うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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お前は司波達也が嫌いか

「お兄様は、なぜ今回のパラサイト事件に協力されたのですか?」

司波深雪は、珍しくリビングのソファで何をするわけでもなく電子書籍を読んでいた司波達也に聞いた。

あの戦闘から数日。深雪の視線からは達也は流されるように事件に巻き込まれていた。

たしかに光夜のアカシックレコードの知識で、パラサイトの存在と達也が撃退する未来の話はあったが

それを踏まえても、達也が状況に流されている様に深雪は思えた。

 

「気になるかい。深雪。それはパラサイトの存在が人間の生存に厄介だからだよ」

深雪は兄と自分のコーヒーカップを持ってキッチンから戻ってくる。

「厄介ですか?」

兄の口から厄介という言葉を聞くのは初めてかもしれない。

「そう。厄介だ。青山霊園の時までは、エリカたちの暴走を止めるためや、関少佐への協力といった側面が強かったがあいつらと会話してわかったのは、知性面以外に無計画な繁殖欲求があることだ」

「無計画ですか?あまりそのようには感じませんでしたが」

コーヒーカップを渡しながら、深雪もソファに座る。

「USNA内で繁殖に失敗したと言っただろう。理性があれば、社会から外れたものや所在の確認が難しいものを優先して繁殖の対象としただろう。例えば病院の隔離病棟や、へき地にあるホスピタルといった【社会から見放された場所】といったものもある。つまり奴らは宿主の知性や知識というものを持ちながら、繁殖の対象を選定しなかった。スターズの士官の知性を持ちながら、行動と結果を想像、予測をしなかったんだ」

「つまり彼らは宿主の表面的な言語能力のみ利用して会話をしていたと」

「そうだ。あいつらの繁殖欲求は知性や理性でコントロールされるものではなく、本能的な繁殖欲求しか持たない可能性が高い。そのまま放置すれば、近いうちに人類への大きな敵となり得る。数の少ない今の段階で、対応できたのは僥倖だったな」

 

 

バレンタインデイは企業の提案というスタートから100年以上経過しても、やはりこの日は男女にとっては何かしらの意味を持つ日である。

学校の各所では告白、成功、お断りと波乱万丈なシーンが行われている。

光井ほのかも、司波達也にチョコを渡し直ぐにお返しのプレゼントを貰えた。

 

放課後の1-B教室では落ち込む一人の男子生徒を二人の男子生徒が励ましていた。

「・・・」

「落ち込むなよ、雪光!」

「大丈夫!」

普段は女生徒が周りにいる雪光の脇には、須田と森崎がいる。

先ほど雪光は七草真由美に告白して玉砕したのだ。

 

朝から雪光に告白する女子は多かった。深雪に匹敵する美形で、一校の王子様。

その度に「ありがとう。ごめん。今日僕も告白すると決めたんだ」と一人一人丁寧に断っていた。

そして、その実行を先ほど行った。

「ごめんね。雪光君はやっぱり弟なのよね~」

小悪魔的な表情での「お断り」である。雪光は年上の女性の、いやこの場合は、真由美の小悪魔加減に身をもって知らされた。服部と同類である。

真由美が雪光を可愛がっていたのは恋愛や興味というより「弟扱い」の延長線上で、それを勘違いしてしまったのは雪光だ。

 

玉砕である。

その後すぐに兄である達也が真由美から「地獄のように苦い」チョコレートを贈られたと聞いて完全に気が抜けてしまった。

「弟・・・」

口から魂でも抜けるように、口をあけ脱力する。

雪光は夕食を家で食べない旨、深雪に伝えてある。

達也との甘い夜を邪魔したくはないからだ。

 

その日、雪光、森崎、須田は三人でパフェを食べに行った。

しょっぱいパフェを食べたのは雪光だけだった。

 

 

「もう少し学生をやってくれ」

風間少佐は定例の連絡時に告げた。

「なにかありました?」

「情報部から第一師団の出動へクレームが出たらしい。情報部と十師族に少し不協和音がな」

「七草と九島がやり過ぎたか」

風間が頷く。

 

防諜三課、第一師団の歩兵小隊の両者とも、公安と防諜二課に向けて横やりを入れ、それが失敗している。

完全なるマイナス点だ。

十師族の「お願い」「圧力」の悪い側面がもろに出てしまった。日本国内による情報部同士の内ゲバ。

一歩間違えれば、魔法科高校の生徒の死傷の可能性もあった。

 

情報部と陸軍の反十師族がその点を多いに取り上げた。軍の各部署にいる十師族と強いパイプを持つ人間は大忙しだ。

風間も連日、十師族からの今後の軍の対応や見通しについてひっきりなしに連絡が来る。

「そのようだ。それとはあまり関係ないが、十師族関係が来年時に一校に入学するようだ。裏から警備強化しておきたい」

「校長はなんて」

「一度顔を見せろ、と。まあ文句というより正体を知りたいんだろうな」

昨年の入学時点で「入学試験に合格するなら潜入軍人を引き受ける」とかつての情報部、大島少将と百山校長の密約があった。

合格したのが関重蔵だが、「誰が潜入軍人か」は明かされていない。

今後の警備体制を考えれば校長としては正体を知りたいところなのだろう。

 

一校の野外訓練場で長い長いパラサイト事件は終息した。

スターズは混乱の中、撤退。リーダー格も深雪の魔法展開の余波で一校勢が動けないタイミングで離脱。

その後防諜二課と公安が到着し、事の顛末を報告。

司波深雪の行ったことについては光夜の「全てこちらで処理をした。あとはそちらに任せたい」と言って押し通した。

報告書には「四葉光夜氏の魔法にて【パラサイト】消滅。※魔法については四葉の秘匿魔法」と一文が載ることになった。

 

関重蔵はすぐに入院。吉田一門から霊子調査をされたが、多少の減少を見ただけで即座に退院、報告書地獄へ突入した。

 

どこも得をしない非常に消化不良な終わり方だった。

防諜二課もその後のUSNAエージェントの動きを注視したが何も起きなかった。

公安は被疑者死亡で処理をした。パラサイトに死亡があるのか、関係者皆が苦笑いをした。

だが関はそれでいいと思っている。

(一人勝ちは妬みが生まれる)

痛み分けで十分と関は考える。

何が益があるのか、何が無益なのか。

それを知る代償が人の命は割に合わない。

 

(痛みが俺一人で済むなら大した問題じゃない)

 

 

「見送りか」

「一応な」

空港のエントランスで、タツヤ・クドウ・シールズは驚きもしない。

「お洒落な殺し屋」といっても通用しそうな四葉光夜の姿を見てもタツヤは微笑むだけだ。

 

グレートボム使用者調査の任務半ばで帰国となった。学生として潜入するタイムリミットだ。

一応「四葉光夜」を暫定的なグレートボム使用者と見定めて報告した。

司波達也に関しては情報体次元の観測能力を有し、準軍事的立場の可能性を論じるにとどまった。

ネームバリューと証拠の面からタツヤは妥協してその様に報告した。

 

脱走兵の処理だけでも完遂したのが気休めだ。

 

光夜は紺のダブルのスリーピーススーツ。黒のコート、そしてシャツは白。光沢のある細身のネクタイ。紫のポケットチーフが胸もとで輝き、フォーマルに見える配色が一気にカジュアルでお洒落に見える。お決まりな組み合わせだが四葉光夜が着ると一気にモードのセンスが溢れる逸品のスーツになる。

 

タツヤもチャコールグレーのシングルの細身のスーツ。よく見る格子柄が入っている。襟幅も薄く、カジュアルではなくフォーマルな雰囲気のスーツだ。ブルーストライプのシャツ。薄茶のネクタイは見方によってはゴールドにも見える。その組み合わせはフォーマル系スーツの堅苦しさを感じさせない。お洒落の遊びは手元のカフスボタン。ネクタイの色に合わせた天然素材の高級品だ。

 

光夜が「お洒落な殺し屋」なら「ラグジュアリーなヒットマン」がタツヤだった。

 

「時間がまだある。コーヒーでも」

「ああ」

タツヤの誘いで光夜はVIPラウンジにある喫茶室に向かった。

 

二人が遮音スペースに座ると周辺の席から人が移動した。

堅気同士には見えない迫力で敬遠しているのだ。

 

「見事なギターだったな」

「人を褒めるタイプとは思わなかった」

タツヤが肩をすくめておどけて見せる。

「口数の問題だ」

卒業式の後、三年生の祝宴に在校生からバンドのプレゼントがあった。

そこでタツヤは見事なギターを披露した。

アラタが「ジョニー・B.グッドとか、あいつバックトゥザフューチャー観てたな」と漏らしたのを光夜は聞いた。

アラタもタツヤも前世は年上だと光夜は思った。光夜はバックトゥザフューチャーの名前は知っていたが昔の映画で見ていなかった。

 

沈黙があった。それは気まずいというより、沈黙を置くことでお互いのテンポを合わせるような間だった。

 

「お前は司波達也が嫌いか」

 

「その質問を待っていた気がするよ」

「そうか」

屈託のない笑顔を光夜に見せるタツヤ。

この質問にタツヤの心の硬直はほぐれた。

(俺は日本に来てこの質問を転生者から聞かれたかったんだな)

誰にも言えない鬱屈。転生者としての悩み。敵、味方、誰に言っていいのか見当もつかない。

光夜は、タツヤに正しい質問をした。心のどこかにあった塊が氷解した。

 

「両親を知らず孤児院暮らしで食事もとれず虐待されて育った人間と、両親を知り感情を奪われ食事を与えられ厳しい訓練に明け暮れた人間。どっちが幸せだと思う?」

「・・・」

光夜の無言は話を促すためとタツヤは理解した。

「当事者から見れば自分の方が地獄だと思うだろうな。八つ当たりだ。似たような顔で同じ名前。俺から見ればあいつはまともな世界にいると思っている」

自分の怒りと哀しみを、全く関係ない他人にぶつけていることを自覚している口調だ。

光夜はその言葉に返すには自分のことを話そうと思った。

 

「俺は8歳で母と離されて、10歳の時に人を殺した。訓練漬けの日々だ。母の死に目には会えなかった。母の墓は四葉の墓ではなく使用人たちの墓の脇にひっそりある」

「そうか」

タツヤはそう答え、コーヒーを口にする。

(この男も楽な人生ではない。俺には俺の怒りが、光夜には光夜の怒りか)

「四葉真夜は俺が殺す」

その言葉にタツヤは動揺しなかった。

自分が司波達也を敵と見定めるなら、この男は四葉の当主が敵なのだろう。

「好きにしろ。司波達也を俺に近づけるなよ。あいつがどう思っているか知らないが、俺はあいつが嫌いだ」

「八つ当たりか」

「ああ」

タツヤは軽く微笑みコーヒーに口をつける。

光夜はタツヤ・クドウ・シールズが理性的な人物だと改めて思った。自分の感情をしっかり把握している。八つ当たりだとわかった上で、達也を嫌っている。決して意志薄弱な感情任せの人物ではない。

 

光夜も一口コーヒーを飲む。

お互いの胸の内の一端を見せた今の会話が過去のようだ。

互いが互いに、相手と心通じた気がしたからであろう。

過去からの怒りを話すより、別の話をしたい。そんな気分にタツヤも光夜もなった。

 

「この時代はどうも漫画やアニメのような娯楽が少ないな」

タツヤが何気なく口にする。

「USNAでもそうなのか」

「スターウォーズは馬鹿みたいに再放送する癖に、ゴジラの再放送がない。シン・ゴジラさえない」

「あれか庵野監督の」

「観たのか」

「予告だけだ。公開前にこっちだ」

「面白かったぞ。本当に良かった」

「そんなにか」

「USNAのコンテンツアーカイブにあった。日本でも探せば見つかるぞ」

「わかった」

 

そこから二人の会話は昔の話になった。光夜が「まどマギ」の話をすれば、タツヤは「艦これ」の話をする。

それはオタク知識の披露ではなく、過去のオタクだった自分たちを懐かしむような穏やかな話だった。

 

「時間だ。そうだ。光井さんに伝言を頼みたい」

タツヤがそう言いながら椅子から立ち上がる。

「なんだ」

光夜は光井ほのかが告白の練習にタツヤ・クドウ・シールズと一緒にいたという話題を思い出した。

「失恋を恐れないように。アレがダメなら俺の所へおいで、と」

(光井ほのかは、達也にフラれたらこっちのタツヤに恋をするだろうか)

そんなことを光夜は考えて微笑む。

 

「その顔で言うか」

この伝言を達也の居ないところで伝えようと光夜は思った。

「この顔で言うよ」

この伝言がきっと伝わるとタツヤは思った。

 

「じゃあな」

タツヤはそう言って背中を向けた。

「ああ」

光夜が「またな」と言わないのは二度と会うつもりがないのか、それともどこかで会うことを確信しているのか。

 




光夜のスーツのイメージは「トム・ハーディ スーツ」
タツヤのスーツのイメージは「トム・ヒドルストン スーツ」

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