うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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七草先輩とキスできないのよ

 

昨日は散々だったが、一転今日は緊張している。

そう緊張している。諜報員というより転生者としての正念場だ。

 

人のいない喫茶室。話の内容を理解できる奴はいないので、別に人がいなければどこでもよかった。

 

「悪いな」

「いや、達也同席で無くてもいいのか」

光夜を連れて、先に来ていたカナデ、雪光のいる席に座る。

俺は光夜と向かい合い、隣にはカナデ、光夜の隣には雪光。

四葉の二人と、その他の二人。別に対決構図のつもりはない。

 

光夜と俺が注文したコーヒーが来てから話を始めた。

コーヒーが来るまで昨日のことで雪光にまた茶化されたが。

 

 

手元にコーヒーが来ると俺はさらりと言った。

「二人とも、『佐島勤』と『魔法科高校の劣等生』は知っているな」

これは諜報戦ではない。直球だ。カナデは俺の横で穏やかに紅茶を飲む。

 

雪光は驚きの表情で固まっている。まるで次の俺の言葉で動く彫像のようだ。

一方、光夜は忙しい。俺を見て、カナデを見て、俺を見て、またカナデを見る。

「俺の言った意味理解したか?」

腰が抜けたように雪光が姿勢を崩し、椅子から落ちそうになる。

「・・・・・・・うん」まだ、驚きが抜けていない。反応が鈍い。

光夜も天井を見上げている。

「今まで俺たちを騙していたのか?」

「それを踏まえて説明したい」

光夜の声は冷静だが、天井を見ている姿は混乱を押しとどめようとしている様にも見れる。

 

俺は一口コーヒーを飲み

「仕事とこのことは関係ない。仕事で一校に来た時にお前たちの存在には驚かされた。お前らがいるとは思わなかったからだ」

天井を見飽きた光夜が視線を戻しコーヒーをすする。

「説明が難しいな。仕事をしながら、皆に接触するうちに思ったわけだ。横浜は止めたいと」

そう言って横目でカナデを見た。

動揺している様子はない。しれっと紅茶を楽しんでいる。

「どう思ったのか聞きたい」

椅子からずり落ちるのを直し、雪光が疑念の声を出す。その声音は詰問の声音だ。

 

「最初は物語に引っ張られた。ブランシュの件がそうだ。達也や深雪、そしてお前らに関わらずに自分の仕事をしようとした。立場がバレるとうるさくなるし、俺が何を知っているかバレるのもトラブルになる。そう判断した。九校戦も仕事を優先したが黒城兵介の登場で混乱した。物語の異分子と思って情報を集めていた。物語が崩れる。物語が崩れると知識が役に立たなくなる」

一度コーヒーを飲み息をつく。

雪光は疑惑のまなざしを向け、光夜は眉をひそめている。

「その時だ、物語に固執しかける自分がいたよ。でもこの世界は物語の世界じゃない。魔法があって、戦争があって、魔法科高校があるだけの世界。そういう世界だ」

二人の視線は変わらない。

「その時、達也と深雪の話を守ることより、横浜の件をどうにかしようと思った。俺は確かにあの二人の未来の物語を知っている。ただそれだけだ。俺は人を守る立場にあるし、その意思がある」

カナデの右手が俺の左手をテーブルの下で握ってくる。少し震えている。彼女もこの会話の行く末が怖いのだ。破談になるのか、漠然と不安なのだ。

「お前たちの4人の目的は知っている。未来知識を利用して、より良い未来の構築だ。だろ?」

光夜が頷く。

雪光は驚きもせず更なる疑念の眼をしている。自分たちの思案が読まれていて警戒しているのだ。

「ただ、今のままだと横浜での犠牲がデカい。その犠牲を減らすなり、回避するなりしたいと思っている」

「でもそれだと原作ブレイクになる!」

雪光は声を荒げた。焦っている。

自分たちの優位性がなくなるからか、それとも俺が物語の破壊者だからか。

「承知している。お前たちの目論見を潰しかねないのも承知している。だから話し合いの席を作った」

「なぜ横浜を止める?それが原作への影響をどの程度考えている?」

「人を守るのは俺の仕事さ。単純に人死にを減らしたい。死ぬのは無辜の人だ。影響についてはわからん。俺は横浜より先はさほど知らない。wikiで少し見た程度だ」

光夜と視線が絡む。何を考えているか読めない。だが、それほど俺は心配はしていない。

こいつはいい奴だし。雪光もいい奴だ。

「未来を大幅に変えるのは、困るだろ」

「困る」効率重視か。

「場合によっては排除するだろう?」

「場合によっては」光夜の瞳には冷静さ。

「する」雪光の瞳は意思。

「それだと俺も困る」

肩もすくめず、まっすぐに光夜を見る。

 

「ではどうしろと」

「論文コンペまでに解決したい。仲間と作戦がいる」

同じ目的を共有してくれる仲間が必要だ。

「我々の利益は?」

光夜と雪光としては横浜騒乱が起きても、知っている未来より軽微な被害ならいいのだ。

桐原先輩や五十里先輩に負傷させず、達也に再成を使わせない。

いや、被害を減らす努力はするだろう。ただ横浜騒乱が起きることが前提かも知れない。

それを覆すのだ。利益を求めるのは当然だ。

「ババアとの喧嘩の際の手助け。ただし、俺個人だが」

「でも、正体隠したのは二度目だよ。どう信頼すればいいの」

一番の難問だ。軍人としての正体を隠し、そして間を置かずに転生者としての告白だ。

雪光の言うことももっともだ。

「同意だな。本音が見えん。お前を信頼しても?何か意図があるのか?」

光夜の瞳に少し感情の色が出たような気がする。心配か?それとも疑念か?

俺は、光夜と共有している感情をぶつけた。

「モーリーの二の舞は避けたい。偶然の介在する余地もなく事件を収束させたい」

「それが本音か」

「ああ、正真正銘の本音だ」

光夜は横のカナデを見た。

「確かか」

「あたしは信じる」

カナデの手が強く握る。

光夜は俺をじっと見る。こいつこう見るとやっぱり美形だ。彼女出来そうにないけど。

「今、失礼なこと考えなかったか?」

「いや、まったく」

お互い微笑む。

「即答は出来ない」

「時間がないから2日ほどで返答してくれ。不審船のニュースがスタートの合図だ」

光夜と俺はほぼ同時にコーヒーを飲んだ。

 

「カナデはどうするのさ」

不機嫌な、警戒する声で、雪光はカナデに聞いた。

「手伝うつもりだけど」

「なんで」

雪光の声はぶっきら棒だ。

「ダンスのお礼」

「何それ」

雪光は理解できない。そりゃそうだ。彼女の協力する理由は今初めて聞いた。

俺好みの答えだ。

「冗談よ。あたしもちょっと物語を蹴っ飛ばそうと思って」

「もっと何それ」

仲間外れにされたと思ったのか雪光が少しむくれる。ショタっぽいな、おい。

「そこで上手い返しが出来ないから七草先輩とキスできないのよ」

「そ、それと、こ、これとは・・・」

突然の名前に雪光の腰が浮く。ほほ~お前、そうか。おねえさん系か。ほほ~。

「色男としてはどう思う」

「ノーコメント」

カナデのパスは強烈だが、俺はさっとスルー。

逆に声を出したのは光夜だった。

「雪光、七草嬢のことが」

「ノーコメント!」

雪光はそれだけ言って黙った。恋せよ、少年。おねショタだ。

 

緊張感のある穏やかな会見だった。

そして翌日には申し入れがあった。

「全面的に協力する」と。

 

 

雪光は笑って言ってくれた。

「一晩、ずっと光夜兄さんと話した。隠したのはモヤモヤしたけど、アラタの立場になったら僕もそうする。達也兄さん怒らすと怖いから」

そしてこうも言った。

「今度、諜報員のノウハウ教えてよ」

女性を口説くセリフも教えてやるよ。

 

カナデは一言「よかった」とキスと一緒に言ってくれた。

一番素っ気ないのは光夜だ。

「どうする」

「時系列の確認だ」

まず三人に提案したのはこれだ。

俺のあやふやな知識を修正し、細部を詰め、楔を打つ瞬間を見極める。

 

四人が集まったのはあのレストランだ。

各自紙とペンを持ち、知っていること。重要人物。

そういったことを書き出し、時系列順に並べていく。

 

共通しているのは「不審船の事件」の具体的な日時がわからないこと。

そこでの介入は無くなった。中華街近くの湾岸を24時間監視はあまり現実的ではない。

介入するとしたら大亜の奴らが上陸してからと、見解はまとまった。

 

次に「司波達也と聖遺物」「司波小百合襲撃」が「ジロー・マーシャル接触及び殺害」より前ということが確認された。

 

「聖遺物がうちに来るのを知るのはなんでだっけ?」

「たしか軍よ。軍からFLTへの依頼がバレて司波小百合がマークされる。その流れで司波家に監視がつく」

「う~ん、耳が痛い」

「達也兄さんと僕がいれば聖遺物に関して問題無いけど、小百合さんの襲撃に関して少々難易度があるね。偶発戦闘だから原作通りに行くかどうか」

「ジロー・マーシャルは?」

「俺のところに情報が入れば入国後の足跡はわかる。8時間に一度、入国エージェントの情報ログを確認している」

「介入は可能か?」

「可能だが、ジローマーシャルの行動は二科生グループに察知されるから、そこのグループに入れば接触は可能だ」

「なら誰かが達也を尾行して、ジローとエリカ、レオとの接触に介入する?」

「いや、それだとジローマーシャルを尾行している呂剛虎とバッティングするな。狙うはジロー・マーシャルに呂剛虎が接触した時だ。その時は装備も貧弱。地の利はこちらにあるからな」

「でも確実にするなら鑑別所襲撃のほうが良くない?」

「それも考えたが、う~ん、誰が対応する?」

「あたしはパス。戦闘はそっち三人で」

「雪光、七草嬢がいるぞ?」

「茶化すの禁止!」

「止めとけ、止めとけ、渡辺さんにいいとこ取られるだけだ。司波達也無双になるかもしれん」

「でも、すぐに身柄が奪還されるから、それよりも早い段階で確保して、もっと厳重な施設に入れといた方が得策じゃない?」

「病院襲撃時点では難しい。平河妹の暴走は不確定だ」

「関本さんから中華街に介入できないかな?」

「確証がないと、うちの組織は難しいぞ」

「じゃあ僕のところ使う?」

「ん?私設部隊があるのか?」

「多少は」

「四葉が対立構造に入る。周公瑾の背景を考えると全面戦争だ」

「じゃあ、どこまでOKなの?」

「軍なり警察なりに呂剛虎の身柄を渡すまでの間だ」

「ルートとしては関本さんからさかのぼる、平河妹からさかのぼる、他は?」

「司波小百合襲撃犯からさかのぼるのは?可能なの?」

「達也兄さんが全員分解するから難しい。でも小百合さん襲撃事件への介入する?」

「偶発戦闘だ。介入して不確定要素を増やす必要もあるまい。介入してもせん滅だ」

「あと九重八雲と達也、深雪の接触は?たしか会うのよね?」

「一度会ってみたいな、九重八雲、俺より胡散臭そう」

「うん、馬が合いそうだよね」

「そうだな」

「たしか方位に対してアドバイスを達也と深雪にするよね」

 

「「する」」

 

「そうなの?」

「一度会ってみろ」

「あれ?カナデ、達也兄さんは君付けじゃなかったけ?」

「気持ち的には年下よ。もう面倒だわ」

「そりゃよんじゅ」

「黙って」

「はい・・・」

「先に周公瑾に仕掛けるのはどうなの?暗殺とかじゃなくても、経済的にちょっかい出すとか」

「お勧めしない。あいつの網の広さがわからんし、未来知識外になるから実行するにしても準備期間が欲しい」

「やっぱり、早い段階で原作知識使って敵の戦力削るのがベストになるのかな?」

「ベターだ」

「そうね、他の不安要素は?」

「やっぱり平河妹かな~。僕的には」

「関本の対応は」

「あたしがCADにGPS追跡仕掛けたから、行動は追える」

「もしかして俺のCADにも入ってる?」

「うん。入れた」

「追跡用の返そうか?」

「そうね、お守り代わりに欲しい」

「ストーカー女だったとは」

「失礼ね。見守ってるのよ」

「惚気るな」

 

「「はーい」」

 

「で、問題の平河妹には誰か付くんだ?」

 

「「雪光」」

 

「僕?」

「どっちかというと、姉妹両方とも接触しろよ」

「なんで、カナデ九校戦で仲良かったじゃん、姉の方と」

「そうは言っても雪光、王子様だから。平河先輩も少し気にしてたのよ」

「雪光だ」

「ちょっと!光夜兄さん!」

「新旧生徒会に直接的な被害は無い。コンペ当日までは不介入だ」

「司波達也と七草のお嬢さんが、個室に入っていちゃつかなかったけか?」

「資料室で達也が「据え膳食わぬは申し訳ない」みたいなこと言うだけよ」

「あいつが?」

「確認次第、深雪には報告する予定だよ」

「雪光」

「ほら、兄弟で一人の女性を取り合うのもロマンなんだろ」

「ん~」

「怒るな」

「ねえ、あたしには据え膳云々は言わないの」

「摘んだ花には水をやっているが。足りない?」

「惚気るな」

 

「「はーい」」

 

「聖遺物奪還失敗からの目標変更はいつなんだ?」

「僕の記憶だと、司波小百合襲撃失敗後だったと思う」

「でもどうなの?一度路上襲撃で作戦目標変えるのって?現役としてコメントは」

「既定路線として横浜騒乱のシナリオがあったんだろ」

「奴らの意思決定には介入できん」

「でもさ、呂剛虎倒されるなり捕まって、奪還不可となると偽装揚陸船による襲撃も延期されるかな」

「俺が指揮官なら中止するね」

「中止させるための我々だ」

「呂剛虎がいなくなり、横浜事変に突入しても七草、渡辺、レオ、エリカがフリーの戦力として動くしゲリラ狩りの陣容も厚くなるでしょ」

「そうだけどさ~、中止させるためには?」

「陳祥山の逮捕か殺害が有力だな。現地指揮官との連携が取れないなら中止する可能性は高くなる」

「陳祥山は逮捕だ」

「なにか理由があるのか?」

「先の方でな」

 

「達也の動きは?市原先輩の手伝いになるの?」

「司波達也の論文コンペ参加理由ってなんだ?俺、覚えてない」

「平河姉の代打だ」

「でも、平河姉が不登校で無くなれば達也兄さんも呼ばれない」

「達也もフリーだ」

「でもな、このメンバーには入れづらいな」

「アカシックレコード見てないもんね、達也兄さんは」

「アカシックレコード?お前らそれで押し通したの?」

「成功した」

「うわ~、よく信じたわね。肉親じゃなきゃ縁切ってるわ、あたし」

「カナデの方はどうなんだよ。上手く説明したの」

「九島の爺様よ。言うだけ利用されるから、利発な子で通してる」

「賢い。これは婿入りだね。十師族入りだ」

「俺、長男なんだけど。嫁入りじゃだめ?」

「兄弟いるんでしょ?」

「いる」

「決まりね」

「のろけ」

 

「「はーい」」

 

 

「関本と周との接触があれば、即日関本確保でいいな」

「問題ないだろ」

「周公瑾側は連絡が取れなくなることを不審に思わないかな?」

「不審には思うが、対応できないだろう。家に言って関本君いませんか~、というわけにもいくまい」

「そうね、捨て駒だから最優先では調査はしないと思うけど」

「関本さん不憫だね」

「そう思うなら、四葉で援助してやればいいだろ。基礎研究だから寝かせれば役に立つぞ」

「軍ではどうだ」

「速攻、軍事転用可能な技術開発に切り替えさせられるだけです~」

「うわ、軍、物騒」

「現状は平河姉妹は雪光。ジロー・マーシャルはアラタ。関本はカナデでいいな」

「その分担でいいだろう」

「光夜兄さんは?」

「達也と協議だ」

「フリーで遊撃できる余力は必要だしな」

「再度の状況確認と会合は?」

「不審船事件発生後」

「不審船時点の各担当の状況と、ジロー・マーシャル殺害事件への介入作戦の立案だ」

 

 

「「「異議なし」」」

 

 

9月も下旬に突入する。

 








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