うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu

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その女子は俺の彼女なんだ

制裁試合の下準備だ。

七宝琢磨には「野良の実力者」で、緋村武心には「武道系の実力者」だ。

 

「いや。緋村とは勝負しないわよ」

不機嫌な声で返答してくるのは千葉エリカだ。こういうヤツだった。

自分から首突っ込むのは好きだけど、生徒会とかの組織からの依頼は嫌がる反発気質だった。

「頼むよ。腕の立つ奴となるとやっぱりエリカなんだよ」

「褒めたって駄目。緋村の飛天流とは勝負しないように道場で言われてるの」

「そりゃ初めて聞いた。何か理由があるのか?」

「詳しくは知らない。どうも千刃流創設の時の絡みだと思うわ」

不機嫌なまま答えてくれた。

う~む、エリカはダメ。

緋村のあの殺気だとレオあたりだとまずい。幹比古にも断られた。「古式の家とは争いたくない」だそうだ。

つまり、緋村には俺が相手するしかないのだろうか。

 

七宝の件は十三束が受けてくれた。「先輩として教えないと」と固い決意の表情だ。体育会系である。

交換条件で司波達也との模擬戦をリクエストされた。

こっちについてはすでに、根回し済みだ。司波達也も受けてくれた。

カナデが七宝に模擬戦受諾させた手管は見事だった。

ハニトラが効いた、と思う。すまんな、七宝。その女子は俺の彼女なんだ。

 

難航しているのは緋村の方だ。

雪光はこのところシャキッとしていない。失恋から立ち直る寸前に七草香澄の追撃でぼろぼろだ。

最近は、上級生の女子とばかり昼食を取っている。ダメだ。ダメダメ男子に傾いてるぞ。

須田ちゃんが「雪光くんを助ける方法は新しい恋を見つけるしか・・・ない」と映画に出てくる地球を救う科学者みたいな顔して言っていたのが感慨深い。ちなみにZ級映画で「アルマゲドン2066」と「ディープインパクト2035」は確認した。

そんな状態の雪光と緋村だと、雪光が負ける可能性がある。

やっぱり俺が相手するしかないのだろうか。

 

模擬戦したくない!

 

模擬戦をすると今度は確実に俺の実力は学内に知れ渡る。

何度も言うが俺は潜入軍人で目立ちたくない。俺の実力を知っているのは最低限にしておきたい。

悩みどころだ。

 

 

「というわけで、どうしたもんですかね」

「面白いことになっているね」

意地悪な笑い顔だ。夜更けの九重寺。

情報交換という名の飲み会をするため九重八雲を訪ねた。

俺はウィスキー、九重さんは麦焼酎という名の般若湯。

 

春先の夜はやや寒いがアルコールが入れば大丈夫。

お堂の扉を開け、外の木々の若若しさを肴に飲む。ジジイ呑みである。

 

「武心くんが一校に行くとはね。てっきり三校あたりかと思ったけど」

「面識あるんですか?」

驚くことはない。九重八雲だ。裏の、特に非正規の魔法師についての情報網はびっくりどっきり坊主。

細目の奴は大体三木眞一郎。いやこの人の声は置鮎さんか。つまりは出来る男、九重八雲である。

いやほんと置鮎さんそっくりだわ、この人の声。

 

「少しね。武道の腕は達也君と同程度かな。ただ気性がね。幼いというか純粋というか」

「なんかけしかけてません?」

俺は困ったような、少し責めるような顔をした。これは本心でもある。

「はっはっは、発破をかけはするけどけしかけるなんて、とてもとても」

 

模擬戦するにも問題は緋村の剣の腕だ。司波達也に匹敵する白兵戦能力ならレオや幹比古、モーリー辺りは無理だ。

部活所属の面々に頼むのは本末転倒だ。やっぱり俺か。

 

 

4月26日。

 

今日の模擬戦のため3時間近く訓練室は生徒会に貸切られていた。

隣室の観戦スペースからは硝子越しに二人の戦いを観客たちが見つめている。

「くっ」

七宝は自分の敗北を噛みしめ、目の前の激戦を見逃すまいと歯を食いしばり見入っている。

十三束のアクロバティックな動き。そして司波達也の魔法がぶつかり合う。

 

司波達也対十三束鋼の勝負は司波達也勝利となった。

七宝には良いお灸になっただろうか。実力というのは派閥ではなく自己の力で手に入れるべきで、軽視していた十三束が想像以上の魔法師で、勝てないという事実。苦い薬になればいい。カナデに手を出したら、タマ潰すからな。

 

今度は俺が観戦スペースから訓練室に入る。

問題はこの試合だ。

 

相手である緋村は木刀をブンブン振り回し体をほぐしている。

俺も緋村も服装は剣道着だ。防具はお互い邪魔なのでつけない。

 

緋村はカナデを見つけて手を振っている。

あ、うちの彼女、魔性の女かも。男子高校生に効果のあるフェロモンでも出ているのか。

少なくとも昨日の晩はどこからも出ていなかった。確認済みだ。

「いや~、相馬先輩が相手か。勝ったらさ、四葉先輩とやらせてよ!」

まるで俺に勝つことが当然のように緋村は明るく言ってくる。

 

観客は限られている。

生徒会全員と、風紀からは千代田さん、七草香澄、幹比古、雪光。部活関係者では壬生&桐原のカップルに沢木さん、服部会頭だ。レオとエリカ、柴田さんも紛れ込んでいる。殆ど十文字戦の面々と同じだ。

十三束と七宝は医務室行き。

 

「じゃあ、ルールは魔法アリ。後遺症の残すような攻撃や、重症にした場合は負けでいいね」

「あ~、OKOK」

こっちも見ずに緋村は返事する視線は観客の美少女たちだ。

緋村はニコニコと手を振っている。

全員冷たい視線だ。カナデと光井さんだけ愛想笑いをしている。

 

俺も木刀を握る。握りに力が入る。

別に緋村がカナデにモーションかけているから嫉妬しているわけじゃない。

それよりも、緋村少年の実力がどの程度で、どのようにあしらおうか今も悩んでいる。

 

言いたくはないが、緋村少年が司波達也レベルの白兵戦能力なら簡単だ。

簡単なのだ。

数か月前までは、司波達也が九重さんのところの麒麟児だと俺も認めていた。

今も司波達也は強いだろう。

だが今の、パラサイト事件後の俺は一年前の俺と実力が隔絶している。

魔法なしの戦闘ならば、少なくとも一校生徒の誰にも負けないし、九重八雲にも勝てると断言する。

 

武神の加護。軍神の加護。超人的肉体。ヘルメスの加護。

俺の能力はさらに進化した。それをこの試合で見せることがあるのだろうか。

 

 

あの時、神は苦笑いしながら新しいチートを説明した。

「【戦神降臨】か【闘神降臨】好きな方で呼んで。君は・・・人の区分から少し外れた」

 


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