うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる 作:madamu
それ見たことか、というような表情をする光夜に、表情の曇る達也。
心配そうに見つめる深雪に、考え込む雪光。
「それほどの腕前なのか」
「ああ、九重門下でも対応できる者は少ない」
その言葉はその場にいる四人にはなかなかショッキングなものだ。
発言した達也自身でさえ。
今日起こった剣道部と剣術部の乱闘騒ぎの中、相馬新が一瞬見せた合気の技は秘匿回線で報告し、意見を検討する意味のあるものだった。
単純に身体能力で言えば、達也と光夜はほぼ同じだ。
筋力や運動神経など、戦闘に必要な身体能力ではほぼ五分だ。
ただ体術の訓練時間が多い達也の方が素手戦闘では光夜より上だ。
雪光は身体能力は年齢相応だが体術の心得はある。深雪とともに九重門下で汗を流した。
4人の中で格闘に秀でる達也をして、この意見である。
何か特殊な状況下、例えば魔法を制限された中で相馬新と敵対するのはまずい。
勝機が低いのである。
勝てる見込みというのは重要でその算段が無い状態ではガーディアンは時間稼ぎの壁にならざるをえない。
それでは確実に深雪を守れるとは言い難い。
「でも達也兄さんが本気になれば」
「それは楽観だよ。雪光」
達也の口調は優しいが出た言葉は厳しい。
「相馬新の見せた技術が、魔法によらないもの、そしてさらに高度な技術を用いることが可能とすれば厄介な相手だ」
光夜の言葉に一同うなずく。
「少しあいつに揺さぶりをかける必要がありそうだな」
「ああ、だがブランシュの動きも気になる」
達也の目的は深雪の安全。それを優先するのは当然である。
「僕の方も動くよ」
雪光も自分の手駒の使用を提案する。
彼だけがこの四人の中で自分の手駒を持つ。
「いや、お前のところはブランシュ対策のままでいい。直近に起きるのはそちらだ」
光夜の頭の中にあるのは一校襲撃事件の対応の段取りだ。
原作に登場する面々だけでも対応可能だが、四葉として名を高め、深雪や達也、雪光をカモフラージュするにはうってつけの舞台である。
ブランシュへの反撃は達也、深雪、雪光に任せるとして、自分は学内の混乱を抑えて「学内のリーダー」として全生徒に印象付けたい。
既に役割分担は決まっている。
「そうだね、光夜兄さんには目立ってもらわないと。目立って僕とアラタ以外の友達増やさないとね」
意地悪にいう雪光に光夜は返答した。
「モーリーも友達だ」
深雪が吹き出し「ふふ、ごめんなさい」と肩を震わせている。
「揺さぶりに関しては僕の方で手配する。達也兄さん、カナデに協力を要請するけどいいかな」
「何をさせるんだ」
「カメラマン。光夜兄さんにも出番があるからよろしく。僕の想像通りなら何かするよ。アラタは」
雪光はアラタの件に関しては内心焦っている。早期決着をしたい。
原作の物語からこのまま乖離し、自分たちの「未来知識」のアドバンテージが消えるのは怖い。
この世界で生き残るためのリスクヘッジである。
「相馬新」が不安材料として徐々に大きくなっていくのを雪光は感じた。