うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu

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「お前たちの兄ではない」

生徒会室での生徒会役員への挨拶はつつが無く終わった。

中条あずさは弱弱しい羊のイメージだ。癖の強い髪型が本人よりイメージに残る。

五十里啓は少し女性っぽい。体の厚みが感じられないからだろうか。

光井ほのかは予想以上に幼さを感じる。USNAのミドルティーンと比べてしまうと、小学生と言っても通じる。

 

そして、司波深雪は美しかった。

義妹のリーナは陽性ではあるが時折、陰鬱な寂しさを見せる西洋絵画のような絶世の美しさに対し

司波深雪は彫刻だ。移り変わることをイメージさせない完成された美だ。永久氷壁に眠る美貌の少女。

 

問題はこの男。四葉光夜。

長く伸びた髪を後ろで結び、覇気のある瞳。四葉光夜の美しさは 筆舌に尽くし難い。強く、幻想の動物を思わせる神話的猛々しい美しさと、古代叙事詩の英雄の気高さを持つ、恐ろしく攻撃的で高圧的で支配的で、言葉が通じなくても膝を折りたくなるような美だ。

 

「相馬君は部活の方に顔出しているので、後ほど紹介しますね」

「ありがとうございます。中条会長」

 

俺は、USNA本国に学生自治のモデルを持ち帰るのを目的として、一校生徒会に臨時役員として席を置くこととなった。

役員との顔合せも終わり、俺は司波深雪と光井ほのかに連れられて、食堂で「司波達也と仲間たち」に会うこととなった。

 

食堂に行く途中に司波深雪から「驚きますよ」と笑顔で言われた。まるで悪戯娘の笑顔だ。

 

「おわ、ほんとだ!」

俺を見て最初に声をあげたのは、体格の良い二科生(エンブレム無し)だ。やや彫りの深い顔立ち。光夜が獅子なら、狼か猟犬のような活発で精悍な顔立ち。髪の色も黒ではなく薄っすらと茶色が混じっているような。こいつが西城レオンハルトか。もう少し馬鹿面かと思ったら海兵隊の精鋭みたいな引き締まった顔だ。

 

「ほんと、達也君そっくり~」

それに続いて驚いていたのは赤毛いや栗毛の髪をポニーテールにした、少女だ。美少女と言っていいだろう。活発そうな目に、よく笑いそうな口。指先は鍛えられているのか、少女らしさは無い。格闘家のようだ。これが千葉エリカのようだ。陽性の美少女にも見えるが、珍しいものを見るような無礼な視線を隠さないあたりは自分に自信があるのか、自滅願望の作用にも思える。

 

「司波さん、彼が?」

日本人の高校生平均と言った体格の少年。周りに比べれば地味な印象を受けるが、決して愚鈍ではない目つきや、運動系に素養のある体格など、努力のあとが伺えるのが森崎駿だ。1-Aの教室でも見かけたが、このメンバーにいることには驚かされる。何かが違う表れだ。

 

「いや、すごいね」

泣きぼくろの優男。吉田幹比古。黒髪の優し気な目を持つ。男性としては抜群にスタイルがいい。身長から導き出される、腰の位置や頭の大きさなどは、この数日で見た日本人男性として群を抜くプロポーションだ。優しさを醸し出す姿と合わせて、知性を感じさせる口元は単なる知識偏重とは違う実務にたけた印象を残す。

 

「・・似ている」

驚いて言葉が後から出た眼鏡の少女。この制服から見れる体のラインではこの学校で見た女子生徒では最もボリュームがある。USNAのアイドル歌手など霞むと思うほどの、ボディーラインとやや幼さと愛らしさを残したボブカット風の髪型。ややセクシャルな魅力を感じさせるのは柴田美月か。

 

「たしかにな」

鏡で見る顔がいる。いや目元が少し違う。俺の方がやや目が大きいか?

ありふれた顔だ。面白みのない、自虐的だが自信や自負に満ち、決して媚びを売らない偏屈な顔。

司波達也だ。

 

『・・・oh、これはビックリだな』

英語で驚いてみる。こんな芝居が通じるのだろうか。

司波達也の顔を見て驚くふりをする。

 

席に着くと全員から自己紹介をされる。

エリカが森崎を「モーリー」と呼んだことには驚いた。

 

USNAの事や、生活のこと家族のこと、興味津々に聞かれた。

逆にこちらも九校戦の活躍を司波達也に聞くと

「人数合わせだ」と謙遜した。その顔で謙遜するな。自分のことだ、誇れ。

 

司波達也からの視線はあまり強くない。多少猜疑心はあるだろうが、俺がUSNAのスターズと確信はどうだ?

 

質問も一段落すると闖入者だ。

三人の男子学生だ。

 

「僕は須田渉。よろしく!」

「俺、相馬新。B組」

今ひとつパッとしない二人だ。

須田は中肉中背で大人しそうな顔。草食動物な印象だ。

もう一人の相馬はやや小柄だ。顔つきはレオが猟犬なら、いいとこ雑種の座敷犬だ。

二人とも運動系の部活なのか、身体はしっかりと鍛えているようだ。ただレオンハルトが近くにいると見劣るような印象だ。

 

「司波雪光!ホント、兄さんそっくりだ」

司波深雪が氷なら、この男子は冬の木漏れ日だ。寒々しい空気の中の暖かい光。空気と光の寒暖差が心の温度を上げる。不思議な空気とも言える。顔つきは中性的。少年期の美しさが満開となった目を離すことが難しい美しさだ。

 

三人はこちらのテーブルに連結させるように椅子に座る。

 

「いやほんとに達也そっくりな。見分けつかないな~」

と相馬新が言った。口調は落ち着いているが、俺と司波達也の顔を二度三度見比べる。

こいつには分析力がないのか。

 

「でも同じ名前だとどう呼んだ方がいいんだ?両方とも【たつや】だろ。名字で呼ぶか」

森崎が面白いことを言い出した。

「でもそれだと深雪さんも雪光君も司波だし、ちょっと混乱しそうですね」

柴田美月も呼び名の難しさに頭を悩ませ始めた。

「シールズ君はどう呼ばれたい?」と千葉エリカが聞いてくる。真面目な質問というより悪戯な質問といった感じだ。

 

「タツヤでいいよ」

俺は少し困ったように答える。

 

「問題はもう一人の方か」とレオ。

「お兄様?」とエリカ。

「深雪以外に言われたくない」と達也。

「達也兄さん」と吉田。

「お前たちの兄ではない」と達也。

「二科生の方」と森崎。

「差別的じゃないか?」と吉田。

「微妙に女子に人気のある方」と須田。

「シールズ君も容姿がいいから女子人気は出るだろう」と相馬。

「生徒会の方」と雪光。

「彼も生徒会の臨時役員で学内自治について研修予定だ」と達也。

「桐原先輩と壬生先輩のキューピッド」と相馬。

「長い」と達也。

「天才CAD調整者にて二科生の星」とレオ。

「長い」と達也。

「司波兄」と須田。

「間違いじゃないが、呼び名としては簡潔すぎないか」と達也。

「モ-リーくんが呼んでいるけど」と柴田。

「一人に言われると気にはならないが、全員から言われるとアイデンティティの消失を感じる」と達也。

「実技がダメな方」と相馬。

「短所で呼ばれたくはない」と達也。深雪が相馬を睨む。

「筆記がいい方」と須田。

「シールズ君もいいです」と深雪。

「深雪が好きな方」とエリカ。

「シールズ君を嫌ってはいません」と深雪。少し頬が赤い。

「服部さんに勝った方」と須田。

「服部会頭に申し訳ない」と達也。やはり負けたのか。

「九校戦で総合優勝に導いた方」と相馬。

「だから長い」と達也。

「深雪も何かない?」とエリカ。

「私はお兄様とタツヤさんで呼び分けます」と深雪。

「達也兄貴」とレオ。

「お前の兄貴ではない」と達也。

「特命赤点対策先生」と森崎。

「レオとアラタ専用じゃん」と雪光。今二人は成績的には上位にはいないのか。

「ここはシールズ君の方の呼び名を」と須田。

「なんでもいいよ」笑って答える。俺の知っている情報とい現実の正誤には役立った。

「タツヤ↑」と相馬。

「イントネーション変えただけでしょ」とエリカ。

「笑顔の明るい方」と吉田。

「達也さんも笑顔は明るいです」と不満そうに光井。うなずく深雪。

「妹のいない方」と須田。

「いるよ。妹」いるのだ。明るく健気な義妹が。

「今度紹介して!」と須田。殺すぞ。

「イケメンな方」とレオ。

「正直誤差範囲じゃない?」とエリカ。

「元祖と本家」と雪光。

「どっちも元祖だ」達也。

 

相馬が司波達也と俺を順に指差し

「達也とタッちゃん」

そう言った。

 

「「「「「「それだ!」」」」」」と全員が声を合わせた。

 

「というわけで、タツヤ・シールズ君は我々的にはタッちゃんで」

須田が決定事項を発表する。この国に来て、初めて年齢相応のあだ名をつけられた。

嬉しいか?そんな感情はないが、笑っておこう。

「ははは、ありがとう」

 

 

 

俺の目的は3つだ。

 

一つ。「グレートボム」を使った魔法師の調査。

こんなもの司波達也か四葉光夜で適当にでっち上げればいい。

司波達也が何かしら動きを見せたら速攻クロとして報告だ。

 

二つ。パラサイト事件の収束。

意外と悩みどころだ。レオンハルトの遭遇も、ミカエラ・ホンゴウの一校訪問も偶然によるもので

バレンタインデーの光井ほのかの感情をロボット内のパラサイトが読み込むのも全て「偶然」の産物だ。

だがこのピクシーの存在が事態を収束させる。状況に応じて踊るしかない。

 

三つ。転生者の調査。

 

転生者の見つけ方は簡単なようで難しい。

 

「原作との差異」となる人物が転生者の可能性が高い。

その意味では司波達也の縁者である司波雪光や、四葉である四葉光夜、藤林響子の妹である藤林奏は転生者としてクロと言ってもいい。

存在しない血族ほどわかりやすいものはない。

 

黒城兵介は「モノリスコード新人戦」決勝における活躍が原作と全く違うこと、そしてその実力の異常な高さだ。

若年者であり、原作ストーリーに近くにおり、スターズの二等星にも匹敵する戦闘力。

特に実力面は「チート」の可能性がある。以上の理由で彼を転生者候補として認識している。

 

川村エカテリーナは横浜騒乱での活躍が転生者容疑を濃くしている。

国防軍の警備強化からすでに原作と違っており、原作では活躍しなかった眠れる実力者の可能性もあるが、単独で名前が上がるほどの活躍と思うと警戒しておいて損はない。

 

転生者が司波達也の周辺にいた場合、司波達也と基本敵対しない。

奴が原作と同じ能力ならば、格闘戦、魔法戦とも日本国内屈指であり、世界でも屈指。そして魔装大隊というバックボーンに四葉の絡み。年次が進むごとに増える仲間。

原作を知るからこそ敵対することを避ける。俺のように自信があれば話は別だが。

 

原作に登場しない人物で司波達也の仲間という立ち位置にいる人物。

それが転生者の可能性がある人物。

 

今のところ、相馬新と須田渉の両名だ。

特に相馬新は原作では存在しない生徒会の一員だ。警戒の対象だ。

 

もし転生者ではないのであれば、「運命」に引っ張られた哀れなモブ生徒だ。

 

俺の知らないところで、転生者もいるだろうが、そのあぶり出しは追々だ。

 


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