うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる 作:madamu
「いぇぇぇい!」
雪光の楽しい声の後には「もっとスピードをおとせぇぇぇ」というモーリーの声がドップラー効果で聞こえる。
九校戦の新競技「ロアー・アンド・ガンナー」の練習だ。
小型のボートを魔法で動かしつつ、コースに配置された的を撃つというものだ。
スピードと、射撃の正確さが求められる。
ソロと、ペアがあり、試しにソロで雪光が、ペアで光夜とモーリーがコースを走っている。
雪光はボートを漕ぐ(ロア)のではなく、ほとんどサーフィンのノリだ。
「一校の王子様」のはしゃぎっぷりに見学の女子たち(10人以上)から黄色声が飛ぶ。
「かっこいい~」「雪光くん!」「王子~」
雪光の後を追う様に光夜(漕ぎ手)とモーリー(射手)が通ると、皆一瞬で黙る。
なんだ光夜は霊柩車かなにかか?あれ?霊柩車が道を通る時は黙る、というのは俺の以前の年代だけの話だろうか。
「雪光君すごいんですね~」
俺の横で感心するように光井さんが雪光を見ている。
彼女は今回ミラージュバットの本戦選手候補なので、ロウ・アンド・ガンナーは、昨年のバトルボード新人戦優勝選手ということでアドバイスできないかとここに来たのだ。
彼女的には羨望と嫉妬というより、ただただ感心をしている。
雪光は日頃の運動能力や学力については目立つものの「四葉光夜」のせいで、あまり話題には乗らない。
女子受けする容姿になかなか楽しい会話に、可愛らしい反応。
確かに雪光は王子様だった。
ひとしきり、水路での遊びを楽しんだ雪光はプールへと向かっていった。
今回あいつは選手登録の予定だが他にも仕事があった。アイスピラーズブレイクの氷柱作りだ。
深雪副会長匹敵する魔法師ということもあり氷柱作りに、選手にと大忙しだ。
◆
さて、九校戦の選手選抜は、今週いっぱいで終わらせなければならない。
困っているのが「モノリスコード本戦」と「シールドダウン・ソロ」そして「ロウ・アンド・ガンナー」だ。
問題点は光夜だ。あれ?去年もあいつで選手決めなんかなかったけか?
・・・ぼっちのせいで俺がスタッフ入りしたんだ。
モノリスコード本戦では現三年生の実力者と光夜をどう組ませるか?が問題になっている。
千代田風紀委員長は「達也君と雪光君と光夜君でいいんじゃない?」とあっけらかんと言っていた。
ただ他競技の優勝候補になりうる雪光と光夜をモノリス専属選手扱いでいいのか?ということも議題に出ている。
シールドダウン・ソロの問題は簡単だ。
「黒城兵介に勝てるか」である。その勝てる選手を選ばねばいけない。
盾を使ってお互いリングから落とす競技だ。盾にどんな魔法を使えばいいのか?
そういった技術的な問題より、昨年のモノリスコード新人戦で見せた「ブラック・キャリバー」の姿は、シールドダウンの競技内容が判明した瞬間、全国の魔法科高校の学生は新競技の優勝者を黒城兵介と想像させた。
絶対的優勝候補に誰が挑むのか?
ロウ・アンド・ガンナーでは組み合わせだ。
「完璧」四葉光夜をソロに配置するか、ペアに回すか。ペアの場合は誰がコンビを組むのか、漕ぎ手か射手かetc。
新競技ということもあり、組み合わせに皆苦慮している。
一校はタレントが多い。特に一科生では光夜、雪光、カナデと転生者たちが優秀なおかげで選手選びに嬉しい悲鳴だ。
三年でも優秀な生徒が多い。二科でも「一芸だけなら」の条件付きでエリカやレオンハルトなど隠し玉がいる。
光夜の問題も、モーリー、須田ちゃん、俺と「そこそこの実力」であり、光夜とコミニュケーションが取れる男子生徒がいるのでクリアできそうだ。あとはどの競技にどの選手を置くのか。
◆
「重蔵君、君は軍属魔法師についてどう思っているかね」
土曜日の夜のお決まり。九島邸九島当主と九島老師との書斎での夕食後の会談だ。
全員好みの酒を持ち、取り留めのない話、スポーツ、社会、政治、そして魔法の話をする。
光宣の治療を始めて効果があらわになった時期からのお決まりだ。既に数回目だ。
酒の好みとしては俺は洋酒、九島の爺さんは少量の日本酒、当主は焼酎だ。
今日の話の切り出しは当主、九島真言だった。
「と言われますと?」俺は話題の大きさに返答が困り、もう少し狭めるように促す。
「今後、魔法師が軍属することの是非だよ」
当主は最初に会ったときより表情がいい。息子の健康問題の回復とともに・・・雪光から聞いたこの人物の父親へのコンプレックスとその結果生まれた光宣のことを思うと複雑だ。
「そうですね、魔法師を、というよりも魔法という技術をどのように使っていくか?というのが主題になっていくでしょうね。10年後には魔法の運用がある程度見えてくると思いますが」
その言葉で九島烈は酒杯から口を離す。
「私はね、若い魔法師が軍属となり命を散らすことに危機感を感じているのだよ」
「そうですね。魔法師に限らずですが」
九島烈の視線が飛ぶ。俺とこの二人には隔たりがあるのだ。
この二人やインテリぶってる魔法師は「人間」と「魔法師」という種族がある、というような認識なのだ。
「エルフ」「ドワーフ」「ホビット」「魔法師」「人間」なのだ。
俺は一般家庭生まれの変わり種魔法師だ。母方の父、亡くなった祖父が魔法師だったらしい。会う前に亡くなったが。
一般家庭で、生活に苦慮して軍隊に入り、そこで魔法師としての才能を発見し
「軍隊内での魔法」を習得した変わり種だ。俺は自分を魔法師という種族とは思っていない。
魔法を使える軍人としか思っていない。その自分のアイデンティティへの認識の違いが彼らとある。
「魔法師を戦争や軍務に投入することで、魔法師という種が人間に搾取されると考える者も少なからずいる。群発戦争の記憶があるのはわかる。だが戦争を生き抜いたものからすれば、若い世代に同じような苦難を味合わせたくはない」
今日は九島烈が良くしゃべる。
「そうならないためにも、魔法師として連帯し意志の表明が必要だと思わないかね?」
「軍人ですのでそのあたりはノーコメントですよ、閣下」
俺が苦笑いすると、九島烈も軍人に政治的発言を求める愚を思い出したようだ。老人はバツが悪そうに酒杯に口をつける。
「退役したら手記でも出版して意見表明しますが、強いて言うなら魔法師として活躍経験のある人物を国会に送り込んだら如何です?」
正論である。親魔法師の国会議員ではなく「魔法師の国会議員」が必要だろう。意見を十師族、魔法師協会で表明する以上に代表として公的な場に人物を送り込む。それが必要な時期なのだ。
「君は意外と正論家なのだね」
九島真言が珍しくばつ悪そうにする父親の姿を苦笑いする。
「文民統制や民主主義の話は嫌って程国防学校の授業でやりましたから」
俺も微笑みながらグラスに口をつける。国防学校では軍人の基礎として座学が多い。その中でも倫理やなぜ軍の運用では文民統制が必要なのか、その背景を嫌っというほど叩き込まれる。
防衛大に進学した渡辺摩利もこの辺りを嫌というほど授業を受けているだろう。
「私はね、魔法そのものへの理解の低さというものを危惧しているよ。もう少し世間は魔法というものの実態を知るべきだと思うね」
当主は話題を変えるべく、魔法の認知について話を始めた。
その後は、社会進出する魔法について話が移った。
九島烈は新世代のCADにボチボチ追いつけないとぼやいていた。九島真言も「谷間の世代なので上と下の面倒を見るのに大変だ」とシニカルに笑った。この人も決して腹案の無い盆暗ではなさそうだ。親父の名前がデカ過ぎるのは大変だ。
◆
九校戦の選手・スタッフが発表された。
俺の周りではいろんな面々が参加することとなった。
ロウ・アンド・ガンナーの本戦選手は四葉光夜(漕ぎ手)&森崎駿(射手)のコンビで決まった。
学内では妥当の意見が占めた。そりゃそうだ。光夜に「曲がれ!」とか「とまれ!」とか普通に言えるのは俺か、モーリーか、須田ちゃんくらいだ。
アイス・ピラーズ・ブレイク本戦は深雪副会長がソロで出馬だ。
十三束がシールドダウン・ペアで参戦だ。
雪光は、スティープルチェイス競技に単独登録らしい。
他は「原作通りになったね」と雪光が言うような面々となった。
新人戦では七宝琢磨、七草香澄&泉美、七海奈波、緋村武心、桜井水波が参戦することに。
スタッフではカナデが入ったし司波達也も入った。今年は俺は戦術スタッフ入りすることはなかった。逆にエリカとレオが練習パートナーとしてスタッフ入りした。シールドダウンは白兵競技なので頑丈で動ける練習相手が必要だったためだ。
さて、九校戦では俺はフリーだ。生徒会の一員として動けばいいだけだ。去年より楽ちん。やった~。
とも言えない。大漢のあれがUSNAを出国して、欧州圏の非EU加盟国に渡ったともアフリカを経由して東南アジアに潜伏しているとも聞こえてきた。周公瑾からの聴取が再開されたので俺の同席も増えた。ただ時間指定が可能になったので放課後は
連日情報部に足を運んでいる。もうへとへとだ。少し休みが欲しい。
だから発足式の壇上から緋村少年、七宝、俺を睨むのを止めなさい。