うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu

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三人称視点です


全部技術なの

「過大評価だったか?」

光夜は表情は変えてはいないが、声にやや沈むものがある。

「う~ん、どうだろう。芝居がかっている感じはあるけど、普通に怒っているようにも見えるね」

雪光はそう言いながらカナデを見た。カナデがこの場の三人の中でアラタへの隔意はもっとも無い。

「さあ、ただこの動画はアラタだよ。間違いない」

 

自信満々に言うには根拠がある。あの姉から「支援課の覆面の人」の話を聞いたからだ。

「支援課でお茶をした。覆面の人が対応してくれた」程度で、会話内容に触れない。

それだけの情報だが入学の一か月前、一校に入学する自分に向けて話したのだ。

それはつまり何かがあるということだ。

 

カナデは転生者の自覚もあるし、目の前の二人が転生者であると認識している。

言葉で確認はしていないが二人も、カナデのことを転生者と認識しているようだ。

原作に登場しない重要人物の血縁。それが転生者だ。

 

ただアラタは違う。重要人物の血縁ではない。また重要人物が周りにいない。

物語の中心人物、つまりは司波達也、深雪、七草真由美、十文字克人、西城レオンハルト、

千葉エリカ、吉田幹比古、柴田美月、北山雫、光井ほのか

そういった人物に積極的に接触しない。

 

森崎の関係者か?確かに森崎は原作登場人物だが、物語の根幹には関係しない。

森崎の成績が上がっても司波達也と深雪の物語には干渉しない。

 

カナデも思考の海に潜ってしまい誰も話をしなくなった。

誰も話さなくなり10分とたったころに聞きなれた声がした。

 

「雪光!光夜お兄様!」

深雪が物凄い剣幕で部屋に入ってきた。

後ろには溜息交じりの達也がついている。

「先ほどアラタさんに会いました!無礼な申し出をされたのは本当ですか!」

 

すでに足元の絨毯は霜が降りている。深雪特有の魔法の余剰効果だ。

「急ぎすぎだ。何か事を起こすなら情報収集後にすればいいものを」

達也がぼやきながら、深雪の肩に手を置き、気持ちを落ち着かせるようなだめる。

 

洋館近くでアラタと出会った深雪たちはアラタの口から

「実力が気に入ったから手元に置きたいってよ。俺は置物の人形か」と聞かされたそうだ。

人を物のように扱うのは嫌悪する四葉真夜と同じに思えた深雪は一瞬で激怒した。

 

「悪かった。急ぎ過ぎたよ。次の登校時に頭を下げる」

深雪に叱られてはお手上げと言わんばかりに光夜は両手を上げる。

友達を侮辱したのか、騙しあいで負けたのかよくわからない。あまりいい気分ではない。

 

「雪光!あなたもですよ!」

「ああ、うん・・・」

思考の海にまだ半分いる生返事の雪光に対して

深雪は大股で近寄ると力いっぱい頬を抓った。

「わかりましたか!」

「ふぁい!ふぁい!わかりまひた!」

 

「ねえ達也くん、姉さんの上司さんに連絡つく?」

再度溜息をつく達也にカナデは言葉を投げる。

「可能だが何を危惧しているんだ」

カナデもまだ思考の海から完全には戻っていない。

そんなカナデに対して達也は一定の信頼をしている。

 

電子の魔女と異名を持つ藤林響子の妹。九島烈の孫娘。

姉に匹敵する魔法力と電子技術。

そして「精神波動による電子機器操作」という世界で一人の異能。

魔法のような魔法でないような、この不思議な能力が彼女を情報の世界へと駆り立てた。

 

電子の魔女と双璧をなすハッカーにして情報収集者。

 

達也も過去に2度ほど任務で彼女のハッキングを見ている。

指揮棒を振るうように、空中で手を動かすと難攻不落と言われた電子錠が開いたこともある。

ついた異名が「偉大なる指揮者」(アークコンダクター)である。

その異能や魔装大隊への外部協力者として、達也は彼女に信頼と妙な親近感がある。

 

「上司さんに、魔法みたいな格闘技が出来て、警備を抜ける技術を持っていて、

ウソ泣きの名人で、尾行されてても気にしないメンタルを持っている人、知らないか聞いてみて」

「なんだそれは?」と注文の奇妙さに達也は声を出す。

 

「おかしいんだよ、アラタって。普通じゃない。ウソ泣きとか、人を騙す会話とか雪光ならできると思う。でも格闘技はできない。達也くんは警備抜けや格闘はできてもウソ泣きは出来ないでしょ。あたしは尾行に対して動揺はしない。けど格闘技はダメ。光夜が感情の爆発に押されて後手に回ったなんて、考えられる?」

 

「ねえ、カナデなにが言いたいの?」

深雪がカナデの言葉の真意を測りかねていた。

 

「全部技術なの。魔法じゃない。魔法は才能があれば10歳でも凄いことが出来る。でも技術は習得期間が必要。ウソ泣き、格闘、尾行慣れ、それに警備を抜ける技術。魔法も使わず魔法科高校の全校生徒のいる講堂から抜け出す。魔法使えば一人くらいは見てるし、ばれないはずがない。全学年の一科生と二科生がいたんだよ」

 

「軍人と疑っているんだな」光夜が確認する。

 

「うん、軍人かそれに類する所属。そうでないと説明できない。相馬新のおかしさは魔法じゃないところにある」

 

カナデの結論に全員がうなずく。

「わかった、早急に連絡をとってみよう。ただそれと謝罪は別だからな」

「ふぁい、わかりまひた」

達也の念押しに声を出して答えたのは雪光だけだった。

「あら」と言って深雪は抓っていた手を放した。

 


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