うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
<< 前の話 次の話 >>

67 / 105
余話:あれで性悪扱いなら、まだまだ視野が狭いねエリカ嬢

まいった。

本当は年末にかけて対策会議をしなければならないがお邪魔虫に張り付かれてしまった。

千葉エリカ。千葉家の総領娘で、剣術の天才、としておこう。

美少女で二科の人気者。

 

「ちょっと、これだけお願いしてるんだから少しは融通しなさいよ」

「なんで頼む方が偉そうなんだよ。嫌だよ」

この数日の食堂ではだいたいこれだ。

千葉エリカから俺へのお願いは「道場に来て稽古つけてくれ」だ。

どうやら俺の剣術を盗んで成長したいようだ。

嫌だよ~。面倒だよ。というか、他人の道場に乗り込んでいきたくない。ぼこぼこにされてお終いだよ。道場破りは戸板に乗せてお帰り頂くのが習わしって松尾象山も言ってるじゃないか。

「俺の流派は」

「秘伝武術で見せたくない、でしょ。うちの道場で少人数でやるからいいじゃない」

周りにいるいつもの面々、司波達也と愉快な仲間&モーリー&須田コンビもこの話題に飽きているのか全然気にしていない。

 

須田ちゃんは最近見た恋愛映画の話をしてほのか&雫のコンビが興味津々になったり(司波達也と自分に置き換えている確率75%)、今度の試験について深雪副会長と美月とモーリーが試験範囲について真面目に話、それをレオが聞いて頷く(お前、俺と同レベルなら勉強しろ)。

幹比古と司波達也が今度販売されるCADについて古式魔法への応用について話している。

誰も助けてくれない。カナデはカナデで女子の友達と別のカフェテリアで昼食している、はずだ。

 

「お前な~、流派の秘伝を見せろと言われて見せる奴いないだろ」

「あたしは別に。真似できる奴なんていないし」

頭が痛い。今は雪光、光夜にこれから起きる未来年表の作成をお願いしている。

来訪者編から先、特にパラサイトを使って色んな事件が絡み合っていくことを予想するに

誰がどんな思惑で動くのか把握しておきたい。

一番遠い未来まで知る雪光にその辺りをまとめてもらっている。

 

多少時間があるとはいえ、お嬢様のわがままには付き合う気はない。

というのも、風間さん経由で支援課時代と同じようなリクエストが色んな部署から俺宛に来ている。

どこかのビルに今晩忍び込んで盗聴器仕掛けろとか、某国大使館職員を追跡して家族関係把握しろ、今すぐUSNAのセーフティハウスとフロント企業に忍び込んでハッキングツールを仕込め、だの。

無茶なもの以外は受け入れている。というのも魔装大隊と諜報系の間に関係を作る必要があったからだ。

支援課時代は仕事だが、大隊所属になった場合は貸し借りの話になる。

 

そしてその貸し借りは絶対にこの先の大隊に必要となる。

今は戦場でドンパチするよりも、お互いの腹の探り合いの時期だ。

いつか来る主力軍隊同士の衝突までに有利に立つための下準備だ。

だからといって学生を夜中に新宿の高層ビルに忍び込ませるのはどうかと思うね。

 

それはそれとして、目の前の小娘だ。

「だから」

「だからって、あんたにあたしのブルマ姿見せたじゃない。それのお返しよ」

「屁理屈だ!」

そんなことでワーワーギャーギャーしているわけだ。

これなら、剣術の試合は負けりゃよかった。自業自得となった。

だが、拒否だ。条件つけてOKしてしまうと、今度はまた別の条件で話をしてくる。

こっちの言い分は「嫌だ」で全部通す。

 

「少しくらいは譲歩したら」

そうは言ってもカナデさん、ってカナデがエリカに助け舟を出した。

というかこっちに顔出しに来たのか。

「ほら、彼女もOK出してるんだからいいでしょ!」

エリカは勝ち誇った笑顔だ。ちくしょー。

「ただし、条件。その1、ちゃんと保護者同伴で稽古する」

そこにカナデの声が下りてきた。条件付けか。

今度は俺が勝ち誇った顔をした。

「その2、稽古には当主は同席しない」

もちろん、そうだ。俺の武術は秘伝なので他流派には見せたくない。

ただ、不破流など存在しないのが肝だが。

「その3、あたし千葉家に遊びに行ってもいい?」

 

あ、そうか。上手いな、カナデ。今晩キスしよう。

 

彼女は「千葉の長男」に会いたいのだ。つまりは姉である藤林響子の恋人候補だ。

千葉家におけるエリカの保護者であり、当主で無い人物。そして道場に出るだけの立場。

該当するのは長男か次男になる。たしか長女もいたはずだが、詳しくは知らない。

千葉寿和、将来死ぬ可能性のある人物。詳細な状況は知らないがwikiには死亡の記載があった。

 

「え、何よ!その条件?!」

条件付けに不満なのか、最後の条件に不満なのか。エリカの声は最後の一つな気がする。

「最初のは、無理な稽古を強要しないようにお目付け役。二つ目は、秘伝を他流派の当主に見せるなんてナンセンスでしょ?」

「最後は?」

ほら不満な声だ。

「単に好奇心」

 

「エリカ、条件を飲めば稽古に来てくれるんだ。どうする?」

横から声が出る。司波達也がいい加減にしろ、と言いたげだ。

「う~」

条件付けが嫌なのか、カナデに主導権を取られたのが嫌なのか頬を膨らませている。

小動物か。モーリーだって「ぐぬぬぬ」とか言って人間らしい反応するぞ。

「じゃ、お兄さんの非番の日でスケジュール調整しといてね」

そう言ってカナデは俺から離れて、他の友達の方へ歩いて行った。

 

うわ、うまい。これで当日の保護者は警察官の長男に誘導された。

エリカの兄が警察官なのは横浜騒乱にいた面々には周知の事実だ。

違和感なくその長男をイメージさせる言い回しで誘導するとは。

藤林姉妹は本当に諜報向きだ。

 

「アラタ、あんたの彼女ちょっと性悪過ぎない?」

「あれで性悪扱いなら、まだまだ視野が狭いねエリカ嬢」

 

 

「足運びが遅い、振りと体幹がちぐはぐ、視野が狭い、意識が手内に集中している」

ボロクソである。俺の横では千葉寿和氏が苦笑いである。

 

千葉家の道場には俺、カナデ、エリカ、千葉寿和そしてレオの五名がいる。

「ほら、どうした。レオの細部を見るな。輪郭を見ろ、輪郭を。全体を見つつ、細部を観察するんだよ」

俺の声に反論せずに、エリカはレオと型を繰り返していく。

真剣な顔半分、最後の矛盾した言葉に怒っているのか表情が硬い。

それでも俺はエリカの悪いところ指摘する。

「動くな、止めるな、矛盾を矛盾せず動け。意識していることを無意識に、無意識なことを意識してやれ」

 

結局あれから2日後、千葉寿和警部殿が非番というので、放課後に千葉家へカナデとお邪魔した。

エリカの相手役としてレオも来ていた。今日のやられ人形君その1である。

で、カナデを除く四人は稽古着に着替えて稽古開始だ。

前回のでエリカの腕前はわかっているので、今回は成長のためのステップワンだ。

 

「お兄さん、厳しくなりますが口出し無用で」

「わかっているよ。まあ、我慢不足なところもあるがよろしく」

「ちょっと兄貴!余計な事言わないで!」とエリカが酷くご立腹だ。次兄以外は人間の屑扱いか。

で、最初に戻る。

 

幾つかの型を延々と繰り返し、エリカの悪いところを口頭で説明する。

「身体を動かす時に、筋肉を意識するな。身体全体は水だ。水。流れるように淀みなく動く。速さは瞬発力ではなく滑らかさ」

ぼちぼち初めて1時間。

「おし、休憩~」

 

 

道場の真ん中で大の字で倒れ込むエリカ。相当ばててるみたいだな。

「にしても見事な指導だね」

千葉寿和が感心する。お前、意中の人の妹がいるからって大人ぶるなよ、若造が!お前も九島烈に圧力掛けられてしまえ!

「いえ、うちの師匠に言われていたことを言ってるだけです」

 

「おーい、大丈夫か」

「・・・だめ」

上から覗き込み心配するレオにエリカは一言返すだけだ。

カナデがタオルやら水やらもって介抱しに行く。

 

「魔法なしの剣術だとエリカは千葉家じゃどんなもんなんですか?」

「大抵の門人よりは上だよ。ただね、エリカは魔法前提の稽古が多いから、純粋な剣術だとね」

「さーやには勝ったわよ!」

大の字のままエリカは反論する。まだ息が上がってやんの。同じ稽古を防衛大上りに指導した時は1時間で同じ状態になったから、エリカは防衛大卒とどっこいのスタミナかな。

「さーやって?」

「確か数年前の女子中学剣道の有力者で、一校でも剣だけなら渡辺摩利さんより上っていう剣士ですよ」

「へ~、あいつの彼女より強いのか」

「あの女の話はしないで!」

俺と千葉の長男坊との会話に寝ころんだまま割り込むとは器用な。ブラコンな。長男も寂しがるから、優しくしてやれよ。社会人は家の外で傷ついているんだからな。

「よし、そんだけ元気あるなら次の稽古するか」

 

俺対エリカ&レオによるハンデ戦。

「ほれほれ、どうした」

先ほどエリカに話した「動くな、止まるな」の実演である。

俺は武器なし、二人は木刀だが一太刀も掠りはしない。

前後左右と緩急をつけつつ、重心のコントロール、視線誘導を駆使して二人を翻弄するのだ。

「幻」とか「陽炎」と言われる技術の初歩だ。

二人の目には、振り下ろした木刀が俺の居たところを虚しく通過するだけだろう。

 

おふふふ、もう少し上の技術もあるが君ら相手にはこんなもんだよ。

「レオはもっと視野を広く。エリカ、水だ水。もっと滑らかに。動きにタメを作るな」

そんなことをしていると道場に新たな人物が来た。

 

千葉の麒麟児、3m以内なら世界十指、彼女とおそろいのジャケットを着る男だ。

 

 

カナデは千葉長男としっかり挨拶できた。

「姉にも伝えておきますね」とカナデに言われてデレデレだ。

お前、九島の爺の相手大変だぞ。ちゃんと貯金しているか。九島相手だと公務員は安パイじゃないからな。

 

千葉長男は「最近はまだ忙しくないのでいつでも空いてます!」と

カナデに伝言していたので、吸血鬼事件で警察省が動くことはレベルでは起きていない。

USNAの何とか実験はもう行われたのだろうか?

周公瑾の手引きがないからずれ込むのだろうか?

 

横浜騒乱といい、吸血鬼事件といい、事件のスタート合図は千葉長男だな。

 

さて、俺は俺で千葉次男と勝負をした。

次男が出てきた瞬間の「次兄上!」という学校では聞けないエリカの声音には笑いそうになった。

その優しさを長男にも向けてやりなさいな。社会人の苦労は労わってやって。

俺の稽古を見ていた次男を長男がけしかけたのが、一本勝負の始まりだった。

 

ルールは俺は魔法なし、次男坊は魔法アリ、ただし移動や自己加速等だけで、殺傷能力を上げるのは無し。

スゲーのな、次男坊。世界十指は伊達じゃない。

俺の「幻」「陽炎」「幻馬」の妙技に全部対応してきた。

それだけじゃない。本気になったのか移動魔法を駆使して、「幻」のような足法を見せたのだ。

呂剛虎の歩法は80点だが、千葉修次には90点あげる。

 

結局勝負は引き分け。相抜け狙いではなく、このまま行くとお互い本気の本気になるので適当なところで止めた。

「もし、良かったら防衛大で稽古つけてくれないか!」

次男坊にすごっく熱い握手をされた。

「え、秘伝なので無理」と答えたらしょぼくれてた。

千刃流鍛えてろ!長男は九島入りするから道場継ぐのお前やぞ。

 

「今日はありがとね」

帰路でカナデにお礼を言われた。そこはかとなく嬉しそうだ。

「まあ、千葉長男次男と顔つなぎするにはいいタイミングだよ」

「ごめんね、条件つけて。諜報員は目立っちゃダメなんでしょ」

今回の稽古をおぜん立てし、千葉家に顔をさらしたことを気にしているようだ。

「それは光夜に言ってやりなさいな。あいつら俺が潜入諜報員だとすっかり忘れてるぞ」

あいつらとは司波兄妹とボッチだ。

模擬戦にしろ、今日のことにしろ発端はあいつらのお喋りからだ。も~。

釘を刺しといたほうがいいかな。横浜騒乱が終わってお互い気が緩んだ。

 

横浜は民間人の被害はゼロ。建築物も被害は小さく、国防軍も重軽傷者はいるものの

死者はなく、大亜連合の侵攻作戦に対してほぼ完ぺきに抑え込んだことになる。

一校で呂剛虎と戦った兵士では死者が一名出た。

彼は日本の国防を守った人間だ。

呂剛虎が素通りで図書館に行ったのなら、俺は間に合ったかどうかわからない。

日本の魔法技術の海外流出を抑えた勇士は俺ではなく、あの場で呂剛虎と交戦した面々だ。

 

「お姉さんをもう一度泣かせたくない」とカナデは言った。

千葉寿和の死亡で藤林響子は泣くのだろう。

俺が横浜騒乱を止めたかったように、カナデは千葉寿和を助けることで姉を悲しませたくないのだ。

 




考えたら関重蔵の実力を戦闘で見たことある登場人物皆無なんだよな~。
全部デモンストレーションでしか、重蔵の実力を知らない。







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。