うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu

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妹の安全の確保のためだ。死ね

「お茶にしては豪華すぎませんこと、カナデさん」

「何をおっしゃるのかしら、アラタさん。四葉なら当然ですことよ」

冗談に乗っかってくれる分カナデはいい奴だと思う。

 

目の前には魔界の王子のようにクソ高い椅子に深く座る光夜。

カナデは俺と光夜の間。そして光夜に正対する形で俺の席。

 

避難施設から黒塗りの高級車に押し込められ、到着したのが

どう見ても「お高級ざんす」という感じの洋館のレストラン。

確か、八王子で2040年ごろに大正時代に建築された九段下の洋風喫茶を移設したもののはずだ。都内のこういった目立つ建築物は大体覚えている。目印になる建物を覚えていて損はない。

 

個室に通され、俺は言葉を発せずに威圧する光夜の前にいる。

隣ではカナデがニヤニヤしている。

 

「あ、遅れた?」

ドアを開けて登場したのが雪光。おう、期せずして転生者がそろったよ。

「いや~あの後、予定通りに進んでね。後始末も終わったし、これで九校戦を迎えるばかりだよ」

雪光は光夜とカナデに話しかけつつも、俺の様子をうかがっている。

どうやらブランシュ反撃に参加していたようだ。だから四葉らしき工作班がいたのか。

 

さては、お前ら転生者だな?

 

「あーなんだ!煮るなり焼くなり好きにしろ!なんだ!そんなに深雪ちゃんに一目ぼれしたのが悪いのか!」

そう言ってテーブルに突っ伏してみた。

カナデが「ふ~ん」と言って笑っている。見えはしないが笑っているのだろう。

 

「そんな見え透いた態度はいいよ。ねぇ」

雪光が光夜に同意を求めると

「別段この場で危害を加えることはしない。アラタ、お前の持つ技術について聞きたいだけだ」

光夜の声が柔らかい。う~ん、一番ちょろい奴が態度軟化しただけか~。

問題は会話の上手い雪光と、立場が不透明なカナデなんだけどな。

 

「何だよ、聞きたい技術ってよ」

基本会話は突っ伏したままだ。できる限り不機嫌な声で対応する。

「アラタ。格闘技術に精通しているな」

「うん、昔じいさんの紹介で合気道の道場に何年か通った。それが問題でも?」

「驚異的な技術を司波達也から聞いた。もしお前の技術・能力が卓越したものなら四葉として契約を結びたい」

それ嘘でしょ。光夜さん。

「じゃあ、なんでカナデがここにいるんだよ~。魔法師の専属契約なら雪光もカナデも関係無いじゃんかよ~」

不貞腐れる芝居は得意だ。

「あたしは技術提供しただけ。今日は面白い動画が取れたからね」

そういってカナデは小型モニターを俺に向け、何やら再生する。

 

画像は、映っている対象は遠い。だがわかるのは今日の講堂近くの広場での乱闘だ。

「ちょっとね。ドローンジャマ―ギリギリの所からだから画像は荒いけど、これアラタだよね~」

ちょっとニヤニヤしながら追求するの止めてもらえます。性格悪いざますよ。カナデさん。

 

あ~、はいはい、指弾での戦闘支援ね。

 

「違います~。講堂内にいました~」

しらを切る。光夜や雪光、カナデの実力が不明なので実力行使で逃げるのは得策じゃない。

今、彼らからしたら俺のバックボーンが不明だ。

 

これは一種の牽制合戦だ。お互い相手のバックボーンや正体に確証が持てない。

だから揺さぶりをかける。揺さぶられた方は、構築してきたロールプレイ(役割演技)を維持しようとする。

だがロールプレイで綻びを出すと追求される。追及されるとバックボーンを出して別の牽制を行って逃げるか

逃げた後にバックボーンを使って牽制する。そしてバックボーンの存在をしられ尻尾掴まれて敗ける。

そういうゲームなのだ。

 

俺の格闘技術については古式の流れをくむとか言えば彼らは納得するだろうか。

「もしこれがお前なら驚異としか言いようがない。乱戦状態を駆け抜けながらの支援攻撃」

光夜は感嘆の表情で、あの美声で褒めてくる。

「アラタ。お前がどこかの所属なら言ってくれ。交渉が必要なら交渉しよう。お前の実力は手元に置いておきたい」

出たー!四葉の超上から目線発言!俺が引き抜かれたいのはお前らのところじゃなくて、101旅団か地方自治体の職員だよ!

俺の安定志向舐めるな。

 

突っ伏した状態から身を起こし怒りの表情を作る。

「あのな、光夜!入学から短い間だが友達だと思っていたが、なんじゃそりゃ!人を売り買いの対象みたいに言いやがって!」

一瞬で作った怒りの表情に光夜は観察を決め込んだようで、特にリアクションはしない。よしあいつは受け身に回ったぞ。

今度は椅子から立ち上がり、駄々っ子のようにヒステリックに何度も足を踏み鳴らす。

少し涙を浮かべてみるのが、怒りと混乱を象徴して効果的だ。ちなみに涙を流す最短レコードは45秒だ。

 

俺は怒りの表情のまま、カナデ、雪光と睨みつけ

「ふざけんなよ!お前らも!なんだ!お前らはそんなに偉いのかよ!」

それだけ言って俺は部屋を出る。カッコがついたのは部屋の鍵が閉まっていないこと。上手く部屋から出れた。

「クラスのお調子者が感情的になって切れた」というロールプレイはうまくいっただろうか。

雪光やカナデが呼び止めないとみると、ロールプレイの成否は成功と考えていいかな?

 

さて、これで彼らは俺をどうとらえるか?

 

・単なる格闘技経験者で今後は放置

・さらに探りを入れてくる

・問答無用「妹の安全の確保のためだ。死ね」

 

あの中で決定権を持っていそうなのは光夜。次に雪光だ。カナデはどうだろう?四葉と縁故がないから本当に技術提供だけか?

若い子相手に立ち回るのも存外楽しいものである。

 


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