ベル・クラネルが復讐者なのは間違っているだろうか   作:日本人

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ルーキー日間で6位になってた⋯⋯嬉しすぎる⋯ッ!
通常日間でも9位になってる⋯⋯!?これは夢か⋯!?


過去と腕と

ヘファイストス・ファミリアの店での諍いの後、僕はヴェルフさんを連れてリヴェリアさんと合流した。今は僕の義手を得るために治療系のファミリアであるディアンケヒト・ファミリアの店に向かっている。向かっているのだが────

「あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕はベル・クラネルと言います。これからよろしくお願いしますね、ヴェルフさん」

「お、おう⋯⋯俺の事はヴェルフでいいぜ、よろしく頼む」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「じゃあヴェルフって呼ぶね。それはそうとさっきのバーナって人、何でヴェルフに突っかかってたの?」

「あー⋯⋯まぁ、色々あるんだよ。それで?何で俺まで連れていくんだ?」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「あぁ、それは僕が注文する予定の義手がちょっと特殊でね?ヴェルフにいてもらった方が都合がいいんだよ」

「だがなぁベル⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

気まずそうにリヴェリアさんを見るヴェルフ。そして先程から一貫して無言を貫き通すリヴェリアさん。店から出た後、リヴェリアさんと合流した僕はヴェルフさんを紹介したのだが、その瞬間から「行くぞ」と言ったっきり無言になってしまったのだ。僕が喋っていたのにはこの重苦しい空気を何とかしたかったのもある。ていうか何でこんな事に?

「ねぇヴェルフ⋯⋯僕ってリヴェリアさんを怒らせるようなことしたかな⋯⋯」

「いや、俺が原因だろうさ⋯⋯俺は〝クロッゾ〟だからな⋯⋯」

不安になってヴェルフに問いかけると聞き慣れない言葉が聞こえてくる。

「クロッゾって?」

そう聞くとヴェルフは軽く驚いた様に目を見張る。

「ベル⋯⋯お前知らないのか?」

「何が?」

生憎とド田舎に住んでたしロクに世間と関わってこなかったからそういう事には疎いんだよね。

「⋯⋯鍛治貴族のクロッゾ。遥か昔に精霊の加護をその身に受け、〝クロッゾの魔剣〟と呼ばれる最強の魔剣を創り出した一族だ。俺はその子孫なんだよ」

魔剣────魔法を刀身に宿した、いわば使い捨ての魔法。これを作れるのは一部の上位鍛治師のみで、冒険者の中にはこれを多用するものも少なくない。何より魔法の適性が無くとも魔法を放てるということからその需要はうなぎ登りである。

「へぇ⋯⋯精霊の加護なんてまるで英雄みたいだね」

「まぁその加護も失われちまった。精霊を〝怒らせた〟せいでな」

「〝怒らせた〟?」

「あぁ、クロッゾの先祖はラキアと呼ばれる国に仕えていてな。当時のラキア軍は大量のクロッゾの魔剣を保有し、事実上の世界最強の軍隊にまでなっていた。クロッゾの魔剣を振るう軍隊は街を滅ぼし、国を蹂躙し、精霊やエルフ達の住処である森を〝焼き払った〟」

⋯⋯まさか、

「精霊を怒らせたって⋯⋯」

「そうだ、恩を仇で返された精霊達は怒り、当時のクロッゾの魔剣全てを破壊した。それと同時にクロッゾの一族は魔剣を打てなくなったんだ。その責任を追求された先祖は没落、今じゃ過去の栄光にすがった老害どもしかいやがらねぇ」

「そして森を焼き払った事でエルフからも怨みを買っていると⋯⋯ん?でもさっきのバーナはヴェルフが魔剣を打てるって⋯⋯」

そう────確かにバーナはヴェルフが魔剣を打てると言っていた。だとするならば今の話には矛盾が生じてしまう。その事を指摘するとヴェルフは頭をポリポリと掻き、

「どうも俺は例外らしくてな。何故か一族の中で俺だけが魔剣を打てるんだよ。お陰で俺の所には魔剣目当ての奴らしかやって来ねぇ」

忌々しそうに吐き捨てる。どうも彼は〝僕と同じ〟らしい。

「ヴェルフは、魔剣が嫌い?」

「────嫌いだね。大嫌いだ」

僕の問いに間髪入れず答える。迷いのない断定だった。

「それは、何故?」

「魔剣は、脆い。ある程度使えばすぐに朽ち果てて行く、武器としては欠陥品。使い手を残して勝手に逝ってしまう、薄情な奴だ。そして何より────あの力。過ぎた力は人を堕落させ、腐らせる。使い手に悪影響を与える武器なんて、武器じゃねぇ。武器とは認めねぇ⋯⋯!」

────あぁ、これだ、この人だ⋯!

 

────この人こそ僕の目的の〝踏み台〟に相応しい⋯!

 

内心、喝采を挙げていることを悟られないように平静を保つ。そして改めてヴェルフに告げる。

「ヴェルフ、改めて頼みたい。僕のために────魔剣なんてものじゃない。君の本気の作品を作って欲しい」

そう言って手を差し伸べる。ヴェルフは一瞬目を見開き、次の瞬間にはニヤリとして僕の手を取る。

「こちらこそ────お前の半身に相応しい得物を打ってやるさ」

ヴェルフの顔には自身と情熱、そして何よりもマグマの様な向上心。やはり僕の目に狂いは無かった様だ。

「で────どうする?」

「────どうしよ?」

どうするかというのはもちろんリヴェリアさんの事である。僕らが話してる間も無言でディアンケヒト・ファミリアのホームに向かっている。どうしよう、何も考えて無い。

「リヴェリア・リヨス・アールヴ⋯⋯確かハイエルフの王族⋯⋯まぁ俺はクロッゾだし恨まれても仕方ないかもしれんが⋯⋯」

「────言っておくが私個人としてはクロッゾを恨んでなどいない」

唐突に立ち止まり、そう告げるリヴェリアさん。彼女は真っ直ぐとヴェルフを見つめる。

「クロッゾの末裔よ、私はお前の魔剣が仲間に向けられるのではないかと心配している。その上で問う────お前は我らの敵か?」

そう告げるリヴェリアさん。やはりと言うべきか、彼女の口から出てきたのは純粋に仲間を想う発言だった。ヴェルフはそれに迷いなく答える。

「敵じゃねぇ。それだけは言えるさ」

「神に誓えるか?」

「神なんかよりも重い────俺の鍛治師の誇りにかけて誓う」

神なんかよりも重い────その発言に込められた思いを悟ったのか、フッと柔らかく微笑む。

「成程な、ならばベルの得物の件、よろしく頼むぞ」

「たりめーだ。俺の顧客第一号だぞ。つーわけでベル、改めてよろしく頼む」

「────うん、よろしく」

僕達はそのまま談笑しながらディアンケヒト・ファミリアのホームに向かった────

 

 

 

 

「────此処だ」

暫くしてディアンケヒト・ファミリアのホームに辿り着いた僕達はリヴェリアさんと共に店でもある彼らのホームに入っていた。中はそこそこ広く、各種ポーションが置かれている。そして奥のカウンターには一人の女性が座っていた。女性はこちらに気づくと立ち上がって頭を下げる。

「いらっしゃいませ、リヴェリアさん。今日はどうされましたか?」

「久しいなアミッド。今日は新人の付き添いさ」

アミッド───その名が示す人物は此処、オラリオでただ1人しかいない。アミッド・テアサナーレ。戦場の聖女(デア・セイント)の二つ名を持つ第一級冒険者であり、オラリオ最高の治癒師でもある。ていうかそんな人物が何で店番なんかやってるんだ?そんな事を思っているとアミッドさんがリヴェリアさんの後にいた僕とヴェルフを交互に見る。

「新人の方というのはお二人ですか?」

「いえ、僕だけです」

一歩前に出ながらマントを脱ぐ。あらわになった僕の隻眼、隻腕を見てアミッドさんだけでなくヴェルフも驚愕している。暫くして、

「⋯⋯少し、待っていてください」

そう言って店の奥に引っ込んでいった。入れ替わるようにヴェルフが話し掛けてくる。

「おい、ベル⋯⋯お前、それ⋯⋯」

明らかに動揺しながら話し掛けてくるヴェルフ。その様子に苦笑しながらこうなった理由を説明している。それを聞き終えたヴェルフは、

「そんな事が⋯⋯でもベル、義手を手に入れても自由に動かせるのには時間がかかるんじゃないか?」

「それは────「フハハハハッ!心配無用!」」

説明に割り込む形で一人の男神が話し掛けてくる。恐らく彼がディアンケヒト様だろう。

「我々が作る義手はつけた瞬間から元の腕の様に自由自在に動く優れものだ!余計な心配は無用なのだよ!そしておぬしが我がファミリアの誇る〖銀色の腕〗を必要としているものか!」

「────はい、ベル・クラネルと言います」

「そうかそうか!ならば早速サイズを「それについてお話があります」⋯⋯ほう?」

「まず僕自身が腕を失って既に長い年月が経過しています。今更義手をつけたところでまともに武器を振るえるとは思えないんです」

「ほうほう⋯⋯それで?」

「ですから僕は考えました────武器が振るえないならばいっそのこと義手を武器として使えばいいじゃないか、と」

「⋯⋯ほう!」

感嘆した様に声を上げるディアンケヒト様。

「おぬし、義手の先を手ではなく武器にするつもりか!」

「その通りですよディアンケヒト様」

そう────今の僕では義手がどんなに高性能だろうと武器をまともに振るうことは出来ないだろう。剣筋はともかく、間違いなく握りが甘くなり、戦闘中にすっぽ抜けることがあるかも知れない。ならば腕の先端を武器として直接振えばいいじゃないか────という実に合理的な考えから思いついた事だ。ちなみにオラリオに来る前から既に考えていた。

「だが日常生活はどうする?まさかそのままという訳にも行くまい?」

もちろんそういった事も想定済みだ。

「えぇ、ですので手首から先を通常の手と武器に取り替えることが出来るようにして欲しいんです」

「────フハハッ!オーダーメイドの、しかも換装できる義手という訳か!面白い!面白いぞベルゥッ!!」

めちゃくちゃ興奮するディアンケヒト様。ちなみにリヴェリアさん達は話についていけず呆然としている。

「それでベルよ、オーダーメイドという事はそれなりに高くなるが手持ちはあるのか?そして我々は武器に関しては素人だ腕の良い鍛治師がいなければどうにもならんぞ?」

「鍛治師に関してはそこにいる僕の専属鍛治師のヴェルフとの合作でお願いします」

「えっ!?俺!?」

突然話を振られて動揺するヴェルフ。ディアンケヒト様はヴェルフをちらりと見て僕に視線を戻す。

「ならば支払いの方はどうだ?」

「────これを」

僕はホームでリヴェリアさん達に見せた宝玉を取り出し、ディアンケヒト様に見せる。

「こ⋯⋯れは⋯⋯!!?」

わかりやすく動揺するディアンケヒト様。〝やはり見覚えがある〟様だ。

「おぬし⋯⋯どこでこれを⋯⋯!?」

「そうですね⋯⋯〝とある女神〟、とだけ言っておきます。取り敢えず、前払金としてこれを渡しておきます」

そう言ってディアンケヒト様に宝玉を持たせる。

「!そうか⋯⋯わかった!その依頼引き受けよう!アミッドォ!準備を!」

「は、はい!」

慌ただしく店の奥に消えていったアミッドさん。ディアンケヒト様は今度はヴェルフを振り返り、

「おぬし!ヴェルフと言ったな!?」

「は、はい⋯」

「付き合え!」

と、ヴェルフの腕をがっしりと掴んで店の奥に引きずっていく。

「え?あ、ちょ!?⋯⋯ベル!義手に付ける武器の種類はどうする!?」

連れていかれるのを阻止できないと悟ったヴェルフは僕に要望を聞いてくる。

「────鉤爪でお願い!」

「わかった!それじゃあまたなぁぁぁぁぁぁ⋯⋯⋯」

叫びながらヴェルフは店の奥に消えていった。⋯⋯ふう、とりあえず今日の目的は終えたし、帰ろうか。僕はリヴェリアさんに帰ろうと告げ、店を後にした。

────とある美神に、内心で謝罪しながら────

 

 

 

 

 

 

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