ガールズ&パンツァー バタフライエフェクト   作:牢吏川波実

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 どうしよう、なんかどんどんと危険な領域に近づいている気がする……。


2-10 子宮

 己にとって、戦車とは何なのだろうか。それは足。それは腕。それは心。それは鎧。それは服。それは指。それは機械。それは鉄。それは道具。

 戦車にとって、自分とは何なのだろう。それは眼。それは頭脳。それは心。それは耳。それは花。それは神経。それは血。それは肉。それは動物。

 自分たちがここにいることによって戦車はただの置物から人を殺すこともできる兵器へと変わる。砲弾で撃ち貫き。履帯で潰し。車体で押しつぶし。時に焼き払い、時に破壊するただ一つの兵器に生まれ変わる。

 自分にとって戦車を纏う事。それはすなわち裸の自分が纏う服。それはすなわちゆりかごで揺れること。それはすなわち母の手に抱かれるかのよう。そして……。

 

 

 

『子宮』

 

 

 

 そう、まるで子宮の中にいるかのような居心地の良さ。それが戦車。自分が今の今まで忘れていた、最初に戦車に乗った時の気持ち。忘れていた。思い出した。邂逅した。閲覧した。懐かしくなった。思い出したかった本当の自分の気持ち。あぁ、また自分はこの世界に産まれようとしている。一度妹のために捨て、妹によって思い出させてくれたその魂のよりどころ。究極の二択、その全てを手に入れることができた。あの時、自分は妹を捨てなくてよかった。西住流を捨ててよかった。帰ってきてよかった。

 

 

 

 

「わぁ木にぶつかる!左!左!」

「え?何か言いましたか?」

 

 沙織が華に向かってそう言った瞬間、Ⅳ号D型は一本の太い木にぶつかった。内部にはそれほど衝撃は伝わらなかった物の、しかし激突したという事実自体が心理的にもダメージをもたらす。上部にある入口から顔を出していた沙織は、内部に入るという。

 

「もう!左って言ったのに!」

「すみません。よく聞こえなくて……」

「エンジン音と履帯の音が直に内部に伝わっていますからね。工夫していないとそうなりますよ」

 

 と、優花里が言う。確かに、戦車は通常の車とは違って内部も周囲が鉄板に囲まれているために、音がそこを伝って中にいる四人の耳に直接、それも反響することによって音が倍増して聞こえているのだ。結果、普通の会話はもちろん、少し大きめの声を出したとしてもエンジン音や履帯の音にかき消されてしまうのだ。マイクやイヤホンを使用していればもう少しましなのではあるが、残念ながら今回は用意していなかった。

 

「そういう時は、足で操縦手に指示を出せばいい。左に曲がるときは左肩を、右に曲がるときは右肩を蹴れ」

「親友にそんな事出来ないよ!」

「思いっきり蹴ってください!」

「と、親友は言っているが?」

「じゃあ左!」

「あ゛っ!……あのぅ、もう少しお手やらわかにお願いします」

 

 自分で言っておいて何ではあるが、強く蹴りすぎだ。沙織の想像以上の一撃に、華は少しだけのけぞる。親友と言っておきながら、いざ大丈夫と言われれば迷わず行動に移せる沙織も凄いとは思うのだが、そこまでやれとは言っていないと、横にあるハッチから外をみながらまほは思っていた。

 本来ならば、Ⅳ号に乗っていたのはみほのはずだった。しかし、これにはちょっとした事情がある。それは、教官の蝶野によってそれぞれのチームに別れるように言われた後の事。

 

「今日は乗ることができない?」

「う、うん。そうみたい」

 

 自動車部の面々の元から帰ってきたみほは、沙織達に向かって苦笑いを浮かべながらそう言った。続けて言う。

 

「えっと、ここしばらく戦車の移動やメンテナンスで自動車部の人達が皆して疲れ切ってて、Ⅳ号のイスに取り付ける機器の最終調整が完全に終わってないって……」

「それは……仕方がありませんね」

 

 自動車部の事を憐れに思いながら華はそう言う。元々、どう考えても自動車部の面々に迷惑をかけるであろう日程であったのだ。初日、みほの詳細なデータを取ったその夜には、計四輌もの戦車を様々な所からグラウンドに徹夜して持ってきてもらったし、2日めの夜中もまたその戦車のメンテナンスを行わなければいけなかった。戦車道を取っているわけでもないのにここまで戦車に思い入れを持って接してくれるという事はありがたいと感謝する一方で、このままだと彼女たちが過労死してしまう危険性がある。

 

「その辺に関しては我々も危惧していることだ。だが、現状彼女達しか戦車をメンテナンスすることができないため、こうするしかないのだ」

「そうだな。黒森峰だと、外部からプロを呼んできてメンテナンスや修理を行ってはいたが、それはそのための資金があったからこそ、この学校ではそうも行かないだろうからな」

 

 黒森峰は、9連覇という実績に加えて西住流という大きなバックボーンが付属していたため、その分軍資金は多かった。そのため、秀逸な機材を買うこともできたし、メンテナンス費用に多額の費用を使用することができた。コーチ代も事実上無償で合ったこともあり、そう言った面で見ても、他の学校からしてみれば羨ましい限りであろう。

 

「でもどうしよう。一応Ⅳ号は3人だけでも動かせない事はないけど……」

 

 戦車を文字通りに動かすには操縦手がいる。砲弾を打つためには砲手が必要。そして、それらを統括するための車長と、三人いれば戦車を動かせないわけがない。しかし、素人ばかりであるというのは他のチームも同じではあるが、必要最低限のメンバーのみしか乗らないというのは、ちょっとばかし不都合である。他のチームが、すべて搭乗可能人数いっぱいで乗り込んで、万全の状態で出るというのに、一チームだけ空白の役割が二つできる。他の役割が装填手と通信手であるため、いうなれば、耳と利き腕じゃない腕がないのも同じである。装填手と通信手は兼任できる役割であるため、せめてあと一人が乗ってくれればいいのだが。

 

「だったら、今日の所は姉さんがⅣ号に乗ったら?」

「なに?」

「そうだな。同じ西住流の人間が乗れば、西住みほ用の機器が完成した時に滞りなく変わることができるだろう」

 

 確かにそうすれば、華、沙織、優花里、そしてまほの四人で十分に戦車を動かすことができる。だが、とまほが言う。

 

「それだと今度は38(t)に乗る人間が一人減ることになるぞ?」

 

 そう、それはⅣ号での不安要素が38(t)に移り変わるだけだ。それでは本末転倒ではないか。まほがそう考えたその時、柚子が笑みをこぼしながら言う。

 

「大丈夫。私達は元々三人で戦車に乗ることも想定して、そのための役割分担は済んでるから」

「そうなのか……」

 

 よく考えてみると、もともとこの学校の戦車道が復活すると知っていたのはこの生徒会三人衆のみだった。逆に言えば、それだけ戦車道に携わる時間が大洗の面々の中では誰よりも長いという意味になる。であるならば、彼女達三人だけに任せても問題ないのではないか。

 

「分かった。なら今日の所は私がⅣ号に乗ろう」

「決まりだね。それじゃ、よろしく姉さん」

「お願い、お姉ちゃん」

「任せておけ……それから杏」

「なに?」

「……もうそろそろその姉さんという言い方は止めてもらえないか?なんだかこう……戦車道ではない別の道の人間のようで……」

「えぇいいじゃん格好いいし。そんじゃよろしく~」

「……」

 

 そして、生徒会三人衆は去っていった。杏の自分への呼び方に関してはあったその日から気にはなっていた。自分の事を『西住姉さん』みほのことは『西住妹ちゃん』、それが今ではさらに短くなって『姉さん』『妹ちゃん』となっている。同じ名字で、しかも姉妹なのだから区別がつきやすいようにそう呼んでいるだけなのかもしれないが、それだったらせめて名前で呼んでもらいたい。少しだけ距離を置いているように感じて、それだけは心細い。みほは、Ⅳ号の履帯に触れながら言う。

 

「ゴメンネ、今日は乗ってあげることができなくて。また今度、ちゃんと機材ができてからね」

 

 みほにとって、戦車とは仲間である。共に歩む友である。心の底から信頼するべき親友である。そうでなければ、自分の身体を預けることなどできない。それは、彼女の使用している車椅子に言えることだ。車椅子に乗り始めた頃は、さすがに少し怖かった。二つの脚で地面を踏みしめるわけじゃなく、タイヤという少し加減を間違えただけで自分の思っていなかった場所にまで到達してしまう。平坦じゃない道であれば、ブレーキをかけなければ勝手にどこか見知らぬ場所に旅立ってしまう。そんな物に体を預けるのだから、怖くないわけがない。しかし、それが戦車と同じ存在であると考えた時から自分の考えは変わった。友達としてなら、親友としてなら、そう考えた時からそれが自分の身体のようになり、自分の足の代わりの、いやもう一つの足となった。みほは戦車を愛しているのだ。だから戦車乗りの家系だからじゃない。戦車が好きだから、彼女は戦車という凶器を前にして笑っていられるのだ。

 

「みほさん」

「?えっと……確か10式の……」

「初めまして。教官としてこちらに来た自衛隊所属の蝶野よ」

「こちらこそ初めまして。私は……」

「……存じているわ」

「あ、そうですよね……」

 

 みほは、ある二通りの意味で戦車乗りには有名だ。ひとつはもちろん、西住流の家元の娘として、もう一つは前回の戦車道全国大会での大怪我で。今後も、自分は様々な場所で同じような反応をされることが予測される。覚悟はしていたものの、実際に経験してみると、なんだか心が苦しくなる。何より、このような憐みの目で見られることが、なんだか申し訳ないのだ。優しくされること自体が、まるで自分が人間として一歩劣っているのだと見られているようで、相手にとってはそんな意思毛頭ないという事も分かっている。だが、一度そう考えたらそれ以外の事を思いつけない、自分はそんな弱い人間なのだ。

 

「私はこれから見張り台から各戦車の動きを見ようと思うのだけれど、貴方もどう?」

「え……でも私は……」

「言ったでしょ?私は自衛隊員よ。車椅子一台と女の子を運ぶなんてわけないわ。それに……車椅子だから誰かが力を貸してくれるってこと、ちょっとでもいいから得だと思ってみなさい」

「え?」

「障害を持って生きることは、別に誰かと劣っているわけじゃない。誰かとは違う個性を持っているってことなのよ。私は障害を持って生まれてきたわけでもないし、障害を持つほどの大怪我を負ったこともない。だけど、私もたくさんの障害を持った人達と出会ってたくさんの話を聞いて、実際に接してきて、そう思った。だから、貴方も普通の女の子のように甘えてもいいのよ」

 

 よく、障害を持つ人を取り上げる番組を偽善だとか、感動ポルノだとかいう人間がいる。実際、ある番組で、障害を持っているから不幸であるように装うように演技するようにと演出をするという検証を行ったこともある。その結果、障害者を使って金儲けをしているだけだとか、視聴率を稼ぎたいだけだとかと色々と言われる番組がある。感動的なエピソードを抽出して、お涙頂戴の茶番劇を見せられているだけだという人間もいる。だが、我々は何を知っているというのだろうか。障害を持って生きる人達の、障害を持つことでどんな人生を送ってきたのかを。それは、確かに健常者と同じなのかもしれない。上手くいかないことがあったり、辛かったり、いじめに遭ったり不当な扱いを受けたり、それは障害を持っていなくても起こり得ること。障害者イコール不幸な人々というわけではない。それは正論であるのかもしれない。どこかの街の片隅で、今も苦しんでいる人がいるのかもしれない。今も辛い思いをしている人がいるのかもしれない。また、今も不当な扱いを受けている人間がいるのかもしれない。けど、『誰も助けようとしない』それもまた真実だ。一年に一回でいい、そんな人たちの事を思い続ける日があってもいいじゃないか。そして、そこから自分も何かしなければと思う人がいてもいいじゃないか。障害を持っているから不幸じゃない。確かにそう、だがそれは障害者全員に当てはまらないのかもしれないじゃないか。もしかしたら今この瞬間も、自分は障害を持っている、だから不幸だと思っている人がいるかもしれないじゃないか。障害者を見世物にするな。何もお前たちに見せようと思っているだけじゃない。今もどこかで苦しんでいる同じ障害を持った人達にも見せなければならない、同じような障害を持っていても、挫折しても、立ち上がれないような大きな壁があっても、乗り越えることができたと、自分はこんなに明るくなることができたと、そう伝えることができるならば、多少の演出が入っても、過剰な反応を示したとしても良いじゃないか。自分は一人じゃない。そう思うことのできる日があってもいいじゃないか。そんな日があるからこそ、自分は真夏になるといつも真っ青な空と、はっきりと区分けされている雲をみて思うのだ。あぁ、またこの季節が来てくれたのだと。今年も、夢を持った人が生まれますようにと。

 蝶野は続けて言う。

 

「多分、障害を持ってよかったって思えるようになったら、それはもう一人前何だろうけど……私が言えることじゃないわよね」

「いえ、でも……そんな自分に慣れたら嬉しいかもしれません。今はよく分からないですけれど……」

 

 とみほは言う物の、実はみほ自身障害を持った後、障害を持つ前よりも手に入れたものは多いように感じていた。姉や、大洗での友達、自動車部の面々など頼りになる先輩達、こちらにきてたったの三日でたくさんの宝物を手に入れた気分だ。だが、みほは思う。それは障害を持っていなくても手に入れられたものなのじゃないかと。思えば、あの時の大会で川に飛び込んだことによって自分の責務を放棄した時点で、自分は西住流としては失格だったはず。だから、もしも障害を患っていなかったとしても大洗に、それか他の戦車道のない学校に行っていたはず。まほの事だって、自分の中で見失っていただけで、最初から一緒に歩いてくれていたのだ。自分はまだ障害を持ったから手に入れたものがない。障害を持っててよかったなんて一人前の事を言える時、そんな物が来るのだろうか。そんな胸を張って言える時が来るのだろうか、いや必ず来てくれるはずだ。何故ならば、それに気が付けるのは自分だけ。足に障害を持って生きていく使命を持った自分だけなのだから。

 

 

 そしてそれから数十分後、全員が紆余曲折ありスタート地点へとたどり着いた。

 

「みんな、スタート地点に着いたようね。ルールは簡単、全ての車輛を動けなくするだけ。つまり、ガンガン前進してバンバン撃って、やっつければいいだけ。分かった?」

「随分とざっくりと言いますね」

「堅苦しい言い方で、よく分からない事を言うよりかはマシだと思う……多分な」

「戦車道は礼に始まって礼に終わるの。一同、礼!」

『よろしくお願いします!!』

 

 戦車道はスポーツである。そのためごく一般的なスポーツと同じように、始まる時は『よろしくお願いします』終わる時は『ありがとうございました』それが当然であり、マナーである。みほもまた、参加していないが、蝶野の横で戦車に乗っている面々と同じように頭を下げた。

 

「それでは、試合開始!」

「いよいよ攻撃開始ですね!」

「どうするまほさん?とりあえず撃ってみる?」

「決めるのは戦車長の役目、つまり沙織さんが決めていいよ」

「あ、そっか」

 

 そう、実は役割を決めるときにAチームの面々はまほに戦車長になってくれるように打診したのだが、まほは断ったのだ。今回だけしかⅣ号に乗らない自分が戦車長になって、みほが乗る時になって指揮系統に問題が起こっては困るという理由らしい。結果、くじ引きを行い、戦車長が沙織、操縦手が華、砲手が優花里、そして装填手兼通信手がまほということになった。

 

「よし!それじゃまず生徒会チームを潰そう!教官女の人だったんだし」

「まだ言ってるんですか?」

「私が決めていいんでしょ!」

「だが、生徒会チームの位置は確かここからは遠かったはずだ。確かこちらに比較的近かったのは……」

 

 その瞬間である。激しい轟音とともにⅣ号の車体が揺れたのだ。

 

「なに!?何が起こったの?」

「砲撃?だが、今の衝撃では当たった様子は……」

 

 そう言いながら、まほはハッチを開けて外をみる。そして地面にへこみを見つけた。土煙が立っていることから、先ほど撃ち込まれたもので間違いない。問題はどこからかという事であるが、まほはすでに見当をつけていた。両端を木々に囲まれ、前と後ろは道となっている。この状況で戦車道素人である他のチームがいるであろう場所がどこなのか、少し考えれば分かることだ。

 

「見つけた。右90度の位置にBチーム、なかなかいい位置取りをとる」

 

 木と木の間から八九式の姿を見つける。砲身から煙が伸びていることから、Bチームが撃ったことに間違いないだろう。それにしてもなかなかいい位置を取った物だ。一見して、森の中を進むという事は死角から攻撃されるリスクが考えられ、またその道中も草等で進みずらいように見える。だが、死角から攻撃されるリスクがあるという事は、つまり死角から攻撃できる可能性があるという事。それに加え、ほぼ90度の位置から攻撃を加えたという事は、こちらとしても反撃するのに一度砲を回転させなければならず隙が生まれる。ならば、180度回転しなければならない後ろから攻撃をした方がいいのではないかとも考えるが、その場合今度は自分が森の中からの奇襲を受けることがある。そのようなことを考えた結果、森の中から攻撃した方がいいと考えたのであろう。一方、まほに褒められていることを知らないBチームの面々は、自分たちが撃った砲弾の威力に面を喰らっていた。

 

「すごい音……」

「今、空気震えたよ?」

「こんなスパイク打ってみたい!」

「まずはⅣ号Aチームを叩く!」

 

 最初は、確かにバレー部を復活させたい。その一心だけで戦車道を選んだ。しかし、いざ乗って、撃ってみると、なんだか心に響く者がある。撃ったのは自分たちのはず。だが、その撃った砲弾の威力が自分たちの心にまで響いてきた。そんな幻想にも似た感覚を感じ取ったのだ。そして、撃たれた沙織はちょっとしたパニックを起こしかけて言う。

 

「怖い!逃げよう!?」

 

 今度は止まっているためほぼ鮮明にその言葉が聞こえた華によって、戦車は前進する。その直後、また一発の弾が地面に当たる。今度のは、確かにⅣ号に近づいていた。もし動かなければ履帯が外れてそのまま撃墜されていた可能性がある。履帯は、外れてもその場で直すことができるためか、それが外れただけでは撃墜判定にはならない。しかし、動けないためにそのまま撃墜されることがほとんどのため、8割方撃墜されたと言ってもいいであろう。

 

「いい修正能力だ」

 

 と、ハッチから顔を出してBチームの動向を探っていたまほは、素人ながらも即座に砲の着弾位置を修正してきたバレー部の面々を称賛する。沙織もまた、上部にある入口から顔を出して前を見る。すると、その先に分かれ道があり、左からは見覚えのある戦車が向かってきていた。

 

「得物を捕らえた!」

「南無八幡大菩薩!」

 

 CチームのⅢ突である。南無八幡大菩薩とは、簡単に言えばすべての心と身を武の神様にお任せしますという意味合いで考えてもらった方がいい。だが、それは切羽詰まった時に使うような言葉であるという事は分かっているのだろうか?

 

「どうした!」

「挟まれた!あっちに逃げよう!」

「聞こえません!」

「右斜め前!!」

 

 と言って華の右肩を思い切り蹴った。華はその指示通りに右の道へと入る。

 

「よし、これで何とかなるか?」

 

 しかし攻撃はより一層激しくなるばかりだ。もしかすると……。まほがそう考えていたその時、彼女はみた。目の前にある切り株を枕にし、本を頭からかぶって寝ている女生徒の姿を。

 

「まずい!」

 

 紆余曲折あってついに始まった戦車道の新たなる一ページ。果たして、どのチームが勝利者となるのか。




 今回で第2章が終わり、続いて第3章へと入って行きます。
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