ベル・クラネルが復讐者なのは間違っているだろうか 作:日本人
⋯⋯完結させろ?ハイ、オッシャルトオリデスハイ。
短いです。そして戦闘描写もクソです。御容赦ください。
「とは言ったものの⋯⋯⋯」
僕はこちらを睥睨するトロールに目を向ける。
(どうやって仕留めようか⋯⋯⋯)
まず第一にポテンシャルの差が大き過ぎる。少なくとも目の前の怪物は力・耐久の点で僕を大きく上回っているだろう。仕留めるならば首筋───それも最も肉の薄い部分から頸動脈を掻っ捌く必要がある。ならばそうするべきか───否である。トロールは全身が厚い脂肪に覆われており、さらにその下には分厚い筋肉の層が隠れている。不用意に攻撃すれば脂肪と筋肉に刃を絡め取られ、動けなくなったところをその剛腕で叩き潰されるだろう。こちらとしては奴の全身の切り刻み失血死を狙いたい所ではあるが⋯⋯。
「グガァァア!」
「ッ!考え事も許されないか!」
振るわれる右腕を躱し、一拍遅れて飛来する鎖を銀爪で受け流す。
「シッ!」
大きく隙を晒したトロールを脇、腹、肩と3度すれ違い様に切りつける。だが奴はまるで何かしたかと言わんばかりにゆっくりとこちらを振り向く。
(やっぱり刃が殆ど通らなかった⋯⋯。可能性としては脇か⋯?)
感触としてはやはり人体と同じ様に脇の部分が柔らかかった。あくまでも他に比べればという程度であるが。
「ガァッ!」
「っと!」
先程のように振るわれる右腕。しゃがむ事で何とか回避する。ガラ空きなトロールの足元に潜り込み、右脚の腱に爪を突き刺す。
「グォアッ!?」
今度は確かに痛みを感じたようでトロールが悲鳴を上げ、脚を振り上げる。潰されてはかなわないのでさっさと離脱、次の動きに備える。トロールはそのまま尻もちをつき、脚の様子を確かめる様に何度かさする。
「浅かったか⋯⋯」
そしてゆっくりと立ち上がるトロール。どうやら奴の腱を断つことは出来なかったらしい。とはいえ、奴はこちらを警戒してくれた様で動こうとしない。それはそれで良い。所詮僕の役割は足止め、シルさんにはああ言ったが倒せるなんて考えは欠片程も持ち合わせていない。確かに僕には格上を打倒するためのスキル『
「精々他の冒険者達が来るまでそこに立っていてくれ」
僕はトロールにそう吐き捨てる。そしてそのままどちらも動かないまま時間だけが過ぎていった───。
フレイヤ・ファミリア麾下のとある酒場の一室
「あぁ⋯⋯⋯ダメよベル。」
誰も居ないその部屋の中でフレイヤは1人心地る。目の前に浮かぶ『神の鏡』にはトロールと相対するベルの姿が映し出されていた。
「ダメよ⋯誰かに任せるなんて私が許さないわ」
スッ⋯とフレイヤのしなやかな腕が持ち上げられる。その指先は薄らと光を宿し、やがて消えていった。
「精々役に立ってもらうわよ
少女に宿る悪意が────芽吹いた。
それはあまりに予想外の事だった。
「⋯⋯えっ?」
「グォ?」
トロールの後ろからフラフラと歩み寄る1人の少女。それは先程逃げたはずのシルさんだった。
僕は頭が真っ白になり────間髪入れず走り出す。トロールが反応する前にシルさんに飛びつき、トロールから共に離れる。
「っ!シルさんっ!何で戻って⋯⋯っ!?」
「グォォオ!」
「ッチィ!」
トロールがそれを許さない。振るわれる剛腕を躱────せない!今躱せば間違いなくシルさんに当たる。そうなれば彼女は間違いなく肉塊へと成り果てるであろう。僕はそれを食らう事を余儀なくされた。
「っがぁあ!?」
僕は思いっきり奴にぶん殴られる。吹き飛びそうになるが何とか踏み止まり、飛んできた鎖を爪で受け流す。出来れば奴の拳も受け流したいところであるが、
「ぐがっ!」
────デカすぎる。トロールの体躯から放たれる剛腕の威力は文字通り桁外れ。非力な僕では鎖を受け流すのが精一杯だ。奴の顔を見れば醜悪に歪んでいる。僕が避けないのを見て気を良くしているらしい。
「ぎぃっ!?」
これはゲームだ。ベットするのは自分の命。勝利条件は援軍が来るまで。敗北の代償は────シルさんの命。
「ぐぁっ!?」
分が悪いなんてもんじゃないくらいクソッタレな賭。悪態が湯水のように湧いてくる。
「ッッ!!」
殴られる。
「ッハァ!」
受け流す。
「ごっ!?」
殴られる。
「シィッ!」
受け流す。
殴られる。受け流す。殴られる。受け流す。殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す殴られる受け流す。
幾度も幾度も繰り返す。ただ彼女を守る為に。だが限界は訪れる。幾度もトロールの攻撃を喰らい、受け流し続けた僕はとうとう膝をつく。
『何故だ?』
────誰かの声が聞こえる。
『何故その女を助ける?お前には何の利点も無いはずだ』
────それは⋯⋯。
『さっさと見捨ててしまえ。こんな所で朽ちてしまえば復讐は遂げられんぞ?』
────────。
『そしていい加減気付け。奴に見られているぞ?』
────何を言って──ッ!
『気付いたか?そうだ奴だ。憎々しいあの売女が貴様を見ている』
────ァ⋯⋯アァ⋯⋯!
『この茶番も奴の手によるものだろう。付き合ってやる義理などない。さっさと見捨てろ。いつまで奴の手のひらの上で踊る気だ?』
────そう⋯か。そういう事か。
『諦めがついたか?それで良い。さっさと逃げ────』
────
『────何?』
────逃げる?もう一度言ってやる
『ほう⋯⋯。そのボロボロの肉体で何が出来る?』
────出来るかどうかじゃない。
『第一、なんだ?』
────この程度で逃げる様で復讐なんてやってられるかよ。
『────ククッ、クハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!そうだ!それでこそ復讐者!その鋼鉄の意志こそがオレの求めていたものだ!』
────何を⋯?
『言ったはずだ!〝待て、しかして希望せよ〟と!さぁ立て!今のお前にこそこの力は相応しい!!』
カチリ、と何かが外れたような音が聞こえる。それと同時に身体から力が溢れてくるような気がする────否、文字通りナニカが溢れてくる。
────ソレは黒い焔。だけど熱くは感じない。むしろ心地いいとさえ感じた。そんな僕を不気味に思ったのかトロールは後ずさる。
「これは⋯⋯⋯」
気付けば痛みは無く、それどころか万全の状態でいる様だった。
『さぁ共犯者よ!その力を振るえ!奴に見せつけてやれ!!キサマに己の手は届くぞと!!証明しろ!!!』
「あぁ、確かにやれる。けど────」
────1つ訂正だ。
「
『────クッ、ハハハハハハハハハハハハハハ!!!あぁ良いだろう!ならば行こう────』
「あぁ行こう────」
『「恩讐の彼方へ────────!!!!!」』
────また1人、復讐者が目覚めた。
────彼の者の名は
────彼の者が宿りし復讐者。未だ完全なる目覚めを見せず。
────
────彼の■■悪が齎すものは果たして。