うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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三人称視点です。
劣等生の魔法設定難しい。そして俺の文面拙い。


まるで竜のごとし、としておくかね

 

「突撃(チャージ)!」

この雄たけびと共に兵介は走り出す。

左腕には盾のように障壁を作る、

加速し、ブーツ裏の摩擦係数を調整し転倒防止、激突の際に負けぬよう加重。

 

競技用に制限されたCADではあるが、必要なことは十二分に出来る。

加速!加速!加速!

 

肉体も恵まれていた。頑健無比を地で行く。体格はすでに三校で一番だ。

魔法も恵まれていた。サイオン量はちょっとやそっとでは尽きない。

知性も恵まれていた。マルチキャストも出来るし、変数調整もお手の物だ。

 

一番恵まれていたのは、金沢に生まれたことだと思っている。

面倒な十師族も関係ない。ただ、この世界に転生して恵まれた中でやりたいことをやった。

 

善良な両親でよかった。佐渡侵攻は怖かった。

だから、みんなを守れるよう身体を鍛え、魔法を鍛え、三校に入学した。

 

九校戦の選手に選ばれた。司波達也に会えるかも!それだけで興奮した。

そこには四葉がいた。司波の兄弟が増えている。同じ転生者だと思った。

なんか、やる気が出た。自分を見せつけよう。見てもらおう!

あんたたちがそっちで生まれたように、俺はこっちで生まれてここまで来たぜ!

 

黒城兵介はそういう男の子だ。

 

十文字克人に匹敵する肉体が加速し、障壁を構え、一直線に向かってくる。

 

司波雪光は笑っていた。あいつは馬鹿だ。あれだけでわかる。

全てをこのスタイルにしているんだ。わかるんだ。僕もだ!

 

CADを自己最速で操作する。もうあいつは目の前だ。一息飲むとぶつかるだろう。

加速、加速、あいつよりも速く!速く!あの馬鹿より速く!

 

ヒーローが好きだった。カッコいい男の子が颯爽と戦うのが好きだ。

知性も魔法も欲しかった。誰にも負けないヒーローになりたかった。

それを希望した。チートリクエストの表現が雑なことに8歳の時思い返し、枕に顔をうずめた。

 

転生して、世界を知ってもヒーローになろうと思った。

物語の登場人物が兄となり、双子の半身になった。身近に感じた。

ヒーローじゃない、家族として助けようと思った。

一緒にいてくれる人もいる。同じ運命で同じように家族を守ってくれる。

 

でも、やっぱりヒーローに憧れる。颯爽で知性的で女の子にもてる。

なれるよう努力してみた。だからここにいる。

 

司波雪光はそういう男の子だ。

 

 

すでに草原フィールドには3つの一対一が繰り広げられていた。

その中を縦横無尽に走り回る。

魔法を使用しての移動速度としてはすでに絶人の域だ。

 

自己加速は一方向のみに加速させるが、二人は停止の魔法を駆使し

鋭い切り返しをすることで、草原フィールド内を走り回った。

 

雪光はサイオン弾を使用した。この高速の中で物理現象は遅い。

例えば圧縮空気弾。あの加速であの巨体にあの障壁。効く攻撃、当たる攻撃ではないと感じていた。

それよりもコントロールが容易なサイオン弾を選択した。

勝負は、この高速の世界についてこれるかどうか。

 

兵介も感じていた。勝負は速い方が勝つ。兵介の武器は障壁による突撃。

攻撃に使えるのは自分の前面だけ。あいつは、自分の後ろを狙ってくる。

だから速く動く。速く姿勢を直し、速く突撃する。

少しでもこの盾が触れれば勝てる。脚が破裂するまで走る覚悟が出来た。

 

「なにあれ?無茶するわね」

「人が走ってるように見えない…」

自己加速を維持しつづける二人を見て呆れるエリカに、すでに二人の高速戦闘についていけない美月。

他の対戦が同時に行われているので、レオも幹比古もどれを注視していいかわからず

言葉も発さずにスタンドの大型モニターを見ている。

 

自己加速中の難点は自重コントロールと摩擦、そして周辺を知覚すること。

自重と摩擦は魔法でコントロールできる。勿論、同時に行うので修練が必要だ。

ただ周辺の知覚は難しい。高速の世界は風景が速い。同様に高速移動する第三者へ精密接触するのは容易ではない。

一方向へ自己加速して攻撃を加える「型」として修練すれば精密攻撃も可能だ。実際、エリカは出来る。

そこまでの修練がなければ、針を刺すような一撃を狙うのは難しい。大雑把な面での攻撃が有利だ。

 

そう、有利なのは兵介となる。

 

(なかなか決めさせてくれない!)

だが先に焦ったのは兵介だ。魔法行使で疲弊は無い。サイオン量も問題ない。

雪光の方が速い。

 

周囲で雷が逆立つ。誰かの魔法だ。だがそれがなんだ。相手はあいつだ。

兵介は雷の中を突っ切って雪光に肉薄する。

その瞬間、そう高速戦闘での一瞬。周囲にはどう見えただろう。

 

雪光が横にいたのだ。雷の向こうにいた雪光が。

 

 

すでに雪光の視界は歪んでいた。頭痛もする。無理をしたのだ。

フラッシュキャストで発動したのは更なる自己加速と反応強化。

競技用ではなく専用のCADで行う「最速」の一端だ。

 

雪光は、目の前のデカい奴にサイオン弾を見舞わした。

正面じゃない。横から一発キツいのを。

勝負はそこで決した。

兵介が両ひざをついたのを確認した。

雪光は勝ったと思った。

すでに頭がガンガン痛む。脚も動かしたくない。女子の膝枕が欲しい。

 

ただフィールドは二人だけのものじゃない。流れ弾がある。

二人の高速戦闘に決着をもたらしたのは、一条将輝の圧縮空気弾の流れ弾だった。

 

 

試合開始の静寂は1秒と持たず、フィールドは騒がしかった。

雪光と兵介の高速戦闘は草原全体で行われていた。

 

一条将輝は「佐渡より、騒がしいな」と内心笑っていた。

二人が人間では出せない速度で、縦横無尽に動き回る。

 

将輝は駆け足で戦位を変えながら、司波達也と距離の取り合いをしていた。

 

お互い常に動きながら魔法行使をする。

圧縮空気弾を多数展開し相手を制そうとする将輝と

その魔法展開をキャンセルしつづけ、懐に飛び込むのを狙う達也。

 

今のところ勝ち筋が見えているのが将輝だ。

将輝は精密攻撃をする必要がない。達也がいるところを面として捉え、空気弾を撃ち込めばいい。

達也は、術式解体は魔法展開される空間上の座標を変数としてコントロールしなければならない。

 

その差は精神的余裕に現れる。

 

こういった見晴らしのいい場所で、

近づく相手との交戦は黒城兵介との模擬戦で将輝は嫌と言うほどやった。

達也の術式解体や体術には舌を巻くが、兵介に比べ移動速度の差がある。

ただ攻撃するのではなく、移動と攻撃を同時に行う。

それも慌てず、しかし速くである。移動による変数の割り出しは、みっちり練習した。

 

正直、兵介には助けられた。竹を割った性格が通じ合った。

明るくて元気でタフで、練習のための模擬戦で的になることを承知で付き合ってくれた。

将輝は参謀がジョージなら、剣友は兵介だろうと思う。

 

 

一方達也は苦しんでいた。

試合のレギュレーションと自分に課せられた機密。

いくつもの制約があるが、それでもこれ程苦戦するとは思っていなかった。

 

多少捨て身にはなるが、肉を切らせて骨を断つ覚悟もあった。

だが前提になる接近が難しい。

 

距離を詰めようとリスクを持って踏み込む。

一定距離まで来ると狙ったように牽制で空気弾が来る。

(一条は目測内で危険ラインを引いており、そこまで到達すると牽制を最優先にする)

達也はそれが相手の戦術と判断し、実際正解であった。

 

(俺と深雪の前に現れ、自己紹介した時の余裕の正体はこれか)

他の試合と違う「戦闘競技における一対一」を徹底的に鍛えてきた動きだ。

実戦経験者としての余裕だけではなく、競技者としての余裕でもあった。

 

「上手いな」

「そんなに?」

カナデはアラタの独り言に反応した。

「一条の距離の維持が上手い。反復練習したんだろう」

「で、打開策は現役さん?」

珍しくアラタが舌打ちし、不機嫌な声で返した。

「あらご存じで」

「レストランの面々はね」

(君ら予想通り過ぎません。司波達也からすると、カナデも身内に近いのか?レストランにいたからという義務感からの通達?)

アラタは自分の正体が達也経由で光夜、雪光、深雪、カナデに知れ渡るのは予測していた。

この情報が、彼らの中で転生容疑者ではなく諜報員としてアラタの今までの行動を補完する。

これなら「不審人物」として警戒されなくなる。

今後、怪しまれないし、横浜騒乱については協力関係になれる、とアラタは睨んでいる。

(ブランシュ襲撃ははしゃぎ過ぎたけどな)

「で、達也は勝てるの?」

「連携をうまく使うか、骨も肉も切らさずに戦えば」

「そういう表現はんたーい。具体的な説明さんせーい」

二人の小声の会話が途切れた瞬間、戦況は動いた。突然の終局である。

 

実戦であれば、一対一の構図でなければ、そして精神的余裕が油断でなければ

一条将輝はもう幾分かの時間、司波達也を釘付けにしただろう。

 

先に異変を感じたのは達也であった。そして即座にそれを好機と捉えた。

草がまるで作り物のように起立していた。

(光夜。加減しろよ!)

 

将輝は連続して空気弾を発射しては解体されるのを我慢強く耐えていた。

勝機は一つ。相手の変数調整のミス。それを誘うための弾幕。

一瞬でいい。それで決着だ!と思っていた。

草の起立には気づいていない。だが一瞬の雷光は視界に入った。

 

将輝の足先を掠めるように雷が上に登り、達也は危険ラインを突破し将輝に肉薄していた。

しまった!と認識した瞬間に圧縮空気弾を連射した。突然の近接戦に思考が固まった。

 

近接距離に調整されなかった圧縮空気弾が達也の横を掠める。

そして将輝の耳元で指を鳴らす。

空気を震わす衝撃は試合の終了を告げていた。

三校のモノリス付近では吉祥寺真紅郎がすでに倒れていた。

 

 

憤怒とは違う。それは四葉真夜のために取ってある。

悲哀とは違う。それは俺を生んだ亡き母のために使った。

後悔とは違う。生まれ落ち、出自を知ったときに味わい尽くした。

憐憫とは違う。四葉にかしずく無能共にしか向けない。

 

これが友情なのだと光夜は思う。

モーリー、須田、アラタ、彼らと優勝の栄光を分かち合いたい。

光夜は手に入れたい。前世で得ることのなかった友情と栄光を。

 

真紅郎の視線の遥か先で、四葉光夜は身じろぎもしない。

距離的には交戦距離としてはいささか遠い。

将輝も兵介もフィールドを移動しながら交戦している。

自分の仕事はモノリスを守ること。それもあの四葉をけん制しながら。

(やってやる。四葉だろうと!僕は戦場に立つ参謀だ!)

将輝の横に立つべきは戦える者だと真紅郎は思っている。

兵介はいい奴だ。だが僕には僕の役目がある、とも。

 

試合開始しても数分経つが光夜はモノリスの前で仁王立ちをしていた。

敵モノリスとの距離など関係は無かった。彼方にいる真紅郎を睨み、機を待っている。

 

(あいつ動かない!)

真紅郎は焦った。内心で焦るどころではない。

すでに落ち着きなく数歩前に行けば、数歩下がるを繰り返している。

将輝は達也と、兵介は雪光とそれぞれの領域で交戦している。

真紅郎がモノリスを守りつつ、四葉を牽制。一対一で勝った将輝か兵介が敵モノリスを落とす。

戦略ではない。「勝負したい」と言った将輝の願いを聞いた。

四葉を捨て、司波達也との勝負を選択したのだ。「俺の直感だが、あいつが一番出来る」と。

真紅郎も賛成した。将輝と兵介の実力は知っている。

 

四葉を抑える覚悟もある。自信も少なからず真紅郎の中にはあった。

(動くつもりはないのか!数の利が出来た瞬間に猛攻を賭けるのか?どうなんだ!)

真紅郎は、自分の動揺に驚いた。相手が動いていない、というだけで戦術的選択が出来なくなっている自分に驚いた。

(情動干渉!ちがう!レギュレーションでは禁止だ!)

大きく深呼吸して一歩踏み出した。

(恐れているのは四葉の名前だ。踏み出せ!戦え!将輝の横にいるために!)

真紅郎の足元の草は起立していた。

 

「ふむ」

九島烈は貴賓席からフィールドを映すモニターを見ていた。

貴賓席の傍らにも複数の室内用モニターにより三つの交戦を同時に見ることが可能だ。

(まるで竜のごとし、としておくかね)

かつて最高の魔法師と呼ばれた老人は、モニターに映る仁王立ちの少年の評価を決めかねていた。

精神や情動干渉の魔法とは違う、持って生まれたカリスマ性が相手を抑える様は興味深いとも思う。

 

今までの試合では光夜自身は他の選手たちを圧倒する実力を示した。だが肝心の魔法はどうだ。

使われた魔法は?サイオン弾、知覚魔法、加速、浮遊落下、一般的な魔法を使うだけだ。

懇親会で手本を見せた工夫らしい工夫は無い。

 

若い故の実力不足?それとも秘匿すべきことがあるのか?一般的な魔法以外は使えない?

実戦経験がない?身体的問題で行動が出来ない?それとも戦闘にトラウマ?

 

九島烈の天秤で評価が揺れていた。

 

相手は天才児と言っても十師族ではない。戦力としてはチーム内でも一番下だろう。

そんな相手をにらみ続け、動きを止めてどうする?と九島列は訝しんでいた。

 

(十分だ)

フィールドで起きていることも、誰彼の動きも、把握した。

光夜は達也のような精霊の眼などない。

純然たる観察力である。

この観察力は【多芸多才】なのか【万夫不当】のどちらかの効果では、と光夜は考えたことがある。結論は出ていない。

 

雪光は互角に戦っている。あの高速戦闘は真似できない。そしてあの世界に入れない。

そう光夜は感じ、一人で最速の世界にいる孤独を考えたことがある。

 

達也はやや苦戦している。決め手に欠ける。実力が出し切れない。

ガーディアンとして同じ立場を共有しながら、軍、戦略級魔法師、人体実験、

いつも苦しむのは達也だ。だから達也のためにも深雪を守ろうと光夜は思う。

 

真紅郎が一歩踏み出す。

組んでいた腕を解いた光夜は撫でるように左手のブレスレット型CADを操作する。

一呼吸後、真紅郎の足元から雷が上昇する。

将輝の目の前で雷が上昇する。

 

前者は直撃、後者は動作が一瞬止まる。

 

雷の轟音、増幅された衝撃音、圧縮空気弾の着弾音が連続で響き、モノリスコード新人戦決勝は終わった。

 

 








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