うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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膝が痛い。

どうも!皆さん元気ですか?!

現在命懸けの鬼ごっこ演技をしております!私、関重蔵です!

 

などと、テレビのナレーションごっこを内心しながら夜の渋谷で「恐怖して懸命に逃げる」フリをしている。

既に二回ほど転んでいるので、膝が痛い。

「うわわわわ」

手元の情報端末は先ほどの激突で故障している、という態だ。

どうにかして、後方にいるパラサイトをこの先に連れ込まねばならぬ。

周囲も住宅街と呼ぶには住宅の明かりはまばらだ。

22時を間もなく迎える渋谷の郊外は人気が少ない。

2000年代以降の都市区画再編により渋谷は若者の街から、ビジネス街であり遊興の街となった。

つまり住人が少ない。

渋谷の中心から少し外れると倉庫や、コミューター(小型の路面電車)の整備基地などになっており人の目も少ない。

 

郊外まで出ればパラサイト相手に暴れても問題ないのだぞ、パラサイトを追跡してるUSNAの諸君&タッちゃん。

俺を追うパラサイトを監視する公安と、パラサイトを追うUSNAの脱走兵討伐隊を監視する国防軍情報部、という複雑な構造だ。

右耳の後ろの骨伝導スピーカーからは「なんで情報部が出しゃばってくる!」と聞こえ

左耳の後ろの骨伝導スピーカーからは「公安は何を追っているんだ!」と聞こえる。

街頭の監視カメラに「協力しろ」とハンドサインを向け、ビルの角を曲がると目の前に空いた空間、コミューターの整備基地が現れる。

 

 

1時間ほど前にパラサイトの二人が渋谷の街をぶらつき始めた。

欧米系と思われる一人は直ぐ近くのコンビニに入る。

 

この時代、人種混血は進み「白人っぽい」「黒人っぽい」「アジア系」といった曖昧模糊になりつつある。

2000年初頭の人種差別は人口減少と共に鳴りを潜め、変わりに魔法師と非魔法師の潜在的な対立構造を生み出していた。

ハゲの教授が恵まれし子供たちを集めて学園は作っていないし、政府のエージェントはタイツ姿で警ら活動はしていない。

行け!X-MEN!いるなら仕事変わってくれ!

 

もう一人のアジア系は人通りの多い道を往復したり、喫茶店に入って外を眺めたりと完全に「餌」探しだ。

公安は「誘拐対象の選別」と判断した。

俺と公安に認識の違いはあるにしろ、「あいつが国民に被害を及ぼす」という点では一緒だ。

 

雪光に聞いた話だと、吸血行為ではなくパラサイトの増殖作用として被害者の血液量が減少するらしい。

なので吸血鬼というのは間違いで正しくは「情報寄生体増殖作用体内血液量減少鬼」と表記したいところだが、長いので吸血鬼だな。

 

で、俺は大急ぎで監視場所からパラサイトの視界範囲まで行き、奴が獲物を探すべく街をぶらつき始めた時に獲物候補として視界に入った。情報端末を見ながら少しだけ裏通りに入るそぶりを見せたら、食いついた。

民間人襲うなら、俺のような特殊公務員を襲った方がいい。

対象を監視しておきながら被害を出すのは公安や俺含め誰も望んでいない。

 

パラサイトを誘導しながら裏道へ誘っていくと、左耳の情報部通信、タッちゃんの尾行をしていた面々の通信が流れ込んでくる。渋谷で戦闘行為をし、現在も交戦しながら移動中・・・つまりすぐ近くにいるのだ。

通信から流れてくる移動経路からすると、ほら!合流した!

 

で、二人のパラサイトは合流し、USNAに追われつつ俺を追いかけてくる。

「!」

俺はフェンスに囲まれたコミューター基地へと逃げ込む。普通ならフェンスなどすぐ飛び越えられるが今は「普通の男子」としてフェンスを下手くそに上り、越えて行く。

パラサイトもフェンスを越えてくる。あいつらフェンスを飛び越えてきたな。身体能力も上がっているのか?

 

10分ばかりコミューター基地で鬼ごっこして、基地の警備が警報鳴らせば鬼ごっこも終わりになるだろう。

だが、長い夜になるのはここからだった。

 

 

3つ目のコミューターが「分解」される。なんじゃこりゃ。司波達也か。

一列20台として10列以上並ぶコミューターの影をコソコソ移動しながらパラサイトとUSNAの戦闘を見る。

情報端末のカメラを起動させ動画で撮影。いいぞ、ヘンテコな仮面付けたタッちゃんらしき奴!いけ、負けんな!

仮面の他のUSNAエージェントは消音機付きの拳銃でパラサイト達を攻撃し、パラサイトは手からサイオン弾や電撃を放つなど反撃をしている。

 

既に基地周辺の街灯は破壊され、ここから遠くにある整備基地の建物から漏れる明かりだけが光源だ。

人はいるだろうか?意外とコミューター基地には人がいない。全自動万歳。

 

「情報部、あれはUSNAか?」

情報端末に向かって呟くと、左耳からは「そうだ」

右耳には「なんでUSNAが大亜の工作員と戦闘しているんだ!」と驚く公安の声。

そうだよな、横浜騒乱から半年足らずで周公瑾がコーディネートした10人前後の集団と見ると

人種混合でも大亜の工作員と判断するわな。

「あれパラサイトなんですよ」と言いたいが証明するものはない。

 

「ここに所轄はどのくらいで到着する?」

「この広域ジャミングは情報部か?」

「USNAの通信遮断のためだ」

俺の質問に公安はジャミングの存在を告げ、情報部はジャミングの実行を告げた。

あるある!こういう任務がバッティングして状況が悪い方向に転がること。よくわかるよ~。

大抵は現場の工作員が拉致されて拷問されるんだよね!!ふざけんなよ!

「所轄警察はこないのか」

出来る限り動揺を誘わないよう、ゆっくり言う。

「・・・」

「・・・」

左右の耳裏の骨伝導スピーカーは無言だ。

知ってた。

これだから十師族みたいな陰謀好きマニア集団に諜報、防諜でウロチョロされるんだよね。

「徒歩で所轄警察署行って人数出してもらって渋谷周辺に警戒網張れ。こっちは頃合いを見て離脱する」

 

明日、学校でタッちゃんに接触されるので何かしら対応方法考えねば。

そして四葉の黒羽や九島あたりがパラサイト事件に首を突っ込んでくるだろう。

四葉はブレブレキャスト?ブリブリ座衛門?で通信情報見まくりだから、すでにパラサイトの情報は掴んでるんじゃないだろうか。

九島は情報部が絡んだので、今撮っている動画も数日内には九島の爺様が見るだろう。

 

そうなってくると、諜報組織の縄張りに今度は魔法師の私兵が紛れ込んでくる。面倒くさい。

そんなことを考えつつコミューターの影を移動していると・・・最悪だ。

5名がフェンスを越えてきた。パラサイトの援軍だ。一人は白い仮面、本郷美亜だ。

パラサイト7名とUSNAエージェント3名。

夜の整備基地は、想像以上の鉄火場となった。

 

 

目の前の白仮面の突きや蹴りを大きく距離を取りながらバックステップで避ける。

動きは直線的だ。白鶴拳か?体当たりの素振りが無いし、そのあたりがベースなのだろう。

周りでは4対1で苦戦するタッちゃん(口元が開いたヒーローっぽいマスクをしている。カッコいい)と2対2に持ち込まれ防戦一方のUSNAエージェントがいる。

 

パラサイトの吸血は別に噛みつくわけではないのだろう。

吸血は接触やそれに近い距離で行われると思われる、というのは光夜の話だ。

なので、白仮面の突きや蹴りを余裕をもって避ける。

 

それにしても不思議なのはタッちゃんだ。

何もない空間へ二度三度、拳銃型のCADを向け魔法を発動している。

だが魔法による改変結果は視覚では認識できない。情報体次元での攻防を行っているのだろう。

パラサイトの本体?は情報体存在で吸血行為も情報体次元での行為と思われる。

それはつまり、タッちゃんは情報体次元を知覚する能力を保有している可能性がある。

司波達也の「精霊の眼」と同様に。

 

たしか司波達也の「精霊の眼」は「分解」と「再成」の副産物だったと記憶しているが

そうなるとタッちゃんも「分解」と「再成」が使えるということなのだろうか。

ならば先ほどのコミューターの分解現象も辻褄があう。

 

コミューターも10台近く分解され、基地での戦闘は5分を越えた。

USNAエージェントの下っ端?二人は肩で息をしている。

追跡から一気に戦闘になり、緊張状態が続いているのだ息もあがるわな。

 

タッちゃんがちらちらと俺の方を見てくる。

「あいつ転生者か?」と怪しんでいるんだろうけどお前の方が怪しいよ、と言ってやりたい。

パラサイト来訪と同時に司波達也そっくりさんだよ。

怪しいよな~、絶対マテリアルバーストの使用魔法師の確認だよ。3か月未満の短期留学ねじ込んでくるとか、無理あるだろ。

 

 

「な!」

地面からの強力なサイオンの波は、俺やパラサイト達を中空に放り投げた。

タッちゃんがCADを地面に向け何かを発動させたのだ。

衝撃で飛ばされたというより、エスカレーターで中空まで運ばれて床が無くなった感じだ。

10mほどの高さから地面へと落とされる。

周辺では飛行や浮遊の魔法でパラサイトとUSNA達は行動を確保した。

俺は落下スピードと魔法発動スピードを鑑みて、武術秘奥の猫受け身の妙技をしようと…

「ぐっ!!」

横から白仮面に殴られた。

中空なので相手の踏ん張りもなく、大した痛みは無い。

「はっ・・・」

何とか受け身を取り着地、10点。

これは「吸われた」ということなのだろう。

腰のあたりに力が入らない。そして左腕が異常に重い。その重みも少し広がっている様に感じる。

 

俺は直ぐに立ち上がり右半身を前に出す構えをする。

中空の白仮面は地面に降り立つ。

他のパラサイトもタッちゃん達から離れ着地。

 

白仮面は一気に踏み込んでくる。

ここで引くと連撃で押し込まれそうだ。一つ見せ技で黙らせないと。

腰が妙な感じなので成功率はいかほどか?

 

俺も大きく踏み出す。踏み出すというか一足飛びに数m距離を縮める。

速度とタイミングを完全にずらす、白仮面も突然の動きに動きが止まっている。

前転気味に相手の間合いに飛び込む。

足が白仮面の前に蹴りだされ・・・

白仮面に蹴り込むのではなく、奴の眼前で高速に交差させる。

俺は側転の要領で白仮面の横をすり抜け、数歩の距離をとる。

 

白仮面の首のあたりから赤い液体が薄っすら見える。致命傷ではない。首の皮を少し切った程度か。

自分の首に手を当てて出血を抑える白仮面。

 

不破流奥義「龍破」

相手の前で逆立ちし、敵の首近くで足を高速で交差させカマイタチ現象を起こし首を切る、という技。

決して「修羅の門」の「陸奥園明流」のパクリではない。無空波も虎砲も出来るし、四門を開けられるのはここだけの秘密だ。

パクリではない、オマージュ(強弁)

 

相手はこの不可解な技に警戒したのか後ろに跳躍する。

周りのパラサイトとも合流し、整備基地をはなれる素振りをする。

俺はその隙にコミューター列へと身を隠す。

 

いい加減、警察なり情報部なりの増援が欲しい。腕と腰の違和感は消えない。

呼吸を整える。某チベットの行者を第三国へ逃がした際に教えてもらったヨーガの呼吸だ。

意識が途切れることは無い。それだけはありがたい。

俺の鋭敏な聴覚は彼方から近づいてくるサイレンの音を感じ取っていた。

 

 

戦闘は終了した。5台を超える警察の車両が現場に到着する頃には、パラサイトもUSNAもいなくなった。

勿論、動画はばっちりだ。

 

身分を警官に話すと所轄の警察署に案内された。

俺が会議室の前に来た時には

「だから、今回の作戦はこちらも混ぜろと!」

「広域ジャミングなんて馬鹿な方法を都市部で行う部署と共同で作戦出来ると思うのか?!」

と公安の主任格と防諜二課の課長が喧々諤々だ。

 

ドアを開け中に入ると、一瞬で黙った。おい、一番の被害者のお戻りだ。

「101旅団か魔犯対(魔法犯罪対策課)に連絡しろ」

会議室にいた公安、防諜二課が俺に注視する。

全員に顔を見せる必要はない。ハンカチで口元を隠す。

「関さん、俺たちじゃ対応できないって?」

公安の主任が嫌な顔をする。「事件に対応する実力が足りない」という意味で俺の発言を受け取ったらしい。

「違う。片方は正規の軍人だ。実力的にはスターズ格だろうよ。部下の家族に遺族年金出したいなら公安だけでやれ。俺は降りる」

皮肉交じりの言葉で公安主任は黙った。

今度は防諜二課が噛みつく。

「公安の件に噛んでるなら情報流してくれ。関さん、うちがあんたに出した予算・・・」

支援課時代の発注主として振る舞う前に視線で釘を刺した。

公安の肩を持つ気はないが広域ジャミングなんて「防諜活動してますよ」と言っているようなもんだ。

どうも防諜の二課、三課は派手好きなのか、二課は何かにつけて広域のジャミングやネットワークハッキングをしたがるし、三課はビックリドッキリメカが好きだ。夜間用消音飛行船とか止めろよ。ルパンか。

「今は魔装大隊だ。改めて言うが、専門部署の荒事屋を連れてこい。あの密入国者は魔法師だ。それも古式か、もっと変わり種だ」

魔法師、古式という単語でさらに沈黙が重くなる。

 

その後は動画を共有した。

動画を再生しながら「こいつらはCAD使用の様子がない」と言うと会議室内の数少ない魔法師たちはざわつく。

「発生した物理現象を見るにCAD無しで、ここまでの現象を起こせるのは人間技じゃない。下手したら戦術級だ」

魔法師を知らない奴にも知っている奴にもわかりやすく説明する。

 

1時間ほど現場の状況を報告し、俺は病院へ向かった。そう入院なのだ。

あの現場に巻き込まれた人間として、入院するポーズは必要だし、今は眠りたい。

病院のベッドで横になった時、事件が本格的に動いたと確信した。








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