うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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取り留めもなく書きました。


余話:魔法科高校第二校

川村エカテリーナ。通称、カチューシャ。

ロシア系の血を継ぐ少女。魔法科高校第二高校に所属。

氷の美貌と呼ばれ、人に冷たい印象を与える。しかし性格は現代の若者であり、やや我の強い少女だ。

白磁の肌に金髪、彫りの深い顔立ちは16歳とは思えない。

 

魔法師としての実力は一年生としては群を抜く。

戦闘だけではなく、技術転用など多角的に魔法を理解しており10年、20年に一人の逸材と言われている。

ただ彼女の活躍は学内に限定されており、全国的には「魔法科高校女子生徒の全国No.1は一校の司波深雪」と言われている。

彼女の真価は魔法科高校における評価基準と少しずれたところにある。

 

 

生活音も鎮まった夜半。

3発目、4発目とリーナ、今は仮面をつけており「アンジー・シリウス少佐」が連続してカチューシャが保有するマンションへ攻撃を仕掛けている。建築物に張られた情報強化を無効にすべく、情報体次元での魔法攻撃だ。物理的に音もしない、魔法の発動光だけが見える魔法師同士の静かな戦いである。

 

カチューシャの魔法師としての特性は「陣地」の形成である。

彼女は自分の研究用のマンションを「陣地」として強化しており、「対物理」「対魔法」においては国家の重要施設に匹敵するほど堅牢である。情報強化に関しては、政府が高度戦略施設に認定している市ヶ谷の国防関係の施設以上だ。

対物理においても、指定外の人物の侵入関知や、番犬代わりの精霊(情報体)、爆発物や外部からの攻撃にも対応している。決して「魔術工房をビル爆破」ということにはならない。

カチューシャの前世オタク知識では対物防御をおろそかにした魔術師が無残に敗北している。

 

「いい加減にしなさいよ。リーナ~」

既に氷の美貌は沸騰している。

カチューシャは防犯カメラ越しにリーナの姿を見ている。

仮面姿だが、カチューシャの原作知識では、彼女がアンジェリーナ・クドウ・シールズなのは確実だ。

 

攻撃が始まった時には調整台にあったCADを手首に付け起動させ、彼方の空間のリーナに照準を合わせた。

リーナは突然上空に現れた魔法式から殺気を感じ、大きく跳躍した。

強力なダウンバースト。空から突風が降りて来る。

「こんなことも出来るの?!」

リーナはカチューシャの実力を評価しつつ避けた。

たった一人に対してごく狭い範囲のダウンバースト。広範囲に放つ魔法を、非常に小さい範囲に収めるのは簡単ではない。これだけでカチューシャの魔法師としての能力をリーナは理解した。

 

即時にリーナは撤退。

カチューシャは陣地の形成し直しで午前二時まで苦労した。

 

 

「ちょっとリーナ!」

廊下で背中越しにキツめに声を掛けられ、一瞬肩を震わせリーナは歩き出す。

「ちょっとリーナ!聞いてるの!リーナ!コスプレ女!」

カチューシャは廊下を速足で歩くリーナの後ろをぴったりついていた。

昨日のことを根に持っているカチューシャは文句の一つも言おうと思い、朝の廊下でリーナを見つけ突撃した。

 

人の居ない廊下の角まで来るとリーナは振り返った。

「大きな声を出さないで。聞こえているわ」

落ち着かせるよな声を出すがカチューシャはお構いなしにリーナの鼻をつまんだ。

「あなたね~、昨日のマンション襲撃しておいて何偉そうにしてるのよ」

カチューシャの口元は笑っているが、目と声が笑っていない。

彼女の美貌と相まって恐ろしい迫力だ。

普段であれば鼻をつまんだ手を振り払うが、あまりの迫力でリーナも動くに動けない。

(あれ、まずかった・・・よね)

流石に街中での実力行使は問題だったと今更ながらに反省する。

街灯のサイオンセンサーは無効化されているので公的な証拠は残っていないはずだ。

 

「あなたでしょ。わかっているのよ。うちのマンションは特製だから録画もあるし、サイオンセンサーのデータもサルベージ済みよ」

(怒った表情でも綺麗ね)と現実逃避をするリーナ。

実際、カチューシャは美しかった。

 

リーナも美少女だ。金髪が良く似合う、天真爛漫さとちょっとした憂いを持つ美貌。引き締まった身体は同世代の少女から確実に羨望の眼差しで見られている。

リーナが太陽のような金髪なら、月のような繊細で神秘的な金髪美少女がカチューシャだ。

二人が並ぶと太陽と月の女神が並んでいるようにも見える。

 

が、月の女神は怒っている。

「別にあなたを脅そうってわけじゃないのよ。ただね、私あの後色々後片付けで眠れたの午前3時なのよね」

7時に起床とするなら4時間眠れている.。育ち盛りの肉体に当てはめると少々寝不足だ。

脅すつもりはない、と言っているが声音は怒りの色だ。

「そ、そうね。寝不足はお肌によくないわね」

「次やったら、コスプレ姿を学校でばらすからね」

釘を刺されたリーナは直接行動ではなく、別の方法でカチューシャの「グレートボム使用者疑惑」の調査をしようと思った。

リーナは月の女神は怒らすと怖い、と肝に銘じたのである。

 

 

「いいから、この着物を着なさい!」

 

京都、清水寺へ続く坂。そこは130年以上続く一大観光地である。

現在のように海外旅行が難しくない頃は国内外から多くの観光客が訪れるが、現在では大勢の国内旅行者と時折見かける海外からの旅行客だ。

日曜日。リーナはカチューシャを尾行した。

カチューシャは朝に西ノ宮から外出し、9時になる頃にはこの清水寺の茶屋に到着し、いつの間にか着物姿になってお客の呼び込みをしている。

赤をメインにした着物に彼女の金髪は良く映える。正午まで、カチューシャを監視していたリーナだが、ふと目を離したときにカチューシャが後ろに回っており、大きな声で先ほどのセリフを言われた。

「あなたね!人のバイト先まで来て、暇なら手伝いなさい」

そう言ってカチューシャは青メインの着物をリーナに着せ、茶屋の呼び込みを手伝わせた。

 

「いらっしゃいませ~」

「そんな蚊の鳴くような声を出さない。恥ずかしがらない!」

カチューシャの指導は厳しい。観光客の呼び込みから、お茶出し、お礼と事細かに指示してくる。

「はい」

人波が途切れた時に茶屋の奥で一息ついていたリーナにカチューシャが出したのはよく冷えたお茶だ。

器に触るだけで、その冷え加減がわかる。声を出し、接客で疲れた体に対しては甘美な欲望を煮えたぎらせる。

「ありがとう」

リーナはそう言って、一気に飲んだ。

 

美味しい。喉に冷えた日本茶の味が染みわたる。

やや渋みがあるが煮だし過ぎた紅茶の渋みとは全く違う。

「あなたね、尾行するなら先に言いなさいよ」

怒るというより呆れるといった口調。

カチューシャは冷茶のお変わりを出しながらそう言った。

 

 

川村エカテリーナは中学一年生の頃から資産運用を始めた。

実力と幸運と博打の才能が十二分に発揮された。

中学三年生になる頃には標準的な市の年間予算に匹敵する金額を稼いでいた。

 

彼女はその莫大な資産を使い、第九研究所からの見返りの無さに怒りを持つ伝統派から離れた「伝統派崩れ」やフリーの術者、特殊な法術により「外法師」「外道使い」など、古式主流派から嫌われ力の使う場を持たない古式魔法師、能力者を取りまとめ、「社団法人 西日本民間魔法師連絡会」の立ち上げに関与した。

 

中学二年生の時に京都で野良魔法師の決闘に巻き込まれたことから、清水寺近くの茶屋を営む古式の重鎮であり、かつては伝統派の中核の一人であり、現在京都の結界運用を行う老人と懇意になった。

その時に老人から聞かされた古式魔法師の現状が彼女の発想の元だ。

 

カチューシャの基本思考として「人間、経済的に安定していれば文句を言わない」がある。

彼女は伝統派や一部古式の魔法師たちが、旧第九研究所や現代魔法に文句を言っているのは技術面に関する憤りというより、「技術向上によってもたらされる事業の拡大と経済的安定」が反故にされた、または「現代魔法だけが経済的恩恵を受けている」ことに不満があるからと思っている。

 

一面的な捉え方ではあるが、正解でもあった。

そして彼女は「経済的不満」の解消方法を実行したのだ。

 

日本には多くの寺社仏閣名刹古刹がある。そのすべてが魔法に詳しいわけではない。

もっと言えば霊験あらたかな土地を管理している檀家や住職は一般人が多い。そこに「パワースポット」や「サイオンの活性地」として不埒な輩が違法に立ち入ろうとする。

魔法的に防御する専門家を行政に求めてもなかなか腰が重い。

そこに民間の、特に「古式」の専門家を紹介してくれる機関があれば問い合わせが来る。

その紹介する機関こそが連絡会なのだ。

 

需要と供給を結ぶ場を作ったのだ。

魔法の民間利用として寺社仏閣だけではない、建設会社や漁業、林業とその利用範囲は想像以上であった。

大成功だった。

 

西日本の民間魔法師で「西日本民間魔法師連絡会」を知らぬ者はいないし、隔意を持つものなど存在しない。

「茶屋の金髪のお嬢さん」の頼みならば即日100人からの古式魔法師が動くだろう。

表向きは茶屋の老人やそれなりの年齢の人間が代表理事として動くが、資金面ではまだまだカチューシャが必要とされている。最年少理事としてカチューシャは名前を残している。

彼女は2年も満たない間に西日本の顔役になったのだ。

 

カチューシャは「お金があれば文句も出ない」と言うが大国で魔法師研究の最前線にいた知識と経験を使えず魔法と関係ない仕事についていた父と、古式魔法の活躍の場を見出せぬ人たちを重ね合わせたのは本人も自覚している。

 

 

「う~、好きな人くらいいますよ~だ」

すでにリーナはベロベロだ。

再来週には日本を立つリーナを、カチューシャがマンションに呼んで食事会をした結果がこれだ。

日本酒を御猪口で一杯だけ飲んでこれほど酔うとはカチューシャも想像できなかった。

カチューシャはお酒に強い。

アルコール度75%のウォッカを1瓶空けても特に問題のない酒豪だ。

「誰よ。その好きな人」

特に興味はなかったが酔っ払いの相手の時は適当に相槌を打っておくと楽なのをカチューシャは知っている。

「おにいちゃん (/ω\)キャハ」

カチューシャは一瞬、恥ずかしさに顔を隠す顔文字が見えた気がした。

「あなた近親相姦願望でもあるの?」

「タツヤは養子だから結婚できます~」

「タツヤ?」

「うん、タツヤ・クドウ・シールズ。カッコいいのよ。クールで実力があって、笑うとね・・・可愛いの」

リーナの顔が赤いのは酔いだけではないのだろう。

情報端末を操作すると、リーナはタツヤの写真をカチューシャに見せた。

(ちょっと!こいつ爆弾じゃない!?カナデ大丈夫かしら)

カチューシャの知る司波達也と同じ顔だ。

きっと何かが起きるのだろう。そして、このタツヤには何かがあるのだろう。

カチューシャは直感的にそう思った。

 

 

「は~」

春休み最終日。明日からは2年生だ。

カチューシャは春休みに起きた南の島での事件・・・星を呼ぶ少女たちと司波達也たちの事件に巻き込まれて苦労した。

リーナと面識がない一校面々の間に入り、いろいろ交渉に奔走した。

深雪に「あなたはUSNA側なのですか」と冷たい表情で聞かれた時は「あんたね、話聞きなさいよ!」と怒鳴りつけたりと綱渡りな数日間だった。

 

千葉エリカには「美人の割りには子供っぽい」と言われたので「美人の割には性格悪そうね」と返しておいた。

「まあまあ」と宥める吉田幹比古は苦労性だとカチューシャは思った。

 

北山雫の別荘のお風呂で柴田美月の胸にタッチできたのは楽しかった。

標準的なサイズのカチューシャにしてみればあの爆乳は未知の体験だった。

男がおっぱいで癒されるのもよくわかる、とカチューシャも思ったし顔をうずめたら癒された。

 

美少年の九島光宣をもうすぐ見れるのが楽しみだが、それ以上に今年の九校戦や論文コンペでは自分こそが全国一の魔法少女であることを知らしめるつもりだ。

 

文句は多いが、川村エカテリーナはこの世界を満喫している。








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