うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu

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みんな大好き、「誰が強いのか?」の話。


余話:我が不破流は秘伝の武術

俺が司波達也に視線を向けると困ったような申し訳ないような顔をした。

なぜ、俺が試合を三回も、それもシチュエーションを変えてせねばならんのだ。

十文字、七草の諜報から解き放たれて少しは骨休めできるかと思ったら、これだ。

せめてもの救いは、ギャラリーが少ないこと。

事の始まりはこれだ。

 

「ハロウィンね~」

部活も終わり、光夜と合流して講堂へ向かった。なんでも、横浜でのごたごたで暗くなった校内を盛り上げるべく

司波深雪副会長様が企画した。七草のお嬢さんも噛んでるらしい。

是非とも十文字さんには「怪物くんのフランケン」の格好をしてもらいたい。きっと似合うぞ。フガフガ。

 

講堂を開放してダンスホールにするとかしないとか。そんなわけで確認として、生徒会役員は講堂集合となった。

風紀も警備目的で下見するらしい。

 

講堂に着くと既に座席は取り払われ、広々としていた。600人から入る講堂だ。そりゃ広い。実際には体育館でもある。

最初は講堂=体育館とは考えておらず、一校はなんでも設備のあるところだと思っていた。

絶対地下には創立当初から連綿と続く「魔法少女愛好会」の部室があるに違いない。

 

「あ、来ました!」

俺と光夜の姿を見て声を上げたのは深雪副会長だ。

ホント美少女ではあるが、俺の知っている限り千葉エリカと同格のブラコンで、魔法力と学内政治力がある分余計に怖い。

光井さんはそんな人からお兄様を奪おうというのだ。スゲーな青春。

 

深雪副会長を囲むように人の輪が。深雪副会長の人気ならいつもの事だがメンバーが珍しい。

千代田花音、沢木碧、なぜかいる千葉エリカ、西城レオンハルト、そして司波達也。

 

「相馬!格闘技出来るんだって!?」

沢木さんがデカいを声を出す。はい、出来まっせ。

「はい、なんか面白い話題でも出たんですか?」

俺と光夜はその輪に加わった。嫌な予感がするが、それでも放置するわけにはいかない。

「深雪さんからね、君だが格闘技経験者というのを聞いたのよ」

千代田花音が興味ありげに言う。なんだ風紀委員長は脳筋寄りなのか。

「ねぇねぇ!呂剛虎やっつけたってアラタなの?!」

千葉エリカがストレートに聞いてくる。やっつけたけど、表向きは国防軍による捕獲として発表している。

なんでこうなってるんだ?

 

「俺が?」

「そう!違うの?九重八雲にも勝ったんでしょ?」

「違うのよ、エリカ。九重先生には武術の腕を認められただけなの」

深雪副会長がそう説明すると、エリカは少しつまらなそうな顔をする。

「え~違うの~。なんだ、驚いて損した」

「だが九重先生に認められたのは本当だ」

司波達也が余計なフォローを入れやがった。

「そうか、九重八雲のお墨付きか!じゃあうちの部に入らないか!」

沢木さんが俺に詰め寄ってくる。嬉しそうだ。

デデ~ン、達也、深雪、アウト。タイキック。

お前ら俺の格闘技の話、漏らしやがったな。

 

「いや、そのクロフィーもありますし、格闘技も齧っただけで」

「兼任でもいいじゃないか!それに齧っただけと言ってもあの忍術使いに認められる腕なのだろう!」

マーシャル・マジック・アーツ部のエースは勧誘に余念がないな。

俺は一つ咳ばらいをし、間を空ける。

真剣な声と、眼差し。沢木さんにはっきりと、しかし声を張らずに伝える。

「我が不破流は秘伝の武術です。公の場で見せるものではありません。古来よりの組打術。血を見せるような技ばかりです」

最後は残念そうなニュアンスを残す。「競技には使えない武術だよ」という感じで。はい、終了!この話、終了!

 

「面白そうな話だな」

俺の後ろ、死角にはまるで巌のような肉体を持つ18歳の高校生、十文字が立っている。見なくたってわかるよ。気配がデカい。

あんた!受験勉強しろよ!魔法大落ちたら、中洲産業大学とかに入学することになるぞ!

「十文字さん」

千代田風紀委員長こと地雷女(比喩ではない)が声を出す。

俺はゆっくり振りむくと、あ~十文字&七草の二人だ。絶対面倒なことになるぞ。

「相馬、お前は魔法以外にも武術に造詣があるのだな」

まるで後輩の成長や実力を認めるような先輩の優しい眼差しだ。1km狙撃とか朝飯前に出来ることを知ったらどんな眼差しになるのやら。

 

「ええ、齧った程度ですが」

「謙遜しなくてもいい」

もう一度十文字さんが優しい眼差しを向けてくる。

そして七草のお嬢さんが面白そうに首を突っ込んでくる。格ゲーのコンボか!

「でも本当に、沢木君のお眼鏡にかなうのかしら?深雪さんどうなの?」

七草のお嬢さんは軽く挑発気味に言う。深雪副会長に「凄いんです!」と言わせて試合でも仕組もうという魂胆なんだろう。

やめろ!答えるな!と俺が会話を遮るように話しだそうとした瞬間。

「試合をしてみればわかる」

 

デデ~ン、光夜、アウト。タイキック。

 

そして俺は試合をすることになった。

このボッチ、ボッチよ。お前、ボッチ。おい、ボッチ・・・。

 

この時に千葉エリカがいなければ、せいぜい1試合で済んだのだろう。あのお騒がせ娘が。

「古流ならいくつかのシチュエーションで試合しないと実力なんてわからないわよ。ほんとよ」

 

勝手に話が進んでいく。

沢木さんも「後学のためにも古流の技を見せてくれ」とか「あたしも興味ある~」とエリカが騒ぎ

「九校戦の練習もすごかったしな」とレオが思い出す。

 

地雷委員長は少し離れたところで、五十里さんと話している中条会長のところに行き、何やら身振り手振りで話している。

ありゃ、模擬戦について承諾得ようとしているし、中条会長はOK出しそう。なぜなら七草のお嬢さんが説得応援のため近づいていく。

 

 

第一試合、第二試合は第二武道場で行われる。

入学直後に剣術部と司波達也が大暴れした武道館にある畳敷きの部屋だ。

 

試合相手は・・・十三束だ。

純粋な格闘戦を試すらしい。あ、沢木さんカメラで録画してるし、どうしよう。

「十三束、よろしく」胴着に着替えた十三束と握手をする。

俺は体育の授業で使うスポーツウエアだ。

十三束。金持ちのボンボンだが、良い奴だ。そしてマーシャル・マジック・アーツにおいては学内屈指の一人。

沢木さんの次のエースだろうな。

体格は俺とどっこいか、気持ち小柄なくらい。顔だちも可愛らしい。童顔は苦労するぞ(略)

「うん、よろしく。ルールはさっきの通りで大丈夫?」

「ああ、あれで」

ルールはマーシャル・マジック・アールの競技ルール寄りだった。

フルコンタクトで寝技ありなので、ちょっと競技より過激か?

お互い、頭部保護の防具をつける。

 

試合時間は3分、二ラウンド。

 

周りのギャラリーは、十文字、七草、千代田、沢木、司波深雪、司波達也、桐原、壬生、レオ、エリカそして渡辺摩利だ。

中条会長は仕事があるので、承認だけして代理で深雪副会長を置いていった。

 

千葉エリカが「あんた、なんでいるのよ」

「単なる興味だ」と渡辺さん。

 

空気が悪い。ブラコン拗らせると怖いな。

 

審判をする十文字さんが「はじめ!」と試合開始を告げる。

 

さて、不破流の秘伝を使えばすぐ終わる。不破流なんてないけどね。法螺で煙に巻こうと思ったが上手くいかなかったな~。全部、学生たちのノリのせいだ。

 

俺は体を横に揺らし、中腰になり、大きなステップを踏む。手も足もリズムを刻む。

カポエラの動きだ。

 

カポエラは中南米に連れてこられたアフリカ黒人奴隷達の中から生まれたといわれる格闘技だ。

手は枷によって塞がれているので、蹴り技が発達した武術である。

というのは本当なのか、誇張なのか知らないが十三束戦はこれを選択した。

理由は簡単。普通カポエラと異種格闘をした奴なんていないから。

初めて謎の格闘技と試合をすると、だいたいグデグデの泥仕合になる。

俺の狙いは引き分けだ。

 

十三束は右半身を前に打撃格闘技の構えでリズムを取っている。

そして十三束は移動魔法で俺の回りを素早く移動する。

「レンジゼロ」のあだ名通りの接近戦は強い。部活しているところを見たことがあるが、光夜や司波達也などを除けば相当なものだ。が、甘い。

 

俺はその場で後ろ回し蹴りや回し蹴りを繰り返す。当てる気はない。

体全体を回転させる蹴りをすることで、前後左右どこから攻めようとしても躊躇する。

竜巻旋風脚中に突っ込んでいくとダメージを食らう、という理屈に近い。

アクロバティックな俺の連続蹴りに十三束は移動を止めて距離を取る。

息が少し上がっている。異種格闘技戦で緊張しているな。

ギャラリーも俺の動きに驚いているようだ。

「カポエラか?」と沢木さんは驚いている。

 

「相馬、攻めろ!」

十文字さんからの一喝だ。あ、俺の意図、気づきやがったな。

攻めたふりをするか。

 

俺は連続の後ろ回し蹴りを前方に移動しながら行う。

十三束は横に大きく避ける。

俺は攻める、十三束が避けるの繰り返し。

ほらほら、俺は攻めてるよ~。

 

一ラウンド終了!

十三束は息を切らしている。半面俺のスタミナはばっちり。

 

あ、十文字のおじさん目つきが怖い。アレか、全力を出さないとは相手に無礼!とか思っているのか?

でも止めない。俺は秘伝武術の使い手で、それを簡単に見せることをしないため

カポエラを使って目くらまししている設定なのだから。

それに本気でやったら十三束死んじゃう。

 

二ラウンド目は状況が変わった。十三束の動きが立体的かつ、激しいものになった。

加速とか慣性の法則とかじゃなく、はっきり言ってカンフー映画のワイヤーアクション並だ。

上に下にと蹴りが飛んでくるし、こちらの動きは気にせず強引に攻めてきた。

俺の蹴りも一、二発当たっているが動きを止めない。

試合なら無理にでも来るよね~。わかる~。

十三束の表情も必至だ。先輩からの指示とか関係ない。一ラウンド目であしらわれて奮起したのだろう。

 

よっしゃ、おじさん少し本気を出そう。怪我するなよ。

 

十三束の猛攻は止まらない。俺は構えをカポエラから変える。やや後ろに重心をかけ、左足が前に来るどこにでもある左前の構えだ。

上下右左、十三束の超人的な動きを3cmのところで見切り躱していく。

 

「一寸の見切り」

 

かの剣豪宮本武蔵が体得したといわれる間合い、距離、相手の制動を見極める回避技術だ。

 

どんどん俺の動作範囲が狭くなる。半径30cmの円の中でしか動いていない。ギャラリーで格闘技経験者は静まり返る。

千代田花音はわからず「え、なに?説明して!」と司波達也に聞いている。も~、カッコいいところなのに!

そして二ラウンド目が終わった。

 

お互い開始位置に、戻り一礼する。

 

「凄いんだね、相馬君は」

汗だくの十三束と握手。尊敬するような声だ。弟子はとってない。

「嫌って程、仕込まれたからな」

 

十三束が武道場の壁際に戻り汗を拭くのと入れ違いに

十文字さんが近づいてきた。なんすっか?!やるんすか!?

「相馬、どこまで本気だった」怒っているのか、それとも驚愕した自分を抑えているのか声は荒げない。

「最初は目くらましですよ。秘伝武術は見せられないですし。見切りは、十三束の本気へのお礼ですよ」

そう答えると、十文字さんは黙る。

「次は剣術でしたよね」

俺が次の試合を促すと、ギャラリーの中から「あたしの出番ね!」と声が上がった。

泣いても知らんぞ。千葉エリカ。

 

 

二つ説明がある。

カナデとエリカは表面上は仲がいいが、あんまり仲が良くない。

一科、二科で違いはあるけど、女子生徒で男女問わず人気者。活発な感じで、余裕あるタイプが似ている。

 

エリカは美少女だ。赤や火とをイメージさせる活発で明るく、トラブルメーカーや引っ掻きまわす面があるが、深雪と同じ人の輪の中心だ。

何より、高校生男子にとってはちょっとエロい。須田ちゃんも「千葉さんいいよね!」と言っていた。須田ちゃんお墨付き。

体育会系というより、武道系にある「稽古>羞恥心」みたいな延長線上に気持ちがあるのか、制服が着崩れてもへっちゃらという感じだ。

健康的お色気美少女。そして笑顔が絶えないし、常に余裕がある。

 

カナデも、美少女だ。黒髪で大人しくしていれば楚々とした美少女だが、男女気にせずおしゃべりもする。クラスの女子と遊びに行ったりもする。

学校内で彼氏べったりでもない。サバサバしているところがあって、みんなの輪に入って盛り上げる。

お色気という面では「普段は意識させないけど、たまにアラタ見てる視線がヤバい。あれはヤバい。あんな視線で見られたらもうダメだ」と須田ちゃんも認めるところだ。

精神年齢が高校生の遥か上なので、余裕がにじみ出ている。偉ぶっているというより、見守っている感じだ。

 

同族嫌悪に近いのかも。

カナデも「もう少し可愛げがあればいいんだけど、押しつけがましいというか、仕切りたがりなところがちょっと」と笑っていた。

エリカも一度「カナデいいよね~。余裕があって。あたしとキャラかぶってるけど、あははは」だってさ

まあ、女子は難しい。

 

無住心剣流剣術という古い流派がある。今は色々あって現存はしていないが

「相抜け」という概念を生んだ剣術流派である。俺はこの「相抜け」好き。

 

相打ちというより、技量と精神が同調し決着がつかない、そして剣を鞘に戻す。

そんな感じだ。武神の俺でさえこの解釈が正しいか自信はないが、気持ちも体も傷つけない「相抜け」思想は割と好きだ。

 

で、目の前のブルマ姿の千葉エリカは、息を乱すこともないが手ごたえの無い相手に首をひねっている。

自己加速や幾つかの魔法を利用しているが、俺も同等の魔法や技術を用いて彼女と渡り合っている。

いや自己加速に関してはエリカの方が上か。

 

桐原&壬生のカップルだけか?俺のやってることを理解しているのは。

千代田花音は「ねえ、どうなの?」と司波達也に聞いている。お前・・・。

 

エリカの突きに合わせて、俺も突きを出す。それを嫌うエリカは体を崩す。

俺も少し崩れ、隙が出来るがエリカもできるので距離を取る。

 

試合が終わると「ねぇ何なの!?手を抜いて引き分けたの!」

エリカがお怒りだ。十文字さんも顔つきが険しい。

その十文字さんを先立って俺は答える。

「エリカ、お前『相抜け』ってわかるか」

そう言われて、エリカは真面目な顔になる。俺が何をしたのか、『相抜け』とは何なのか思い出したか?

他の面々は理解していないのか。もう少し日本の剣術流派とか調べてみろ。

楽しいぞ。田宮流とか無外流とか、タイ捨流とか、オタク知識が増えるぞ。

 

十文字さんは『相抜け』を知らないのか不機嫌な顔になる。

「で、三試合目はどうします?」

「フィールドを使う。準備しろ」

あ、もしかして十文字さんが相手?

 

 




関重蔵の出来ることの一端ですよ~という話。
白兵戦闘なら十三束やエリカでは勝てないです。
エリカが山津波を使えば可能性が!とも思いますが、当てることが前提です。

今回は実現しませんでしたが他の相手の場合(重蔵は素手、相手はCADあり)は

対レオンハルト
呂剛虎と同じです。合気で転がしてお終い。硬化魔法が切れた瞬間に打撃を入れるか、チョークスリーパーで落とすかで決着です。

対桐原、対壬生
エリカと同じ扱いです。場合によっては一太刀目で決着です。

対沢木戦
十三束と同じか、空気甲冑の場合は別の手段を使います。合気は便利。

対お兄様
無理。

対雪光
速度で負けるので発動前に捕まえればワンチャン。または想子剣ではなく素手なら殴られた瞬間に捕まえて合気。

対光夜
発動速度と戦闘開始の距離による。でも厳しいかな~。

対カナデ
今のところ引き分け。

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