うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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高校生同士、交換日記から始めてろ

 

雪光は光夜を通して四葉経由で「黒城兵介」の情報を集めるだろうか?

 

あの二人のスタンスは予想しやすい。生存だ。生存。

出自は達也と深雪に近い。そして物語のラスボスと目される四葉の熟女にも近い。

あの二人は達也と深雪の味方に付いたのだろう。

 

生存確率を上げるために達也と深雪の物語に味方として介入し、持てる未来知識で有利な方に未来を改変する。

原作を知るからこそ、原作で達也と深雪に絡まない存在を「不確定要素」として嫌う。警戒する。

未来知識をより精度高くすると、より有利に動ける。

 

有利?何をすると、あの二人は生存に有利になるんだ?

 

俺の中途半端な知識だと、何が有利かわからんぞ。

 

中条あずさからトーラス・シルバー疑惑をそらす?

一条将輝の片思いを断つ?

中華街の周公瑾を早めに殺す?

大漢の残党を早めにせん滅する?

 

周公瑾を横浜騒乱前に殺せば何がどう状況が動く?

パラサイト事件?スターズのリーナが来る。

それは阻止すれば有利なのか?

 

四葉の後継指名を深雪ではなく光夜に移せば有利なのか?

原作だと司波兄妹が偽造の婚約するんだっけ?

どっかの掲示板でその展開について、スレ合戦があったような記憶が。

 

犠牲を出さずに起きるであろう事件を乗り切る?

犠牲ってなんだ?

確か千葉の長男坊が死ぬが、それは犠牲としてどんな影響が起きる?

千葉エリカはどんな心境になり、どんな行動を起こした?

藤林響子は何かリアクションがあるのか?

「死にフラグ」的なことをネットで見た気がする?ホントに見たのか?

 

ダメだ。知識が横浜騒乱あたりで終わっている。

基本がアニメとwiki情報だ。来訪者編以降の知識が断片的で

誰が犠牲となり、誰が何に不信感を持ち。誰がどう動くのかわからん。

 

カナデは?カナデから未来を推察できるのか?

あいつの目的は?生存でいいんだよな?

でも藤林響子の妹はどう動けば生存するんだ?

司波兄妹から離れればいいのか?それとも協力すればいいのか?

 

顎に手を当て、眉間のしわを寄せる自分の顔が廊下の窓に映る。

 

ふと、我に返った。そうだ。俺、関係ないじゃん。

 

中条あずさからトーラスシルバー疑惑をそらす?

いや、どうでもいいわ。そんなこと。

一条将輝の片思いについても、知らんわ。高校生同士、交換日記から始めてろ。

 

周公瑾?大漢の残党?横浜騒乱は防ぎたい。または損害を減らしたい。

戦闘で味方の人命を失いたくない。

それは別に「司波兄妹と運命共同体となり、自己の生存確率を高めるため」ではない。

 

俺、国防軍だし、諜報員だし、他国からの侵略とは戦うのが仕事だ。

横浜騒乱の関係者が司波兄妹を中心とした高校生たちなだけだ。

四葉の跡目?勝手にやってくれ。跡目が代わることで国防軍内への影響で国防体制が崩れる?

そうならないための俺たち兵士だし、政府だ。

 

光夜と雪光の生存?ガンバレ。負けんなよ。力の限り戦うんだ。

友達だし、弱音を吐くならおじさん聞くよ。

手伝うこともやぶさかではないぞ、若者よ。

 

俺はどうやら「転生者」と「司波兄妹」に影響されていたらしい。

思考が複雑になっていた。転生者の目的。転生者の行動指針。転生者、転生者、転生者・・・

 

違う。基本は俺の行動だ。未来知識は俺がどう動くかに使えばいい。

そこに司波兄妹の幸せを前提に動く必要はない。

 

この世界は「魔法科高校の劣等生」の世界だ。

しかし、それはそれである。

 

ここは俺の生きる世界だ。原作主人公と呼ばれる達也と深雪が生まれる20年以上前に生まれ

苦労したり、喜んだり、笑ったり、泣いたりした世界だ。

 

父の死に泣き、国防高校入学時には母の負担を減らせると喜んだ。

愛する人と離れた、戦場で勇気を振り絞り戦った、自分の手が血に汚れ悩み苦しんだ。

弱い立場の人を守ったとき感謝され嬉しかった。

 

かつて読んだ物語が正解ではない。

介入?なんだそれ?俺は仕事して、俺の判断で行動し、俺がなすべきことを為せばいい。

そうなのだ。俺がすべきは十文字、七草の情報収集と、未来に起きる横浜騒乱の回避又は被害縮小だけだ。

 

もし誰かの目的が「魔法科高校の劣等生」という物語を壊すため、誰かを殺すなら止める。

物語を守るため?

違う違う。一市民として目の前で起こる殺人事件を防ぐためだ。

 

はっきりと分かった。「魔法科高校の劣等生」は原作者によって作られた世界ではない。

俺の生きる世界の一部をそう呼んでいるだけだ。

別に俺は魔法科高校の劣等生の世界に生きているわけではない。

なぜなら司波達也が生まれる前から生きている。

転生者が持つのは「魔法科高校の劣等生の未来知識」ではない。

「自分の生きる世界の未来知識の一端」なのだ。

 

そう、俺は魔法科高校の劣等生に登場するキャラクターではない。

違うのだ。生きている人間なのだ。

 

この時、不思議と体が軽くなった。

物語「魔法科高校の劣等生」を守る必要はないのだ。

俺は、俺の住む国を街を人を友達を守るのだ。

俺はこの時やっと魔法科高校の劣等生から離れた。

 

この一連の思考は理屈に合わない部分もある気がする。

どこだ?どこが理屈が通っていない?

どこが理屈に合わないか分からない、理屈ではない。

俺は納得したのだ。

 

黒城兵介の情報も確認する。

俺の持つ俺の世界の未来知識を総動員して、あいつのスタンスを想像する。

 

やることは、何も変わらない。でも違う。

俺はこの九校戦初日の夜に、ホテルの廊下で生まれ変わったのだ。

 

「既存の物語に介入する転生者のオリジナル主人公」ではない。

「関重蔵」という一個人なのだ。

中途半端な未来知識を持った諜報員で関重蔵なのだ。

 

無性に飛び跳ねたい。叫びたい!いや、小声だけど叫ぼう。

 

「よし!」

 

「どうしたんですか?」と中条あずさ先輩に言われた。

どうやら生徒会と部活連のミーティングは終わり、自室に戻る途中のようだ。

先輩、いつも可愛いですね。

「あの、いい作戦が思いついたんです」

「そうですか…」

そんな怪訝な目で見ないでください。

 








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