うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる 作:madamu
「来訪者編」のカギとなる人物を挙げるとしたら?
光井ほのか?ピクシー?リーナ?
物事を進める起点はミカエラ・ホンゴウにある。
パラサイトの宿主になった彼女が第一高校に訪れることで一気に状況が進む。
ピクシーにパラサイトが宿り、ピクシーが光井ほのかの感情に反応する。
その後、司波達也は容易にパラサイトと接触が可能となり、七賢人を名乗るガキによって事態は収束へ方向づけられる。
そして今宵のミカエラ・ホンゴウは同胞たるパラサイト、脱走兵チャールズ・サリバン を救うべく夜の渋谷を動き回っている…はずだった。
すでに1月20日。USNA軍より脱走兵が日本に逃げ込み、その処断を命令されるはずだが一切命令がない。
つまりは脱走兵は日本に来ていない。
学校でも西城レオンハルトは登校している。なぜだ。
パラサイトは顧傑と周公瑾により日本に入国しているはずだ。なぜだ。
◆
「これはどういうことかな?」
俺は緊張のあまり額に汗をかく、という態をしている。
いや本当に緊張している。すでに現場はホットスタートだ。
「USNA軍スターズのシリウス、タツヤ・クドウ・シールズで間違いないな」
四葉光夜に食事に誘われた。
「USNAの魔法師事情を詳しく聞きたい」という話だが、任務的にも転生者調査にしても渡りに船だ。
向こうもすでにそのつもりだろう。
お互いのカードを見せ合う場になるのかどうか。
学校から少し離れた洋館風レストランの個室。
その場には四葉光夜だけではなく司波雪光、藤林奏の両名もいる。
二人は余裕のある様子でコーヒーや紅茶を飲んでいる。
そして四葉光夜の突然の言葉だ。
「うん?」
俺は首を傾げる。出来る限りの猜疑の視線を四葉光夜に向ける、がダメなようだ。
奴は朗々と俺の経歴をいう。「研究所で死んだ日系の両親」で止まる。
「研究所は火事になったが、日系の二人は元夫婦で離婚しているし、子供はいない」
情報局の詰めの甘さを恨む。ここまで情報収集能力が四葉にあったのか。
俺は一つ嘆息する。正体を隠すのもここまでか。
「何を聞きたいんだ」
声を落とし、動揺を抑え込む。
四葉光夜はその響く声を細め聞いてくる。
「ゼロの使い魔は完結したのか?」
司波雪光がズッコケる。藤林奏も声を殺して笑っている。
俺もその発言には驚いた。
「光夜兄さん~」
司波雪光が緊張感を崩した四葉光夜を攻める。
「お前もカナデも読んでいなかっただろう。俺は続きが気になる」
特に抑揚もなく四葉光夜は答える。この男の緊張感は途切れていないのか?
俺は手近な椅子に座る。
「最終巻の発売前にこっちに来た」
そうなのだ。最終巻の発売直前。
熱心な読者ではなかったが、アニメシリーズも見ていたのでこの機会に一気読みするつもりだった。
四葉光夜は少し悲しそうに俯いた。
「その答えが出るなら転生者でOKだね」と司波雪光は俺に向かって笑う。
「ゼロ使の話を振ったということは確証は【レモンちゃん】なのか」
いつ状況が変わるかもしれないこの場で会話の鍵が【レモンちゃん】というのも間抜けだな。
「部活の時にモーリーから聞いた」
四葉光夜は視線を俺に戻して言った。
この男、生徒会兼任で部活とは忙しい男だな。さらに原作への介入、きっと吸血鬼事件の開始遅延も関わっているに違いない。
この三人は転生者だ。今の流れで会話に更なる緊張もない。
全員転生者を前提に場が流れていく。
「何を聞きたいんだ」
先ほどと同じ質問を今度は司波雪光に言う。
「聞きたいことはいっぱいあるけど、今回は顔合せのつもり」
「そうか。それなら安心だ」
俺は優しく微笑む。
横から口を挟んできたのは藤林奏だ。
「ちょっと待って。最初の質問、スターズのシリウスなの?」
「こちらも質問だ。相馬新と須田渉は転生者か?」
二人とも声に感情の色はない。お互い冷静だ。
ジャブなのかストレートなのか、決して軽くない質問だ。
視線がぶつかる。動揺は無い。
「両方とも違うわ」
声は滑らかだ。
「だが恋愛関係にある」
どうだ、恋愛関係は何か意味があるのか?
「そうよ。何か変?転生者とモブの恋愛」
余裕のある笑み。16歳とは思えぬ笑みだ。
俺は肩を軽くすくめる。
「物好きだな」
「我ながらそう思うわ。それであなたは?」
先ほどの質問の答えを出す時間だ。
「残念ながらスターズとは関係ない。魔法には自信があるが軍人ではない」
馬鹿正直に答える必要はないし、この言葉の裏をとることは出来ないだろう。
シリウスの正体は国家機密であり、シヴァの正体も国家機密だ。
どうだろうか、転生者たちはシリウスの陰星の存在を想像するだろうか。
「たしか、戦闘力前提でリーナは潜入任務に抜擢されたのよね」
藤林奏は食いついてくる。原作知識ではそうだし、事実そうだ。
「それは原作準拠の場合だろう。軍人ではない俺がここにいるという事は別の思惑がある。森崎が司波達也の友人なように、すでに原作から乖離しつつあるだろ?」
意味ありげな微笑みを俺はする。どうだ、嘘を見抜けそうか。
自分たちが起こした原作との乖離が事実確認の困難さを上げている。
今度は藤林奏が肩をすくめる。
「今はいいわ。吸血鬼事件が進んだら改めて」
進んだら、ということは介入し事件の進行を遅らせているということか?
短い会談は終わった。お互い敵とも味方とも言えないが、転生者であることは認識した。
あとは嘘があるかの検証だ。いかにも潜入工作員となってきた。