ベル・クラネルが復讐者なのは間違っているだろうか   作:日本人

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むう⋯⋯⋯。ネタは湧いてくるのに文字を打つ手が進まん⋯⋯⋯。
そしてマリアの口調はうろ覚えだぜ⋯⋯⋯。
更新遅くなってすいませんでした⋯⋯。


危機と救援と

────とある裏路地にある酒場

「さあさあどんどん賭けてくれ!オッズ比は8:2と成功側が優勢だぜ!今ならまだ間に合うぞー!」

「ガネーシャ・ファミリアの連中が成功する方に5000ヴァリスだ!」

「俺は失敗に2万!」

「おいおい大穴じゃねぇか!大丈夫なのか?」

「いいんだよたまには!」

「そう言ってお前この前もスってたじゃねーか!」

「うっせえ!」

「「「「「ギャハハハハハハ!!!」」」」」

オラリオの裏通りにあるとある酒場。ここではガネーシャ・ファミリア協力の下、怪物祭を対象とした賭博が主に冒険者達の間で行われている。こう言った場所は珍しくなく、あの豊穣の女主人亭でも同じ様な光景を見られる事だろう。男達の野太い声が響く中、酒場の扉が開かれる。

「おう、いら────ッ!?」

店主が声を上げようとした所で絶句する。近場の冒険者達は何事かと思い酒場の入口に目を向ける。

そこには首と手足に中ほどから断ち切られた鎖をぶら下げた白い魔猿────シルバーバックがこちらを見つめていた。

「⋯⋯⋯は?」

誰かの呟きが酒場に小さく響き渡る。やがて酒場の者達が一人残らずシルバーバックに気付いた。そしてその瞬間、

『グォォォォォォォォォオオオオオ!!!!』

オラリオの一角で、女神の悪意が動き出す。

 

 

 

 

『モンスターだぁぁぁああああああ!!?』

 

「「ッ!?」」

広場の片隅、人々の喧騒で賑わうそこに突然の凶報がもたらされた。

────怪物祭用のモンスターが脱走した。

その言葉がもたらしたのは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。武器を持たない一般人は逃げ惑い、あまりの事態に冒険者達すらおどおどするばかり。その光景を少し離れた場所で1人の男が睥睨していた。

「ふーむ、流石フレイヤ。動きが早いな」

男は眼下の狂乱を一瞥し、そう呟く。近くには眼鏡をかけた美女が控えていた。

「⋯⋯どうされますか?あまり好き勝手されるのも困りますが⋯⋯」

「いや、暫くの間は俺達は傍観に徹するぞ。今あの女に目をつけられても困る。それに────」

男は街の一角で一匹のモンスターを相手取っている白髪の少年を見やる。

「────彼の邪魔をする訳にも行かないしな」

男は身を翻す。

「頼むぜベル・クラネル。これは()()の復讐だ」

男はそれだけ言って付き従う美女と共に姿を消した。

 

 

 

 

 

「シィッ!」

「ブヒィイイ!?」

突如始まったモンスター達の襲撃。僕は真っ先にこちらに襲いかかってきたオークの鼻っ面を蹴飛ばし、距離をとる。当然背後にはシルさんを庇っている。

「っらぁ!」

「プギャアアア!?」

顔面に蹴りを叩き込まれたオークはたたらを踏む。その隙を逃さずに僕は銀指でオークの左眼を潰す。

⋯⋯これで暫くは大丈夫だろう。今のうちにシルさんを逃がさなければ。

「おい!何処に逃げりゃいいんだよ!?」

「俺が知るか!?連中は『ダイダロス通り』の方に向かっていったから反対方向に逃げりゃいいだろうが!?」

⋯⋯周囲は既に混乱の極み。他の冒険者達もパニックになっている事から支援も期待出来そうにない。⋯⋯やはり早くシルさんを逃がさないと。

「シルさん!早く───」

───逃げましょう。そう言おうした所で彼女の顔が真っ青になっている事に気付く。

「シルさん!?」

「だ、ダイダロス通りに⋯⋯モンスターが⋯⋯そんな、あの子達が⋯⋯⋯」

すっかり青ざめたシルさんは何事かをブツブツと呟いたかと思うと突然走り出す。向かう方向は先程冒険者達が言っていたダイダロス通り。

彼らが言うにはモンスター達が向かっていった方向である。

「シルさん!そっちは⋯⋯⋯っちぃ!?」

「ブギィィィイイイイ!!!」

追い掛けようとするも片目を潰され、怒り狂ったオークが手足に嵌められた枷を振り回して妨害してくる。

「邪魔をっ⋯⋯するなぁ!!」

僕は即座に銀爪へと換装し、オークを始末しにかかった。

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯ギルドが騒がしい?」

「⋯何や随分と騒いどるなぁ」

フレイヤとの会談を終えたロキ達が見たものは慌ただしくギルド内を駆け回る職員達。怒号と悲鳴が飛び交うその場は明らかに何かしらの異常が起きた事を示していた。

「⋯なぁ自分?何かあったんか?」

訝しげに思ったロキはたまたま近くを通りかかったハーフエルフの職員────エイナに話しかける。エイナは彼女らを見た途端に驚愕し、

「神ロキ⋯⋯アイズ・ヴァレンシュタイン⋯!?」

思わずといった風にその名を呟く。が、すぐにハッとなって、状況を説明する。それを聞いたロキは呆れたように、

「か〜〜〜〜〜〜〜!ガネーシャのアホは何をやっとるんや?寄りにもよってダンジョンのモンスターを逃がすとか⋯⋯」

「⋯⋯現在、ガネーシャ・ファミリアを中心とした救助活動、及びモンスターの捜索が行われています。申し訳ありませんが⋯⋯」

「協力してくれっちゅーんやろ?」

「⋯⋯はい。いかんせん人手があまりにも足りていません。なので⋯⋯」

「わかっとるよ。アイズたん」

「⋯⋯ん」

ロキの言葉に小さく首肯したアイズは疾風のごとき速度であっという間に走り去ってしまった。当然行き先は怪物が跋扈するオラリオの市街地である。アイズが去った後、ロキは思考の海へと深く潜る。

(フレイヤが去った後すぐにこの騒ぎ⋯⋯⋯考え過ぎか?けどあいつの事やからこれくらいやってもおかしくない。けど高々1人の子供の為にここまでするか?第一どうやって取り込むつもりや?そしてここまでしないと取り込めない程その子供は大物なんか?〜〜〜〜だめや。考えても疑問しか出てこんわ)

ガシガシと頭を乱暴にかくロキ。そしてふと、ベルが街に出ている事を思い出す。

「⋯⋯まさか、な」

その考えは正鵠を射ているのだが、今の彼女は知るよしも無い。

 

 

 

 

「ハッ⋯ハッ⋯ハッ⋯ハッ⋯!」

シルは現在、オラリオ屈指の迷宮路『ダイダロス通り』を走っていた。既に全身汗に塗れ、顔は真っ赤である。それでも彼女は走るのを止めない。

(早く⋯⋯ッ!早く行かなくちゃ⋯⋯!)

走る走る走る走る走る。決して足を止めずに走り続ける。もはや冒険者並ではないかというレベルで走る。

そのまま暫く走り続けると、やがて少し開けた場所に出る。そこには少し古ぼけた教会が佇んでいた。

「ッ!」

シルは最後の力を振り絞り教会に駆け込んだ。

「マリアさんッッ!!!!」

教会扉にぶち破る勢いで突撃し、扉の開く激しい音とともにシルは教会内に転げながらも入る。中には1人のシスターと複数人の少年少女達がテーブルを囲っている。どうやら食事中だった様だ。

「し、シルさんっ!?ど、どうしたんですか!?」

「そ、そうだ!どうしたんだよ!?」

「シルお姉ちゃん大丈夫!?」

「だいじょーぶ!?」

中にいた面々は驚愕し、すぐにハッとなってシルに駆け寄る。シルは彼女らの問いかけに答えず必死になって言う。

「ハッ⋯ハッ⋯!早く⋯⋯!早く逃げてっ!モンスターがっ!?」

「モンスター!?どういうことなんですシルさん?」

「説明してる暇は無いんです!!早く逃げないと!」

必死の形相で避難を訴えかけるシルに何かを察したのかマリアは小さく頷き子供達に呼びかける。

「皆!逃げる準備を!大きな子達は小さな子達を連れて行って!ライ!貴方は寝ている子達を起こして来て!」

「「「「「ッ!」」」」」

「わ、わかったよ!」

マリアの号令とともにキビキビと動き出す少年少女。ライと呼ばれた少年は恐らく他の子供たちがいるであろう奥へと走っていった。

そして数分後には20人を超える子供たちが揃っていた。

「シルさん!揃いました!」

「なら早く逃げましょう!もう時間が!」

「分かりました。皆!はぐれないように付いてきて!」

号令と同時に彼女らが避難しようとしたその時、()()はやって来た。ソレはゆっくりと路地のうちの一つから姿を現す。

「グルルルルルル⋯⋯⋯⋯」

「ヒッ!?」

「う、うわぁっ!?」

「も、モンスター⋯⋯⋯!?」

現れたのは白い毛並みを持つ猿型モンスター、シルバーバック。主にダンジョンの十階層付近で見られるモンスターである。ただ普通と違う点はその手足に枷が嵌められている事だろうか。シルバーバックは唸り声を上げながらゆっくりとシルたちに近寄ってゆく。

「グゥウウウ⋯⋯」

「い、いやぁ!?」

「こわいよぉ!!」

「やだぁぁあ!!」

「み、皆落ち着いて!」

マリアが必死になって抑えようとするが子供達はパニックになり手が付けられない。中には腰を抜かしてしまっている者もいた。到底逃走は不可能である。

「あ⋯あ、あぁ⋯⋯」

ついにはシルは膝をついてしまう。前方にはシルバーバック。後方には動けない子供達。

────逃げられない。

その言葉がシルの心中を埋めつくしていた。やがて、シルバーバックはシルの目と鼻の先まで近寄って来た。そのままゆっくりと怪物(シルバーバック)は目の前の獲物(シル)へと手を伸ばす。

(い、嫌⋯⋯⋯!)

拒絶しようにも恐怖で身体が動かない。まさに詰みの状態であった。

(誰か⋯⋯⋯助けて⋯⋯!)

当然助けを求めようにもこんな所に冒険者が居るはずも無く、

(助けて⋯⋯⋯!)

やがてシルバーバックの手がシルに触れ────

「ベルさんっっ!!」

────る事は無かった。いつまで経ってもシルバーバックが自身に触れる気配が無く、訝しげに思ったシルが目を開けるとそこには────

 

 

────灰となって消えていくシルバーバックを向き、こちらに背を向けている白髪の少年の姿があった。その少年はゆっくりとこちらを振り向き、

「⋯無事ですか?シルさん」

そう、言った。

「ッッ!!!ベルさんッッ!!!!」

その言葉に緊張の糸が切れたシルは思わず彼に抱きついてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

危なかった⋯⋯⋯。必死になってダイダロス通りを駆け回り駆けつけてみればシルさんがモンスターに襲われている場面に遭遇。間一髪で間に合った。そう、間に合ったのだが⋯⋯⋯、

「ベルさん⋯⋯ッ!ベルさん⋯っ!ベルさぁん⋯⋯⋯っ!」

シルさんが思いっきり抱きついてるのだ。正面から。それだけならまだいい。が、当たってるんだよ、シルさんの立派なアレが⋯⋯!それに加えてシルさんの後ろにはシスターが1人と複数人の子供達。彼女たちに思いっきり見られているのだ。それはもうあの大会なんて目じゃないくらい恥ずかしい。正直名残惜し⋯ゲフンゲフン⋯非常事態なのでシルさんを引き剥がす。

「し、シルさん?とりあえず避難しましょう?ほら、他の人達もいますし⋯⋯⋯」

「⋯⋯?⋯⋯⋯。⋯⋯⋯!?」

ハッとなったシルさんは一瞬顔を赤く染めたものの、何事も無かったかのように居住まいをただし、

「さぁマリアさん!早く避難しましょう!」

「え、えぇ⋯」

あまりの急展開に軽く混乱しているのか返事に力がないシスターマリア。さて、僕も避難と行きたいところだが⋯⋯、

「どうもそうは行かないか」

「グゥゥゥルルルル⋯⋯⋯!」

更に現れたのはトロール。レベル3の中でも上位に位置するモンスターである。まかり間違っても僕が敵う相手ではないが⋯⋯、

「シルさん。子供達を連れて早く」

「!?そんな!?それならベルさんも一緒に⋯!」

「僕は冒険者です。それなのにモンスターから逃げるなんて出来ませんよ」

「でもベルさんはまだ新人のレベル1なんでしょう!?アレはレベル3にカテゴライズされているトロールですよ!?ベルさんじゃ敵いませんよ!?」

「それでも、誰かが足止めしないと全員が犠牲になります。だったら僕がやるしかないじゃないですか。なぁに、足止めを終えたらすぐに逃げますよ」

「⋯⋯⋯本当に大丈夫何ですか?」

「大丈夫ですから、早く逃げて!」

「⋯⋯⋯わかりました」

シルさんはそのまま踵を返し────

「あぁ、そうそう。シルさん」

「?」

「足止めするのは良いんですけどね────」

僕はニヤリと口角を上げてみせる。

「別に倒してしまっても構わないんでしょう?」

そう笑いながら言う。数瞬ポカンとしたシルさんはぷっと吹き出し、

「はい!存分にやっちゃってください!ベルさん!!」

同じ様に笑顔で告げて子供達と共に避難して行った。さて、と。

「言ったからにはやり遂げてみせるさ⋯⋯⋯!」

僕は銀爪の切っ先をトロールに向け、獰猛な笑みを浮かべた────




言わせたかったセリフ言わせれたぜヒャッハーーー!!
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