うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる 作:madamu
「どういうことだ!」
「わからん!」
効率重視の返事どうも!昨日の今日だ。勘弁してくれ!
校内を光夜と走りながら、来客がいる応接室へと急ぐ。
結局、カナデの調べでメールの送信元が横浜中華街の飲食店からで、その店の登記を確認すると周公瑾の名前があった。
送信元を偽装や複数かませないことから素人丸出しで、罠かと思った。
まずは明日、つまり今日の放課後に俺が下見に行く予定だった。
そして今日である。
朝、一限目終了時に問題が来た。
顔色の悪い男が校門に来て、警備員とひと悶着起こしたのだ。
「司波達也に会わせてくれ」という話らしい。
最初は警察を呼ぶ流れだったが「メールを送った」と言い出したので確認された。
そこから1時間以上たって、警備員→教職員→入学資料配布を担当している事務局→教職員→司波達也の流れで、司波達也本人に連絡が行った。
光夜に「周公瑾を名乗る男が来た」という司波達也からの連絡を受け、俺と光夜は急いで応接室に向かっている。
雪光とカナデは遊撃として待機。深雪にも緊急の状況だとだけ伝えた。
応接室の前に行くと司波達也が待っていた。
「来たか。中にいる」
「よく、応接室まで案内したな」
「俺がメールを返信せずに遅らせた、と伝えて無理にお願いした」
俺の質問に答えとしては及第点だ。下手に帰すとなんであれ確認が取りづらい。
多少怪しくても、監視下に置いた方がいい。
「ボディチェックは?」
「警備員が済ませたらしい。携行品は名刺と財布、身分証明書も持っていた。周公瑾名義だ」
「CAD?」
「なし」
光夜と司波達也の簡潔な会話が終わると、三人で応接室に入る。
監視という意味なのか、部屋には中央のソファに座る男以外に警備員が二人いる。
「知り合いです。大丈夫です」と司波達也が警備員に言い、退室を促す。
「しかし」と返答が来るが光夜が「我々生徒会の二名が同席します」と言うと心配そうな目をして部屋から出た。
申し訳ない。だが、これは俺たちでないと理解できない範疇だ。
男、周公瑾と名乗る男は疲れ切った顔、色男や優男ともいえない、疲労で口角はさがり、目の隈も病的なほど暗い。
悩みつき病んでいる顔だ。
服装も、洒落たまるで舞踏会の案内役のような優雅さもない、新人社会人のスーツのような身体から浮いたスーツ姿だ。
男は、入室した三人を順にみるといきなり泣き出した。
「司波達也~お兄様~」
すがるような、すがり崩れるような声をあげ、ソファから立ち上がり司波達也へと歩み寄る。
俺は二人の間に立ち、すぐにでも男を取り合押さえようと構えた。
が、それは無駄だった。
「助けてよ、頼む。僕を殺さないで・・・・」
膝から落ち、まるで司波達也を神に見立てて、懇願するように頭を垂れる。
そう、お兄様は神になったのだ。違う。違う!冗談!
男はそこで、数分泣き続けた。
「話を聞かせてくれ、俺があなたを殺すのか」
司波達也は男の肩に手を置き、そう聞いた。
◆
男を応接室のソファに座らし、話を聞いた。男の話は支離滅裂だった。そう、普通に聞けば。
なんでも死んだら、この体で目が覚めて、九校戦を見て魔法科高校の世界と気づき、その後自分が横浜で事件を起こすので
司波達也に殺されると思い、助けてほしくて連絡を取ったが、軍人たちが怖くて、今日いきなり来てしまった。ということらしい。
「お兄様に殺されるかわからないんだけど、敵になっちゃって、殺されると思うんだ~。でも今会えば助けてくれると思って」と涙ながらに話してくる。
光夜が小声で司波達也に「アカシックレコードを見たようだな」とつぶやくのが聞こえた。
お前、アカシックレコードで貫き通すのか。偉いな。
おい、司波達也お前も完全に信じているだろう。瞼が一ミリも動いていないし、完全に信用しているのが表情から読み取れる。
俺もアカシックレコードの流れでカミングアウト・・・風間さんとかに病院紹介されそうだな。
男の支離滅裂な話は10分ほど続いた。
埒が空かない。自分はワタナベケンゴといったり、文京区の文具店に勤めていたとか、高校大学と中華料理屋のバイト暦が長かったので今のお店のオーナーの真似事ができたとか
今の身体の記憶がよみがえると中国語と英語も理解したとか、お兄様の活躍は放映時全話観たけど、しっかり覚えていないとか。深雪ちゃんよりもエリカ派なので安心してくれと。
光夜と達也がアイコンタクトすると
「すまないが、授業を欠席する旨伝えてくるので少し待っててくれないか」と達也が言った。
俺と光夜だけが残った。
どうやら司波達也がいることで質問することもなく、男が支離滅裂(俺と光夜は理解しているが)に話すので
気を落ち着かせる意味で、一度中座するようにしたようだ。
男は心配そうに俺と光夜の顔を見比べる。
そりゃそうだ、頼みのお兄様がいなくて目の前にはよくわからん学生二人だ。
「混乱しているところ悪いが、お前も一度死んで転生した人間か?」
光夜の効率重視だ。
その質問に男は動きを止める。
「安心しろ。ここにいる二人は転生と言うものを把握している」
「ほんとですか!あなたたちも!?」
「そんなところだ」
「うぁぁぁ」
また男は5分ほど泣いた。
「よかった。同じ境遇の人がいて」
「ただ、周りの人間、達也にもぼかしてしか伝えていない。しゃべらないでくれ。俺たちも狂人と思われて社会生活ができなくなる」
そう光夜が言うと男も大きく頷いた。
「わかります。僕もお店の人にここは魔法科高校の劣等生の世界か聞いたら、変な目で見られました。わかります」
そうか、そうか。こいつも大変だったんだな。
男は光夜の態度に安心したのか、光夜の矢継ぎ早の質問に答えてくれる。
「本当に周公瑾なんだな」
「はい。九校戦後にはっきりとこの体の記憶がわかったんですが、周公瑾と言う名前で大漢というか崑崙の生き残りです」
「それでいつこの世界のことを知った?」
「だいたい九校戦の2週間前くらいです。死んで転生要望を神様、あのくそに話したらこうなって」
「そうか」
この人、転生じゃない。俗にいう憑依だ。原作の特定に人物に意識が憑依して、その人物として生きる、というヤツだ。
「こうしよう。達也には魔法の訓練中に事故で意識が飛んで未来の映像を見て、怖くなって映像で見た司波達也に助けを求めた。それでどうだ?」
凄い光夜がこんなに話すとは驚いた。
周公瑾は首がもげるほど頷いた。司波達也向けの「アカシックレコードを見た」という言い訳はとりあえずこれでいいだろう。
相当胡散臭いが光夜の後押しがあれば、「転生」とか「憑依」という頭のおかしい現象は追及されずに済む。
俺は質問すべく優しく、かつはっきりと話しかける。話掛ける側が弱弱しいと不安をあおる。
「俺は相馬新。司波達也の仲間だ。いくつか教えてくれ、軍人というのは大亜連合の陳と呂だな」
「ええ、アニメで見た二人でした。あと部下が20人くらい」
よしよし、潜入軍人は確定したぞ。
「彼らの行動はどの程度把握しているんだ?」
「衣食住の提供と、現金あと作戦室みたいなものを提供してるだけです」
だけ?
「じゃあ作戦の詳細は知らない?」
「はい。アニメだと横浜襲うんでしたっけ?あいつらに衣食住の提供するのと協力しろとだけ命令されています。具体的なことはなにも」
「もう一つ。今までの周公瑾が起こした犯罪行為の記録とかある?」
「ええ、いくつかは覚えてますし、日記みたいに本に書いてまとめてるみたいです」
少し身構えて答えるが、安心して欲しい。悪いことにはしないよ。
よし、本人の証言と証拠。そしてここまで話が進むなら、転生者組で背負いこむのは限界だ。
「そうか、じゃあいっちょ司法取引しようか」
◆
諜報は超細かい作戦を立てるか、行き当たりばったりの二つだ。
俺が主にやらされるのは行き当たりばったりの方である。
悪いのは大島少将とその周りの参謀連中で、胃を痛める村井大佐と現場で何とかしちゃう俺である。
その分、現場で好き勝手できるので有難い部分がある。村井大佐へのお歳暮お中元は忘れたことがない。
「村井大佐。大亜連から密入国手引きをしていた亡命ブローカーの証人保護をお願いします。本人は司法取引に応じるそうです。はい。はい。一校にいます。はい。
うちの?ええ、でどうやら密入国を手引きした中に大亜連の工作員もいるらしく、潜伏の協力をさせられているようで。はい現在も潜伏中で。ええ、はい。え、俺ですか?」
無茶を言いなさる村井さん。
「別に動けますが。ええ、はいわかりました。その代わりですが、尋問には同席しますからね。ええ、でいつ頃までに手配済みますか?わかりました。それでお願いします」
今応接室に居るのは司波達也と俺、周公瑾の三人だ。光夜は「軍関係の話なら俺は席を外す。あとで必要な事だけ言ってくれ」と部屋を出た。
証人と証拠、それが揃えば俺たちだけで未来に立ち向かう必要はない。国防軍が動く材料があるなら手助けしてもらおう。
「大黒特尉、情報部支援課少佐として協力を要請したい。2時間後に支援課小隊が証人保護のため本校に到着する。それまでの証人の身柄保護について貴官の力を借りたい」
俺は軍人として目の前の大黒特尉に協力を要請した。
司波達也は背を正し敬礼をする。
「はっ。かしこまりました」
「うっし、じゃあ小野先生のところ行こうぜ」
堅苦しいのは面倒とばかりに口調を戻し、周公瑾を伴いカウンセラー室に向かう。
早退の理由を貰いに。さて大黒特尉殿、二人分の言い訳頼むよ。
そしたら、喫茶室で2時間サボりだ。
下記の一文を追加
2018/01/29 20:54
証人と証拠、それが揃えば俺たちだけで未来に立ち向かう必要はない。国防軍が動く材料があるなら手助けしてもらおう。