うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
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別に結納の日取りの相談ではない

状況は想像以上にぶっ飛んでいる。

 

「先生!」

目の前の男の子、いや「男の子」という表現は正しくない。

優雅、それを体現する麗しい容貌。優しくそして気品を讃える顔。美少年だ。

深雪と雪光が冬の美しさなら、秋の美しさと言っていいだろう。

九島光宣だ。

 

 

事の発端は5月の連休。

カナデの誘いで九島の本家に遊びに行った。

別に結納の日取りの相談ではない。なぜなら司波三兄弟妹と光夜も同行しているからだ。

 

カナデが親戚である光宣の入学祝に欲しいモノを聞いたところ「一校のモノリスコード新人戦の決勝選手に会いたい」というものだった。

藤林響子もそのリクエストを叶えるべく司波達也に根回しした結果、5月の連休で奈良の九島本家に一泊でお邪魔することになった。

 

藤林姉妹と司波三兄弟妹、光夜、そして俺・・・と桜井水波の総勢8人だ。

既知未来知識の権威である雪光氏いわく「桜井穂波さんの姪っ子だよ。障壁展開を得意とする魔法師でもあるんだ」らしい。

 

四葉の命令で今は司波家に同居している。

4月の実験にも参加しており一応面識がある。中々可愛らしいお嬢さんだ。娘にするならこんな娘がいい。カナデも「可愛い」と言っては抱きしめている。

 

東京からコミューターやら乗り継いで、奈良駅を通過して生駒山近くの駅で下車。

昼前に到着した九島本家は立派な豪邸だった。

 

でけー。立派。奈良の中心地から少しだけ離れた土地に建てられた豪邸だ。

だが、俺以外に驚いている人間は皆無だ。四葉の豪邸(予想)も遜色ないのだろう。

光夜はわかるが司波三兄弟妹は一般家庭設定なんだから驚けよ。ほらほら、桜井ちゃんも驚きなさい。

「凄いな~。ここって使用人さんとかも住んでるんですか?」

藤林少尉、ここでは響子さんと呼んでいるが、に質問する。

「ええ、それなりの人数が住み込んでいるわ」

司波一行を案内しながら玄関扉を開けると、玄関ホールに入る。

玄関ホールですよ。玄関ホール。一校の教室よりも広い空間が玄関ホールあつかいだ。

室内灯も、こじゃれた近代ヨーロピアン風。ランプの形を模した明かりが屋敷内に点々とある。

良い趣味してるな~。

 

目視範囲内の装飾品の試算で・・・あ~高級車4台分くらいの予算が突っ込まれている。

いいか千葉警部よ。お前の彼女候補の実家に結納打合せの前に、ちゃんと藤林少尉の話を聞いて生活レベルを把握しておけよ。

あ、でもあいつも千葉家だからそれなりに金持っているか。

 

「ようこそ」

玄関ホールの階段を上階から降りてきたのは九島烈だ。

日本魔法師界の長老、黒幕、大立者。世界最高かつ最巧の魔法師であり、十師族のまとめ役。

細身の老人だが背筋は伸びており、肉体的には壮健に見える。

 

「本日は藤林奏嬢のお誘いで参りました。一晩邸内を騒がしくするかと思いますが、若輩ばかりですのでご寛容いただければ幸いでございます」

代表して光夜が滑らかに挨拶をする。こういう時に美声イケメンがいると楽だ。

「固くならずに。今日明日は十師族というより、孫娘の同級生として振る舞ってくれるかね」

優しく微笑みながら肩の力を抜くように手を振るいジェスチャーする九島の爺様。

「ありがとうございます」

九島じいさんの言葉に深雪は礼を返した。

 

それぞれが自己紹介を一言。

「カナデさんと同級生の司波達也です」

「弟の雪光です」

「妹の深雪です」

「司波の従妹の桜井水波です」

「同じクラスにおります四葉光夜です」

「カナデさんとお付」

「よく来たね。外出するので、あらためて夕食の時にでも」

俺が名前を言おうとした瞬間、言葉をかぶせてきやがった。ジジイめ。

 

「おじい様、光宣は自室におりますか?」

「ああ、荷物を置いたら顔を見せてあげなさい」

藤林少尉が件の光宣君の所在を確認する。

九島の爺様の言葉を合図に使用人さんたちが隣室から登場し、俺たちの荷物を預かり客室へと運んでいく。

 

「光宣、いる?」

藤林少尉を先頭に屋敷を進むと廊下の装飾品も少し変わった。減ったのだ。玄関ホールを中心にゲストの眼に触れるところには

画や花瓶のような装飾品があったが、居住区域と思われる奥まで来ると装飾品も減ってくる。

客の目が降れるところは威厳を、逆に居住範囲は質素に。質実剛健って奴かね。

でも廊下にポツンと飾ってある花瓶は古伊万里の大物だから、割ると半年分くらい俺の給料が吹っ飛ぶ。

 

ドアをノックすると、光宣の声がする。

「どうぞ」

少尉がドアを開けるとそこには絶句するほどの美少年がいた。

が、ちょっと待ってくれ。俺の周りには美男美女ばかりだ。絶句するほどではない。

穏やかな顔つきの美少年だ。はいはい美少年。

 

「光宣、お客様を連れて来たわよ」

カナデに引き入れられて全員部屋に入る。

「司波達也さん!雪光さんに、四葉光夜さん!」

三人の顔を見て即座に名前が出る。相当九校戦の動画見たことが伺える。

「ほら、そんなに大きな声を出さないの」

少尉にたしなめられた。ライティングデスクに向かっていた光宣は立ち上がる。

「初めまして皆さん。九島光宣です。昨年の九校戦の活躍は動画で拝見しました」

う~ん、爽やかだ。この落ち着きを須田ちゃんあたりに20%くらい移植したい。

「この部屋だと手狭ですから談話室に行きませんか?」

この家、談話室あるの?スゲーな。

一行は光宣に連れられて談話室というか遊戯室に行った。

遊戯室と言ったのは、二間続きの部屋で、ビリヤード台とブリッジテーブルが二つある。

暖房は、うまく隠されているエアコン以外に、暖炉だ。

ぶるじょわじ~。

 

そこで、俺たちは光宣から九校戦の活躍にどれだけ感動したのか、CADの調整スタッフとして裏方で活躍した司波達也の凄さや、モノリスコード新人戦決勝での三人の活躍、深雪のセンセーショナルな登場など聞いているこっちが困るほど褒めてくる。俺については触れてこない。

「ああ、カナデ姉さんの彼氏さんですね」だってさ。

 

2時間ほど話すと、遅めの昼食。明日は光宣の案内で奈良観光になりそうだ。

夕食のことを考え、軽く昼食を済ませると先ほどの遊戯室でみんなでビリヤードとなった。

初ビリヤードの司波三兄弟妹&光夜&桜井ちゃんに9ボールのルールを教えながらプレイ。

思ったより光宣はビリヤードが上手かった。

一応、入学祝で喜ぶ光宣に水をささぬよう、俺はマイアミの地下ビリヤード(負けると死ぬとか臓器を抜かれる系)で鍛えたビリヤードの腕は見せなかった。

23歳から35歳までの無茶な任務の数々をちょっと思い出した。

 

 

夕食は美味かった。10人以上が一緒に座れる長いテーブルで奈良のジビエを堪能した。

ちなみに、俺はテーブルの一番端だ。家長である九島烈とは最も遠い。

カナデの伯父である現九島家当主は不在だった。

 

夕食後、光宣とまた遊戯室行ってでブリッジをした。まあこの辺りは学生の楽しい遊び。

食後のゲームが終わると光宣の体調が急変した。

光宣は自室に戻り体を休めた。

 

藤林少尉が司波達也を連れて光宣の部屋に向かう。

精霊の眼を使って光宣の体調不良の原因を探るのだ。

その晩、司波達也から九島光宣の体調不良の原因は想子強度とサイオン圧の問題であると説明を受けた。

体内の高圧な想子圧が体を蝕むが、想子によるダメージも想子強度による治癒でリカバリーしてしまう。

免疫力が強い人が、免疫過剰反応で体調不良を起こすが、免疫力の強さで決定的な症状まで行かない、という感じだ。

その原因は光宣の出生の秘密にある。

 

光夜や雪光の話では、九島光宣の魔法師としての実力は七草真由美や深雪に匹敵する魔法師で、もしかすると光夜に迫る魔法師かも知れない、というのだ。

体調面の不安要素が大きく、九校戦などのフィジカルを必要とされる場には今後出れないのでは?という話だ。

 

結論を言おう。俺は光宣を治せる。

 

治せてしまうのだ。

ゲストルームに集まった、司波三兄弟妹、光夜、桜井ちゃん、藤林姉妹、そして俺。

皆、暗い顔をして達也の説明を聞いていた。

ある種の不治の病だ。治癒方法は想子を強化し、サイオン圧に負けないようにするしかない。

想子の強化。最先端科学でも研究される未踏の分野だ。常識的に治癒は絶望的な話だ。

 

俺は大きく息を吐く。

既知未来を変えることに緊張しているのではない。十師族に深く関わることが怖いのだ。

「悪い。カナデと達也と少尉だけ残して席を外してくれ」

ここからは相当面倒な話だ。下手に非軍属の人間には聞かせられない。

一種の政治だ。

不思議な顔をする桜井ちゃんを筆頭に光夜、雪光も深雪も緊張した顔で部屋を出る。

雪光が「ビリヤードのところに行ってる」とだけ言った。

 

「カナデ、少尉、時間はかかるが光宣の治療は可能かもしれない」

その言葉に、三人は俺の顔を睨むように見つめる。

驚きの顔だ。

「だが、科学的な根拠のない治療法だし、何よりも立場の問題もある。実施するなら佐伯さんと九島老師との間で会談が必要だ」

言ってしまった。もうあとには引けない。だが、軍への十師族の影響を減らせる可能性がある。

「藤林少尉、事後承諾はまずい。まずは佐伯さんに提案だ」

「ですが、どうやって治療するんですか?」

真剣な顔で聞き返してくる。そりゃそうだ。

「ややオカルトめいた話だが・・・・」

 

人体の想子を強化する方法。

それは光宣と俺の想子を連結し、光宣の想子を一度俺に経由して、俺が想子を強化して、光宣に戻す。

光宣(弱い想子)→俺(想子を強化)→光宣(強化した想子)という流れだ。

 

俺は、かつてチベットでの極秘任務でヨガの行者から「他人と感覚を共有する」秘術を教わっている、という法螺話をした。この感覚共有を使えば、時間がかかるが光宣の治療は可能だ。

 

パラサイトっぽい。というかパラサイトの能力のアレンジだ。

 

藤林少尉は俺を正面から見る。判断できないのだ。

「まずは佐伯さんに相談して、マッド山中さん辺りに頼んで裏付けのため実験しよう」

俺がそう言うと藤林少尉は恐々口を開いた。

「可能性が低くても、それしかないんですね・・・」

 

この日から俺は格段に忙しくなった。

 

 

マッド山中少佐はルンルン気分で色々と実験をした。

あいつ、ガタイ良いのに医療技官なのも納得だ。こっちが引くくらいマッドだ。

 

動物実験に始まり、人体実験まで短期間に行われた。

まあ、俺も別に命を削ることをしているわけではない。せいぜいカナデとデートする時間が無いだけだが。

別にカナデはマンションに入り浸っているから無問題。

 

俺の提案方法で対象の想子の変化を確認できた。

数値的にも「想子強化」と言えるものだった。

 

「それで、君らはここに来たのかね」

九島烈と現九島家の当主である九島真言が応接室で、佐伯さんと俺を睨む。

口調厳しく言葉を発したのは九島真言だ。

不安、懐疑、敵対、羞恥、隠そうとしているが表情の陰にはいくつもの感情が見え隠れしている。

 

「御当主、老師、我々の提案を疑うのもごもっともです。はっきり言えば、九島家の内部への干渉です。この情報を軍が手に入れた経緯も不快でしょう」

九島烈は無言だ。ただ、一縷の望みに手を伸ばそうとしている様に見える。

逆に当主は不快を隠さない。まるで汚点を見つけられた子供だ。

「君らの望みは?」

そう言って九島真言は手元のグラスを一口で煽る。

「今後の十師族と魔法師協会、軍属魔法師の緩やかな連帯」

「あと、カナデとの結婚も・・・」

睨まないでよ、佐伯さん。ちょっと場を和まそうとしただけじゃない。

俺は一つ咳払いをした。

「今回は光宣君が全快したら軍に欲しいという話ではありません。私が出しゃばる以上どうしても101旅団の存在が絡んできます。後々101旅団が出てくるより、先に旅団の存在をお知らせしたかっただけです」

俺の言葉にその場の三人が厳しい視線を投げてくる。

 

「正直申し上げますが、今回の治療の申し出は101旅団の少佐として十師族に恩を売るためではありません」

佐伯さんの視線が殊更厳しい。

「藤林奏さんと将来円満な結婚をするため、恋人の親戚に好印象を持たれるポイント稼ぎに今回の治療を申し出ました」

この言葉に多少毒気が抜かれたのか、それともこの発言に驚いたのか九島真言の頬の筋肉が緩む。

九島の爺さんの視線の方が厳しいな。

佐伯さんがおでこに手をやり「馬鹿が・・・」という表情だ。村井大佐は日常茶飯事だったのよ。このくらいのことは。

「光宣君の治療を成功させる自信がなければ、治療の申し出などしません」

失敗したらカナデに嫌われるからね、という俺の視線を感じてくれただろうか。

 

 

7月に入ると試験も終わり、何とか赤点なしで済んだ。

中条会長は、九校戦の競技変更に凹んでいたが何とか持ち直した。

 

俺は、土曜の夜には東京を出て奈良に来ては、日曜丸一日かけて九島光宣の治療をする日々が2か月続いた。

治療の効果はすでに出ていた。光宣のスペックの高さがそうさせている。

 

イケメンで金持ちで一流魔法師ってズルいな。いや、光夜も性格面を除けば同じ条件か。

呼吸法を中心に身体コントロールの方法を教えていた。ヨガの行者に教えてもらった、という法螺を信じ込ませるためだ。

「本当に出来るんですか?」と疑心暗鬼だった光宣も、3回目の治療から「起床時の痛みが減った」や「実技で魔法使うのが軽くなった」など効果がでていることを実感しているようだ。

 

身体コントロール法を教えることから「先生!」と慕ってくれる。

これでカナデと結婚できるだろうか。

 

そして来たるべき、顧傑との闘いで九島のバックアップが得られる。

俺の耳に届いた顧傑のUSNA出国の噂。波乱がもうすぐそこまで来ている。








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