ベル・クラネルが復讐者なのは間違っているだろうか   作:日本人

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書く時間がねぇぇぇええええ!!!そして寝みぃいいいいいいい!!!!

今回は7巻の前半をちょい改変した結果。
そしてロキ・ファミリア勢との絡みが少ない



※ちょいエロあり。そして滲み出る童貞臭。






娼婦と妖狐と

それはとある日の朝の事だった。

「何してるんですかラウルさん?」

「うひぃっ!?ってな、なんだベルっすか⋯⋯⋯。ビックリさせないで欲しいっす」

怪物祭(モンスターフィリア)の一件から数日後、あのクソ忌々しい汚豚野郎(オッタル)のせいで義手を破壊された僕はダンジョンに潜らずにホームである『黄昏の館』でずっと過ごしていた。というのも、義手が色々あって破壊された事をディアンケヒト様とヴェルフに伝え修復を依頼したのだが、

「少しの間待っていろ!更に上等なものを制作してくれる!逝くぞヴェルフゥッ!!」

「ええい、こうなりゃヤケだオラァ!?」

と、工房にこもりきってしまい、ロキ様からも新しい義手が出来るまでは安静を言い渡されたのである。義手が完成するまで約数日間、手持ち無沙汰な僕はホーム内をウロウロとしていたのだが、その際今僕の目の前にいる人────ラウル・アーノルドさんを発見したのだ。

その際にコソコソと人目を気にするような動きをしていたのでつい話しかけてしまったのだ。

「で、何してるんですか?傍から見てかなり怪しかったですよ?」

「う⋯⋯それは、その⋯⋯⋯」

言いよどむラウルさん。視線がめちゃくちゃ泳いでるしさっきからひっきりなしに汗をかいている。何か隠しているようだ。

「くっ、仕方ないっすね⋯⋯⋯ベル!ついてくるっすよ!」

「いやどうしたんですか突然⋯⋯」

「いいから!」

「っととっ!?引っ張らないでください!自分で歩けますから!?」

このラウルさん。冴えない見た目とは裏腹にLv.4の冒険者なのだ。当然僕が抗えるはずも無くそのまま僕はラウルさんに引きずられて行った。

 

 

 

 

引きずられて行った先には複数人の男性冒険者がいた。いずれも周りを気にするようにチラチラと見ており、怪しさ満点である。何より驚いたのはその中にLv.5の第一級冒険者のベート・ローガさんが交じっていた事だ。彼はどちらかと言えば一匹狼気質で、狼人(ウェアウルフ)という特性もありプライドが高い。そんな彼が群れるなんて何かあったのか⋯⋯。僕の頭を疑問符が埋め尽くす。

そのままラウルさんと共に(引きずられながら)近づいていくと、向こうも気づいた様子でこちらに駆け寄ってきた。

「ラウル!誰にも見つからなかったか?」

「途中ベルと遭遇したっすけど⋯⋯こうして捕まえてるっす」

「げっ、ウチの女性陣に気に入られてる奴じゃないか⋯⋯。下手したらこいつから⋯⋯」

「安心するっすよ。ベルも男、なら丁度いい口封じの方法があるじゃないっすか」

「あぁそういうことか⋯⋯。

よし、じゃあ見つからないうちにとっとと行こうぜ」

「了解っす。ベートさん達もいいっすか?」

「フンっ、クソ兎の1匹2匹増えた所で変わらねぇよ」

「「「俺らも構わんぞ」」」

「よし、じゃあ行くっすよ」

なんか納得してるとこ悪いんですが⋯⋯⋯、

「あの、そもそもどこ行くんですか?」

「行けばわかるから少し黙ってろクソ兎」

僕、なんかベートさんに嫌われるような事したっけ⋯⋯?なんか凄く睨まれたんだけど。てかいい加減引きずらないで立たせてくださいよラウルさん。さっきから尻が痛いんですけど?

 

 

 

 

 

 

 

結局、あのまま引きずられるままに連れてこられたのは、

「⋯⋯⋯『歓楽街』?」

オラリオの一角に位置する夜の街、『歓楽街』。そこは女を求める冒険者達や(金づる)を求める娼婦達で溢れかえっていた。

「ウチは副団長が色々と厳しいっすからね。こうでもしないと色々と溜まっていくんすよ」

「それで男ばかりで集まってたんですか⋯⋯」

「ベルもほら、そういうのあるっすよね?もうこうなったら一蓮托生っすよ?」

「万が一見つかった時の道連れじゃないですか僕⋯⋯」

嫌すぎる⋯⋯。何かあったのかと心配した僕が馬鹿だった⋯⋯。というか、

「僕どちらかと言えば客をとる側でしたからねぇ⋯⋯。金を払ってまで女を抱くほど飢えてませんよ?」

「またまた〜、恥ずかしがらなくてもいいんすよ?」

いやだってさ⋯⋯、

「女なんて少し服を着崩してればすぐ寄ってきますしねぇ⋯⋯」

「「「「「てめぇちょっと殴らせろや」」」」」

「嫌に決まってるじゃないですか⋯⋯⋯」

ベートさんまで一緒になって凄まないでくださいよ怖いんですから⋯⋯。

「畜生⋯⋯。なんでアイズはこんな奴の事を⋯⋯」

?なんでアイズさんの名前?

「ま、まぁ取り敢えず解散してそれぞれ楽しむっすよ!」

そう言ってバラけて行く皆さん。

「⋯⋯⋯⋯行くか」

取り残された僕はフラフラと歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

で、

「ねぇねぇ僕ぅ、お姉さんとイイこと⋯⋯しなぁい?」

「やっぱりこうなりますよねぇ⋯⋯⋯」

あの後、ラウルさん達と別れた僕は早速娼婦らしい露出度高めの服をきた女性に絡まれていた。彼女から見れば僕は『子供が背伸びしてやって来た』といった風に見えているのだろう。いい金づるに思われたのかもしれない。あるいはそういう趣味なのか。

「ねぇ⋯⋯しなぁい?」

スッ⋯⋯と身体を密着させてくる。ムニュリと僕の身体と彼女の身体に挟まれた大きな胸が潰れ、形を変える。あまりの色香にクラクラして来るのだろう()()()()()

「残念ですが⋯⋯今は先約がありますので」

「────んっ、むぅぅっ!?」

顔を寄せて肉付きの良い唇を奪う。驚き、僅かに空いた隙間に強引に舌をねじ込んだ。

「ふむっ、む、んん!!んむーーっ!?」

逃げられない様に彼女の腰を抱き、引き寄せ、口腔内を蹂躙する。道行く人々は気にもとめない。この程度の事はよくあるからだ。

「ん、ぷはぁっ」

ズルズルと崩れ落ちる女性。その表情は蕩けきっていた。

「また、いずれ」

僕は彼女の胸元にいくつかの金を突っ込んでおく。その際にさり気無くその豊満な胸を揉みしだいておくのも忘れない。こうして()()()()()と思わせればそこらの娼婦達は寄ってこなくなるからだ。

「んっ⋯⋯」

「では」

最後に耳元で小さく囁き、その場を後にした。

さて、このままぶらついて時間を潰してからラウルさん達と合流することにしよう。

「取り敢えず適当な酒場にでも行くか」

良い酒に出会える事を期待しながら、僕は歩き出した。

 

 

 

 

────5分後。

「ちょいと待ちな坊や」

「⋯⋯⋯⋯⋯はぁ」

あの後別の人にすぐに捕まってしまった。というか今現在思いっきり抱えられている。呑気に酒の事を考えていた自分をぶん殴りたくなる程の無警戒っぷりだ。間抜け過ぎる。

僕を抱えているのは長身のアマゾネスだった。肉付きの良い身体、しかし一切の無駄なくスラリとした肉体美を晒す彼女は、正直先程の女性よりも綺麗だった。

「⋯⋯⋯⋯なんですか?」

「私はアイシャってんだ。坊や、私を買わないかい?」

⋯⋯予想通りだった。この街の娼婦達は男に飢えているのか?そう思いたくなるのは仕方ない事だと思う。

「残念ですけど⋯⋯」

そう言って彼女の腕から抜け出そうとするが、

(っ?逃げられない⋯?)

「おっと、そうはいかないよ」

更に強く彼女に抱き締められ、彼女の豊満な胸が押し付けられる。悪い気はしない、が、嫌な予感が凄いのでさっさとお暇したい所なのだが⋯⋯、

(っ!⋯⋯っぅ!ぬ、抜け出せない⋯⋯!?)

Lv.2の僕が抜け出せない力。それはアイシャと名乗ったこの女性が最低Lv.3以上という事を示している。更に今の僕は隻腕である。あまり力は込められなかった。

「ふぅん⋯⋯、隻腕に隻眼、か。坊や、中々の修羅場を潜ってるみたいだねぇ」

「それはどうも。出来れば離してもらいたいんですけどね⋯」

「冗談。こんな上物逃がしゃしないよ」

⋯アマゾネスが活きのいい男をさらって貪り喰らうというのはどうやら本当らしい。これでもそこそこ経験はある僕だが本気のアマゾネスの相手はしたことが無い。正直生きてられる保証が無いのだ。

(不味いな⋯⋯何とか、っ!抜け出せないか⋯⋯っ!?)

アイシャさんの腕の中でもがいていると、

「あー、イイ男いないなー」

「もっと持たないのかなーあのソーローヤロー」

「ん?アイシャ誰よその子」

────どうやらアイシャさんのお仲間らしいアマゾネス達が集まってきた。⋯⋯いずれもがLv.2以上の雰囲気を纏っている。

漸くアイシャさんが戦闘娼婦(バーべラ)である事を僕は悟った。

「ん、なぁに中々の上物さね。久しぶりに滾るよ」

「へーアイシャがそこまで言う?」

「ねーねー!次私に味見させて!」

「あ、ずりぃぞ俺もだ!」

なんか本人差し置いて好き勝手言われてるんですけど。アマゾネス達が僕に手を伸ばすが、アイシャさんが僕を更に自分の胸に抱き込み、その魔の手から遠ざける。

「邪魔すんじゃないよ。こいつは私が目を付けた獲物さね。欲しいなら後で回してやるから最初は譲りな」

「「「ええ〜〜〜」」」

────今!僕は顔の真横に来ていたアイシャさんの乳房の先端を優しく抓りあげる。

「んっ⋯!?」

「⋯フッ!」

彼女が動揺し、腕を緩めた。その隙に脱出しようとし────。

「「逃がさないよ♪」」

ガシリと身体をアマゾネスの少女達に拘束される。

⋯⋯⋯⋯行動、早すぎやしませんかねぇ?

「へぇ、やるじゃないか。この私とした事がまんまとしてやられたよ」

アイシャさんが僕を抱え上げ、僕は再び捕らわれた。

「⋯⋯⋯ちなみに拒否権は?」

最後の希望に縋る。

「あるわけないじゃないかい」

「ですよねー」

⋯⋯人生諦めが肝心ということなのだろうか。僕はそのままアマゾネスの集団に連れ去られた。

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯デカいな」

摩天楼(バベル)に似た意匠の巨大な宮殿。正門に刻まれたのは他派閥のエンブレム。

「娼婦が刻まれた徽章⋯⋯⋯まさか⋯⋯⋯?」

「ご明察。ようこそ、女主の神娼殿(べーレト・バビリ)へ」

「まさか『イシュタル・ファミリア』の⋯⋯?」

「そういう事さね」

まさか案内(ゆうかい)された先が他ファミリアのホームだとは。機密とか大丈夫なのか?

疑問が顔に出ていたようで、アイシャさんはその様子を見てクスリと笑う。

「私らの間じゃホームに男を連れ込むことも珍しくないんでね。見られちゃ困るもんは表に出さないのさ」

「随分と開放的なことで⋯」

若干の皮肉を込めた一言だったのだが、

「活きがいいねぇ、ますます味わうのが楽しみだよ」

むしろ気に入られてしまったようで、ペロリと舌なめずりをされる。

⋯⋯⋯不味い。本当に不味い。これがまだ他の中小ファミリアならばまだ良かった。

が、相手は『イシュタル・ファミリア』だ。オラリオでロキ、フレイヤ両ファミリアに次ぐ一大勢力。これでは暴れて逃げたとしても大問題になりかねない。

僕が必死に逃げ出す為に考えを巡らせていると、

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯⋯なんだ、お前達。また何かあったのか?」

 

 

 

 

 

「っ!」

どこか、フレイヤや()()()に似た雰囲気を感じた。僕は咄嗟に声の方向を振り向き────

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯その子供は?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

ヨレヨレのローブ、ボサボサの髪、くっきりと刻まれた目の下のクマ。なんというか、『美』から最も遠い見た目の女性が、そこには居た。

えぇ⋯⋯⋯⋯。これが、美の女神イシュタル?

い、いやそんな訳ないな。こんな仕事に疲れたおっさんみたいな残念な人が、

「あ、イシュタル様」

「⋯⋯⋯嘘ぉ⋯⋯」

本物だった⋯⋯⋯⋯。愕然としている僕に、アイシャさんが教えてくれた。

「ウチの団長はとんでもない阿呆でね。そいつが起こす事件の数々の皺寄せがウチの主神に来てるんだよ」

「仮にも美の女神をここまで見る影もないほど疲弊させるってどんだけ酷いんですか⋯⋯⋯⋯」

絶対会いたくないんですけど。

「イシュタル様。今度はアイツ何をやらかしたんだい?」

「⋯⋯⋯アポロンの所の子供が何人かヤられた」

「「「「うわぁ⋯⋯⋯⋯」」」」

「これから私はアポロンの所に行ってくるよ⋯⋯⋯⋯。

フフフッ⋯⋯⋯。私がエレシュキガルの奴の世話になる日も近いな⋯⋯⋯」

そのままフラフラとした足取りのまま、イシュタル様は女主の神娼殿(べーレト・バビリ)を出ていった。

「⋯⋯⋯さて、それじゃあ行こうか」

「「「うん」」」

無かったことにしようとしてるよこの人達⋯⋯⋯⋯。

結局流れる様に僕は巨大な宮殿の一室に押し込められる。部屋にはアイシャさんを筆頭とした大人数のアマゾネス達。

⋯⋯⋯僕、生きて帰れるのかなぁ⋯⋯⋯。

「それじゃあ、楽しもうかねぇ?」

アイシャさんが服を脱ぎながらゆっくりと近づいてくる。やがて彼女は服を脱ぎ捨て、その魅力的な裸体を惜しげも無く晒している。そのまま彼女の手が僕に────

「大変だよアイシャっ!?」

────バンッ!と大きな音を立てて扉を開けるアマゾネスの少女。その顔は青ざめ、明らかにただ事では無い様子だ。

「ちっ、折角のお楽しみを⋯⋯⋯何処の誰だい?今すぐその首叩き落として「それどころじゃない!?ふ、フリュネの奴がこっちに来てる!!」────何だってそれを早く言わないんだい!!」

フリュネという名を聞いた途端血相を変えるアイシャさん。それは周りのアマゾネスらも同様で、かなり焦っていた。

「あんたらはこの坊やを逃がしな!あのヒキガエルに喰われるよりゃマシ────」

アイシャさんが言い終わらないうちにヌッ、と何が部屋に入ってきた。

「────ゲゲゲゲゲゲっ!!なんだ〜〜?アタイ好みの良い男がいるじゃないか────ふげぇあっ!?」

「あ」

「は?」

「「「「「へ?」」」」」

上から僕、アイシャさん、アマゾネス達である。皆何が起こったのかわからないという顔だ。いや、と言っても僕がやった事なんだけど。

突如部屋に入ってきたヒキガエルのモンスターに反射的に近くのテーブルを投げつけてしまったのだ。テーブルは見事ヒキガエルの顎にヒット。で、顎から脳を揺さぶられたらしいヒキガエルは床に崩れ落ちてしまったのだ。

が、よくよく見ればソレは巨漢のアマゾネスであり、モンスターではなかった。つまりはとんでもなく醜悪な見た目のアマゾネスなのである。

「「「「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」」」」

なんとも言えない沈黙が場を支配する。⋯⋯⋯どうしようこの空気?

床にへばりついていたヒキガエルがバッ!と起き上がる。あ、生きてた。

「よ、よくもアタイ顔にぃいいいいいいいっ!?」

「っ!!坊や、このヒキガエルは私らが抑えとくからさっさと逃げなっ!?」

「えぇ!?アイシャ正気!?」

「仮にもウチの団長の不始末だ!これ以上他ファミリアに被害者なんぞ出してみな、いい加減ロキ・ファミリアが動きかねないんだよ!!」

「えーい、女は度胸だぁああああ!?」

雄叫びを上げてヒキガエルに突進していくアマゾネス達。が、その見た目にそぐわない俊敏性と見た目通りのパワーを活かしてヒキガエルは次々とアマゾネス達を吹っ飛ばしていく。さっさと逃げないと不味いかも知れない。

「隠せ、銀煙(スモーク)!!」

最近、万が一の為にいつも携帯している銀煙(スモーク)を使って煙幕を張る。これで少しは持つだろうか。

「待ちなぁぁああああああああ!!!」

「あまり長くは持たないなこれは⋯⋯⋯」

僕はさっさとその場を後にした────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えずここに⋯⋯!」

あの場から離れ、近くの極東風の娼館に入る。中ならば暫くはやり過ごせるだろう。

「いらっしゃい⋯⋯ってガキか。何しに来た?」

どうやら店番らしい男が話しかけて来た。目付きからしてこちらを完全に侮っている。まぁ僕の見た目は初見の人からすれば『少し変わったガキ』程度の認識なのだろう。こればかりは仕方の無い事なのでスルーする。

「いえ、久々に少し良い所で女でも、とね」

「はっ、ガキのくせしてマセてんなぁ。で、どんな女をご所望で?」

⋯⋯⋯勢いで言ってしまったが、折角だし少しは楽しんでおくか?最近はご無沙汰だし。一応、それなりに金はあるので心配は無いだろう。ついでにあのガマガエルの目も誤魔化せそうだ。

「この店のオススメの子で」

「⋯⋯⋯慣れてやがんな。よし、2階の左奥の部屋だ。まだ手ぇつけられてない初物だぜ」

「それは重畳。では」

「精々楽しんできな」

店番の男に言われた部屋に行く。店の外観通りの和室で、襖からして高級感溢れている部屋だ。これは期待出来るだろう。

僕は期待に胸をふくらませながら襖を開けた。

「⋯⋯ようこそ、おいで下さいました旦那様」

中にいたのは狐人(ルナール)の少女だった。

金の毛並みに柔らかそうな尾。そして美しく整った顔立ち。どこか儚さを感じさせる少女だった。

「君が、ここの?」

「⋯⋯はい、春姫と申します」

「春姫、か。いい名だね」

「⋯恐縮でございます」

僕は彼女に近寄りその隣に腰を下ろす。僕の動きに反応してビクリと震える春姫。反応から見ても店番の初物という言葉に嘘はなさそうだ。

「君はどうしてこんな所に?」

「え?そ、れは⋯⋯⋯」

「君の言葉遣いや佇まいには貴族に近いものが感じられた。こんな場所にいるのには理由があるんじゃないの?」

「わ、私の身の上など面白くもないものでございます⋯⋯」

「手、震えてるよ」

「っ!?」

そう言って春姫の手を取る。白く、小さい、可愛らしい手のひらを包み込むように握る。そしてそのままゆっくりと春姫に身を寄せる。

「あ、あの⋯⋯⋯」

「話してごらん。少しは楽になるかもしれないからね」

「⋯⋯⋯わ、私は」

それから彼女はポツリポツリと語り始めた。曰く、神へのお供え物を寝惚けて食べてしまった事に激怒した父によって勘当されてしまった、と。それからお供え物を持ってきた小人(パルウム)の男に引き取られ、その男がモンスターに襲われて死に、その後はイシュタル・ファミリアで娼婦をやっているらしい。

「なんで春姫が食べたってわかったの?」

「私の口元にお供え物である‘神饌’の食べかすがついていましたので⋯⋯」

「⋯⋯⋯春姫、多分その男にハメられたみたいだね」

「へ?」

胡散臭いことこの上ないじゃないかその男。恐らくその男の本当の目的は春姫の身体だったのだろう。

少数民族である狐人(ルナール)はその希少性も相まって一部のマニア達に人気なのだ。その男もそういった類の人間だったのだろう。

「そ、そんな⋯⋯⋯」

春姫は愕然としている。信じていた男の本心がかなりショックだったらしい。

それにしてもその男だけでなく春姫の父も正直度し難い。

家族を大切にしない者は、嫌いだ。目の前にいたら反射的に殺してしまうぐらいには。

僕は後ろから春姫を抱きしめる。神々の言う‘アスナロダキ’というやつだ。

「あ⋯⋯⋯」

「春姫。僕には君の気持ちを理解する事は出来ない。でも⋯⋯」

後ろから、春姫の唇を奪う。

「んっ⋯⋯⋯」

「一時、何もかもを忘れさせる事は出来る」

ゆっくりと春姫を布団の上に押し倒す。

「だ、旦那様⋯⋯⋯んんっ!」

「ベル。そう呼んで欲しい」

「べ、ベル様⋯⋯⋯ふぁっ」

彼女の身体を優しく愛撫し、全身を愛する。

「今夜、僕が貴女の全てを受け止めよう」

春姫は、その日大人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル様⋯⋯⋯」

「なんだい?」

数時間後、部屋には帰り支度を済ませた僕と、未だに裸の春姫がいた。彼女は胸元に布団を引き寄せて裸体を隠していた。

春姫に呼び止められ、部屋から出ていこうとしていた足を止める。

「また、来て頂けますか?」

「⋯⋯⋯⋯」

その意味が、わからない程僕は鈍くはない。もう一度、春姫の唇に吸い付く。

「────また、来ます」

それだけ言って僕は部屋を後にした。下の階に降りると、店番の男が話しかけてくる。

「おう、坊主。楽しんでたみたいだな?」

「⋯⋯⋯彼女、そのうち()()()させてもらいます」

「おうおう、そうかそう⋯⋯は?」

身請け────娼婦を金で()()()()事である。

ただ、娼婦が元々金で買われた存在の為、当然かなりの金がかかる。春姫クラスの高級娼婦ならば尚更だ。

それでも僕は彼女を身請けするつもりだった。

────どんな形であれ家族を失うのは、辛いから。

僕は、彼女に自分の境遇を重ねていた。

 

────家族を殺され、失った自分。

 

────家族に見捨てられ、失った彼女。

 

僕達は、何処か、似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

店を出て、僕はフラフラと歩いていた。

「⋯⋯⋯⋯」

どうも僕は甘い。それこそ復讐者とは思えない程に。真に復讐者ならば、彼女を身請けなどしない。それこそ「よくある事だ」と切って捨てるだろう。

(僕は、中途半端だ)

あの‘共犯者’の様に、僕は成れない。僕はなりそこないの贋作なのかもしれない。

(⋯だとしても)

でも、今の自分を捨てるつもりは無い。英雄に憧れ、復讐者になった自分を偽るつもりは無い。

(僕は、僕だ)

ならば成し遂げよう。今の、『僕』のままで。

 

 

 

 

 

「⋯⋯一先ず、帰るか」

流石に長居しすぎたかもしれない。早くラウルさん達と合流しなければ。そう思いながら歩いていると、

「「あ」」

たまたまベートさんと出くわした。どうやら彼も帰りらしい。

「ベートさんも、今?」

「チッ、てめぇもかよクソが。折角いい気分だったのによォ」

⋯⋯⋯なんでこの人僕を嫌ってるんだ?特になにかした記憶も無いんだが。

「取り敢えずラウルさん達と合流しましょうか」

「言われなくてもわかってんだよクソ兎」

クルリと身を翻すベートさん。そのままついて行こうと────

「見つけたよォぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!」

「「「「「!!?!?!?」」」」」

周囲の人々が一斉に声の方向を振り返る。

()()。あの、ヒキガエルが。

「骨の髄までしゃぶり尽くしてやるよォぉぉおおおおお!!!!」

────自分でも、その時の動きの速さには驚いた。

驚いて固まっているベートさんを、足を引っ掛けてバランスを崩させてからガマガエルの方向に突き飛ばし、こう叫んだ。

「その活きのいい狼差し上げますから僕はこれで!!」

「おまっ!てめっ!?待ちやがれクソ兎ィ!」

「僕より丈夫なんですから相手してやればいいじゃないですか!!」

「あんなおぞましいモン相手に勃たんわぁ!!」

「そんなにアタイを抱きたいなら2人とも相手してやるよぉぉおおおおおおお!!!!」

「「ふざけんな、失せろーーーーー!!!!!?」」

その後、帰宅が1日ほど遅れ、ファミリアの女性陣に冷たい視線を食らったのは言うまでもない。

「おいコラベルゥ!!てめぇのせいでアイズに『ケダモノ⋯』とか言われたじゃねぇか!!?」

「言われるのが嫌ならさっさとアイズさんに告白してそういう関係になればいいじゃないですか!!?だからヘタレ狼なんですよベートさんは!!!」

「なんだとゴルァッ!!!!」

⋯⋯⋯まぁ、なんだかんだでベートさんと仲良くなれたので良しとしようか。




【人物紹介】
イシュタル
・今作では苦労人。昔はフレイヤやベルの言う‘とある女神’を敵視し、嫌悪していたがフリュネのせいでそんな事気にしてる場合じゃなくなった。今じゃフレイヤと会ってもフリュネの愚痴を零すだけになってしまう位の変わり様。
心の底では昔、唯一自分をフッた男を想い続けている。




春姫
・原作に比べ初心さを改善。でも未経験。つーわけで原作勢で最初にベルくんに頂かれてしまった。ケモ耳最高。






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