うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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【女王陛下の完璧】【中条あずさの騎士】【大魔王】【雷帝】【戦略魔法師候補】【横浜の悪夢】

校舎から出て、黒城兵介はひと伸びして体をほぐす。

彼は明日からの部活勧誘期間に向けての打合せに出席していた。

クロスフィールド部のエースとして、また副部長として兵介には学校から期待がある。

ただ、こういった打ち合わせに出て一時間と座っているより体を動かす方が性に合っている。

 

既に夕刻となり今日はトレーニングは無しだ。いや家に帰ってからウェイトトレーニングをしてから食事だ。

そう思いながら校舎を出る。

校門までの道には勧誘用のテントが並んでいる。生徒たちの飾りつけも追い込みだ。

クロスフィールド部は人数にモノを言わせ午前中には終わらせたので、明日7時に登校すればいい状態だ。

「兵介、またな」「黒城くん、ばいばい」と多くの生徒が声を掛けてくる。

 

兵介は人気者だ。恵まれた体躯に、一流の魔法師としての才能、魔法だけではない教養。

天は二物、三物を与えていた。

人柄も明るく、簡単に怒るタイプではない。笑顔にも嫌味は無い。ちょっと脳筋気味ではあるが三校生にしては標準だ。

「じゃあね~」

周りに声を掛けながら校門へ目指す兵介。だが校門まで5mと言ったところで、一つの人影が校門の脇から現れ、道を遮るように立ちはだかる。

 

上背は、190cmに迫る兵介よりやや小さい。それでも高校生の平均に比べ高い方だ。肩幅、胴回りも同じ三校の制服の上からでもわかる鍛えようだ。

兵介も90kg近い筋肉の塊だが、それと比較しても見劣りはしない。

一番異質なのは肩にかついだ、やや湾曲した棒。刀状のCADだ。

長い。

兵介の知る刀型CADは大体70cm前後だ。だが目の前の生徒がかついでいるのは1mはある。

刀の反りもややきつい。俗に言う「太刀」だ。

「黒城先輩だよな」

先輩とつけながら無礼な口ぶりだが、あまり嫌な感じはしない。

整った容貌。三校の制服でなければモデルと言っても通じるだろう。

だが目つきは違った。まるで虎である。それも負け知らずで好戦的な虎だ。

「なんだ?」

兵介は要件を端的に聞き返しつつ、今の装備を確認する。

ブレスレットタイプのCADが左腕に一つ。

ブレザーの右ポケットにはナックルダスター、通称「メリケンサック」が一つ入っている。

「尚武の気風は、勝負の気風」と周辺の一般高校に言われるように、腕に自信のある学生が時折三校生に喧嘩を仕掛けてくることがある。

入学してからの一年間で兵介が買った喧嘩は5件。

昨年のNo.1だ。

 

兵介は腕には自信があったし、他の生徒が標的にならないなら別にそれでよかった。

素手の一対一もあれば、複数に囲まれたこともあった。

一番ひどいのは10人からの人数で鉄パイプを装備し、三校に入れなかった魔法を使う高校生が含まれた集団だ。

そのすべてを兵介は叩きのめしてきた。

魔法は使わなかったが、一応護身用にメリケンサックは持っていた。

 

既に周辺の高校で三校に喧嘩を仕掛ける奴はいないし、兵介の前で悪ぶる学生は皆無だ。

だが目の前の男子学生は別だ。同じ三校生。

佇まいから兵介は勝負希望だと感じた。

「先輩、一勝負したいんだが」

「いいとも」

そう言って兵介は視線で移動することを促した。

いくら三校が「尚武の気風」だからと言っても喧嘩を認める教育機関ではない。

校門から移動したのは、校舎裏だ。

 

「自己紹介くらいしろよ」

校舎裏の人目のつかないところまで来て、お互い6mで正対する。

兵介に笑顔で促され、三校の生徒が答える。

「おっと、言ってなかったな。鬼一法楽。一年だ。よろしく」

これからバスケの1on1で汗を流そうか、という気軽さだ。

兵介はこの気軽さが嫌いになれない。

この一年生は無傷で勝つつもりがないのだろう、と兵介は感じていた。

つまりは傷つく覚悟があるからこその、気軽い口調なのだろうと。

戦う覚悟と意志のある口調だ。

 

「じゃあ、やるか。魔法なしでいいか?」

兵介は右手にメリケンサックをはめる。

法楽はCADをかついだまま、大きく右足を前に開き低く構える。

「おうよ!黒城先輩、あんたを誘って正解だぜ!話が通じやすい」

「褒めるなよ」

その返事が勝負開始の合図だった。

 

 

「失礼します・・・」

声を抑えて生徒会室に入室したのは七海奈波であった。

入試の実技で七宝琢磨に次いで2位の成績を叩きだした女生徒だ。

ただ筆記が振るわず、総合順位では何とか20位内といったところだったが。

 

中条あずさはそんな情報を思い出しながらも、この状況の打破になるのではと期待していた。

生徒会室は今にも戦闘が始まりそうな空気だ。

 

生徒会の通例として入試一位の新入生総代を生徒会に勧誘したのだ。

七宝琢磨。

二十八師補家の七宝家長男。

総合一位で入学。

総合二位、三位は七草の双子だ。

ただ昨年のような、四葉司波司波司波藤林による上位独占ほどインパクトはなかった。特に二科生でありながら筆記同点一位の司波達也のインパクトには負ける。

 

癖ッ毛なのかパーマなのかややウェービーな髪に、すっと伸びた背筋。美男子にぎりぎり分類される容貌。

中条あずさとしては、彼の生徒会入りで全国の規範となる一校の学生自治が維持されると期待していた。

だが、七宝は「自己研鑽」を理由に生徒会入りではなく部活を中心とした学生生活を希望し、生徒会勧誘を断った。

 

会計の五十里啓も残念そうに「ダメかな」と聞き返した。

「学校自治に生徒会が必要不可欠なのは承知していますが、自分は自己研鑽のため一校に入学しました。生徒会活動のために大事な時間を割くつもりはありません」

七宝はそう答えた。目つきの険しさから睨むようにも見える。

やや居丈高な物言いだが、中条も五十里も困り顔をするだけだった。

両名ともはっきりと意志表示されると強くは引き止められない性格だ。

だが、生徒会室にいるこの男は違った。

「断るのか」

【女王陛下の完璧】【中条あずさの騎士】【大魔王】【雷帝】【戦略魔法師候補】【横浜の悪夢】【服部会頭の胃痛】

四葉光夜は、その恐ろしい美声で七宝の言葉をたった一言で非難した。

非難というより断罪だ。

『生徒会の職責を軽視した罪、つまりは生徒会長中条あずさを軽視した罪』

 

だが、七宝はこの光夜の声に屈指なかった。背中では嫌な汗をかきながら反撃したのだ。

「先ほど申し上げたように、自分を磨くために一校来ました。四葉先輩も昨年は生徒会入りを断ったと」

七宝はやや敵対的な眼で光夜を見ている。明確に睨んでいる。

「お前の話をしている」

光夜は自分を棚上げにした。声に怒気が混ざる。

空気が重い。二人の睨み合いが続く。

「失礼します・・・」

 

七海奈波がノックをして返事を待たずに扉を開けると、そこでは見慣れた親戚の少年と美貌の少年がにらみ合っていた。

片方はいつも見ている七宝琢磨だ。もう片方は、長身の黒髪、イケメンとかカッコいいといったレベルを超えているように奈波は思った。

「どうかしましたか」

中条あずさは場の空気を出来るだけ和ますように、優しく奈波に声を掛ける

奈波はそそくさと生徒会室に入ると七宝琢磨に近づく。

「七宝琢磨の従妹の七海奈波です。今日七宝の家族と会食があるので、この馬鹿を呼びに来ました」

気の強い性格の奈波も、さすがに学内自治の柱である生徒会執行部の前では少し大人しい。

七宝琢磨を馬鹿呼ばわりは中学一年生の時から。

琢磨が「新秩序!」と言い出し、当主であり父親の七宝拓巳に反発し始めたのも中学一年の頃からだ。

「あんたね!反抗期?!」と怒鳴りつけて「うるさい貧乳!」と返されたとき、即座にラリアットをしたことを奈波は覚えている。

今となっては、ラリアットではなく躊躇なくグーパンチしておけばよかったと思っている。

 

奈波は琢磨の袖を引っ張る。

「なにやってんのよ」

「生徒会入りを断った。どうやら四葉先輩は気に食わないらしい」

光夜から視線を外さず、琢磨が答える。すでに背中の冷汗は止まっている。光夜の視線に慣れたからではなく、危険関知の神経がマヒしつつあるからだ。

奈波は琢磨の横顔と、目の前にいる美貌の少年を見比べる。

彼女の趣味としてはもう少しワイルド系が好きだが、琢磨の言い分と怒り顔でさえ色っぽい長身の少年を比べると、後者に勝利の旗を挙げた。こんなイケメンに琢磨のお守りをさせるのは申し訳ない。そんな心境になった。

「こんな奴、生徒会入れなくていいですよ~。七草真由美さんを勝手に敵視してるから生徒会も同一に考えてるんですよ」

突然の奈波の言葉に琢磨は光夜から視線を外し、顔を奈波に向ける。

「奈波!何を!」

「だってあんた、新秩序?とか七草は裏切り者とか言ってるじゃない!」

「あー!あー!ここでそれを言うな!」

「なによ、腕引っ張んないでよ!変態!エッチ!スケベ!馬鹿!」

「ぐぬぬぬぬ」

「ぐぬぬぬぬじゃないわよ!馬鹿!ほら行くわよ」

琢磨のふくらはぎに、思いのほか鋭いローキックを見舞い、奈波は琢磨の襟首をつかんで退室する。

「失礼しました~」

 

「中条さん。新入生次席の七草泉美さんに声かけてみようか」

「ええ、そうしましょう」

ちょっとした姉弟喧嘩にあっけにとられる中条と五十里に、七宝琢磨の不遜な態度に不満顔の光夜だけが生徒会室に残った。

 

 

魔法科高校第一校の最強はだれか?

三巨頭は卒業し、新たな学内最強議論が持ち上がる。

 

まずは四葉光夜だ。九校戦、コンバットシューティング、横浜事件。その実力を示す例は枚挙がない。

次に司波深雪。九校戦における氷炎地獄のインパクトは同年代の魔法師たちの度肝を抜いた。横浜事件での活躍など出色だ。

最速=最強とし、学内最速である司波雪光を推す話もある。最速だからこそ最強。そして学内でも上位の魔法力も最強候補に挙がる理由だ。

 

現三年生にも最強候補がいる。服部刑部はその筆頭だ。多種多様な魔法を高度に展開する。ジェネラルの渾名は伊達ではない。

格闘戦に限れば、沢木碧と桐原武明の両名も最強候補だ。白兵戦ならその体術の練度がモノを言う。殺傷能力の高さと横浜での奮闘も理由だ。

一科生に移った吉田幹比古の実力も侮れない、人によっては最強と推す。古式という特殊な魔法を使い、直接戦闘以外にも戦場コントロールが可能な魔法も多く、古式ならではの「裏技」を持っているのではと噂される。

 

単純な火力で言えば、三年生で風紀委員長の職にある千代田花音こそ学内最強であるという説もある。千代田家が魔法師界で勇名をはせる「地雷」は、学生の身であっても千代田花音最強説の要因だ。

 

普段では最強議論に名前が上がらないが、現在の二科生は特別だ。

硬化魔法と肉弾戦を得意とする西城レオンハルト。硬化魔法が他の最強候補の攻撃を防げるかどうかによって、最強候補の一角に昇る可能性がある。

白兵戦では壬生紗耶香も外せない。壬生は桐原の恋人ということもあり、コンビネーションでの戦闘が可能なら相当なものだろうと噂される。

剣の魔法師と言えば千葉だ。千葉エリカの剣閃の凄さは横浜事件で証明されている。千葉エリカも秘伝の剣を解禁すれば最強になるのでは?と唱える者もいる。

 

そして二科生最強と目されるのが司波達也だ。模擬戦で服部から勝利をもぎ取り、九校戦であの一条将輝を正面から倒した実力。横浜騒乱でも七草前会長の遊撃隊に混じって行動したといわれる。実技下手の偏った能力だが、偏っているからこそ実戦では最強なのでは?と考えられる。

 

三年生の三七上ケリーや中条あずさ、二年生の北山雫、明智英美、十三束鋼も最強議論で名前があがる。

 

そして、その最強議論に挑むものがいる。

数日前に入学した緋村武心である。

 

 

「君、学内へのCADの持ち込みは許可されてる?」

新入生勧誘週間初日。武心は武道系の部活を見ようと体育館に向かう途中、女生徒に声を掛けられた。

左腕には腕章。制服のレースの色から判断すると二年生の風紀委員だ。

黒髪の涼し気な目元。綺麗でもあり色っぽくもある。歳もそう変わらないのに「大人の美女」と武心は感じた。

「その手にしているのは武装型CAD?」

咎めるような叱るような口調ではない。一年生の武心を下に見る感じではない。

少し興味があるような、なんとも答えたくなるような声音だ。

手にした細長い袋、竹刀袋を持ち上げ、袋の口を緩めて木刀の柄部分を見せる。

「これは単なる木刀ですよ。先輩」

美女の眼を見ながら微笑んで見せる。武心は女性が好きだ。そして目の前にはとびっきりの美女。

容姿で優劣付けるつもりはないが、美人を口説くチャンスを見逃す気は武心にはない。

「一年の緋村武心です。先輩は風紀の方ですか」

「二年生風紀の藤林奏よ。これから体育館に行くの?」

「はい」

「校内への木刀持ち込みについては注意させてもらうわね」

「やっぱりだめですか」

「剣道部か剣術部に入部したら、部活棟にロッカー貰えるからそこに置いて」

美女の口角が少し上がり、歯が少し見える。白く綺麗な歯だ。

微笑みもたおやかだ。見ようによっては色っぽい。

(う~ん、キスしたい!)

少し不埒なことを考え、武心は世間話を振ってみた。

「藤林先輩は風紀委員の巡回ですか?」

「ええ。そうだ、藤林じゃなくて名前のカナデで呼んでもらえる」

「はい!カナデ先輩」

「ありがとう。私も体育館に行くから、一緒に行きましょうか。そうすれば木刀について詰問されることも無いでしょうし」

 

中学や地元でもモテた武心だが、これほど相手の指示に従うのが楽しい相手もいない。

何よりも女性の下の名前を呼ぶ権利を手に入れたのは嬉しい。

武心は今にもスキップしたい衝動を抑えながらカナデと並んで歩く。

 

「風紀委員って大変ですか?」

「そうでもないわよ。藤林の名前で大体は片付くし」

「藤林って、あれですよね。九島の分家ですよね」

「そうよ。実力より別のところで有名だけど」

古式と現代魔法の橋渡しとして、現代魔法側の九島から嫁を取った家。

魔法師社交界の花、藤林響子の実家。

古式魔法の緋村家に生まれた武心でも、九島の名前の重みと魔法師界への影響は十分承知している。

十師族のまとめ役。そして古式魔法師からは羨望と敵対心。

(確かに鬱陶しい名前かも)

武心はカナデが下の名前で呼ぶことを求めた理由を何となく察した。

「そういうことで、あたしに限ってはそれ程苦労は無いわ」

自虐的というより、その名前の因果を少し楽しんでいるように余裕の微笑みをカナデは浮かべる。

カナデの内心を想像しつつも、武心は隣りにいる美少女の何とも言えない良い香りを鼻孔に感じていた。

(カナデ先輩は彼氏いるんだろうか?居ないなら、いっちょ頑張るか!)

(まあ、そのうち「関」になるから藤林とか気にならないんだけどね。「関奏」か~。ちょっと字面が簡単すぎるかな?「藤林重蔵」か。カッコいいかも)

武心の内面を砕くようなことをカナデが考えていると、体育館に到着する。

 

もうすぐ、剣道部と剣術部のデモンストレーションが始まる。

 

 

「ぼくら目立ってない!」

「そう大きな声を出さないで。挽回する方法を考えないと」

文弥と亜夜子は、家のリビングで四校で名を上げる方法を改めて考えていた。

同学年に五輪家の養子がいたのだ。

四葉真夜の指令の「四葉の関係者を匂わせつつ実力を見せつける」を実行しようとした矢先に五輪家の登場である。

実力的には黒羽の双子より、やや下の成績だがエレメンツとは違う、属性付与の技術は学内でも噂で持ち切りだ。

 

「「これじゃ、達也さんに胸を張って会えない!」」

二人の思いは指令以上に達也に自分たちの優秀さを見てもらい褒めてもらうことだった。








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