うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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これにて「ダブルセブン編」は一段落


何とも目の離せない少年だ

「お疲れ様です!カンパーイ!」

中条会長の音頭で、みな手に持ったグラスを掲げる。

 

司波達也常連の喫茶店「アイネブリーゼ」で打ち上げだ。

模擬戦の打ち上げではない。「常駐型重力制御魔法式熱核融合炉の公開実験」の成功を祝ってだ。

一昨日の実験の打ち上げを今日やるのも間が空いたが、昨日の模擬戦の結果いかんでは「相馬新、後輩に負ける残念会」も兼ねる予定だったらしい。俺は勝ったよ!

 

生徒会の面々と、実験の警備に尽力してくれた風紀委員会一同が貸し切りの店内にいる。

20人ちょっとくらいだ。

 

この一か月の魔法師への強い世間の風当たりは、昨日今日で一気に収まった。

この「魔法師ヘイト」では、一校に関しては卒業生の進路が国防軍へ進む卒業生が多いことがやり玉に挙がった。

若人が国防の道に進むのは戦争への第一歩!魔法師は軍属の人殺しだ!とでも言いたいのだろうか。

これだから○○○の×××は■■の▲▲▲▲なんだよ!

おっと、シビリアンコントロールだ。軍人が政治的発言はしない。

国防軍の統括は選挙によって選ばれた国会議員が行う。民主主義国家における軍隊保有の大原則だ。

 

一校としては、やり玉に挙げられたことへのカウンターパンチとして、エネルギー問題解決への足掛かりとして「常駐型重力制御魔法式熱核融合炉の公開実験」を行い、決して魔法が軍事利用のためではないとアピールしたのだ。

大成功だ。これで「魔法による民間利用のモデルケース」への道筋が少し見えた。

 

ただこれは「魔法師とそれを取り巻く業界」へのアピールにとどまった。

反魔法師の風潮に一番効果を出したのは黒城兵介だった。

 

何処かの報道局の街頭インタビューで兵介がインタビューに答えたのだ。

怪我でもしたのか、目の上に絆創膏を貼っていた。

「なぜ魔法科高校に通うのか?卒業生の進路が軍に直結している。癒着や学生の進路を狭めないか」

そんなインタビューだった。

 

兵介はあっけらかんと、佐渡侵攻で感じた恐怖とその時に家族や街を守ろうと思ったこと、そして自分の出来ることで魔法があること、魔法を生かして誰かを守ろうと思ったこと、魔法を生かすために魔法科高校を選んだこと。

時にはにかみつつ、兵介は話していく。

 

何とも目の離せない少年だ。大らかで芯が強く、そして義侠心を感じる。

インタビュアーは「魔法師の存在の危険性」の欠片でも引き出したかったのだろうか、兵介の魅力に口が出せなかった。

「だから、俺は魔法科高校に入れて嬉しい。戦争は怖いけど誰かを守れる力を鍛えられるし。それに周りだと国防軍以外にも大学進学目指す奴やエネルギー研究してる同級生もいるし、思ってるほど軍隊っぽくないですよ」

そして飛び切りの笑顔である。

 

ネットでは「イケメン魔法師」「兄貴ー!」や「魔法師へのヘイトは無理解が引き起こしている」「実は魔法産業は数兆円産業だ」etc、etc

一人のインタビューで世論は変わった。

雪光曰く「ホントは小和村を脅したりとか色々あったはずだけど、やっぱり兵介の人徳は凄いね」との話だ。

 

 

雪光とテーブルを囲み、少しだけ既知未来との乖離について話になった。

「これで、夏までは平和か?」

「そうなるんじゃないかな?七宝も反省したみたいだし」

俺はコーラ、雪光はジンジャエールだ。

「どうやらさ、兵介のところにも変わり種がいるみたいなんだよ」

向こうの方でレオとエリカ、七草香澄がギャアギャアやってうるさいから、ギリギリな話をしても目立たないだろう。

「変わり種?」

なんだ、転生者か?それとも一条将輝の婚約者でもいたか?

「うん、一年生の変わり者が魔法なしで喧嘩というか野良模擬戦を挑んできたらしいんだよ」

「へ~、でも兵介なら勝てただろう?」

あの体格に、九校戦での動きを見るに、生半可なそれこそ国防軍の一般兵士くらいなら素手で制圧できそうだ。

「引き分けらしいよ。相手の肋骨にヒビを入れたらしいけど、逆に鎖骨を骨折したって」

その兵介が引き分け。相当な相手だな。あの兵介の身体にダメージ負わせるなんて。

「三校のクロフィー部がエースにケガさせられたってキレて、相手をボコボコにしたらしいよ」

体育会系おっかねぇ~。

今の時代、骨折は比較的簡単に治る。

だがそれでも部活のエースを傷モノにされたら頭に来るだろう。

「はあ、どこの学校も大変だな」

跳ね返りの一年生はどこもトラブルを起こす。

魔法師というのは閉鎖的で、割と自信過剰なところがある。特に家伝のある家など特にだ。

モーリーのクイックドロウなども技術公開はされているが、それでも本家本元としての自負は強い。

ちなみにモーリーのCAD操作技術は凄い。拳銃型CADの抜き打ち速度だけなら、司波達也より早かった。

勉強できて、実技が出来て、実家も安定していて、熱血漢でぶっきら棒で面倒見がそこそこ良い。

魔法師としての実力もある。なぜこれでモテないんだモーリーよ。って看護師の彼女がいるからモテなくてもいいのか。

 

まあ、そんな家の中の実力で自信満々な自信過剰な奴がトラブルを起こすものだ。

胃の中のオカズ、大腸を知らず。いや井の中の蛙大海を知らずだ。

 

「僕ね、同類だと思っているんだ」

「同類?どのあたりが?」

同類、つまりは転生者だ。転生者なのか?その三校の一年生。

向こうの方で、カナデが七草泉美と光井さん&北山さんと女子トークをしている。

唇の動きを読むに「デート」「バッグの種類」と言っているので、デートにどんな鞄を使うのか?の話だろう。

ブランドバックは次の賞与くるまではお預けだ。公務員の給与は抑えられている。

「原作に居ない」

雪光が短く真剣に呟く。

「だがもうレールからずれているだろ」

俺は軽く返す。そう、もうレールから外れているのだ。既知未来知識は「参考」にしかならない。

「うん、レールからずれてるけど、元々七宝の親戚は描写がなかった。そこはレールとは関係ないところだと思わない」

「たしかに」

 

レール、つまりは「既知未来」だ。

司波達也入学から描写されるライトノベル「魔法科高校の劣等生」として切り取られる部分ではなく、過去であったり、描写されていない部分では何が起きてもおかしくない。

その証拠が俺だな。

 

カナデも、雪光も、光夜も、「魔法科高校の劣等生」の部分に近い位置に生まれてきた。

なので自然とレールに影響される。

雪光がレールでは死ぬはずだった母親の守護者を助けたのはレールから外れた行為だ。

カナデが達也と知己を得るため魔装大隊の作戦参加したのもレールから外れた行為だ。

光夜は・・・存在自体があれだからな~。ホントに四葉の継承者になりそうだ。

レールから外れる行為だが、レールを定義する「魔法科高校の劣等生」に馴染むための行為でもある。

 

だが俺は違う。生まれが違う。生まれ?生まれって血統か?地理的距離か?

いや「時間」が違うのだ。

俺が思うに転生者は血統、立場より「時間軸」で区別されるような気がする。

 

司波達也を基準値ゼロとすると、一校の二年の三人の転生者は基準値とほぼ同じ位置だ。カチューシャと兵介も同じだ。

俺はマイナス値に突入している。このマイナス値は司波達也影響力が低いということ、年下連中は影響を受けやすいのでプラス値だろう。

プラス値は影響は受けるが、それは司波達也接触後の影響であり、接触前は全くの無影響下になるのでは。

基準値に近ければ近いほど、司波達也との接触を重視するし、関係性を探ろうとする。

そんな仮説をぼんやりと考える。

 

俺は顎に手が伸びそうなのを抑えつつ、周りの雑音を聞きながら思考した。

「だからさ、緋村も七宝の親戚も、兵介のところの奴も可能性があると思うんだ」

うん。その可能性がある。

「だが達也との接触は?」

ここだ。転生者は司波達也と惹かれ合う!わけではない。

転生者のうち身近、身内ではない者は「司波達也と関わるとろくでもないことになるから、一度接触して距離感を確かめて離れよう」という思考になる。俺がそうだったし、二校の川村エカテリーナもそうに違いない。

 

だが二校の変わり者は兵介のところに行った。

一年下に入学したら、九校戦まで待たないか?

というか、昨年の九校戦をチェックして接触すべき相手とか、既知未来との差異をあぶり出そうとするか、知識と現実の知識修正を行いそうなものだ。

 

「記憶なしだったら?」

俺の表情から疑問を察したのか雪光が答えを出す。

真剣な表情は深雪副会長より、どちらかというと司波達也に似てきた。

「記憶なしか。それもありだな」

「記憶なしのチートアリ。よく見かけたよ。定番じゃない」

そうだ。定番の一つだ。前世の記憶をなくし、チートだけを得て、転生する。

無い話じゃないし、前世でいくつかそんな小説を読んだこともある。

 

「つまりは転生タグなしのオリ主か」

前世の記憶を保有しない転生者は転生者なのか?。オリジナル主人公扱いでいいよな。

「ま、原作なんてどっか行っちゃたし、もうどうでもいいよ」

雪光は足を伸ばす。タッちゃん登場辺りまでは、現実と既知未来の違いにたびたび衝撃を受けていた雪光も持論の仮説に驚く様子はない。

「達観してる~」

ジンジャエールをストローでぶくぶくする雪光。

「真由美さん可愛かったけど、もうね。もっと広い視線を持つよ」

「やさぐれてる・・・」

雪光の態度の悪さに俺もつい呟く。

暗に「原作女子とかこりごり」と言っているようなものだ。

 

ちなみに光夜は中条会長とおしゃべり!をしている。

あの光夜が、女子と、おしゃべりだ!

 

 

「あんた!カナデさんの彼氏なのか!?」

生徒会室で仕事をしていると七宝が怒鳴り込んできた。

同じ部活なので15分前までいっしょにトレーニングしていた。

今日はサーキットトレーニングをへばるまでやる、というものだ。

元気だな~。

 

「?」

いきなりの質問に首をかしげる、という返しをしてみた。理由は楽しいからだ。

「相馬さん!あんたはカナデさんの彼氏なのか!?」

生徒会室にズカズカ踏み込んでくる。両手で俺の襟をつかんで迫ってくる。

唾を飛ばすな。

顔は真っ赤だ。怒りだと思うが恋愛感情が混じると何とも読みにくい。ただ興奮して事実関係を何も考えずに確認しに来たのだ。若いっていいな。

 

「ちょっと落ち着け。七宝」

何とか、七宝の手を襟から放す、ふりだ。やろうと思えば天井まで投げられる。

「なんだいきなり」

叱るというより諭すような口調で七宝を落ち着かせようとすると、廊下の方から走り込む音が

「あんた!カナデ先輩の彼氏なのか!?」

 

ぶははっははははっはははは!!!!!!

 

今度は緋村少年が生徒会室に七宝と同じことを言いながら飛び込んできた。

顔も真っ赤。先ほどの七宝と同じだ。

内心の大爆笑を何とか抑えつつ、緋村少年の方を向く。

七宝も驚いて固まっている。同類が同じ行動をとったのだ。

気付いたか。勝手にカナデに恋していたのはお前ひとりじゃないみたいだぞ。

 

一気に室内が騒がしくなる。七宝も再起動し、緋村少年と一緒に「あんたの彼女なのか!?」「どうなんだ?!」

「正直に言え!?」「脅迫したのか?!」「許さんぞ?!」

と捲し立ててくる。

こんな風に詰め寄られて怒涛の如く騒ぎ立てられるのは慣れている。

ギャングとして潜入捜査して居る時なんて日常茶飯事だ。

 

生徒会室にいた光井さんと深雪副会長は仕事の邪魔をされて少しご立腹だ。

うるさくて仕事どころではない。

 

「七宝君、緋村君、ご用はそれだけ?」

深雪副会長はあの優しい笑顔から、優しい成分を抜き、冷酷という成分を追加している。

室内の気温が下がった。光井さんが立ち上がった温かい紅茶を入れ始める。

光井さんも深雪副会長の反応には慣れてきたようだ。

もう少し騒ぐなら、俺もまとめて三人の氷像が出来上がりになりそう。

 

「まあまあ、両名とも。カナデは見ての通り隙の多い人でね、他の男子はどうもカナデが自分に惚れていると考えがちなんだ」

二人を目の前から引き離し一歩下がる。

「俺以外には惚れていないから諦めてね」

上からモノを言う。完全な勝利宣言だ。深雪副会長と光井さんの視線がきつい。「なに色男気取ってるんだ?」と言いたげな視線だ。君ら司波達也以外には恐ろしいほど厳しいね。

 

「今のところそのとおりね」

生徒会の扉が開き、風紀委員として打ち合わせに来たカナデがそこにいた。

カナデは俺のところに近づきつつ、まずは緋村少年、次に七宝とカナデの登場に固まった二人にデコピンをする。

大昔のフランス映画にでも出てきそうな悪女ぶりだ。

深雪副会長と光井さんは、そのやり過ぎなカナデの動きに少し顔が赤い。

申し訳ないが色気の度合いで言うと、深雪副会長も光井さんもカナデには敵わない。

七草真由美が小悪魔なら、カナデは悪女だな。

 

デコピンを食らった二人は声も上げず、目に涙を溜め生徒会室から出て行った。

姿が見えなくなった瞬間に走り出す音と「うわわわ~」という青少年二人の叫びが聞こえた。

 

「やりすぎかな?」

カナデはちょっと舌先を出しおどけて見せる。

情報部の本職ハニトラ要員程ではないから安心しなさい。

俺も東EUでショタ趣味の政府職員にハニトラしたけど、相手が俺にのめり込み過ぎて「妻も国も捨てる」と言われた時は大変だった。懐かしい思い出だ。

 

当面は勉強や運動に励め青少年。

おじさんが味わえなかった学生生活を謳歌しろよ!








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