うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu

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数話は三人称視点が続きます。

お忘れですか?チートがあります。


つまりはチートを持っている

 

「なによ、ミキ眠そうね」

「ぼくの、なまえは、幹比古だ」

観戦席では欠伸をかみ殺した吉田幹比古が、千葉エリカのいつもの呼び方を訂正した。

幹比古の横ではレオが船を漕いでいる。

(船を漕ぐ、って柴田さんに言って通じるかな?)

古い家の生まれなので古めかした言い方には慣れているが、柴田美月のような普通の家庭ではもう死語だろうと

幹比古は眠い頭で考えた。

 

草原フィールドを映すモニターにはモノリスコード新人戦の一校の三人が映っている。

支給されたプロテクターをつけており、専用CADを持つのは達也だけで、他二人はブレスレット型汎用CADのようだ。

決勝までの試合は危なげない、というレベルではなかった。

 

自軍モノリスの前で仁王立ちする光夜。

相手をかく乱し、時折カメラにウィンクする雪光。

そして確実に相手のモノリスをクリアする達也。

 

試合中会話や、コミュニケーションをしている様子もなく圧倒的実力差で勝ち上がっていた。

 

昨晩、チーム結成から「連携の確認」として

練習台に駆り出されたのは幹比古とレオだった。

途中アラタも合流し、陽が昇るまで相手をし、睡眠時間は3時間も無い。

 

三人が使うのは初歩的な魔法ばかりだが、サイオン量や、干渉力、発動速度は高校生のそれを凌駕する。

無茶な練習に付き合わされたせいか、幹比古が悩まされていた魔法使用時の違和感はあっさりと剥がれていた。

達也が調整したCADを使用し幹比古の実力を一段上げたが、それでは足りなかった。

レオもレオで、少なくとも爆発で宙を舞ったのも一度や二度ではない。

一人上手く立ち回ったアラタでさえ、地面と平行に5mほど飛んだ。

 

(僕に足りていないのは命懸けの荒行なのでは…)

感謝と努力不足を恥じる気持ちで幹比古は改めてモニターに目を向けた。

 

「眠くないの?お肌に悪いわよ」

「徹夜は慣れてるし、お肌を気にする性格じゃない」

一校の待機テントで、他のスタッフ、生徒会メンバーとモニターを眺めていたアラタに声をかけたのはカナデだった。

「そっちどうなんだ?寝れたの?」

「あたし、普段のビタミン摂取量が多いので少ない睡眠で十分よ」

深夜練習のCAD調整等をカナデは手伝っていたが

さすがに午前3時には練習場のベンチで眠っていた。

彼女も彼女で睡眠時間を削っては、技術スタッフとして動き、電子金蚕の発見と活躍したのだ。

 

一番タフなのはアラタだろう。森崎と須田の救助、病院への随伴

そして明け方までの連携確認の練習に練習台として参加したのだ。

 

選手である達也、光夜、雪光は2時間程度の仮眠をとったが

アラタは別のこともあり一睡もしていない。

 

「達也兄さん、あのレオのCADどうするの?」

「あれか?手遊びで作ったからな、特にどうこうする気はないぞ」

トーラス・シルバーのシリーズとしてリファインするつもりはないことを雪光に告げた。

「欲しいのか?」

「いや、似たもの作ろうかと思って」

雪光の技術力は相当なものであることは達也も承知している。

もし、その気ならトーラスとシルバーの間にミドルネームのYを入れてもいいレベルだ。

雪光はハードもソフトも自分でやりたいので、その気はない。

 

「達也、雪光。二人とも気を引き締めろ。相手は一条だ」

「ああ、今度は今まで通りと言うわけにも行くまい」

すでに戦略はある。戦略と言うには大雑把ではあるが。

このチームに誰一人平凡な魔法師はいない。

 

うち二人は転生者でこの世界にない特性、つまりはチートを持っている。

 

光夜は四字熟語でチートを決めた。決めさせられたのかも知れない。

分厚い四字熟語集を長い時間見ていたことを覚えている。

【多芸多才】【万夫不当】【竜章鳳姿】の三つを合わせた姿を、この世界で表現すると四葉光夜となる。

合致していると本人も思っている。

ただ竜章鳳姿と本人の性格が合わさるとなかなか友達が出来ない。

 

雪光のチートは簡単だ。「キリト!+深雪!」と叫んだ。

それを聞いた光夜はノーコメントを貫いた。

 

 

「ほら、起きなさいよ!」

「ん?あ、始まるのか」

エリカがレオの脇腹を肘で突いて起こした時には

開始10秒前のカウントが始まっていた。

 

草原フィールドは遮蔽物はほぼない。なだらか高低差もあるが、足元の草は低い。

電子ホイッスルが鳴ると、両チームが同じ行動をとったので観客を驚かせた。

 

三人が横に等間隔の距離を取る。

まるで一対一の構図が三つ出来たようだった。

 

最初に口火を切ったのは黒城兵介の雄たけびであった。

彼方の正面に立つ司波雪光はその声を身に受け走り出す。

 

九校戦史上に類のない高速戦闘が行われた。

 


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