ベル・クラネルが復讐者なのは間違っているだろうか   作:日本人

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お久しぶりです、えぇ、はい。
素で忘れてました申し訳ないです⋯。
完結させられるように頑張ります。


恐怖と憤怒と

ダイダロス通りの一角、白き復讐者と醜い怪物との戦いを見物する男が居た。その肉体は巌の如く、一部の無駄もない完璧な肉体。その双眸は真っ直ぐに復讐者を見つめている。

「⋯⋯⋯⋯⋯」

男は何も言わない。ただ戦いを見ているだけである。

が、その目には確かな失望の色が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

瞬間、僕は()()()()()、トロールの眼前へと躍り出る。奴が驚愕に目を見開き、迎撃しようとするが遅い。僕は奴の顔面に全力の拳を叩き込む。

「グファッ!?」

声を上げて吹っ飛ぶトロール。奴の巨体が地面から浮き、誰もいないらしい民家に突っ込んだ。

そのレベル1が起こせるはずのない現象の原因は、間違いなく僕の体を覆うこの黒い焔なのだろう。

「随分と無茶苦茶な⋯⋯」

『クハッ、その無茶苦茶を望んだのは貴様だがな?』

共犯者の声を聞きながら軽く拳を開閉し、感触を確かめる。

確認しただけでも身体能力の大幅な向上に空中を駆ける異能、更には痛覚まで殺されているらしい。

正直ありがたい。これなら何の躊躇もいらず無茶が出来るのだから。

奴に目を向ければ顔に手を当て、二、三度頭を振りながら立ち上がっている所だった。奴はその双眸に怒りを宿し、こちらを睨み付けている。そして唸り声を上げるとこちらに殴りかかって来た。

振るわれる剛腕。それをひらりと躱し、直後に飛来する鎖も躱す。どうやら反射神経などの部分も強化されているらしく、するりと躱してしまえた。それが気に入らない様で攻撃が一気に激しくなる。

「⋯⋯その鎖、邪魔だな」

次々と振り下ろされる腕を避け、飛んできた鎖を()()。奴は驚愕し、必死に引っ張るが、僕の身体はピクリとも動かない。純粋なパワーがすっかり逆転してしまっているらしい。逆に僕は鎖を引っ張り返す。突然のことに反応すら出来ずに身体事引っ張られるトロール。僕は右腕の鎖の根元の枷を思いっきり蹴り砕く。

「ギ、ギャアアア!!?」

トロールは手首を抑えながらのたうち回る。勢い余って手首まで砕いてしまったらしい。

「あぁ⋯⋯本当、気持ち悪い位の全能感だよ」

『クハハハッ。どうした?嬉しくないのか?』

「はっ、そんなの────嬉しいに決まってるじゃないか」

当たり前だ。これでまた一つ、奴の喉元に近づいた。奴を殺す為の新しい力が手に入ったのだ。これを喜ばない理由がない。

『ククッ、オレが言えた義理ではないがここまで復讐の事しか頭に無いとはな。それで、いいのか?奴がまたなにかしているようだぞ?』

「⋯っ!」

見れば倒れていた筈のシルさんが立ち上がっていて、フラフラとトロールに近づいて行っている。奴はそれを見てニヤリと醜悪な笑みを浮かべ、シルさんに手を伸ばし────

「これ以上────」

奴とシルさんの中間に一瞬で移動する。面食らう奴に目も向けず、シルさんを抱えて奴から離れる。そして、奴に正対し、

「────僕を怒らせるなよフレイヤァッ!!」

全力で右の鉤爪を一閃する。ブチブチと音を立てながら奴の筋肉を引き裂き、断裂させる。

後に残ったのは左腕を失ったトロールとひしゃげた銀爪を分離させる僕、そして宙を舞い、音を立てて地面に叩きつけられた巨大な左腕だけだった。

「グ、ォォォォオオオオ!!!??」

一瞬後に奴の左腕があった場所から大量の血が吹き出し、それを知覚した奴は悲鳴を上げる。聞くに耐えないおぞましい声。

もう、いいだろう。

「終わらせる。力を貸せ、共犯者」

『あぁ、いいとも!オレの力を振るえ共犯者!奴に貴様の力を見せつけろ』

「言われなくても⋯⋯⋯!」

────熱い。

身体の中心に熱が集まっているのを感じる。それだけじゃない。身体から吹き出す焔も勢いを増していた。

あぁ、そうだ。こんな茶番を終わらせる⋯⋯⋯!

『「────我が往くは恩讐の彼方」』

 

 

 

 

 

 

 

何故だ!何故なんだ!

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!

トロールの思考を埋めつくしていたのは憤怒、そして困惑だった。

何故自分は矮小な人間如きに追い詰められているっ!?確かに自分はあの人間を追い詰めていた筈!後一歩で殺せたはずなのに!それなのに────

『「────我が往くは恩讐の彼方」』

────何故、自分はこうも追い詰められているのだ!どうしてこうなるっ!?これでは()()()()────。

そこでトロールの思考は止まる。彼は彼自身の考えに疑問を抱いた。

────あの方?あの方とは誰だ?いや、そもそも何故自分は────

彼の思考は、そこまでだった。突然、彼の視界には同じ顔をした白髪の少年が複数人映る。それは、間違いなく自分を追い詰めた敵だった。

「グ、フォアッ────」

『「虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)」!!!!』

それが、最後。次の瞬間には、彼は物言わぬ肉片へと姿を変えた────。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、ハァッ!ハァッ!」

トロールを肉片へと変えた後、全身に疲労を感じ思わず膝をつく。それと同時に焔も消え去り、再び身体にはじくじくとした痛みが戻ってくる。共犯者の声も聞こえなくなった。漸くの終わり、と言った所だろう。

「ハァッ⋯⋯ハァッ⋯⋯。ッ、そうだ、シルさん!?」

振り返り、彼女の方を見る。が、何故かその姿は無く、後には何も残されていなかった。

「ッ、チィ!今度は何処に────ッ!?」

殺気を感じ、咄嗟にその場を飛び退く。一瞬後、その場には巨大な大剣が突き刺さった。僕の身の丈を超える長さを持つソレは確実にこちらを殺す気で放ったものだろう。

何者か────。問いかけようとした時、“奴”が現れた。

「っあ⋯⋯な、ぁあ⋯⋯⋯!?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

卓越した肉体、鋭い眼光、何よりも猪人(ボアズ)である事を示す猪耳。

フレイヤ・ファミリア団長 レベル7『猛者』オッタルがそこには居た。突然の事に声も出せない僕に対して奴は、

「失望したぞ、小僧」

唐突に、そう言い放った。その一言に一瞬で僕の頭は沸騰する。実力差すら理解せず、僕は奴に飛びかかった。気づけば黒焔を再び見に纏い、奴に殴りかかっていた。オッタルはそれをあっさりと片手で受け止める。

「ッ、フレイヤの犬がァ!!何のつもりだァ!!!」

「失望した、と言っている」

「ッ、ぎぃッ!?」

何が起こったのか、分からなかった。それを認識した時、既に僕は奴の手によって地面に叩きつけられていた。レベル7の膂力で思い切り叩きつけられた僕は地面にめり込む。必死の思いで身体を起こし、オッタルを睨みつける。が、奴は僕の怒りなど何処吹く風、何事かを語り始める。ソレは────

「全く以て期待外れだったぞ、大神(ゼウス)の落し子よ」

「ゼ⋯⋯ウス?一体何を⋯⋯」

「あれ程までに解りやすい罠に馬鹿正直に突っ込んでくるとはな。愚かにも程がある」

────何を言っている。コイツハナニヲイッテイル────!?

「何⋯⋯⋯を⋯⋯⋯」

「貴様の祖父が死んだ時、現場にあったものはなんだ?」

「そ⋯⋯れは、貴様らの⋯⋯⋯名が⋯⋯」

「刻まれたエンブレム、か?」

「なんで⋯⋯⋯知って⋯⋯!?」

「ここまで言っても解らぬか?ならば解りやすい様に言ってやろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様がオラリオに来たのも、復讐者となったのも、全てがあの方の描いた筋書き通り、という事だ」

 

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯⋯は?」

信じられない事を宣うオッタル。言葉の意味は分かる。が頭がそれを理解するのを拒んでいた。

────つまり⋯⋯僕は、フレイヤの掌の上で踊っていた⋯⋯⋯?

「ッ、ぐぅ⋯⋯!」

こみ上げる吐き気を必死に抑える。そんな僕を見て奴は蔑んだ様に吐き捨てる。

「全く以て滑稽だ。何故わざわざあの様な解りやすい証拠を残していたと思う?全て、貴様をオラリオへと釣り出す為のエサだ。それに気づかずに⋯⋯⋯まるで道化師だ」

「⋯⋯⋯っ!く⋯⋯⋯そがぁ⋯⋯!!」

あぁ、僕はなんて愚かだったのだろう。奴の言う通りだ。少し考えればわかる事。が、僕はそれを考えなかった。目先の復讐に囚われ、こうも情けない姿を憎き奴らに晒している。

あぁ、なんと不様な────!!

奴の嘲りに、唸る事しか出来ない。

次の瞬間、オッタルが放った一言に僕は凍りついた。

「ふん⋯⋯⋯これでは貴様の父の方がまだマシだったぞ、小僧」

「ッ!?」

ガバッと顔を上げる。父?奴は今父と言ったのか?

「何を⋯⋯⋯何を知っている⋯⋯!?」

「ほう⋯⋯⋯そうか、何も知らぬのか」

「ッ!答えろッ!!何を知っている!?」

「そうか、そんなに知りたいか⋯⋯⋯⋯。ククッ知らぬとは幸せな事よなぁ、小僧?」

父の事を問うた瞬間、奴の鉄仮面が崩れ、嫌らしい、嘲りの笑みを浮かべる。僕はそんな奴に、怒りを抱く前に、()()()()()()()()

「ならば答えてやろう────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様の父、ジオ・クラネル。そして母、祖父⋯⋯⋯全て私が殺した。あの御方の指示でなぁ?」

────何度目、だろうか。思考が一瞬、凍り付く。そして湧き上がるのは燃えるような憎悪。

「貴っ、様がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

1拍後に吹き出す大量の黒焔。もはや爆発とも言えるソレを推進力に僕は奴に全力の拳を放つ。

「やはり────愚か」

そんな奴の声が聞こえた。そう認識した直後────振るわれた奴の剛腕により、僕は吹き飛ばされ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっそぉ⋯⋯⋯⋯」

無茶苦茶だ。そうティオナは思った。モンスターの脱走から始まり、謎の植物型モンスターとの戦闘。

姉や同じファミリアの親友と後輩と共に満足な武器すらない状態で戦い、植物型モンスター以外は殲滅した。が、決定打が無くモンスターを仕留めるまでには至らない。そしてモンスターも攻めあぐねていた。

状態はまさに千日手。そんな時だった。彼が()()()()()()()。彼は高速で飛来し、モンスターにぶち当たった。それでも勢いは止まらず、彼は近くの家屋に突っ込んだ。その場を姉達に任せ、吹っ飛んできた彼────ベル・クラネルに駆け寄るティオナ。

「酷い怪我⋯⋯⋯」

酷い状態だった。身体中から血を流し、気を失っている。軽く触診してみれば、身体中の骨が折れる寸前だった。そして何より────彼の象徴とも言える銀の右腕がひしゃげ、潰れてしまっていた。すでに死に体。かろうじて息はあるが、生きているのが不思議な位である。

このまま安静にさせ、自分はモンスターを倒そう。そう思った時だった。ベルはカッ!と眼を見開き、立ち上がる。突然のことにポカンとしていたティオナだったが、ハッとなり慌ててベルの元に駆け寄る。

「ちょ、ベル!?ダメだよ安静にしてなきゃ!酷い怪我なんだよ!?」

「⋯⋯⋯⋯ぁ」

「え?なんて────」

「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

突然の雄叫び。何事かと戦闘中のアイズ達もこちらを振り向いている。雄叫びを上げたベルの体からは見たことも無い黒い焔が噴出している。

「ベ────」

「邪魔だッ!!!」

「っ、きゃっ!?」

大丈夫なのかと問おうとした瞬間、普段の彼からは想像も出来ない荒々しい言葉と共に突き飛ばされた。

そのままズンズンとモンスターに向かって歩いて行くベル。当然モンスターが黙っているはずもなく無数の触手を伸ばし、ベルに襲いかかる。危ない!と誰かが声を発した。

「失せろッ!!!」

ベルは、それを全て黒焔を纏う片腕で薙ぎ払う。

「ギィィィィッ!!?」

痛みを感じているのか奇声を上げるモンスター。ベルはモンスターの本体であろう花の部分へと近づき、その口腔に腕を突っ込む。

「『これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮────』」

そして彼の口からは詠唱が紡がれる。モンスターもそれを理解しようとしたのか彼に触手を伸ばし────

「『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』!!」

彼が必殺の魔法名を叫ぶ。瞬間、モンスターの体から紅蓮の焔が吹き出し、その体を覆う。

「『我らが憎悪に喝采を』ォ!!!」

拳を突き上げるベル。その動きと連動する様に無数の槍が飛び出し、モンスターを貫く。

「ギシャァァァァァァァァァアア!!!??」

断末魔の悲鳴が鳴り響く。その悲鳴もやがて弱々しくなり、やがて途絶える。後には、魔石すら残らなかった。それと同時にベルも倒れる。アイズはハッとなり、彼に駆け寄った。それにつられるようにレフィーヤも。ティオネはティオナへと駆け寄る。

「ティオナ、あんた大丈夫?」

「⋯⋯⋯⋯⋯何が?」

ティオナに問いかけるティオネ。が、生憎とティオナはそれどころでは無い。

「何って⋯⋯⋯あんたレベル1に突き飛ばされたのよ?もしかしてあの新種との戦いでどっか怪我でもしたの?」

「⋯⋯⋯⋯さぁ?」

「さぁ?ってあんたねぇ⋯⋯⋯ん?」

ピチャリと水音が響く。何処かが水漏れでもしてるのかとティオネは周りに目を向けるがそんな様子は無い。ふと、妹に目を向ける。その頬は赤く上気している。

まさかと思い、妹の股間に目を向ける。簡単に言おう、グッショグショであった。更にはティオナは自らそこに手を伸ばし、弄っていた。

「はぁっ!?ティオナあんた何をっ!?」

「ティオネ⋯⋯⋯⋯⋯私、惚れちゃったかもしんない」

唐突に投下された最大級の爆弾。

「は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!???」

オラリオにアマゾネスの驚愕の叫びが、響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、こんな事になってると?」

「うん、まぁ⋯⋯⋯そういうことやなぁ⋯⋯⋯」

ちらりと、隣に目を向ければ僕に抱きついて眠るティオナさん。それを見て何とも言えない表情を浮かべるロキ様。とりあえずなんでこうなったのか説明しようと思う。

先程、目を覚ました僕の鼻腔に飛び込んで来たのは淫靡な香り。それは男娼時代に飽きる程嗅いだ雌の香りだった。何事かと思い、起き上がろうとすれば身体が動かない。左腕に違和感を感じ、目を向ければ息の荒いティオナさん。引き剥がそうにも義手は引きちぎれている。仕方なくそのままでいるとロキ様がいらして今に至る。ティオナさんがこうなっている理由を聞いたらはぐらかされた。何かあったのかな?

そして簡易的にだが僕が寝かされている理由も教えてくれた。

曰く、なんか戦闘中に吹っ飛んできてモンスターにぶち当たり、終いにはなんかよくわからん黒い焔使ってモンスター倒した、らしい。生憎とあのクソ豚野郎に対して恐怖心を抱いた事にキレた直後だからか記憶が曖昧だ。

「てか、ベルたんなんで吹っ飛んできたんや?」

「あぁ、それはですね────」

予想出来た問いかけに、予め用意していた答えを返す。

たまたま知り合いと出かけていたらトロールに遭遇、知り合いを逃がしてトロールと戦い、何とかこれを撃破した。その際にカウンターの一撃を食らって吹っ飛んだみたいだ────。嘘は言っていない。真実でもないが。

僕の口から語られた内容にロキ様は顔を顰め、やがて頭を抱えてしまった。

「あー⋯⋯うん。成程な⋯⋯⋯こりゃランクアップしてたのも当然やわな⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯ん?」

今さりげなくとんでもない事言ったよね?

「え?僕ランクアップしてたんですか?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ロキ様?」

何故か無言になるロキ様。やがてプルプルと震え、そして突如爆発した。

「ああそうや!!ランクアップしとったよ!?なんやねん約1月でランクアップて!?前代未聞どころやないで!!?どれだけウチの胃を痛めつけたら気が済むんやぁ!!!?」

「ろ、ロキ様⋯⋯?」

一気に捲し立てるロキ様。軽く涙目である。

「ハァ⋯⋯⋯ハァ⋯⋯⋯。っ、それでな?ステータスなんやけど⋯⋯⋯」

「は、はい」

息を切らせながらステータスが書かれているであろう紙を渡してくるロキ様。

⋯⋯⋯⋯流石に、僕も1月でランクアップというのは信じ難いものだった。

 

 

 

 

【ベル・クラネル】

 

Lv1 最終ステータス

 

力︰726 B → 999 S

 

耐久:643 C → 986 S

 

器用:895 A → 999 S

 

敏捷:972 A → 999 S

 

魔力:609 C → 893 A

 

 

Lv2

 

力︰0 I

 

耐久:0 I

 

器用:0 I

 

敏捷:0 I

 

魔力:0 I

 

 

《魔法》

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

・詠唱式【これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮】

・追加詠唱式【我らが憎悪に喝采を】

・指定範囲に付与

 

《スキル》

強肉弱喰(ジャイアントキリング)

・自分よりも強い相手と戦う時、ステイタスに高補正。

・こ■は、『■の■■ての■(■■■■■)』に■る■■■■■■■■■■■■

 

 

【鋼鉄の決意】

・『我が往くは恩讐の彼方』

・強靭な精神の証

・自身の意志での肉体的リミッターの解除

 

 

 

 

 

が、これを見れば信じない訳には行かないだろう。異常な上昇幅に変化したスキル欄の文面。間違いなく共犯者の奴の仕業だと、何故か確信していた。

 

「なぁ、ベル?」

「⋯⋯⋯はい」

珍しくおちゃらけた様子の無い雰囲気のロキ様。⋯⋯⋯まるでミノタウロスの1件の時のようだ。

「頼むから⋯⋯⋯⋯ホンマ頼むから無茶だけはせんでくれや⋯⋯?こんな異常な結果、とんでもない無茶をせんと出るはずがない。ベルはウチの()()なんや」

「ロキ様⋯⋯⋯⋯⋯」

本気だった。彼女は本気で僕の事を家族と言ってくれた。それが、たまらなく嬉しい。それと同時に、僕の家族を惨殺したあの豚野郎に対して憎悪が湧く。

「⋯?ベル、どうかしたんか?」

おっといけない。顔に出てしまったようだ。なんでもないと返しながら、ふと、シルさんの事を思い出す。気になって彼女の事を聞いてみると、どうやら無事で、僕が寝ている間に見舞いに来てくれていたらしい。その事に、思わず胸を撫で下ろす。

そんな僕を見てロキ様は笑いながら、「疲れたやろ。ゆっくり休むとえぇわ」と言い、ティオナさんを引きずって出ていった。

1人になった僕は、トロールとの戦いの最中に起きた事を思い返す。

────目に光のないシルさん。何故か戻ってきてトロールの前に飛び出そうとした彼女の事を考える。

(あれは、何だったんだ⋯⋯⋯⋯?)

まるで操られているかの様な彼女の行動。神の力は地上では使えない筈、ならばフレイヤは彼女をどうやって?

その疑問は、いつまでもしこりとなって、僕の心に残っていた。




エドモンの宝具。1話での伏線回収。そしてまさかのオッタルゲス化。オッタル好きの人はごめんなさい⋯⋯⋯。

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