ガールズ&パンツァー バタフライエフェクト   作:牢吏川波実

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 おいまたやったぞ。マジで我が小説恒例の展開が三たび登場と相成ったぞ。普通になにげなしに書いててこの展開が必ず出てくるって、もはや癖だよ。果たして、今回は誰が被害者となるのか……。


3-5 伝統

 この試合の勝利条件が最後まで撃破認定されないことと見るのならば、勝利者はAチームだった。撃破数から見ても生徒会チーム以外の3輛を撃破したAチームが最も好成績だった。しかし、今回の試合は勝ち負けを決めるものではなく、戦車道というものになれてもらうということが目的だった。その点から見れば、この試合はすべてのチームが勝利者であると行ってもいいであろう。

 試合が終わり、行動不能になった戦車を自動車部に任せて、ある特定の何人かを除いた面々が再び車庫前のグラウンドに集合する。

 

「みんなグッチョブベリーナイス!はじめてでこれだけガンガン動かせるなんて上出来よ!特にAチームとDチーム!よくやったわね」

 

 そう名指しで呼ばれた二チーム、ではあるがその場にいたのは半数にも満たない。愛里寿、梓、沙織そして優花里だけであった。

 

「他の子達はどうしたの?」

「あやたちは、運ばれたM3の中で眠ってます。はじめての戦車道で疲れきったものかと」

「紗希は、諸事情でみほさんたちとお風呂に向かってます」

「?」

 

 一年生チームが疲れて眠ってしまっているというのはわかる。彼女たちにとって今日ほど神経をすり減らした日はおそらく今までになかったことだろうから。紗希がお風呂に向かったというのも、汗をかいた等そういった理由だろう。

 だが、四号のまほと華がこれていない理由がわからない。みほに至っては戦車にのってすらいないのだから。いったい道言うことなのかと蝶野が聞くと、ただ優花里と沙織は苦笑いを受かべるだけ。なんだか、言ってはいけない秘密を抱えている様子だ。それに麻子という途中からⅣ号を操縦していた女の子の姿もないが、その子もまたみほたちと一緒にいるというのだろうか。

 そんな蝶野の考えは当たっていた。唯一撃破認定されなかったⅣ号を運転して、道路を走っていたのがその麻子。いくら撃破されなかったとはいえ、かなり傷だらけである。M3との激闘のなかで何度も地面の上を転がったのだから、無理もない。本来は車庫まで戻ってあとは自動車部に任せればいいのだが、しかし今回は事情が事情であるが故にそうもいかない。その事情というのは、みほにもたれ掛かって泣いている華である。

 

「泣かないで下さい。初めてであんなことをして怖いのは当たり前なんですから」

「でもッ、でもッ、私……もう、お嫁に行けません」

「華……」

 

 もはや、この世の終わりと言わんばかりにみほの胸で泣いている華。その華のことを、申し訳ない目でまほは見ている。自分が、あんなことを頼まなければこんなことには、あんな作戦を立案したばかりに、自分は華を辱しめてしまった。こうなってしまったのは自分の責任だ。そして、Ⅳ号に同乗させてもらっている紗希は、そんな先輩の背中を慰めるようにさすっている。だが、後輩である紗希の目の前でというのもまた華のことを苦しめていた。もう親に顔向けなどできはしない。ただでさえあの性格からすれば、自分が戦車道をするということにたいして嫌悪感を示しかねないというのに、それに加えて自分の娘がそんなはしたないことをしてしまったと知られれば、自分もまたみほやまほのように勘当されても文句は言えない。

 ここまで華を悲しませている理由、それは……。

 

「高校生にもなって、漏らしてしまうなんて……」

 

 一人の女の子とし、乙女として死活問題とも言えるようなものであった。

 試合が終わった直後、腰が抜けてまほの膝の上に降り立った華は、落ち着いた頃を見計らって喜んでいる沙織と優花里のてをとろうとした。だが、そこで気がついたのだ。なんだか、自分の股が異様に濡れているということに。本当に最初は汗であると思っていた。でも、なんだかそれにしては輛が大息がする。それに、その臭いは運動した後の臭いというにはあまりにも臭かった。まさか、そんなことはない。そう思いながらスカートをたくしあげた先にあった自分のパンツには、黄色い染みが大きく広がっていた。もう、間違うはずがなかった。その事を知ったAチームは、沙織と優花里だけを降ろし、操縦手である麻子と、まほ、途中で華を慰めるための要員としてのみほを拾い学生が使用する大浴場に向かう。あそこならば洗濯機もあるし、この時間からいれば貸しきり状態であるようなものだからこれ以上華を辱しめることはないだろう。なおその際M3の梓からついでに紗希も一緒に連れてってもらいたいと言われて、こうして同乗させてもらっているのだ。

 

「それに、まほさんのスカートも汚してしまって、私とんでもないことを……」

 

 まほの膝の上にいたということはその下にあったまほのスカートにも華の尿がついたということでもある。その華の言葉の通り、まほの履いている大洗のスカートにも大きな染みがついている。自分だけならまだいいが、他人にまで迷惑をかけてしまった。特にまほが大洗の制服を来はじめてまだ1週間もたっていない。そんな新品の制服を汚してしまったという罪悪感を、華は感じている。

 

「私は気にしていない、むしろ……」

 

 悪いことをしてしまったな。その言葉を、まほは心のなかにしまった。もしも自分があんな作戦を思い付かなかったら、彼女の自尊心を傷つけることはなかった。自分が目と足の中継点になるなどせずに、発信源になってさえいれば、少なくとも彼女が恐怖に身体を縛られるということはなかった。またしても、自分の大きなミスが招いた最悪な自体。自分は、いったい何度人を傷つければいいのだろう。やはり自分には……。

 

「華さん、慰めにはなってないかもしれないけど……私も、よく漏らすの」

「え?」

 

 そういったのはみほだ。みほは、戦車に搭載した車イスの後ろについているポケットから袋に入った一本のチューブを取り出して華に見せる。

 

「これね、カテーテルって言うんだけれど、トイレに行くときはこれをいれて尿を出すの」

 

 それは、自己道尿と言われているもの。下半身の感覚のない、筋肉に力をいれることのできないみほは、尿意というものを感じることができず、また我慢することもできない。つまり、尿が膀胱に貯まれば出すといった健常者であればなんのこともないようにできる行動が阻害されてしまっているのだ。だから、定期的にトイレに向かっては、そのカテーテルを自分でいれて、膀胱内にある尿を出さなければならない。しかし、そうそう何度もトイレにいけないときは、膀胱ないにためることのできる尿の容量をオーバーしてしまい溢れだす、つまり漏れてしまうことが多々あった。その恥ずかしさは、何度経験してもなれることはない。高校生にもなってお漏らしをするなんてまるで赤ちゃんのようだ。そう思うがしかし、それが今の自分なのだからと半ば静観の姿勢をとっていたみほだが、でもそれが人生が終わってしまうのではないかというほどに恥ずかしいことであるのだと、華は改めて思い出させてくれた。

 みほのことが、とても輝いて見えた。自分がよく漏らすという言葉を、自慢するように言うような人間恥女ぐらいしかいないだろう。それを言って喜ぶ人間なんて変態ぐらいだし、そう考えると彼女はとても堂々と自分の恥ずかしい記録のことについて話してくれた。それは、自分を励ますため。漏らすということは、生理機能が正常であるからこそ恥ずかしいし、自分のように漏らすということをどうしようもないことだと諦めていないからこそ辛いことであるのだと教えてくれているのだ。

 

「みほさん……え?」

「……」

 

 その時、華は肩を叩かれた。振り向くと、そこにはさきほどまで自分の背中を指すって慰めてくれていた後輩の紗希の姿。

 思い返してみると、今まで、自分はとても恥ずかしい姿を後輩にさらしていた。恐怖により失禁し、先輩にも迷惑をかけ、挙げ句の果てには後輩に慰められて、紗希に先輩としては一番見せてはいけないような姿ばかりをさらしている。こうして、面と向かい合うこともはじめてである紗希に、先輩はいつもおねしょをする人なのだと変なイメージをつけられたのかもしれない。

 羞恥と恥辱のダブルパンチに、またも華の涙腺が決壊しそうになる。自分はこんなにも涙もろい、弱い人間だっただろうか。もしかしたら、知らないうちに自分は心が壊れてしまったのかもしれない。あの恐怖のなか放出された屈辱にまみれた自分の中の女としての部分が、悪い方に変えられてしまったのかもしれない。いつの日か、自分はこうして失禁するということを当たり前であると、あるいは気持ちいいとすらも感じてしまうのだろうか。それとも、誰かに見てもらいたいとすら願ってしまうほどの地徐に変わってしまうのではないか。ネタバレをするとそんなことは絶対にない。なぜなら彼女は五十鈴華だからだ。いくら彼女を恥辱が襲ったとしても、五十鈴華としての自分を忘れなければ、そのような人間に書き換えられるということはない。

 人間はちょっとの恥辱で変わるような人間ではない。男ならまだしも、女性はそんなに弱い生き物じゃない。人類早世の時代より、女性は男よりも弱い生き物として扱われるときがあった。しかし、強い男と言われたものたちの裏には、いつも女性の姿があった。女性が、男を支えてきた。女性がいなかったら、男はいきることも、生まれることすらもできなかった。女性というのは、この世界を支えている大黒柱なのだ。心が強く、そしてたくましい者なのだ。そんな女性が辱しめを受けただけで変わってしまうのであれば、それはきっとただのフィクション。偽の物語。本当の女性を知らないものたちが紡いだただの妄想、願望、そして暴論。であれば暴論には暴論で対抗する敷かないのが人間の常。

 華のした粗相は別になんでもない。それは、人間として全うな反応。怖かった、恐ろしかった、寒気が走った。死にそうな状況に陥ったからこそ、それが一瞬で過ぎ去ったからこそ、彼女は全身の筋肉が弛緩し、膀胱の筋肉も揺るんだ結果の必然。死にそうな状況にあって、腰が抜けなくなるほどに鍛えるのにどれくらいの歳月が必要か。どれくらいの忍耐力が必要か。はたまた、どれくらいの度胸が必要か。それ以外であったのならばそれこそ、無事であるのは死にたがり屋ぐらいしかいないのではないだろうか。彼女は死にたがりじゃない。どうしようもないほどの生きたがり。やりたいこと、やってみたいことがあるお年頃。夢も希望もまだ失っていない、子供と大人の中間地点を越えたばかり、それが高校生。

 

「……」

 

 紗希は、華の顔を見ながら、普通の顔とも、笑みとも、悲しみの表情ともとれるような表情を浮かべる。

 一年生チームのなかで、紗希だけは異端だった。どんな危険な状況でも動じず、笑みすらもこぼす紗希の勇敢な姿に、梓もまた勇気付けられた。でも梓が、それがちょっと違っていたのだと気がついたのは試合が終わってすぐのこと。華に、感情深い顔を見せた紗希は、スカートをたくしあげる。そして……。

 

(ボッチじゃなかったですよ)

 

 声、聞こえずとも、そういってくれているかのようだった。彼女も、またあのとき怖かったのだ。怖くてたまらなかったのだ。一年生チームのなかでもっとも勇敢で、そして大物だと思っていた女の子が、一番臆病で、そして優しかったのだ。

 

「そうですよね、怖かったですよね、紗希さん……」

 

 そういいながら、華に抱きつかれた紗希は思う。他の友達と違って試合前にトイレに行かなかったということに最初はとても後悔していた。でも、怖かったのは自分一人じゃないと華が教えてくれて、そして自分からも華に教えることができた。自分が、こんな性格で本当によかったなと。

 

 

 

 これが、大洗女子の名物兼伝統となった戦車に乗る前には必ずトイレで大行列を作るに至った裏話である。




 途中のカテーテル、自己道尿関連の話は脊髄損傷にもその場所によっても症状が千差万別様々あるということを前提に……後書きに書くとこではありませんが見てください。
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