む。

 

「で、その様子だと二人とも首突っ込む気満々なんだろ?」

「ああ」

「友達だしね」

効率重視の返事に、雪光は省略された言葉をつなぐ。

 

 

【ジードヘイグに関して事情聴取のため大阪に呼ばれた周公瑾ことワタナベケンゴ】

 

「あんたね。女子大生への二股はどうかと思うよ。イケメンだからと言って許されるわけじゃない。女子大生だよ」

「すいません」

俺は来月には17才になるカナデに手を出している自分自身を棚に上げた。

 

いや、いい歳した人間が簡単に女子大生に手をだしちゃいかんよ。イケメン有罪だ(嫉妬)

 

 

【父親がテロリストを国内に呼び込んだと容疑をかけられて怒り心頭でテロリスト探しに手を貸すカチューシャ】

 

氷の美貌がキレるとどうなるか。

俺の目の前にいる。

「お言葉ですが、父は毎月の入国管理局への面談をしていますし、亡命時に大量の資料や研究成果、ノウハウを日本国側に提供しています。父の日々の行いを監督し、プライバシーも監視しているのに突然の逮捕とはどういうことですか!?父の日本国家への忠誠はご存知でしょう?」

深雪副会長は物理的に人を凍らすが、カチューシャの視線は心胆を寒からしめる恐ろしさがある。

 

外務省外事部調整課の係長はカチューシャの圧力に押されている。

 

カチューシャがこの状況に持ち込んだのは相当の荒業を使った。正しくは彼女の周囲の大人たちが荒業を使ったのだ。

西日本民間魔法師連絡会は九島家と縁深い九鬼家から近畿林業組合との契約を斡旋された。

古式魔法師たちの目の敵である旧第九研究所から輩出された九鬼家と古式魔法師が組んだ。

どちらが上だ、下だのという話ではない。九鬼、ひいては九島が強力な古式魔法師の連帯組織と誼を結んだのだ。

 

九島は古式魔法師たちとの誼を結んだ返礼としてカチューシャに外務省の役人との会談の機会と、カチューシャの父であり、かつては極東でも名のしれた戦術級魔法師であり、瞬間移動研究の第一人者であり、現在は日本に亡命した元ロシア人の開放を約束した。

 

ということらしい。九島は昔からの目の上のたん瘤である「古式の魔法師」達を味方に引き入れたといってもいい。

うわ~、国内魔法師のパワーバランスが崩れたぞ。

 

カチューシャこと川村エカテリーナがこれほどの組織の重要人物とは思わなかったが、これで日本の魔法師世界で七草、四葉を抑えて九島が最大勢力になったぽい。下手すると「世界最大の魔法師集団」なのかもしれない。

 

どうも、カチューシャの回りの大人はカチューシャのファンのようだ。

伝聞だと、この状況に落とし込んだのがカチューシャ自身ではなく周りの大人がノリノリで話を進めたらしい。

好かれてるな~。

古式魔法師と九島家との確執。それを乗り越えて誼を結んだ。

そこまでさせる魅力がカチューシャにあるようだ。

 

ある種のサークルの姫だな。

古式魔法連中が「愛羅武華宙紗」という特攻服を着て写真を撮っているイメージが一瞬浮んだ。

この時代もアイドルはいるが、俺の知る昭和という時代の親衛隊方式は絶滅している。

 

「私もテロリスト捜査に加わります。テロリストをこの手で捕縛するなりし、父の潔白を証明します。いいですね」

外務省の役人にそう言ったカチューシャは今度は会議室の隅に座る俺を見た。

 

「いいこと!私も捜査に加えなさいよ!」

へいへい、姫。父親を心配する娘さんの手伝いをいたしますです。

 

 

【雪光に誘われつつ「将輝の手伝い」と称して参加の黒城兵介】

 

「なんで、お前たちが」

「詮索は無用だ」

大阪の繫華街の裏道で行われた暗闘。

魔法の光と空気を震わす振動が収まると、ジードヘイグ一派を挟撃した味方の顔が街灯の下に現れた。

 

一条将輝だ。赤を主体としたライダージャケットを羽織っている。

隣りのには先ほどの一撃を障壁の盾で防いだ人物、黒城兵介が立っている。

一条将輝の質問に、光夜はバッサリと答える。

 

一条がいるのだ、四葉だっていてもいいだろう。

「それに君は一校の、えっと・・・」

俺に視線を投げるが、名前が出てこないようだ。どうせこの後捜査本部に同行するんだ。今バラしたっていいだろう。

言っておくが決して名前が出てこないことへの対抗意識ではない。

 

「101旅団情報担当佐官、関重蔵少佐」

この答えに一条将輝の頭の上に????と?マークが連発される。

「将輝、ほら色々あるんだよ」

兵介が一条の脇腹を肘でつつき、?マークを霧散させる。

あれだな、吉祥寺真紅郎といい、黒城兵介といい一条将輝には外部装置が多いな。

どうも一条の総領息子はこの手の「突然の話」に弱いようだ。

なんでも準備万端といかないので、突発的な出来事には早く慣れないときついぞ。若人よ。

 

周囲の監視をしていた雪光が後ろから追いついてきた。

「兵介、遅かったね」

「まあ俺が首突っ込むには建前必要だしな」

そういうことか、雪光は協力要請を兵介にしたのか。

民間人である兵介がこの事件に関係するには立場がない。

一学生が捜査にタッチするには「一条の副官」として顔を出すのが最短ルートか。

 

「悪いが捜査本部に来てもらうぞ。改めて目的やらなんやら確認させてもらう」

一条将輝に向かって命令口調で話す。

納得した様子で頷く一条の御曹司は、俺の指示に従い捜査本部に付いてきた。

 

日頃から司波達也や、雪光、光夜などの問題児たちと色々やっているとこんなに素直な子は扱いやすくていい。

一条将輝よ、そのまま素直に育ってくれ!だが深雪副会長とは絶対結ばれないからガンバレ!

 

 

【五輪家を代表して捜査本部に出入りする五輪鳴門少年】

 

捜査本部にはいろいろな人物が出入りしている。七草の連絡官の名倉さん。十文字の連絡官の十山んとこの士官、九島からは光宣が連絡官補佐として出入りを許されている。

 

そして大阪の北、北陸金沢を拠点とする一条からは、一条将輝。

淡路・四国へと目を光らせる五輪からは五輪鳴門少年が連絡官として時折捜査本部に顔を出す。

お前ら勉強しろ。俺は別に中退してもいいけど、お前らは勉強しなさいよ。

 

「君はどの家の連絡官?」

鳴門少年は良い奴だな~。爽やかというより愛嬌と可愛らしさとちょっとやんちゃさが混ざった感じの好印象な少年だ。

背は俺とどっこいくらい。鼻のあたりに傷がある。動作も隙が少なく軍事的教練を受けているのだろう。九校戦での活躍も納得だ。

廊下でばったり会った鳴門少年は俺に聞いてくる。俺の隣に立つ兵介が笑いをかみ殺している。

 

先ほどまで兵介とコンビを組み、あの男の実家に行ってきた。

もう誰も住んでいない家。周囲の家もあばら家になっていた。まるで時代から取り残された、100年以上前の日本だった。

 

知っている。「映画版パトレイバー第一作」のようだった。見放された街、見捨てられた街、見向きもされない街。

奴の人生の根源に少し触れた気がする。きっと奴の鬱屈さはこの街が育てたのだろう。

 

目の前の鳴門少年は好奇心を抑えて大人な態度の俺の返事を待っている。

「いや、連絡官というか、なんというか」

なんとも回答に困る。

「少佐!」

うるさい!俺はメスゴリラか!と声のかかった方を振り向くと公安の課長だ。

「なんですか、会議ですか?」

「目撃証言が取れた。来てくれ」

状況が一気に進んだ。

 

俺はもう一度振り返り鳴門少年を見る。

「なりはこんなだが、一応佐官だ」

そう言われて鳴門少年は驚きのリアクションとして口を大きく開けている。

「兵介、一緒に来てくれ。まとめて報告する」

兵介がうなずくと、歩き出す俺の後ろについてくる。

鳴門少年は呆然としている。そりゃ同年代が少佐とか呼ばれたら驚くし、この捜査本部の空気がそれを嘘ではないと証拠づけている。

「少年、一緒にくるか」

少し離れたところから声を掛けると鳴門少年は小走りに近づいてくる。

「君、何者なんだ?」

「ただの高校生さ」

鳴門少年の質問に答えると兵介が大爆笑する。

 

 

【好きなアイドルグループの大阪ライブに来たらテロリストのせいでライブが中止になり、ジードヘイグらしき人物を偶然見てしまい捜査本部でいろいろ聞かれる羽目になった七海奈波】

 

「許さな~い!」

捜査本部で好きなアイドルグループの大阪ライブに来たらテロリストのせいでライブが中止になり、ジードヘイグらしき人物を偶然見てしまい捜査本部でいろいろ聞かれる羽目になった七海奈波が怒りのあまり可愛い声で叫ぶ。

 

 

【USNAから派遣されたジードヘイグ殺害任務を帯びたタツヤ・クドウ・シールズ】

 

外交官(笑)

あのコスプレマスクで顔を隠した外交官(笑)は、黒い戦闘服に装備を付けた状態で俺の邪魔をして来た。

「タッちゃんさ!ここは手を組まない!?」

強い海風にさらされる早朝の港。コンテナ群でジードヘイグ、俺、タッちゃんと三つ巴の追いかけっこだ。

 

「断る!」

意外と律儀だなあいつ。この状況で断りの返事をしたぞ。

コンテナの間を走り抜ける三者。

離れたところでは光夜&カチューシャ&雪光&鬼一と戦闘を繰り広げるあの男が見える。

あの4人を相手にして五分五分とは。

煌めく雷の束、空中のダイヤモンドダスト、音速の壁を越えた衝撃波、硬質なものがくずれ落ちる轟音。

 

魔法師が兵器と言われるのも納得の光景だ。

小火器の弾丸や爆発物を遥かに上回る破壊力がたった一人を殺そうと襲い掛かる。

だがあの男は魔法陣を駆使し避け、防ぐ。

 

その戦闘を横目にコンテナ群を走る。

「だからさ~、相手が相手だしさ~、どうよ?タッちゃん?!」

ジードヘイグの魔法によって無理やり動かされる死体たちが時折現れては爆発をするが、

それを上手くかわしながら走り続ける。

タッちゃんはタッちゃんで、死体たちを遥か空中に飛ばし爆発を回避する。

 

「貴様は国防軍だろう!そんな簡単に組めるか!」

「いけず~」

俺が茶化すとコンテナの反対側を走るタッちゃんからモノ凄い舌打ちをされた。

ジードヘイグとの距離は狭まらない。奴自身の運動能力というよりも大量の死体たち、いや被害者たちが邪魔だ。

 

余談だが千葉警部殿は捜査本部に配属された瞬間にカナデが裏から手を回し、即座に東京へ呼び戻された。

警察省にハッキングして指示を書き換えるとか公文書偽造でアウトだが証拠はない。

 

ジードヘイグは想定する年齢よりも若かった。あれがジードヘイグの研究した魔法の結果なのだろう。

その結果にたどり着くまで何人殺したのだろうか。

 

「じゃあさ、タッちゃんよ!軍人として協力しなくていいよ!」

「どういう意味だ?!」

 

あの男がコンテナ群へエネルギーの雨を降らす。テニスボール大の光の玉が加速をつけて無数に降り注ぐ。

10秒後にはコンテナ群は崩れ、かつてコンテナだったものはひしゃげ、俺の進む方向を塞ぐ。

土煙の立つ中、タッちゃんとの距離が少し詰まる。

 

タツヤ・クドウ・シールズも追跡を諦めて俺に正対する。

 

「あの言葉はどういう意味だ」

既に確信があるのだろう。俺に対しての視線が疑問ではく詰問だ。マスクも外し真っすぐ俺を見る。

 

俺は一度視線を合わせた後、視線をあの男の方へ向ける。

「手貸してくれ。転生者として」

ふざけた口調ではない。相馬新ではなく関重蔵として。

わかるか、タツヤ・クドウ・シールズ。あれは俺たち転生者がカタをつける存在だ。

 

 

俺の知る全ての転生者が大阪の街に集結したのだ。

 

共闘とは程遠いスタートだったが、最後の24時間は見事に共闘状態になった。

一番乗り気だったのは奈波ちゃんだった。

 

美しいお姉さまのカナデと、超美人のカチューシャに「綺麗!」「おねえさま!」とミーハーに憧れ

「力を貸してほしい」

「奈波ちゃん、お願いだ」

「七海さん、少しだけ助力を願えないか」

「こんな可愛い女の子には安全なところにいて欲しいけど、今回だけ力を貸して」

「ごめんね。巻き込んでしまって」

 

と光夜、雪光、タツヤ、兵介、ワタナベケンゴとジャンルが違うイケメンやカッコいい系男子に頼まれて、高1女子が見せてはいけないデレデレの顔をして協力を確約した。

 

事件が終わった後に美少年、美女に囲まれた写真をこれでもかと撮っていたのはオモシロい。

兵介にお姫様抱っこされたり、カナデ&カチューシャに挟まれて頬にキスされた時など筆舌に尽くしがたい表情をしていた。

 

光夜におでこにキスを求めたが、やんわり断られた。代わりに雪光がして奈波ちゃんは顔を真っ赤にしていた。

周公瑾ことワタナベケンゴさんとは連絡先の交換をしようとしたが、カナデが二股の話をして考え直させた。

タッちゃんとは事件後には奈波ちゃんは会わなかった。こいつが一番危ない奴だしね。

 

美形と言えば一年男子三名もなかなかだが、奈波ちゃん曰く「先輩たちに比べると子供っぽい」で眼中に無いらしい。

 

俺を見て「相馬先輩くらいのフツメンが一緒にいると、皆のイケメン度が映える」と相当失礼なことを言われたが美形に囲まれて喜ぶ美少女のあられもない顔の写真が取れたので、そっとしておいた。

 

 

あの男。

 

あの男は雪光が仕留めた。火に焼かれ、片足を無くし死んでいった。

 

夜の空港敷地内にある倉庫脇。

右足を切り落とされ、背中から腰に掛けて火傷を負い、出血を見るにもう数分と持たないだろう。

 

「なんで、なんで!一番強いのに!僕はオリ主なんだぞ!ラノベなんだから僕が主人公だろ!」

「哀れだな」

タツヤ・クドウ・シールズが冷めた口調で呟く。この男の心中はわからないが恐ろしく冷酷に感じる。

 

「うるさい!司波達也!お前なんか作者のオナニー人形じゃないか!僕の方が強くて、お前の秘密知ってるんだぞ!」

あの男の最後の言葉がそれだった。

「秘密?知っているだけだろう」

タツヤ・クドウ・シールズが吐き捨てる。

知っているだけ。脅すわけでも、共有するわけでもない。ただ相手の秘密を知っているだけ。

知っているということは重要だが、情報を使うことが無ければ意味がない。

 

タツヤ・クドウ・シールズは男に近づき屈む。

「最後に教えてやる。俺は転生者だ。わかるか、主人公にふさわしいのは悪役のお前じゃない。司波達也とうり二つに生まれた、この俺だ」

壮絶な笑みを浮かべる。本当にそんなことを思っていないのは口ぶりから十分わかる。

タツヤはあの男の心を殺そうとしている。この世界に選ばれたのは誰か。

男の心を砕くには十分な嘘だった。

「ああ、ああああ」

男は力なく声を出す。声は徐々に小さくなっていく。そして声が聞こえなくなると男の身体から力が抜ける。絶命だ。

 

「最後のはほんと?」

「ふざけるな。主人公だのどうこうはなりたい奴が勝手に名乗っていればいい」

雪光の問いかけに、タツヤ・クドウ・シールズは嫌悪の色を浮かべる。

 

そうだ。主人公だのなんだのは切り取られた世界の一部の話だ。俺の人生は、俺の視点から見る世界の中心は俺だ。

ただ転生者は「魔法科高校の劣等生」という切り取られた世界を知っている。だから司波達也を主人公ととらえてしまうのだ。

 

「司波雪光。手を貸すのは最初で最後だ」

その言葉に雪光は言葉を返す。

「主人公云々は僕も同意だ。あと、手を借りた覚えはない」

視線がぶつかる。

 

タツヤ・クドウ・シールズも、司波雪光もお互いを決して味方とは認識していないようだ。

「お前ら、睨み合っているところ悪いが公安があと10分で到着するぞ」

俺の言葉にタッちゃんは「フン」と鼻を鳴らし、空港の敷地を出ようと走り出す。直ぐに夜の暗闇へと姿を消した。

USNAの外交官がここにいるのは都合が悪い。

 

タッちゃん、感謝するよ。戦場で会ったら殺し合いすることもあるだろう。だから戦場には来るなよ。

 

 

あの男の生い立ちをまとめた調査書に目を通した。

幼い頃から「魔法科高校の劣等生」の世界だと周囲に話していたのだ。

 

6才と11才の時に精神病院に二度長期入院している。

その後の足取りも恐ろしかった。15才で義務教育を終えると、仕事も着かずに時折金を稼いで暮らす日々が続く。

謎の方法で大金を持ってくる。決して生活は困窮していなかった。

 

今回の件で手に入れた奴のDNA情報から過去に起きた凄惨な、本当に凄惨な幾つかの事件の真相が判明した。

人間同士の共食い?字にするだけで背筋が凍る。

 

あの男は転生者として手にした能力を遺憾なく発揮した。

犯罪、違法行為、そして人間の尊厳を踏みにじる行為、そう言った方面に。

決して奴の能力がその方面に特化していたわけではないのだろう。単に奴の精神が犯罪に向かわせた。

 

改めて、転生者とは何かを考えさせられた。

 

我々転生者は一種のバグだ。

一歩間違えれば世界を、いやその世界に住む人々に地獄を見せることなど容易だ。

光夜やカナデ、カチューシャが本当に自由に生きれば世界に混乱を起こせるだろうし

雪光や兵介そして一年生たちもその力を邪悪な目的に使えば、世界史に残る悪党となるだろう。

 

俺は100年戦争が続くような火種を世界にばら撒くことが可能だ。

 

ある者は生育者の教育に、出自に、境遇によってその精神、性格をこの時代に適応させる。

だが、あの男は適応できなかったのだろう。前世の記憶と心が適応しなかった。そして強力な力に酔った。

 

俺にとって世界は現実だ。

あの男にとってはラノベの世界で「勝手にしていい箱庭」だったのかも知れない。

もし、あの男が司波達也のそばに居たら、きっと惨劇を起こしたかもしれない。きっと更生したかもしれない。

司波達也を殺し、主人公の地位を奪ったのかもしれない。

 

俺は「魔法科高校の劣等生」という世界の定義を覆した。

カナデは「魔法科高校の劣等生」という世界に苦しんだ。

あの男は「魔法科高校の劣等生」という世界を遊ぼうとした。

 

そんなことを宿舎替わりのマンションで考えると

俺の手元にあるDNA鑑定書が俺に呼びかけてくるようだ。

 

「お前はこれをどうするつもりだ?」

 

俺はどうするつもりだ。今更ながら、自分の行いが軽率だったことを呪いたくなる。

この事実は世界を変えるのか?四葉の一族に混乱を招くだろう。それでどうする?

四葉真夜を殺すのか?司波達也は自由になるのか?光夜はどう思う?

 

鑑定に協力してもらった雪光とタツヤ・クドウ・シールズの結果。

 

『4等親内(従兄弟)の可能性:99.99%』

 

俺はこの事実をどうするつもりなんだ?




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