うちの魔法科高校の劣等生にはオリ主転生が多すぎる   作:madamu
<< 前の話 次の話 >>

97 / 101
cafe「お兄様」

今回の九校生は生徒会の一員として、スタッフに名前があるので選手と同じホテルに宿泊だ。

須田ちゃんは「アイス・ピラーズ・ブレイクとミラージュの日だけは応援に行くから!」と言っていた。

九校戦後は各部活の夏大会だから須田ちゃんの操弾射撃部も8月の後半は忙しい。

俺も俺でクロス・フィールド部があるので大変だ。

 

ちなみに昨年は会場に移動する際、スタッフと選手はバスとトラックに分かれていたが今回はスタッフもバス移動だ。

深雪副会長の強い、強い要望によるものだ。「これでお兄様と一緒です」と言わんばかりの笑顔だ。

 

「お前は選手に選ばれなかったのか」

バスの席順で隣りになり、話しかけてきたのは三七上ケリー先輩だ。金髪褐色の青年で相手の使った魔法を即座に分析し魔法発動を阻害する対抗魔法の選択と実行に長けた人だ。と言っても俺から見れば生意気そうな体育会系の少年だ。

おじさん、午前3時まで仕事で疲れてるから寝させてよ。

「そうなんですよ。流石に実力の問題で」

「なんだ、弱気だな。そんなんじゃ来年が心配だな」

うるせい。こちとら疲れてんだよ。寝かせろよ。お前も「死ぬほど疲れてるんだ、起こさないでやってくれ」みたいな状態にするぞ。ちなみにコマンドーは数年に一度は再放送される。今でも「最後に殺すといったが、あれは嘘だ」はネタとしても通じる。だが「第三次世界大戦だ」は笑えなくなった。

 

将来の夢をしつこく聞いてくるので「カナデと結婚しますんで固い仕事に就きたいですね」と言ったら「結婚・・・」と驚いていた。ある意味でおぼっちゃま高校である一校の生徒でいきなり下級生が「結婚」の話をしたら驚くわな。

あとは適当に話を合わせていたが、俺の結婚発言から時折俺の顔を見ては視線をカナデの方に向けたりしている。

なんだ、「あんな可愛い娘がこいつと・・・」と思っているのか「マジか・・・俺まだ彼女いないのに」と思っているのか。表情を読むには後者だな。

 

ホテルに着くと荷物の積み込みと、主催本部への挨拶、そして選手、スタッフへの注意事項を改めて説明して各人部屋で休んだりしている。

光夜は昨年のように体を動かすこともなく、中条会長、深雪副会長と他の学校にあいさつ回りだ。

敵情視察というより横浜騒乱を乗り越えた仲間でもある他校生徒と近況報告をしあっている様だ。割とこういうあいさつ回りはこまめにやるよね、中条会長。

 

そして九校戦前夜祭を迎えた。

 

 

今年も九島の爺さんの挨拶があったが、昨年のような悪戯はしなかった。だが壇上の九島烈は昨年よりも柔らかい表情をして挨拶を終えた。理由はよくわかる。

 

その後の開幕の懇親会で昨年と同じようなことが起きる。

赤い制服に身を包んだ集団が光夜を中心とした一校選手団に挨拶をした。

一校の有名人たちと共に三校も有名人ぞろいだ。状況を見ていた大勢の他校生たちもざわざわし出す。

「久しぶりだな」

赤い集団の先頭にいる一条将輝が一校で最も目立つ男に挨拶をした。

「横浜以来か」

「そうだな。元気そうで何よりだ。司波さんもお元気で」

目ざとく一条は深雪副会長を見つけ笑顔を見せる。深雪副会長も軽くお辞儀をして返す。

「将輝」

吉祥寺真紅郎が肘で一条の脇を突く。個人的あいさつでが目的で近づいたわけではないようだ。

一条は一つ咳払いして背筋を伸ばす。

「三校選手団として昨年のリベンジを宣言させてもらおう。今年は三校が優勝を貰う」

正々堂々とした宣言だ。一条の回りの三校生徒たちも決意と自信に満ち溢れた顔だ。

一条将輝、吉祥寺真紅郎、黒城兵介以外にも兵介ばりの大柄な男子や怜悧な印象を受けるショートカットの女子、金髪の女生徒、小柄な天真爛漫な顔した女生徒etcと目立つ奴らだ。

 

「無理だな」

一条の発言を一言でぶった切る光夜。その周りを選手たちが並ぶように立つ。

「優勝は我々一校だ」

モーリーもモノリス本戦の吉田幹比古、三七上さんも、服部会頭も、光井さんや里見さんなど各選手が覚悟の表情をしている。我々は追われる側なのだ。その覚悟がこの夜完成したのだろう。

 

「ではお互いの宣言を明日から証明しよう」

そう言って一条は握手を求める。がっちり握手して三校の宣言は終わった。

 

その後は「横浜の時は」「あの時以来だ」と他の面々がお喋りを始めた。

そんな中、四校の生徒が司波達也に近づき挨拶をしている。あ、黒羽の姉妹だ。ここで顔合せか。

 

「先生!」

俺に声を掛けたのは週一で見る顔だ。

麗しの美少年。九島光宣だ。

体調も回復し、選手ではなくスタッフの一員として九校戦に来ることは聞いていた。九島の爺様がニコニコの理由がこれだ。

一族の秘蔵っ子をちゃんと陽の光が当たる場所に送り出せたのだ。

光宣の隣にはカナデと、これまた恐ろしい美しさの金髪美少女がいる。

三人を遠巻きに見ている視線たちは羨望や憧憬など美しい光景に見とれている感じだ。

 

光輝く美少年に、妖艶さを漂わす大人びた美女、怜悧な透明さを讃える美少女。

大抵の人間は眼を奪われるな。

 

「へ~、あなたがカナデの彼氏ね」

金髪の少女が少し意地悪な笑いを受けべて俺を値踏みする。この娘がカチューシャか。

美貌という意味では司波深雪嬢に匹敵する。美人なのは認めるが、気が強いといか我が強いというか、挑戦的というか、そんな感じだ。

「値踏みしても無駄よ。非売品だから」

カナデさん、なにそのカッコいい返し。

「先輩、失礼ですよ」

この掛け合いに笑う光宣。最初に会ったときよりも、笑顔に中身が伴っている気がする。

心身が充足すると笑い方が少し変わる、と俺は思っている。

 

「あなた、あの四葉光夜の友達なの?それにしてはパッとしないけど」

「ほっとけ」

カチューシャの物言いはストレートだが嫌味な感じはしない。怜悧な印象だが、意外と気さくな感じもする。

「先生、今回は先輩がアイスピラーズの正選手なので二校も優勝戦線に絡みますよ」

光宣に言われてカチューシャが胸を張る。確かにカナデの話だと相当の魔法師だったな。

「そうだな。二校には期待の新入生がスタッフにいるし注意しないとな」

少しお世辞交じりに応える。本当に怖いのは来年だ。来年の今頃には光宣は完全回復しているから、相当気を引き締めて対応しないとな。七宝が。

 

そこから九校戦の印象を光宣に聞いたり、光夜が輪に入り、カチューシャと光夜がロシア語で会話を始めたので耳をそばだててみた。カチューシャはアンジェリーナ・クドウ・シールズと接触したことを伝えた。

ちなみに世界の主要言語10か国語は日常会話レベルで使える。軍神の加護様様だ。

 

昨年の黒城兵介登場を思い出すと穏やかな懇親会となった。

 

 

「まったくもって九校戦前から疲れたよ」

ホテルの駐車場に造られたキャンピングカーcafe「お兄様」で俺はコーヒーを飲んでいる。

懇親会も終わり、もうすぐ日付も変わる。

北山雫の親父さん、大実業家の北方潮がカスタムして寄贈したキャンピングカーがこれだ。

CAD調整工房としての機能を持ち、以前から一校が保有していた専用車と並行して使えば大体のCADの調整が可能になる。キャンピングカーにはピクシーが常在しておりコーヒー、紅茶、オレンジジュースなど大体の飲み物が提供される。

先ほどまで光井さんや北山さんもいたが選手なので、睡眠時間確保のためホテルへ戻っていった。

 

「そう思うなら自室に戻ったらどうだ?」

司波達也がキャンピングカーから出てくる。

CADの調整も今日は終了なのか。ピクシーからコーヒーを受け取り、キャンピングカー脇のテーブルとイスの輪に入る。

「もう少し夜風に当たってからにするよ」

そういえば、こんな風に司波達也と一対一で話す機会はなかったな。

「ピクシー、周辺の盗聴妨害と遮音フィールドの展開を」

司波達也の命令にピクシーがうなずく。

これで会話を聞かれることもないだろう。そしてそれは、内密の話の合図だ。

 

「少佐は酒井大佐の話は?」

「アラタ扱いでいいよ。日頃から慣れておかないとどこかでボロ出るしね」

俺の言葉に達也は軽く笑って頷く。

「おおよそは。今回の新競技選定に噛んでるし、スティープルチェイスのコース警備はあの人担当だろ」

真剣な顔で頷く司波達也。酒井大佐とは面識はない。

佐渡侵攻の現場での活躍と対大亜連合強硬派としてそこそこ陸軍内では名前が知れている。

が、残念なことに軍内政治は不得手だ。現場の下士官や兵卒には人気だが、士官以上になると途端に反応が悪くなる。

 

その酒井大佐が暗躍しているというのだ。顧傑が暗躍しているこの時期に。

酒井大佐の動機は色々だ。「大亜を今叩くことによって、大陸側への強い牽制になる」「横浜の正当的報復」「環太平洋の諸外国との強固な同盟成立のため」そのあたりの理由はいくらでもねつ造できるが、基本的には佐渡侵攻の二の舞を避けるためだろう。

 

だがそれは軍人が自身で唱え、実行することではない。

退役し政治家にでもなればよかったのだ。彼は文民統制の原理原則から外れようとしている。暴力装置が暴力を自己の判断で使用することを考え始めている。危険だ。

 

「達也の方に風間さんから指示は?」

「今のところはない。ただ酒井大佐の存在には注意を受けている」

「そう考えると、軍内政治で調整可能な範囲だろう」

司波達也の難しさはこの辺りだ。まだ軍内政治を知らない。そしてそこに介入する伝手がない。

 

結局彼が対応できる範囲は狭いのだ。どんなに強力な魔法師でも結局は高校二年生の地味系イケメン男子でしかない

101旅団、四葉、二つの特殊な陣営に挟まれ、どちらからも監視されている。そしてどちらの陣営にも利益をもたらさなければならない。そうしないと軍人としての特権も、四葉のエージェントとしての特権も失ってしまう。

つまり苦労が多いのだ。将来禿るな。

 

「偉そうなことを言う様だが、命令が無いなら気にしすぎるのは毒だよ。余裕はリラックスから生まれる。あまり考えすぎると余裕がなくなって土壇場でトラブルを起こすよ」

「そんな経験があるのか?」

お、珍しく意地悪な口ぶりだ。

「話してもいいけど、人には漏らすなよ」

 

俺の2096年九校戦が始まった。

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。